
総合評価
(1123件)| 425 | ||
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日本のハードSFの新たなスタイル
異論も多いだろうと思いますが、私は、この本が21世紀の日本のハードSFの新たなスタイルの提示だろうと思っています。 故伊藤計劃氏の処女長編ですが、その完成度は高く、何ものを足しても引いても全体のバランスが崩れると言った感じの美しさが感じられます。全体の雰囲気も暗すぎず明るすぎず、テーマにちょうど良い感じに収まっています。 プロットは、ゴルゴ13か007ばりの近未来サスペンス。ディテールは、紛れもないハードSF。そして、テロとは、正義とは、といろいろ考えさせられる奥深さもあります。あらすじだけを読むとかなり荒唐無稽な感じになりますが、実際に読むと、そのリアリティがひしひしと伝わってきます。 ヒットした「機龍警察」にもいえることですが、これからのSFは、純SFから他のジャンル、たとえばミステリー小説やサスペンス小説などとのハイブリッド化が進むのかもと思わせる小説でした。それらで提示されるのは、人類とハイテクのバラ色とはとてもいえない未来構図。それが、閉塞感漂う現在の世相とマッチしているのでしょう。 だからといって、この小説が時代に迎合した安易な小説だとはいえないと思います。リーダビリティはすごく良いです。日本SF界に「伊藤計劃以後」という言葉ができるほどのエポックメイキングな小説です。SFに興味がある方なら、是非一読をお勧めします。
15投稿日: 2014.05.02
powered by ブクログ罪悪感から救ってくれるのは神様じゃなくて罪なんだなあ なんて今更な事に改めて触れさせてもらった 残酷な描写は多いけど、不思議と嫌悪感を抱かなかったのは表現がネチネチしてないからですかね 役割が変わっただけで、ある意味元に戻ったとも言える世界はやっぱりデリバリーピザの普遍性と同じだ
2投稿日: 2014.04.30絶望と解脱感がない交ぜになった心地よい感覚
久々に読んだ、読み応えのあるSF。というか、戦記物。 この本から受け取ったテーマは、意思とは何か、その意思によって求められる自由とは何か、ということ。主人公は、(ことばや記憶やテクノロジーや組織やの影響を受けている)自分の選択が自分の意思によるものだったのか、を常に思い悩む。その過程が圧倒的な論理性と文章力で展開される。結果、主人公の抱える問題は、読み手である私にも突きつけられて、内省することになった。 主人公とともに内省を始めると、ルツィアやジョン・ポールが語る、ことばや良心も人間の進化の過程で生まれた産物、器官のようなものだ、という考えには強く引きつけられる。私もまた、主人公と同様に。 そのままラストまで突入すると、絶望と解脱感がない交ぜになった心地よい感覚がやってくる。エンディングは弱いという意見もあるようだけれど、この小説が主人公の内面を主軸にしたSFである以上、このくらいでいいのだろうと思う。
8投稿日: 2014.04.29
powered by ブクログあちこちで高評価、そして哀しく切ないお話…と聞いて興味をもち、先月(3月)買っておいた本。 積ん読本消化中というのもあって、これを読むのはもうちょっと後でもいいかと思ってたけど、2015年劇場アニメ化と聞いて、2014年4月28日(月)から急遽読み始め。 ********* 2014年5月13日(火)、読了。 フィクションながらも〈文法〉と〈テクノロジー〉の在りように戦慄。 序盤から、 『2001年宇宙の旅』 『頭文字D』(←直接的な表記はないけど、ファンならすぐわかるアレが登場) 『ジャクソン・ポロック』 …と、ワテクシ的にビビッとくるワードが散りばめられてるもんだから、趣味趣向がかなり似てるかも!と作者氏に勝手ながら親近感。 そんなとっかかりのおかげもあって、最後までぐいぐいと読めちゃいました。 中盤以降も、 『J・G・バラード』 『リドリー・スコット』 『リゲティ』 『テリー・ギリアム』 …などなど、これらのワードに何かしら響くものをお持ちの方は思わずニヤリとしちゃいそうですね。 近未来SFで軍事ものなので特殊な用語が多用されているものの、文章自体は読みやすく頭の中にスラスラ入ってくる感じ。 また、文庫版の最後に収録されている解説、および伊坂幸太郎氏・小島秀夫氏のコメントにもあるように、「語り口の繊細さ」もこの小説の魅力のひとつだと思います。 ただならない殺伐としたタイトルに違わず、主人公のクラヴィス・シェパード大尉はじめ登場人物たちも圧倒的な現実の中でエライことになっちゃってるんだけど、細やかで淡々とした一人称の語り口で終始貫かれている。 このズレ感がフックとして良い意味で利いていて、倍面白いと感じました。 ネタバレしたくないからあんまり書けないけど、ラストの感想は「マジかよ・・・」でした。 2015年の劇場アニメ化、どんな作品に仕上がるのか楽しみ。
0投稿日: 2014.04.28
powered by ブクログSFだけど、泥臭い戦争を背景に哲学を語るという なんだかよく分からん話。 SFの要素と哲学の部分いらねんじゃね? と身も蓋もないことを言ってみる。
0投稿日: 2014.04.24
powered by ブクログSFというジャンルをあまり読んだことがなく、グロに耐性もなかったため5年位前に2章あたりで読み続けることを断念したままだった作品がアニメ映画化されると聞き、これは再挑戦のチャンスだと思ってイッキに読んだ (これは主人公本人が望んでこういう話し方なのかはわからないが)淡々とした語り口がすきです 重厚な世界観に引き込まれますがハーモニーの方が好みだったかなあ 膨大な量の専門用語や略語が登場し、著者の知識の多さに驚かされる(浅学なわたしは片手に辞書が必携でした) さらに著者はこの原稿をわずか10日で書き上げたというんですから、ホンモノの天才なのでしょうね もう著者の新しい作品を読むことができないのがとても残念です
0投稿日: 2014.04.23
powered by ブクログ劇場版アニメ化すると聞いて。 …むずい!というか、どこに焦点をあてて読むべきかわからないもやっと感がある。SFも文学と同じで情緒のない私には向かないのかも…私には原因と過程と結果がはっきりしてるエンタメモノが合ってる。。でも最後まで読めたよーつーかこれアニメにすんの?どんなになるか気になるから見たいし、製作IG、監督・キャラデザ沖浦さん、脚本押井さん、作監西鉄さんなら、円盤も買う。
0投稿日: 2014.04.21
powered by ブクログずっと読んでみたいと思っていてたまたま海外で入手できてようやく読了。 面白くてページをめくる手が止まらなかった。 SFのジャンルに入るんだよね? 読みなれない世界観だったけど、小説の中で出来上がってる世界観が興味深く色々考えさせられた。 自由とは、愛とは、平和とは。
0投稿日: 2014.04.07
powered by ブクログ人は見たくないものは見えない。 腐った世の中でも大切なモノはあるし、そのモノのためならどんなに残酷なこともいとわない。 道徳的にはダメなことでもこれが人間の本質なのかもしれない。 予想できない設定に驚いた。 こういうのがあるからSFが好き。
1投稿日: 2014.04.04
powered by ブクログ本書は伊藤計劃の第一長編にあたる。著者名は「いとうけいかく」で、ジャンルとしてはSFになる。時代はおそらく2020年前後の近未来。詳細→http://takeshi3017.chu.jp/file5/naiyou18501.html
0投稿日: 2014.04.03
powered by ブクログ9.11以降、厳しい管理社会となったアメリカ。一方、後進国では内戦やテロが相次いでいた。特殊部隊大尉の"ぼく"は虐殺の影にジョン・ポールという人物の存在に気付く。友人から「衝撃的」という言葉とともに勧められた一作。読んでみると、確かに「衝撃的」としか言いようがない。主人公の最後の決断もさることながら、舞台設定にも圧倒される。設定は近未来であるものの、世界の紛争や情報、医療、宗教、言葉の問題は現代に提起されている。人類の核心を突いた結末も、フィクションとは割り切れない。ああ、そうか、これがSFなのか。
0投稿日: 2014.04.03
powered by ブクログこれは面白かった!! 近未来の描き方とか、虐殺の導き方とか、結末とか。すごいなあ、一つの世界が出来上がってる。
0投稿日: 2014.03.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
色々と考えながら読めた。ラスト近くは展開が速くて引き込まれましたが、正直ちゃんと納得できません。でも面白かった。とても完成度の高い作品だと思います。作者の知識の多さを感じました。そして作者がもう亡くなってしまったことが本当に悔やまれる...
