
総合評価
(1123件)| 425 | ||
| 385 | ||
| 162 | ||
| 32 | ||
| 9 |
powered by ブクログ前評判を聞いてなかったら途中で読むのをやめていたかもしれない。 自分のことを「僕は」という殺し屋と、能書きばかりで前半は退屈でしかたなかった。 後半は急速に動きが出てきて、ふむふむというところに物語は着地する。 前評判を聞いていなかったらもっと満足感は高かったかも。 あと攻殻機動隊を見る前だったら。
2投稿日: 2016.01.29
powered by ブクログ特殊部隊のアメリカ人男性が主人公の近未来小説。 虐殺を行う為政者達を暗殺する任務を受けるが、死の目前に何故虐殺へ突き進んだか自分でも分からず呆然とする姿を見て違和感を覚える。 果たして人間の中には無意識に虐殺へと突き進む因子が存在するのであろうか。 かなりの話題作だったので名前だけは見ていましたが、とうとう読む事にしました。結構SF苦手なので躊躇していましたが予想通りかなり手ごわい本でした。 流麗且つ知性のほとばしりを感じる文章でしたが、案外外骨格の出来にこだわって中身の部分が曖昧なイメージを受けました。最初の加速感からワクワクしましたが中盤過ぎた辺りで意外と話が進んで行かないので心配になりました。結果上手い具合に話を終わらせていますが消化不良感は否めなかったです。もう何作か読んでみたかったです。もっと化けた可能性がありそうなのに残念です。
1投稿日: 2016.01.22
powered by ブクログ圧巻。読むのに体力いるが、結末まで一切間延びなし。 9.11位後の世界のIfを描いた物語。痛覚と良心のモジュールをマスキングされた主人公の一人称で描かれる戦場の描写が怖すぎて忘れられえない。
1投稿日: 2016.01.18
powered by ブクログ冒頭、グロテスクな描写なので読むのをやめようかとも思ったけれど、読むにつれ物語の広がり、深まりが静かな語り口の下で激しく進んでいく。 今まで、これほどのSF・ミステリー・アクションすべての要素が詰め込まれた小説があったか? 文中の言葉を借りるなら、思索的でもある。 自身の置かれた状況を映画「地獄の黙示録」のカーツ大佐とウィラード大尉にたとえているが、それを遙かに上回るテーマ性と意外性がある。 10年、生年が遅い作者と、同じような文化的体験をしていると感じられる描写が随所にみられ、それもポイント。 残念なことに作者はすでに亡くなっている。 残念。 本当に面白かった。 前にも「ジウ」のレビューでも書いたことがあるけれど、静かな本屋さんの中にある本の、ページを開いた瞬間からこんな胸躍る物語が飛び出してくるって、本当に面白い。 やめれんな・・・。
2投稿日: 2016.01.16言葉はツールじゃない、進化の過程で手に入れた器官だ
著者である伊藤計劃氏のことは、全くもって知りませんでした。そして、既に他界されていることを知って本当に残念でなりません。 テロを防ぐために、生体認証であらゆる生活活動が管理された世界、そしてテロで当たり前に核爆弾が使われた世界。我々の今の世界が、このまま突き進めば、この世界は本当の世界になるのではないか? そんな恐怖をうまく演出してくれています。これは、2015年のパリのテロがあった後に本を読んだからより一層そう感じたのは否めません。作者が作品を手がけた時代背景も大切ですが、読者が本を読む時代背景によっても作品の評価が変わる。文章にしてしまえば、当たり前のことですが、それが手に取るように実感してしまいました。 主人公はアメリカの情報将校で主な仕事は暗殺。ストーリーはある小国の広報担当を受け持っている民間人の暗殺を行うところから始まります。ここではこの世界の技術水準の高さを説明しているのですが、形だけのセキュリティの弊害を笑い飛ばしているようにも感じられました。 結果的にターゲットはこの国から脱出しており、主人公の作戦は失敗してしまいます。そして、このターゲットを追いかけることから本当の物語が始まります。 ターゲットが暗殺される理由。それは、ターゲットが侵入した国は、必ず自国民を虐殺し始める。 それゆえに、世界の警察たるアメリカは、ターゲットを暗殺する。 