1投稿日: 2014.03.27
powered by ブクログ虐殺器官 / 書き下ろし (ベストSF2007 国内篇1位, ゼロ年代SFベスト30 国内篇1位, 第1回PLAYBOYミステリー大賞1位) 解説 (大森望) 『虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)』 2007.6 早川書房刊 文庫化 カバーデザイン 水戸部功 印刷 亨有堂印刷所 製本 川島製本所
0投稿日: 2014.03.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
核兵器が使えるということに、世界が「気づいた」という表現に代表される悲観的な近未来像は、裏返せば現在信じられている価値の欺瞞性を極限まで問い詰める冷酷なまでのリアリズムでもある。 例えば地震などの不可抗力による死者を長年にわたって悼み続ける人々には、誰かの撃った爆弾によって今日も殺され続ける人々がいる事実が見えない。見えないことは無いこと。そして見えないことは見たくないこと。
0投稿日: 2014.03.01
powered by ブクログめちゃくちゃ面白く読ませてもらいました。いや面白いというより凄いと表現した方が良いのかも。 主人公の会話を読んでいると「あれ? これ、神林長平の作品だっけ?」と勘違いするところが何箇所かありました。はっきり言って、個人的に直球ど真ん中ストライクな作品。 凄い作品です。
1投稿日: 2014.02.15クラヴィスの罪
安易に伊藤計劃を評価できないことを承知のうえで感想を述べさせてもらいたいと思います。言葉という一種の器官が人間の潜在意識に訴えて、後にハーモニーで歴史として語られる大災禍が起こってしまうわけですが、クラヴィスがチェコから帰還し軍を辞めた時には、守るべきものに加え大切な仲間、愛人、そして母も失ってしまっています。残ったのは防腐処理された母の肉体と罪の意識のみです。その真の虚空は容易に想像ができると思います。また、ジョン・パーカー捕獲のために多くの人間を殺害しています。そして、それがクラヴィスを圧倒し自身に罪を負わせ、米国以外の国を救うため、米国を虐殺の坩禍に放り込むのでした。これは、クラヴィスが虐殺器官により虐殺を行った動機として十分だと自分は思います。
1投稿日: 2014.02.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
哲学的な会話の静と、暴力的な戦闘の動。静動が繰り返される展開の妙。母の生命維持装置を止めた罪を罰してくれる、若しくは赦してくれると思っていたルツィアの死。国内に虐殺を持ち込ませないように、国外で内乱を起こさせたジョンポールの死。二つの死によって、最終的にはアメリカ自国内で内戦を引き起こさせ、アメリカ以外の全ての国を救うシェパード。これが彼の贖罪なのか。 ・戦争をコミュニケーションとした啓蒙 ・死が傍らにあることでのみ、自らの生を実感することのできる手合い ・刹那 ・全ての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在する。仕事とは宗教なのだよ。
0投稿日: 2014.02.09
powered by ブクログ賛否ありそうだが、ラストが大好き。途中までもやもやしながら読んでいたが、ラストですっきり。 話自体は面白いが、少し取材不足ではと感じるところも。 読後に作者のインタビュー記事などを読み、主人公の一人称視点で語られているところに意味があったと知る。面白い。
0投稿日: 2014.02.06
powered by ブクログかなり残虐なシーンを描いているのだけれど、読んでいて気持ち悪くならないのはこの人の文章の力か。 実は私なんかが知ってはいけないことを読んじゃってるんじゃないかとリアルに恐怖を感じつつも、最後まで読むのをやめられなかった。まさに21世紀に書かれるべくして書かれた傑作です。
0投稿日: 2014.02.01
powered by ブクログ後輩に薦められて購入。なるほど確かに面白い。そりゃ流行る。(男女差別的かもしれないが、)男の子的な話だった。 メタルギアソリッドにどことなく似てるなあとか、メタルギアとかが好きな人はきっと好きなんだろうなあとか思っていたら、作者が大ファンとのこと。納得。
0投稿日: 2014.02.01
powered by ブクログタイトルに抵抗があったけど作品自体は特に残虐な話でもなく読みやすかった。 戦場でのシーンは暴力的な描写もあるけれどとても淡々としている。 色々な意味で衝撃的。 お名前を英語にすると〈Project Ito〉というのがおもしろい。 作家になり間もなくして、まだ若いご年齢で他界されたとのこと 大変残念に思います。
0投稿日: 2014.01.30
powered by ブクログあちらを立てれば、こちらが立たずではございますが、 ご意向そうところに、蜘蛛の糸をお垂らしください。 (以下抜粋。○:完全抜粋、●:簡略抜粋) ●作戦の基本単位は四人編成であり(中略) 四人未満だと戦力としてはあまりに貧弱すぎ(中略) かといって五人以上だと指揮統制の難易度桁違いにアップし、 隠密行動も難しくなる。(P.55) ○生物が進化すると必然的にことばを持つとか思うのは、 人間の思い上がりということになるんですね(P.125) ○「戦力の逐次的投入」というのは、 最もやってはならないこととされている。(P.150) ○コンピュータは暗号解読のために生まれ、 弾道計算によって育てられた(P.168) ○弱い生物が厳しい世界で生存に適応するためには、 安定した集合を築くことが重要だったのね。 他の個体を利するというのは、 純粋に生物的な根拠のあることだし、 進化の適応なのだったら、 遺伝子に刻まれていても、 生まれたときから脳の機能として内在していても、 ぜんぜん不思議じゃないわ(P.203) ○進化、ってのは種の存続を第一義にしている、 と思われがちだが、それは厳密には正しくない。 生存に適した形質を有した個体が生き延びて、 その形質が種の中で支配的になっていく、 そうやって種はすこしずつ進化していくんだ。 個体が適応した結果として進化があるのであって、 その逆じゃない。 つまり、種のために自殺するような本能なんて、 個体に不利な進化の極みだ。(P.279) ○仕事は宗教なのだよ。 信仰の度合いにおいて、そこに明確な違いは無い。(P.310)
0投稿日: 2014.01.25
powered by ブクログ評判の国産SF大作を読んだ。なるほど面白い。面白いという一言で片づけるには重いテーマを内蔵していて、SFという枠で収まりきらない。 9.11後のアメリカを舞台に、終わらないテロとの戦いの最前線の軍事部隊「特殊検索群i分遣隊」のリーダーであるベテラン兵を、一人称形式で追う。 技術的に感心させられるのは、やたら少ない登場人物で、大きな世界像を描き出しているところ。 作者の早世は痛恨事。
0投稿日: 2014.01.24旅立つ前の作者の精勤ぶりに脱帽
朝日の書評につられて久しぶりに手に取ったハヤカワノベルズ。 生硬な文章,長たらしい漢字の造語にやたらに付された英文字や片仮名のルビが煩わしい前半部を読み通すのに少し時あ間がかかったが, それでも,伏線としてちりばめられた沢山のキーワードが一体どのようにまとめられていくのか好奇心を刺激させられる書き出しではあった。 言葉(パロール),言語(エクリチュール),現実と仮象,父の自殺,母の生命維持装置を外す決定,そして罪と罰・・・こうした重い概念やエピソードを読者にさしだすときの著者の語り口は その勤勉をいささかわかりやすく示しすぎているきらいがあるが,話半ばにさしかかる頃には,新しい知識は物語の勢いにほどよく流されて,違和感は少なくなる。 全章を通して描かれているのは,理性と感情,リアリティとファンタジー,復讐と罰,加害と被害といった対概念が徹底的に個人的具体的な体験(戦闘)の中で, 結局のところ対抗概念足りえない境界不鮮明なアマルガムとして同時に立ち現れてくる諸相である。 著者は,主要な語り手である「ぼく」ことクラヴィスを戦わせるたびに彼にはりついてくる, よく噛んだガムのように払い落しにくい生と死の双方向への欲動を切り分け,理性(論理)の中に落とし込もうと試みさせる。 しかし予想通りにその試みは大抵うまくいかず,「ぼく」は混沌の淵に近づくばかりである。 彼は,殺しつつ罰せられることを望んでいる。 そう遠くない未来に実現するだろうと予想できる程度の電子装備を身に纏って巧みに任務を遂行しながら,「ぼく」はまたしても生残してしまったことに臍をかむ。 クラヴィスが節目ごと呻くように呟くのは,「地獄はここ(脳の中)にある」という自殺した戦友アレックスの言葉である。 著者の勤勉は,トマス・ホッブズ,ジョン・ロック,デイヴィッド・ヒュームなどによる黙示的な社会契約説から, 社会構築(構成)主義(social constructionism / social constructivism),加害者のPTSD(デーヴ・グロスマン「戦争における『人殺し』の心理学」), サヴァイヴァーズ・ギルト,ミシェル・フーコーに依拠する監視社会の概念, その他進化心理学やマイケル・ガザニガらの神経心理学(「脳の中の倫理」)等々に関する書物を読み漁った形跡から窺い知ることができる。 戦闘員の話なのだから当然といえば当然すぎるのだが,本作の至る所から死の匂いが立ち昇っている。 しかしそれは実のところ戦闘の描写に由来するだけではない。 大森望による巻末解説を読んで腑に落ちた。 作品の理解にその作家の個人史に関する知識を用いることにはストイックでありたいと思っているが, この作家の早すぎる晩年における熾烈な闘病の日々が作品に与えた陰翳の深さを無視することはできないだろう。 作家自身による次のようなWEB上発言が解説の中で紹介されている。 「テクノロジーのために成熟が不可能になっている」主人公に一人称で戦争を語らせようと決めていた。 「テクノロジーによっていくつかの身体情報から切断された結果出現する,ユニークなパーソナリティ」は, 「最新のテクノロジーの成果が投入される軍事領域において最初に起こるだろう」 舞台の外の発言ではあるが,これは現代の若者に関する一つの洞察といってよいのではないだろうか。 社会構造(制度)の進化に伴う個人の成熟の困難性,そしてテクノロジーの進化に伴って剥奪されてゆく身体性。 つまりそれはいわゆる社会制度の成熟とともに未熟になってゆく若者たちを暗示させると同時に, 一見作家の意見とは異なって,何のテクノロジーも必要とせずに現出する解離や身体化の心的メカニスムの再考を誘導する。 少し気になるのは,描かれた極端にネガティブな「母」のイメージだ。 物語の終わりに明らかにされる情緒的ニグレクトを,作家はリアリティの一つとして「ぼく」に変換したというだけなのだろうか。 もちろん家族に贈られた献辞を尊重すべきであろうが,この点については, 本作からわずか数年後に公刊され,遺作となった「ハーモニー」(2008年)を読んだ後に再考したい。
12投稿日: 2014.01.17
powered by ブクログ凄い本を読んでしまったなという感想。小学生の読書感想文レベルだか、どうしてこんなアイデアが生まれ、それを一冊の本に纏められるのだろうか。 内容が内容だけに万人受けはしないと思うが、誰しもがショックは受けることだろう。仮に映画化されたとしたら、確実に18禁である。
2投稿日: 2014.01.16
powered by ブクログ34歳で早逝した伊藤計劃氏のデビュー作。 近未来の軍事装備が緻密に描写されているのだけど、実際こうなりそうで非常にリアリティーがある。日本のSF界は本当に惜しい人を亡くしたな。
0投稿日: 2014.01.12
powered by ブクログわたしという認識も、あなたという区別も、すへてこの進化の過程の中で生まれたのだ、とルツィアは言っていた。 人間は環境に左右されるし、それに何より、選択はつねにひとつではないから。
0投稿日: 2014.01.04
powered by ブクログタイトルから想像するようなグロテスクな印象はない。 虐殺シーンの描写もあるし、けしてハッピーな話ではないのだが、むしろ読後に残るのは、優しさであり、哀しみである。 村上春樹風の香りもする洒落た会話を挟みながら、美しい繊細な文章で、人間の存在、生と死、善悪、正義、現代の監視社会やテロリズムといった重いテーマを掘り下げる。 1984風の世界の現代版かと思いきや、最後にもう一度「やられた!」と思う。 SFというスタイルを取っているが、描いているのは9.11後の今の世界であるように思う。 後書きも泣ける。 読み終わった後、もう一度読み返したいと思う作品。
1投稿日: 2014.01.02
powered by ブクログタイトル通り、虐殺描写が多々出てくるので映像ではあまり見たくないですが、話は楽しめました。重い話で終わり方も余韻を残す終わり方だったので読後感は、あまり良くないのですが、戦争や自分の今の平和について考えさせられる話でした。
0投稿日: 2013.12.27
powered by ブクログ何となく、結末は予想がついたものの、世界観の描写はとても面白かった。 未来の世界のあり得そうな一例として、実現したらどうなるか、どうすればそれが実現しそうなのか、想像して楽しむのも面白いなと思った。
0投稿日: 2013.12.27筆の勢いがすごい
言語による認識、自由意志、進化論などをテーマに、近未来(ポスト9.11って感じ)の米軍暗殺部隊を描いているSFです。 たいへんに評判となった作品ですが、個人的には肌にあわないところがありました。ところどころ説明的で薄っぺらくおもえたり、”虐殺の器官”もちょっと拍子抜けの感が。。。それでも、筆の勢いというか一気呵成に書き上げた熱は読んでいて伝わってきました。欠点もその勢いとのトレードオフなのかもしれませんね。
2投稿日: 2013.12.13
powered by ブクログ人物についての描写細やかなSF小説。 言語や認知についての小話がたくさん盛り込まれていて面白かった。 ラストはあまり救いが無く、混沌とした情景で終わるので、読んですっきりするものではなかったかな
0投稿日: 2013.12.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
抑止できる核攻撃によってサラエボが消え去ってしまった近未来のお話。アメリカの暗殺を実行する特殊部隊の隊員である主人公が世界を暗躍する中で、あるひとりの男の存在に気付く。その男の軌跡をたどると、そこには必ず内乱や紛争が突然のように発生している形跡が見て取れる。この虐殺の王を追うウチに、その虐殺の謎が明らかになっていく。そんなお話。 軍事色の強い近未来SFという点がまず好きで、しかもディティールが面白い。人工筋肉の商用利用や痛覚マスキングなど痺れるようなSF要素が満載。 更に自由について、戦争について、平和について、生き方について… そんなのを色々難しく語ってる辺り、なんとなくエヴァ的というか読んでるだけでなんか自分が賢くなったように勘違いできる雰囲気もあったりして。 最後も猛烈などんでん返しは無かったなぁと思いながら更に最後の最後でそれかい!というオチの持って行き方も好き。 自分の軸から見て悪いことをしている奴は悪者、なんて単純な話は大概無くて、相手は相手で正義があるんだよねぇ。 こういう本を読むたびに思う。この本を読まずに死んでいたと思うとゾッとすると。そしてそんな本が世の中にはあふれていると思うと読書はやめられないねとも思う。そんな素晴らしい一冊でした。
0投稿日: 2013.12.07