実際はそんな簡単な話ではありませんが、本を読む楽しみを奪うことになりますのであらすじの紹介はここで終わります。 私がこの作品で気になった部分、「言葉はツールでなく、器官そのものである」。これは、学術的根拠は一切ありませんが、この考え方に衝撃をうけました。 言葉が器官だなんて、ネタバレもいいとこ? と、ならないようには配慮していますから、安心して読み進めてください。 遺伝子によって、ある細胞が脳や腸や心臓が生成するように、言葉も遺伝子によって作られる。 また、人間の思考は言葉によって遮られない。認識をする上で言葉を利用しているだけであり、思考そのものは言葉などの制約に邪魔されない。 作中では上のようなやり取りがされて、そんな馬鹿な−! と、思いながらも、アインシュタイン等の天才達は「イメージで思考をしていた」数式や言葉は思考した結果をまとめるのに使っただけに過ぎない。と言われ、思わず納得。 結局は「卵が先か、鶏が先か」として扱われ結論は出してませんが、現実の世界でも脳の機能は謎だらけ。いまだに「幽体離脱が現実として確認されてるから科学として扱うべき」「脳を介さない精神活動なんてナンセンス、それは非科学」が争っている中、真面目に言葉は遺伝子から生まれたと話をしても良いのかもしれません。(ブレーンストーミング的な感覚で) 最後に、ターゲットが侵入した国を虐殺させる理由が明かされます。 それは、反戦作品の永遠のテーマに直結していると思えてなりません。 ターゲットが行った行為はとうてい許されるべきものではないのですが、心情的には同情してしまいます。 余談 昨今、人口知能やロボットに関する書籍が増えてます。これらの本は、昔と違って人間のサポートではなく、人間に置き換えることができるがメインとなってきてますね。「虐殺器官」では人工知能の研究が進めば進むほど、置き換えは不可能であるため「人間は高価」なものと位置づけされています。 将来どうのように未来が進んでいくのか、見物です。
1投稿日: 2016.01.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「虐殺」と「器官」という普通であれば結びつかない言葉の造語であること、「器官」という生々しいイメージとSFという無味乾燥したイメージの組み合わせが面白く興味を持ちました。 略語が多く、どれも実用されているのであればよく調べたなあ、実用されていないのであればよく考えたなあと思いました(笑) 科学技術の進んだ世界が舞台で主人公はアメリカ軍の兵士。紛争地域に赴き、人を殺す。 難しい専門用語(みたいな言葉)やハイテクでかっこいい武器&システムが登場するので、中学生気分を拗らせた人であれば興味を持たないはずがない(もちろん私もです) 略語が多い上に、簡潔に言うと漢字が多いものでスムーズに読み進めるのは困難でした。あらすじに関係なく、興味を持てなかった部分は読み飛ばしてしまいました…。 その中でも面白いと感じた部分について書きます。 まず、いくら情報を管理してもそれを掻い潜る手段および人は必ず在るし、管理されることを不自由・されないことを自由と呼ぶのかはわかりませんが、そう感じる人もいるということ。これからの情報化社会を表しているようで興味深かったです。 それからマスキングの話。 生物には自衛本能のようなものがあって、おそらく誰しも(の脳)が無意識に「マスキング」を行っているのでしょうが、それを外部から、しかも特定の感情や感覚を操作できるというのは面白いです。 列車のシーンで相手も痛覚がないから死ぬまで攻撃を続けなければならない、というようなことに主人公が気付いてゾッとしていましたが、痛覚があれば痛いからこれ以上は無理~!とか体が千切れてるからもう動けな~い!みたいに脳が判断して体は動くのをやめるのでしょうか? 読んでいた時には確かにそれは怖い!と思ったはずなのですが、読み終わって冷静に考えると何が怖かったんだろう‥?と疑問です。 それからやはり「虐殺」「器官」です。 「器官」という言葉も相まって、脳が人々を虐殺に駆り立てる呪詛を生み出すのだと思いましたが、実際は「文法」によって脳が虐殺へと誘導されるということなのですね。 それって「虐殺器官」ではなく「虐殺文法」では?