powered by ブクログ9・11以降、テロとの戦いは転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が続発していた。その陰で暗躍している謎の男、ジョン・ポールの存在を付きとめた米軍大尉クラヴィス・シェパードは、彼を追うためチェコへと向かう。ジョン・ポールとは何者か。彼のいるところで何故大量虐殺は起こるのか。 宗教、文学、言語学、延命制度-生と意識の境、政府による徹底された情報管理社会。ストーリーに則りながら、本文で扱っている分野は多彩です。著者の幅広い知識にはただただ脱帽します。 面白いと言っていいのか躊躇する、ぞっとするような地獄に近しい世界。でも現実とリンクして、こんな世の中も実際に有り得る未来があるのでは思うほどリアリティがあります。余計なものをそぎ落とした無機質さ、印象的な言葉の数々、そしてテンポの良さに先を急ぐように没頭しました。 『ハーモニー』も楽しみ。
0投稿日: 2013.11.29
powered by ブクログサラエボで核兵器テロが起きた後の近未来の世界、後進国で続発する民族対立と虐殺、その裏で暗躍する謎の男ジョン・ポール、そして彼を追うエージェント、クラヴィスの物語。 ちょっとグロ過ぎる近未来の世界観と情景の描写。でも現実の方がもっとグロいかもと思わされた。結末も、とある書評で見たほど「おきまり」とは思わなかった。むしろびっくりした。 映像向きの作りで、映画化の話も無きにしも非ずのようだけど、映像化されたらみないわな、グロくて(笑) http://www.cinematoday.jp/page/N0043118
0投稿日: 2013.11.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
p.187 罪悪感の対象が死んでしまうということは、いつか償うことができる、という希望を剥奪されることだ。さt人が最も忌まわしい罪であるのは、償うことができないからだ。お前を赦す、というそのことばを受け取ることが、絶対的に不可能になってしまうからだ。 p.207 人は、選択することができるもの。過去とか、遺伝子とか、どんな先行条件があったとしても。人が自由だというのは、みずから選んで自由を捨てることができるからなの。自分のために、誰かのために、してはいけないこと、しなければならないことを選べるからなの。 p.310 仕事だから。十九世紀の夜明けからのこのかた、仕事だから仕方がないという言葉が虫も殺さぬ凡人な人間たちから、どれだけの残虐さを引き出すことに成功したか、きみは知っているのかね。仕事だから、ナチはユダヤ人をガス室に送れた。仕事だから、東ドイツの国境警備隊は西への脱走者を射殺することができた。仕事だから、仕事だから。兵士や親衛隊である必要はない。すべての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのは、仕事に打ちこみ貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのだよ。信仰の度合において、そこに明確な違いはない。そのことにみんな薄々気がついているようだがね。誰もそれを直視したくはない。
0投稿日: 2013.11.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久々に衝撃を受けた。日本にこんな小説を書ける人がいたとは。それを知らなかったとは。題名からイメージしたものが、冒頭からひっくり返され、どう繋がって、どこに向かうのかわからないまま、引き込まれて、読み切ってしまった。世界が混沌へ転げ落ちていくいいようのない話なのに、悲壮さはあまり無く、なんか考え込んでしまった。
0投稿日: 2013.11.20
powered by ブクロググロテスクな描写や長ったらしい組織の名前・それに振られた見慣れない略称や呼称に戸惑うことも最初だけ。近未来の戦場を舞台としながらも、哲学・宗教・進化論など知的興奮が圧倒する作品。SFは苦手という人にもお勧め。 解説に書かれた小松左京賞の評価「肝心の『虐殺の言語』とは何なのかについてもっと触れて欲しかった」には同意しかねる。今この瞬間にも種が播かれているかもしれない得体の知れないものだからこそ、読後にうすら寒いものを感じる。それは侵略者をぶったたいておしまい、のハリウッド映画ではなく、心に陰影を残すジャパニメーションの領域だろう。
0投稿日: 2013.11.17
powered by ブクログ大量殺戮を誘発する器官とは?その能力を知る男を追って米国軍人のクラヴィスはチェコに潜入するが… 続編の「ハーモニー」を先に読んでいて良かったというべきか…。こちらの作品は文章が取っ付きにくくて、読むのをやめようかどうしようかと迷いながら読んだ。全体の3分の1を過ぎた辺りでスピード感が出てきてくれたお陰で読了。 ルツィアへの想いがもう少し深く描かれていると良かったかもしれない。ラストのぞっとする様子から考えると続編のハーモニーはある意味ハッピーエンドなんだろうな。
1投稿日: 2013.11.15
powered by ブクログ結構リアリティがあって面白かった. SFなんだけど突拍子もない発想ってわけではなくて,現在の政治状況や科学などに基いて書かれている点が好感が持てる. ネットワーク分析の話まで出てくるとは思わなかったけれど,著者の知識の幅広さみたいなのを感じた.
0投稿日: 2013.11.05
powered by ブクログテロ、貧困、核兵器、国家管理体制等、グローバル現代社会の負の側面として蔓延る諸問題を織り込み、私たちの生きる「今」を近未来に投影した作品。 先進国は進化したテクノロジーを駆使して徹底的な管理社会に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大量殺戮が劇的に増加した。 米軍大尉のクラヴィス・シェパードは大量虐殺を裏で手引きすると囁かれる謎の言語学者ジョン・ポールを追って作戦に従事するのだが.... 言語を情報伝達の手段として獲得し、それを今日の姿に昇華させてきた人間には、生物学的進化の途上として遺伝的にコードされた「虐殺の文法」が備わっており、その環境で虐殺が集団としての利益に叶うと認識される状態になると集団内で殺戮を発生させる、という脳機能のカラクリには戦慄した。平和や自由を求めながら、集団の利益のために殺戮が行われるという悲しきパラドクスは、実際に人間が備えている性質かもしれない。(現実に起きているホロコーストや内戦は、大いにこの要素を孕んでいる) 全体として軍事色が強く、テーマが重々しい上に、戦闘や死体の描写がグロデスク。万人には薦め難いが、夭逝した伊藤計劃という天才がこの作品に込めた思いは充実した読後感として残る。
0投稿日: 2013.11.04
powered by ブクログタイトルからして、結構凄惨な感じがしますが、出だしもびっくりです。正直、頭の中で映像が構築できませんでした。 物語としては、アメリカの特殊機関に所属する軍人(?)を主人公とする物語ですが、読むものに生きる意味を考えさせる本でした。表現としてはグロテスクな部分もあるのですが、その中に潜む物語の本質というか、根幹の部分が太く、とても考えさせられる本だったとも言えます。 グロテスクな部分に耐えられるのであればお勧めの一冊です。
0投稿日: 2013.11.03
powered by ブクログここまでバッドエンド的な作品は初めてかも。 グロいのに淡々としていて、残虐性と思想性を兼ね備えていて、読みやすいのか読みにくいのかよくわからない作品。 ちょっと時間かかった。 読むことに対する疲労感が、他の本よりも多い。 ウジウジ考えまくってる主人公に引きずられる。 それでいて、最後には考えることを放棄したような方向に走ってしまう。 なんとも後味が悪い、虚しさに襲われる終わり方だった。 読みたいのは続編といわれる「ハーモニー」の方なので、そっちに期待。
0投稿日: 2013.11.03
powered by ブクログ伊藤計劃の書くものはとにかく重い。 後書きにある佐藤亜紀さんの「凡百の繊細ぶった、その実どうしようもなく粗野な代物とは対極にある、題材に対する繊細さ。その背景の現実に対する繊細さ。」というコメントには膝を打ちました。これ以上に的確な言い回しはない。言い得て妙。
0投稿日: 2013.11.02
powered by ブクログSFが苦手なのに周りの何人かが絶賛していたので読みました。 グロテスクな描写が多くちょっとしんどかったけど 映画のような本でした。 話の筋は面白かった。ありえないけどありえるような。 でもこれが映画だったら・・・グロすぎて見れないと思います。苦手。 死が人間にもたらす感情って計り知れないよなぁ・・・。
0投稿日: 2013.11.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ばりばり人を殺しているくせに、ナイーブな将校が主人公。近未来の暗殺部隊は作戦前に人為的に心にブロックを作るので、壊れない代わりに成長しない。でもじわじわと蝕んでいるよね。 虐殺をまき散らす敵を追い詰め、殲滅する話。最後の落ちはいらない。自分自身が、今度は途上国でなくアメリカ国内で虐殺の文法を用いようとしている
0投稿日: 2013.10.31
powered by ブクログ全体としては、そこまで面白いものではなかった。 ただ、夭折した著者の人生観が反映された光るフレーズ、箇所はいくつかみられた。 「あなたは、自由を守るためにこの店をやっているのですか」 ルーシャスの切れ長の目が、答えを探るように内に向けられ、 「そんな大げさなものではありませんよ。ただ、最初からぎちぎちに縛り付けてしまっては、自由とはそうした様々な自由の取引なのだ、ということをあの若者たちに実感してもらうのは難しい」 ルーシャスはフロアで踊る若者たちを顎で指し示し、 「若者は絶対的で純粋な自由というものがあると思い込んでいることが多い。若者はそうした偽りの自由を通過し、謳歌する必要があるんです。大人になって様々な決断を迫られる状況になったとき、みずから選ぶ自由がより高度な自由だと、リアルに感じてもらうためにはね」
0投稿日: 2013.10.28
powered by ブクログ初読 未成熟な戦闘兵器の葛藤を翻訳小説のような文体で淡々と紡がれる物語。漆黒の表紙から放たれる独特な雰囲気と強烈なタイトル。 人は何故生きるのか。どこまでが生きていると言えるのか。作品世界に吸い込まれ、膨大な知識に溺れる良作。チェコの描写も秀逸。
0投稿日: 2013.10.25
powered by ブクログなかなかエグい描写が多いのに不思議と重いと思うことなく読める語り口。 淡々と語られているので物凄く盛り上がりのあるシーンみたいなのはなかったが、この淡々というのも脳を科学的に処理されているからと思うと辻褄が合う。 技術うんぬんというより、人間の内面へのアプローチのSF。 地獄はここにあるんですよ
0投稿日: 2013.10.24
powered by ブクログ00年代最高のSFという触れ込みで、評価も高い作品とは思えず。個人的な主義主張の詰まったゲームのシナリオを文書で読んでるような感じで、最後まで我慢して読んで終わった。ゲームなら耐えられるかもしれないけど、純粋な読み物でこれはきつい。。
0投稿日: 2013.10.20恐るべき結末への圧倒的な展開
舞台は世界各地でテロが勃発する近未来。9.11以降の世界情勢を背景に、高度に張り巡らされたID認証とロギング、ナノテクノロジー、ユビキタスコンピューティング、人工筋肉を駆使した様々な機器等、我々の暮らす現在から十分想定可能な地続きの世界を、テロ抑止のための暗殺を任務とする米軍特殊部隊員を通じて我々も追体験する。 虐殺や暗殺の現場におけるリアルな描写と、死んだ母親の想い出とともに現れる死者の世界の幻想、そして非戦闘時における会話や思索では哲学、社会学、芸術、そして意外なキーとなる言語学までが縦横に絡み合う。それらすべてがラストで恐るべき結末へと収斂する展開は圧倒的。戦慄すべし。
2投稿日: 2013.10.20
powered by ブクログ冒頭部があまりに衝撃的で、数年前に一度挫折した本。凄惨な戦地の描写は応えるが、それがこの作品の訴えるものをより強調している。くどいと感じられかねない文体であるのに、絶妙なバランスで、逆に魅力的にみせている。 チェコに対する興味がそそられた。知識の幅が広がる本。
0投稿日: 2013.10.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SFな要素が多くて面白かった。(MGSっぽいのとかあったり) 謎の男ジョン・ポールのやっていたこと、そして、その目的が興味深かった。 やっていた事自体は悪いことではあるけど、目的を考えると・・・。 口は災いの元なんて言うけど、言葉ってのは恐ろしいものだなーとか思いながら読んだ。 同じ作者のハーモニーもそのうち読みたい。
0投稿日: 2013.10.14近未来SFの素晴らしさを感じた一冊
メタルギアシリーズなどを手掛けている小島秀夫氏の影響も受けていることもあり、メタルギアの世界観に似ていることが印象的でした。 物語は、米軍の暗殺専門チームの隊長であるシェパード大尉が、自分の身に起きてきたことを独白していく形になっています。そのため各登場人物の描写は詳しくありません。近未来SFで軍事色が少し強い作品ですが、すべての場面が撃ち合いや暗殺といったわけではなく、主人公の心理に重点が置かれていると思います。アクションと思って読もうとすると少し肩透かしを食わされると思います。
2投稿日: 2013.10.12
powered by ブクログ伊藤計劃、著。軍事色の強い近未来SF。大量虐殺の裏で暗躍する男、ジョン・ポールを追う特殊部隊。徐々に明らかになる虐殺の文法の正体。 軍事的な用語に多少とまどったものの、文体は読みやすかった。肉でできた飛行機などの発想は面白く、生物学や文学などをたくみに引用している。重くて暗い雰囲気はうまく描けているし、グロテスクな夢のシーンは印象深い。 主人公が未成熟であることは、話にはまっているのでアリだと思う。母親の話や、主人公がルツィアに惹かれていく流れ、ちょくちょく飛び込んでくる思想的な文章、ラストの展開などを考えると、こういうナイーブなキャラクターでなければいけないという気さえする。 虐殺器官を具体的に示さないのは正解だと思う。示したら示したで、おそらく思想的な部分・幻想的な部分がかすんで、どこか味気ない小説になってしまう気がする。 読み終わって、若干、疑問・不満に思ったことが三点ある。 一つは、虐殺器官とフロイトのタナトスとの類似性。いろいろ調べて書いているのだから、少しくらい言及があってもいいと思った。それとも著者は気づいていてあえて書かなかったのか。 二つ目は、主人公がルツィアが惹かれる過程。確かに構成上は納得のいく展開なのだが、いかんせんルツィアが優等生すぎて魅力を感じなかった。主人公が彼女に惹かれていく過程も少しあっさりしすぎているというか、母親の話みたいにもっとグロテスクに日常に食い込んできたら説得力が出た気がする。 三つ目は、ジョン・ポールがあまりにも真相をペラペラとしゃべりすぎている点。敵にこんなに話していいのだろうかと思ってしまった。ただ、エピローグを読むと、彼が主人公にそういう力を託したとも考えられるので、一応納得はできる。
0投稿日: 2013.10.07発想に驚き
読み終えた後の感想は、おもしろいの一言。 普段、SF作品を読まない方にもおすすめします。 タイトルで、手に取るのをためらうのは、もったいない。
2投稿日: 2013.10.01現実が追いついてきている
ハリウッドで映画化されたらいいなと思う。できる限り、たくさん予算の使える監督のもとで。 アメリカ好みの作品じゃないだろうか。 SFが輝かしい未来を描かなくなり、絶望する世界を産み出し続けているのは世相を反映しているからだと思うが、この小説も絶望する世界を作り出した。それはお馴染みの機械と退治する未来ではなく、真実味を持って私たちの前にある。
2投稿日: 2013.09.29
powered by ブクログしばらく現代小説から遠ざかっていた私を引き戻してくれた大事な本。色々な方面へのアンテナがバババと広がっていくのを感じた!