とちょっとガッカリしたのですが、呪詛を生み出すのは脳なので器官とも言えなくはない・・かなあ。 脳が勝手にもしくは何らかの影響によって呪詛を生み出しそれを口から吐く、受けた(聞いた)人が狂気に囚われるというのであれば、このくらいのボリュームが何かよくわからないけど恐ろしい!というミステリアスさがあってよかったかと思いますが、文法となるともっと語学的な切り口からの推理と解釈があった方がより「ありそう」で恐ろしさを感じたと思います。 解説に賞の選評が載っていますが、「ジョン・ポールの動機や主人公のラストの行動などにおいて説得力、テーマ性に欠けていた」とあります。 確かに浮気の最中に妻子が遠く離れた地で死んだから虐殺に走るというのは極端だと思いますが、具体的な理由―自身が生きる世界(国・社会)に争いを持ち込ませないために離れた場所で火種どうしをぶつける、というのは面白かったです。そういう着眼点・・方法もあるのだと思いました(賛同という意味ではありません) 実際、人の行動の基になるのは感情という一瞬間の非常に脆いものだと思っているので、物語としては面白味はありませんが、とんでもない行動の根源を辿ればそんなものなんだろうなあと思います。 (現実にもそんなことで人を殺したのか、という事件はたくさんありますし。) ジョン・ポールが自分を「守る」ために虐殺を起こしたのに対し、主人公が自分を「罰する」ためにジョン・ポールが作り上げた方法で虐殺を起こしたのも面白いと思います。 ジョン・ポールが虐殺を起こすきっかけを作ったのは妻子が死んだときに浮気をしていた自分のせい、とルツィアは言っていましたが、私はてっきりルツィアが黒幕でここから彼女の裏の顔が現れるのだ!と期待したので、その後の展開は期待外れでした。 文法に気付いたジョン・ポールをルツィアがそそのかして虐殺を引き起こしていた悪女だった、というのは面白いと思うのですが(間違いなく世界悪女辞典に載る)。 彼女にはそれができるだろうと思える賢さとジョン・ポールからの信頼があったように思うし、主人公もルツィアを殺してしまったという罪悪感から虐殺を引き起こすわけですから…やっぱりルツィアが黒幕だったのでは?(笑) 主人公は母の死を自分が決めたことに罪悪感を感じていましたが、たくさんの戦場に赴き多数の人を殺しておきながら、直接手にかけたわけでもない母親の死を引きずっているというのがずっと気になりました。 母の生死を決める前に生前の記録を見ればよかった、と最後の方で感じていましたが、見たところで母親の中に主人公はほぼ存在しないので、生死の選択は変わらなかったのでは?そうなると、あの選択は正しかったのだろうと自分を正当化するのではないかと思うのですが、そこからさらに気分が落ち込み虐殺へ向かうというのがよくわかりません。 ルツィアの死が大きいのだとは思いますが、それにしても自身一人で罰を負うのではなく、連帯責任のようにアメリカ全体を巻き込んで、しかも自分が殺したウィリアムズのことはもうすっかり忘れていて、今まで私が見てきたシェパードという人間はそんなに弱く自己中心的だったのか、と少しショックでした。 解説にて小説が生まれた経緯や作者の病状などが書かれていますが、物語を読んでいた最中に読んだときには特に何も感じなかったのに、読み終わってから再度読み返すと、どうしてか泣いてしまいました。 治らない病気に罹り、生きられる時間も長くないという中でこの話をどんな気分で書いていたのだろうと思います。 ノンフィクションでない限り、わたしは作者の私的な部分は物語にわざわざ加味しませんが、物語に漂う死の気配や恐怖、雰囲気は本物だろうと感じました。 死に向かう人間がわざわざ苦しみながら死についての物語を書いたという風にはまったく思いませんが、作者の精神状態が反映されている気がして、シェパードという人間が物語が進むにつれて弱くなっていくのはそういうことなのかもと思いました。
1投稿日: 2016.01.06
powered by ブクログ近未来の混沌を描いたSF大作。 主人公はアメリカ軍の特殊部隊員であるシェパード。 軍事物のアクションが迫力があり、しっかり書かれているだけでなく、ストーリーと何よりそこで語られる哲学的問と最後に現れる皮肉的なラスト。 意味深長で考えさせられることが多い良書でした。 人の言葉・良心の本質について問いかけられました。 ストーリーのあらましは近未来において、世界は安全で管理された先進国と残虐性が支配するカオスな後進国とに分かれていた。 そんな世界の中で急激に大量虐殺を伴う内戦が頻発し、主人公を含む特殊部隊が虐殺の黒幕暗殺に奔走するが、その陰には常にある男がいた。。 これだけの才能ある人物がすでに逝去されているのを悔やむばかりです。
4投稿日: 2016.01.03
powered by ブクログ戦争の第一線に立つ人物の一人称が、「ぼく」であること――ナイーブな一人称。ハードな現実の(と言っても、かなり有利な側に立っての戦闘)下を流れる魂についての思索が快い。
0投稿日: 2015.12.29
powered by ブクログ読み終えて、死を想うことは生を想うことである、という言葉を思い出しました。 虐殺の文法とは、虐殺器官とはなにか、このようなオチであるとは思わなかったので、ラストには驚きでした。小難しいことばや概念がたくさん使われていたので、さぞジョンの虐殺への動機は小難しいものかと思えば、なんとその一言で済ますことのできるものだったとは。 SFは読み慣れておらず、入り込めるか不安でしたが、あっという間にその世界観に魅了されました。映画化が楽しみです。
0投稿日: 2015.12.25
powered by ブクログ一連の映画化に備えて再読。 SF的に進歩した部分が生々しい肉感を持って描かれていて、 本当に現代から地続きになっている生活だと感じられる。 精神的葛藤を深く掘り下げていながら、 ストーリーの主軸がひとつの謎を追うものなので、 ミステリー・サスペンスのような類の緊張感がある。 一番好きな点は謎の一部なので書けないが……。
1投稿日: 2015.12.20
powered by ブクログ文体の作りが馴染めないまま後半に突入。内面的な情報がおおく、情景描写が少なく想像力を試される。 4章ぐらいから、動きのある展開。 人間は、やはり争いなしに生きられないものかと…殺しあうことで得る平和、それに手を染める人間とは…テーマが深くて、一回では、理解しがたい。
2投稿日: 2015.12.15我々の平和な世界を構築するための虐殺の器官
数年先の近未来の世界で。 「人は見たいものしかみない。悲惨に覆われているか、気にもしない。そして世界は2つに「憎しみ合う世界と、平和な世界に」」 虐殺する側とが虐殺される側しかない平和な世界。虐殺の器官と呼ばれる方程式の全貌が明らかになったとき 今世界で起こってる紛争はこの方程式を完成させるために行われてるような錯覚さえ起こす。
1投稿日: 2015.12.12
powered by ブクログことば、よりももっと抽象的なものに対して反応する脳の仕組みはある気がする。 その抽象性を表すのが、ことばの組み合わせ、いわゆる文法なのだろうけれど。
1投稿日: 2015.12.09
powered by ブクログ「屍者の帝国」を劇場版で観てその世界観に衝撃を受け(映像のクオリティも然り)、続いて「ハーモニー」もその期待を全く裏切らず(EDのEGOISTの曲がまたすごくイイ)、公開延期になった憤りを何とか沈めるべく購入したこの「虐殺器官」。円城塔のような難解系だと思って敬遠していた自分を罵りたくなるほど素晴らしい1冊。 攻殻機動隊の“あぁ最初っからそんなモンだから”的なことのない、ポッドの素材とか光学迷彩の概念とかその他諸々のハラ落ちする設定にいちいち納得してしまうのはSFビギナーだからでしょうか。作者の頭の中で作り上げられた世界、大好物です。文法の部分に具体的な何かが欲しかったけど、虐殺の描写もおぞましいタイトルとは裏腹にそこまでエグイものはなくするっと読めました。 そして著者、伊藤計劃。早過ぎる死が切ない一方、期限があるからこそ絞り出せた才能であることも確か。これ以上作品を読むことができない、という事実がさらにその価値を高めていくように思えます。
0投稿日: 2015.11.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