0投稿日: 2013.09.28
powered by ブクログカタカナの名前の人が主に出る小説を読んだことがなかったので最初は慣れず、読みづらかったが、文体が自分にあっていたのでサクサク読めた。 描写が綺麗でイメージもしやすかった。 ラストが衝撃的だけど、虐殺の器官の種明かしがあった時点でそうなる気もした。 恐ろしい未来。こんな世界には生きたくない。 「この殺意は、自分自身の殺意だろうか。」 「社会の絶望から発したものを、システムで減らすことは無理だし意味がないんだよ」 「わたしのしていることが正義だとは、絶対に言わない。わたしはただ、自分が守りたいものを守るために、やれることをしているだけだ」
0投稿日: 2013.09.27SFの名作
SFってもっと突拍子のないものだと思っていたけど、これはそう遠くない未来の、しかも起こりうる話で面白かった。全体としては軍関係の話だけど、主人公の内面の心理描写や作者の思想的な要素などのバランスが良くてさらっと読めた。もうひと作品も読んでご冥福を祈ろう。
2投稿日: 2013.09.26
powered by ブクログ9.11後の世界が舞台。アメリカ軍大尉である主人公のクラヴィス・シェパードは、世界各地で沸き起こる虐殺の背後に必ず現れるジョン・ポールなる謎の人物を追う。ジョン・ポールは、どのようにして、なんの理由があって世界中に虐殺の種を播いてまわっているのかー グロテスクな戦場の表現と、近未来の装備の描写やややこしい組織の名称などがあって、最初は手間取りますが、最後は一気に駆け抜けるように読み終えてしまいました。 主人公の淡々とした語り口と、繊細にすぎる内面とが、ハードな環境と対照的ですが、私は感情移入し易いように感じました。生と死の境界線はどこか、どこまでが自分の意思と言えるのか、人の死に対してどこまで責任を負うべきなのか、など、色々なことを考えさせられる作品です。 死んだ人に対して償うことはできない。 死んだ人から赦されることはできない。 死んだ人は罪を償うことはできない。 2013.09.24
0投稿日: 2013.09.26
powered by ブクログ母を殺した。母に赦しを請う。母は僕を見ていなかった。それが君の責任の負い方なんだね。 そうした主人公の叙情だけじゃなくて、あらゆるところに織り込まれた言葉とか意識とか空気とか、贅沢で繊細な作品。
1投稿日: 2013.09.25伊藤計劃、初の書き下ろし長編。
「 SFが読みたい2008年度」の第一位ということで手に取ってみた。作品そのものは、以前から知ってはいたのですが、なかなか初物というのは踏ん切りがつかないもので、、結局、この雑誌に後押しされて読んだ。 面白い。9.11以降、世界で繰り返されるテロとそれを背景にした大国の正義とは?個人認証によってセキュリティを担保したと考えている世界とは?と現代社会が抱えている問題を取り上げており非常に考えさせられる事が多い小説。表題に関しては、言語・言葉を人間が獲得した「器官」として捉えるというテーマを中心に話は展開するのですが、この手の先駆者である神林長平の「言語兵器」という扱いとは別物でこの点もなかなか良かった。 また初長編とは思えないほど小説の完成度は高い。初っ端なからクールで乾いた文体で語られる虐殺された人々の死体のディテール。その後も主人公の一人称で淡々と凄惨な戦場シーンが語られるのですが、この熱からず寒からずの文体が主人公の性格とマッチしており、謎めいたストーリーと相俟って先へ先へと読んでしまう。不思議な魅力ある文体だった。 とりあえず、SF好きにはオススメ。ミリタリーSFですが、あまりアクションを期待すると駄目。(派手じゃないので)
10投稿日: 2013.09.24
powered by ブクログ職場の方が貸してくださいました。 普段はまったくSF小説は読みません。 作者の方は30代でお亡くなりになっているんですね。 短い時間でこの小説を書き上げたそうでビックリです! 女性よりも男性の方が読みやすい気がします。 近未来的なシステム説明の部分と思想的な話の部分はなかなか難しかったです。 説明部分は映画とかの映像なら抵抗はないと思いますが、想像だと作者の方が思い描いていたものと全く違うモノになっている可能性もあるかなと(笑)特に、機械とか?? でも、ラストも嫌いではありません。 これで良かったと思います。 虐殺言語にはかなり興味があります!!
0投稿日: 2013.09.20
powered by ブクログなかなかの衝撃作。翻訳本かと思うぐらい表現がアメリカンだが、村上春樹ほどの回りくどさはない。 人間の言葉およびある文法が虐殺を引き起こす、それが本当かどうかはわからないがリアリティがある。最後はなんだかみんな死んでしまうのがあっさりな感じ。
0投稿日: 2013.09.16
powered by ブクログほとんど読まないSFものに挑戦してみました。 残虐なシーンやグロテスクな描写も多いですが、 数多くの独特のアイデアや深い心理描写が散りばめられているところに感嘆しました。 ラストはとてもショッキングなもので読んだ直後は受け入れがたかったですが、最後まで混沌として歪な世界が描かれており、圧巻といった感じです。
0投稿日: 2013.09.16
powered by ブクログハヤカワ文庫からも分かるように、SFの作品です。 前から持っていたのですが、なかなか読む気にならずに 嫌悪していたのですが、ふと手に取ったら、最後まで一気に駆け抜けました。 「言葉で人を殺戮する」というと、いかにも西尾維新っぽいんですが、ライトっぽさは全くなく、直球で戦争において人を殺害することにおける人間の残虐性を考えさせられます。 他のレビュアーも書いてますが、最後は唖然とします。それまでの道のりが長いので気疲れはしますが、、おすすめです。
0投稿日: 2013.09.14
powered by ブクログ通勤電車でアニソン聴きながら読んでてよかった。 殺伐とした世界から戻って来れなくなるところだった……
0投稿日: 2013.09.11
powered by ブクログ期待して読み始めたのだが、口調が奇妙なほど淡白なのが気になってなかなか入り込めなかった。いや、ある種の洗脳のせいだろうなというのは読み取ってたけれども。が、最後の一文で一気にやられた。それはもうガツンと。まさにあの世界ならではの空虚感。ジョン、絶対主人公に暗示かけてる。会話してる段階で少なくとも種を埋め込むくらいのことはしてる。メモのリンク先はそれの起爆スイッチ。生きてアメリカに行ければ自分でやってたんだろうけど、保険として主人公にも埋めておいたというところか。一SF読みとして、作者の早世を悼みます。 ↑この世界設定なら「虐殺器官」へのカウンターパワーというのもありえるのかな、とも。「友愛器官」とか。学者上がりのジョンが虐殺者であり続けるには、軍人を含む人心掌握や洗脳技術は必須なはず。そう考えると、最後の選択すら主人公自身の意思ではないのかも。
0投稿日: 2013.09.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2016年7月13日再読:「地獄の黙示録」のような「身内から出た怪物を追跡する」というプロットのレイヤーがあり、その上に虐殺、計数、監視、歴史、言語、進化といった哲学的問題を扱うレイヤーがある。 --- 村上龍『愛と幻想のファシズム』に似ている。 45 ドミノ・ピザとショッピング・モールの不変性 71 理由を告げずに逝くことは、遺された者を呪縛する。 121 エスキモーと、雪を表す言葉→言語は器官 180 自由は通貨、アメリカの戦争は啓蒙 206 アレックスは宗教に真剣に向き合ったから自殺した。 216 虐殺の文法 218 ピジン語、クレオール(混成語) 221 社会網有向グラフ解析 SNDGA、ケビンベーコンゲーム 230 バイオメトリクス、ID認証、セキュリティはテロをなくさない、みんながそう信じたがっているだけ、時空(spime) 335 死者はぼくらを支配する。その経験不可能性によって。 365 虐殺の文法は、食料不足に対する適応 372 テロを防ぐには、後進国に内戦させればいい 376 セキュリティは無意味かもしれないが、すでに産業だ [1296夜『理解の秘密』リチャード・ワーマン|松岡正剛の千夜千冊](http://1000ya.isis.ne.jp/1296.html): > しかし、このインストラクションの“種”は、たいていの場合、戦争の予感や政治不信に出入りしていたり、書物の中にあったりテレビの中にあったり、ファッションや株価になったりしているので、また廃れた商店街や低迷する業界にあったりするので、そこにインストラクションがひそんでいるとはなかなか思えない。だから(C)〔※引用注:未来のコンテンツ〕のインストラクションを組み立てるのはきわめて高度にもなる。けれどもそこを組み立てるのが、最もラディカルで、最も未来的なインストラクション編集なのである。こうして、すべてのインストラクションの矢は世界の知恵と戦略に向かって放たれる。
0投稿日: 2013.08.31
powered by ブクログ最後に「うわぁー!」となってゾッとしました。 たどりつくまで、飽きてしまったりしますが頑張って読んでください。
0投稿日: 2013.08.29
powered by ブクログSFという心構えで読みましたが、未来を舞台にしているものの世界情勢等は現在と地続きで、ストーリーの芯はミステリのようで、そしてなんともロマンティック(?)なストーリーだなぁという感想。 本文の恐らく大半を割いているであろう「虐殺の文法」というアイデアも面白すぎる。中盤は、それについての論文を読んでいるような気分にもなりました(主人公は、その内容が理解できるような順番で人々の話を聞いていく。京極夏彦みたい)が。難解な筈なのに、実に読みやすいのも良い。 あとケビン・ベーコン・ゲーム。
0投稿日: 2013.08.24
powered by ブクログオチとMGSっぽさは好物だが文章がちょっと回りくどいと感じてしまった。 グロ描写をそこまで露骨に描くとは!レベル。 上官は何故主人公の行動を阻止しなかったのか小一時間問い詰めたい。
0投稿日: 2013.08.19
powered by ブクログバイオメトリクスや生命ID。インフォセツク(情報セキュリティ社会)時代の内戦においては倫理道徳は致命傷になりうる。ところが人間のなかにある良心は殺したり犯したり盗んだり裏切ったりする本能と争いながらも、二十世紀よりもより他愛的に、利他的になるように進化を遂げる。この世界におけるメタ情報たちが繰り広げる、繊細かつ不動のサイエンスフィクション。
0投稿日: 2013.08.19
powered by ブクログアメリカ情報軍の大尉が虐殺言語を使って世界に虐殺を発生させる男を追う話。 落下ポッドの肉や、そのほかの近未来小道具がとてもよく考えられているし、現代の問題を未来に仮託しているのも考えさせられた。 本当に細部まで積み上げて、病を抱えながら10日で書いたとは思えない。 実際のところ、小松左京の選評は納得できない。虐殺言語を具体的に書かないのは、正解だと思う。はっきりさせないことによって、読者全員に正解を呈示しているのだと思う。 他の作品も読んでみたい。
1投稿日: 2013.08.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ちょっと期待しすぎた感。 いまの延長線上にある「ありそうな未来」のリアリティが強烈。作中に登場する技術も政治地図も、あまりにもリアル。 主人公にまるで感情移入できなくてつらかった。というか主人公のムラカミハルキ臭にげんなりしました。解説を読むと意図的なもののようだったので、イラッとしたのも含めて作者の術中にはまった模様。ただあまりにも主人公が気に食わなかったのでモンティ・パイソンネタがなかったら最後まで読めなかった気がした。 でもって、やっぱり作中最大の謎「虐殺の文法」の説明はもうちょっとしてくれませんと。 オチは好きです。このオチ以外にありえないオチでもあるけれど。 自分はやっぱりキャラクターやストーリーが読みたい人なのだなあ。
0投稿日: 2013.08.16
powered by ブクログ9.11後の世界を描いたSF小説。「生死とは」「言葉とは」「平和とは」等、重厚なテーマを扱っているが、着眼点が非常にユニークで素晴らしいと感じた。グロテスクな表現と哲学・文学が不思議な絡み方を見せている点でも、独特の読み心地を受けた。
0投稿日: 2013.08.15
powered by ブクログ普段SFは読まない。この小説がそれに該当するもの、ということも知らずに読み始めた。 驚いた。こんな小説があったのか。作者は既に、若くして病没されている。惜しい。
0投稿日: 2013.08.06
powered by ブクログハリウッド映画に出てきそうな近未来の描写から始まるが内容はかなり衝撃的。言葉…器官…考えさせられる内容です。
0投稿日: 2013.08.05
powered by ブクログ冒頭から強烈な描写。 私はこういうのが好きで、近しい人に貸したところ「気持ち悪くて読めない」と返されてしまいました。 SF小説をあまり読んだことがないので、脳内で映像化するのに苦労しました。
0投稿日: 2013.07.30
powered by ブクログSF小説はほぼ初めて読んだ。 徹底したトレーサビリティや個人認証の技術。 機械が生物に近づき、人間は一部の感覚を機械のように制御され使役される。 この小説には、そんな現代社会が向かおうとしている先にある世界が広がっている。 現在の視点から見ればそれは嫌悪に値するかも知れないが、小さな選択を繰り返しそこに至った時を思うと、このリアリティは真に迫るものがある。 様々な身体の器官はナノマシンで代用されるが、この『虐殺器官』は替えのきかない人間らしさかもしれない
0投稿日: 2013.07.24
powered by ブクログ絶望で殺しているんじゃない。 愛する人々を守るためだ。 憎しみの矛先が、いまにもG9に向かいそうな兆候のある国を見つけ出す。 自分たちの貧しさが、自分たちの悲惨さが、ぼくらの自由によってもたらされていることに気がつきそうな国を見つけ出す。 そして、そこに虐殺の文法を播く。 知性が、ないんだよね。 あの人の大嫌いな言葉。 でもたぶん一番胸に残っている言葉。 誰かに向けたその言葉を聞くたびに、私は何故か私に向けられた言葉のように感じ、胸が痛かった。 世界の仕組みを知るだなんてだいそれたことはまだ言えない。 でもせめて知識くらいはつけて、知性の土台にするんだ。
0投稿日: 2013.07.20
powered by ブクログ読んでる間は、ハリウッドっぽいなー海外ドラマでありそうだなーと読んでいた。 ただちょっと違うなと思ったのはモブがガンガン死んで行く海外モノと違って、主人公がちょっとそれを皮肉ったり気に病んでいたりするところ。 客観性を保って、淡々としているからあんまり嫌みも無い。 母親の死に囚われているところなんか、ありがちだなーとか思っていたんだけど。 湿っぽさみたいなものが、作品全体にある。陰鬱というには爽やかかな。そう思うのは伊藤計劃の文体の力なのかもしれない。 SFらしい設定もするっと入って行くし、「将来こんな風になるのかな」って読みながら思った。 一人称なんだけど、ノンフィクション・ドキュメント的な匂いも感じ取った。昔読んだ『戦争広告代理店』に何となく似ている。まぁ、題材が似ているだけなんだろうけど。 主人公には力があって、けれどとてつもなく無力だ。 結局、仕事を遂行することもできず、自分を許してくれる存在も、その望みも失い、何も成し遂げることができない。 それなのに、最後の最後で成し遂げたあることがすごく衝撃だった。 悲壮感がない、とても日常のようなそれに鳥肌が立った。 ただ、そのラストに繋がるまでがちょっと中だるみするかなーと思った。英語をつかった文法のくだりとか、早めに匂わせてくれてたらもっとラストでアアーーー!ってなったのになぁと。 ジョン・ポールのつかった虐殺器官の文法は誰にまで作用したのかな。 とても面白かったです。
0投稿日: 2013.07.19
powered by ブクログ21世紀になり、アメリカ社会は、隅々まで情報化・管理化が浸透した。あらゆる社会的活動は、トレースされ、記録され、管理される。人々は、平和を享受することと引き換えに、あらゆる行動を監視されることを甘んじて受け入れた。 そして、そんなアメリカの外側では、戦争やテロが頻発し、もはや文明社会ともいえぬ状況に没する国が相次いでいた。ことに酷いのは、後進国家における内戦と虐殺の連鎖であった。 戦争の流入を恐れるアメリカは、全世紀の冷戦時代さながらに、内政干渉を繰り返していた。主人公の米軍大尉クラヴィス・シェパードは、政治的に混乱したある国に派遣される。そこで、謎の男、ジョン・ポールと出会うことになる。 同じ伊藤計劃の「ハーモニー」と比べても、さらにスケールの大きな1冊。これが処女作というのだから、恐れ入るし、早逝がさらに惜しまれる。
0投稿日: 2013.07.12
powered by ブクログ面白かった!サイバーな近未来の背景描写が骨太(虐殺周辺はちょっと薄かったけど)、オートマトンになれなかった主人公は有能で、何故そうなるのかを地の文で説明してくれるから安心してストーリーにのめり込めた。ちょこっと意識が日本人チックかもしれない。幕間のモノローグはアメリカっぽくて良かった。エンディングだけ、私は同じ勧善懲悪でも明るいのが好きなので、もやっとした。
0投稿日: 2013.06.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
話題に上がっているマンナンバー制度。 それが実施されてしばらくしたらこんな感じの世界になるんではないのかと思いながら読んでました。 何をするにも自分の中に埋め込まれた個人情報を提示しないといけない世界。その制度を求めた人々はテロを含めた犯罪の抑止力になりうると期待して。 世界観は同作者様作品のハーモニーに至るまでの世界を描いてるようでした。やはり美しく作り込まれた世界観で、いつかこんな世界になるのではないかという現実感もありました。 人の良心は進化の過程で得た産物であって、胃や腸といった他の器官と違って人間だけが特別に得たものではない、などそういった哲学的な話、会話が多く若干読みづらさがありましたが、逆にそれが読み応えともなっていました。 事件の首謀者の犯行動機、主人公の罪への葛藤、最後に選んだ結末。どれも考えさせられるものでありました。 哲学的な難しい話に少し抵抗感を覚えましたので星は4つと評価させていただきました。
0投稿日: 2013.06.29
powered by ブクログあぁ、凄かった。 また、新たに面白い作家を発見した! と思ったら、作家としては3年間のみの活動。 既にガンで亡くなっている。残念だけど、残された作品をじっくり読んで行こう。
0投稿日: 2013.06.29
powered by ブクログ以前から読んでみたい本でしたがSFは読み慣れていないので読むのにも時間かかるかなと思ってましたが、とても読みやすかったです。 それは著者の圧倒的な想像力によるディテールの表現に起因するのではないかと思います。 確かに虐殺の文法に関する説明が不十分なのは否めませんが、それでも物語はしっかり作りこまれていると思います。 SFを普段読まない方にもオススメしたい作品です。
0投稿日: 2013.06.24
powered by ブクログ生涯、手放さないであろう本のひとつ。 開始1ページ目からぐいぐい引き込まれる。 吸引力の変わらないただひとつの(ry
0投稿日: 2013.06.17
powered by ブクログ真っ黒な表紙に『虐殺器官』のタイトル。書店で、ずっと気になっていました。 SFはほとんど、読んでこなかった自分。第一部を読むのにたいへん苦労しました。しかし、第二部からは加速度つけて面白くなり、第三部からラストまでは一気に読みました。 2013年、初読みモノ、上半期のベスト! SFであり、ミステリーであり、コレを十日で書ける新人作家…。スゴい! 若くして亡くなったコトが本当に悔やまれる。 2013.10.1再読了 再読でも、良かった。特に、第四部から、エピローグまでは大好き。 前回、読み落としていた(あまり印象に残っていなかった)部分も随分と補完された。
0投稿日: 2013.06.17
powered by ブクログ近年最高のSF作、の前評判につられて読みました。 テロを起こす理由が面白かったものの、他の点が冗長でいまいち入り込めなかった。私が横文字が苦手だからかも。
0投稿日: 2013.06.16
powered by ブクログ傑作。この作品以上の小説は、今まで読んだことがない。タイトルで若干ためらう人もいるかもしれないけれど、戦争映画を片目瞑って観れる人なら大丈夫。読んで損はしない。 作者は伊藤計劃。二年ほどの作家活動ののち急逝されたが、死後の2011年に「ハーモニー」でアメリカのフィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞している(日本人初)。 本作品の主人公は、アメリカ情報軍の特殊部隊に所属するクラヴィス・シェパード大尉。テロとの戦いの結果、世界は情報で管理された先進国と、内戦や虐殺にあふれる後進国に二分されていた。その紛争地帯に赴き、情報とテクノロジーを駆使して要人暗殺を行うのが、大尉の仕事だった。やがてその情報網にかからない謎の人物が現れる。不思議なことに、その人物の行く先では必ず虐殺が起きるのだった。 まずこの作品の魅力の1つは、語られる内容の濃さにある。言語学、生物学、ミリタリー、映画、哲学、文学、政治。これでもかとばかりに作者の知識の引き出しが展開されていく。普通の小説を10とすれば(何を普通とするのかは濁しておくけれど)、本作品は20の知識量が詰まっている。しかもそれらはただの羅列ではない。有機的に作用し、精緻に描かれた絵画の背景のように作品を彩っている。こんなのは見たことがない。 これがあるからこそ、随所に配された人間性への考察、社会批判の面白味も増してくる。自由とは何か、みたいな青臭い疑問も厚みがあるし、情報社会や戦争のリアルな将来像は現代社会の問題を浮き彫りにしていく。 そういった作者の思想の基盤には、物事をシステムとして捉える視点があるように、漠然と感じた。血の通ったものを機械のように扱ってみたり、あるいは風桶みたいに理屈は通るけどありえないと思うような事実があったり(文庫40ページのくだりとか)。あるいはシステムに対する個人の無力さとか。上手く言えないけれど、社会というシステムが時に変な出力を生むということを丁寧に描いている印象がある。そんなことが気になるのは、生命科学にもそういう複雑系の側面があるからかもしれない。 それから登場人物にも人間らしさがあるように感じた。「軽々しい会話」と「希薄な会話」というのは紙一重だと個人的に思うのだけれど、本作品は完成された前者で、アメリカ映画ばりのジョークを炸裂させる。それに主要な人物はそれぞれが過去を抱え、自分の主義と主張を持ち、あるいは考え、悩む姿が語られる。もし映画化したらザ・アメリカ映画になってしまいそうだけれど、この作品には小説の特性としての映像化しにくい部分にこそ魅力が詰まっているように思う。 とか何とか言っているけれど、まだ自分はこの作品を消化しきれていない。できれば、もう一度読み返したいくらい。でも残念ながら伊藤計劃熱が発症してしまった以上、「ハーモニー」と「The Indifference Engine」くらいは早めに読破したい所。でもその前にTOEIC対策をせにゃならんワケで。。。
1投稿日: 2013.06.13
powered by ブクログ[図書館] 読了:2013/6/12 だめだった、、最初の7ページぐらいでもう読めなかった。 ふわふわ浮いたような文章、ぼくぼくぼくぼくうるせー自意識の強い一人称の語り。 WIREDのSF特集で興味を持ったが、無理だった。もともとSFが好きじゃないってのもある。
0投稿日: 2013.06.12
powered by ブクログ再読だが中身をすっかり忘れており結末まで楽しめた。きれいにまとまったなあ。前半は海外SF風の情報量の多さ、回りくどさにやられていたが。 特殊検索群i分遣隊、クラヴィス・シェパード大尉、ジョン・ポールを待ちながら、ルツィア・シュクロウプ
0投稿日: 2013.06.12
powered by ブクログ圧倒的な世界観と仔細な設定で、まるで出来過ぎた洋画の中へ入り込んだような作品だった。 一人称で進む物語が、読み手を主観的に引き込む。ときに無機物を主語にとり描かれる表現は、必要以上の残酷さを感じさせた。 これだけの大傑作をあっと間に書き上げた伊藤計劃。私もまだ作者が存命なら、と悔やむ一人だ。
0投稿日: 2013.05.29
powered by ブクログ悪い京極をしばく地獄の黙示録というストーリー。 2日程度で読み終えたので、大変ストレスのない読みやすい作品でした。 他の方からも指摘されていますが、虐殺の文脈に関する解説が さらっと眩学的にしか描写されてない所が一番引っかかった。 勿論ありもしない魔法の種明かしをするというのは作劇として、とてもハードルが高い行為であるので、あえて曖昧にしたのは正しい選択ではあるのですが… しかしこれだけのSF作品が国内から出て来たという事実は 喜ぶべきものであると思います。
0投稿日: 2013.05.23
powered by ブクログ「『神を信じていなくたって、地獄はありますよ』アレックスはそう言って、悲しそうに微笑んだ。『そうだな、ここはすでに地獄だ』ウィリアムズが笑う。ここが地獄だとしたら、ぼくたちの仕事は地獄めぐりということになる。ダンテもびっくりだ。しかし、アレックスはそうじゃないと言って自分の頭を指さした。『地獄はここにあります。頭のなか、脳みそのなかに。大脳皮質の襞のパターンに』」 ー 52ページ ポータブル天国とポータブル地獄が頭の中に内蔵されているのが人間、というのもなかなか素敵な表現だなと思う。願わくばゲームのように、自分の好きなときに好きな時間、それらをプレイすることができればと思うのだけれども。
0投稿日: 2013.05.22
powered by ブクログ「ベストSF2007」国内篇第一位、「ゼロ年代SFベスト」国内篇第一位。故伊藤計劃さんのデビュー作。著者のみなぎる才能を堪能できる。世界観、登場する小道具の懲り様はグローバルレベル。おすすめ。日本にこんなSF作家がいたことを誇れる。
0投稿日: 2013.05.19
powered by ブクログ途中まで、というか最後に付け加えが無かったら ★★★★★にしようと思って読んでました。 発想がすごいな~と。。。
0投稿日: 2013.05.19