近未来(たぶん2020年代)、アメリカ軍 特殊暗殺部隊の主人公青年が、途上国で意図的に虐殺・内戦を引き起こす扇動者を暗殺する為に追う、SF&ミリタリー小説。 殺人の描写が過激なところと、SFや兵器に関する用語が最初とっつきにくいのが難点だけど、とても深いテーマで考えさせられる小説。 たぶん、SFには二種類あって、「非現実な世界観を堪能するエンターテインメント要素の強い小説」と、「未来に起こるかもしれない出来事を通し、現代社会の問題点を考えさせてくれる思考実験的な小説」があるのだと思うけど、この小説は圧倒的に後者。 科学技術・医学が発達しても、現代の価値観・社会ルールのままだと、人類は不幸になってしまうよ、という問題提起をしてくれている。 こういうのを「ディストピア小説」と言うのだろう。 僕が感じたこの小説のテーマは、「戦争・内戦・テロ・虐殺は、なぜ完全には無くならないのか?」という命題。 主人公は、虐殺扇動者と対峙していく中で、世界は全然平等では無くって、先進国の人達の幸福な生活は、途上国の人達の犠牲の上で成り立っているのだ、という「見て見ぬふり」をしてきたことに気付かされ、自身の仕事(暗殺部隊)の罪悪感にさいなまれて葛藤する。 読者である僕らも、良く考えたら現代社会でも先進国が途上国から搾取する構図は同じ状況なのではないか、という気になってきて、虐殺扇動者の言い分こそが「不都合な真実」なのではないかとも思えて来るようになる。 そんな風に、頭の中をグラグラさせられたい人にはおススメ。 フィクションだからと言ってバカにしていられない問題提起がある。 見ない方が、知らない方が、意識しない方が幸せなことなのかもしれないけれど。
8投稿日: 2015.11.21
powered by ブクログなかなか硬派?小難しい?くて感情移入しにくい…と思ってたらこのラストですよ。最後でやっと、主人公が人間に戻った気がした。
1投稿日: 2015.11.01
powered by ブクログ無責任であることの責任。 ラストは最高のエンターテイメント。 (メモも含め) 私は、ことばで世界は変わると思っていたのだけど、変わるのは私達はの認識で、私達の認識が世界を作っているので、まるで世界が変わったように勘違いするんだ。 思考が先か、ことばが先かで言ったら確実に思考が先なのだけど、出力にはことばを要するから、どうしても思考はことばに縛られて、出力されたことばは、純粋な思考ではなくなってしまう。 どこまでが「わたし」でどこまでが「わたし」でないのか、私には分からない。 選択自由は、この世で最も文明的で高価なもの。
1投稿日: 2015.10.25
powered by ブクログ良かった点: ・技術面での充実した調査。特に材料系の調査は充実していたのではないか。 ・ミリタリーものらしくない一人称語り。新鮮。 ・虐殺器官という設定。興味深い。 悪かった点: ・技術間の発展の格差。これだけ発達した材料系・生体系技術があるのに、自動翻訳やら生体探知器やらが存在しないのは考えにくく、近未来の発達に統一感がなく不自然。 ・知識の陳列:カフカやらオーウェルやら、なるほど単語は多いがどれもがあまり肉付けに寄与しておらず散発的。「神は死んだ」の引用のくだりはニーチェの言うところとまるでずれているが、意図したのか調査不足か? ・心情が読めない:主人公の内省と行動が結びついていないように感じる。悪役しかり。虐殺器官の掘り下げがもっと欲しい。 総評: 設定は面白いのに、物語に当てる焦点のピントがずれていると感じた。
2投稿日: 2015.10.22文字組が……
専用機で読むと、三点リーダが横向きになっている。 折角の傑作だけに、あまりに惜しい。
5投稿日: 2015.10.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった。劇場版のも是非観てみたいなー。 やや衒学的な表現が多いのだけれど、知っていればニヤニヤしてしまうような表現が多いと思った。オーウェルとかウィトゲンシュタインとか、こういう、ちょっとしたマニアックをくすぐるような表現が得意なのかなあ。 一番最後の解説にもあるように、虐殺の文法のディテールがあれば更に良くなっていたように思うけど、それは野暮ったい感想だと思うのでいいや。
1投稿日: 2015.10.11
powered by ブクログ自らの罪を背負えるか?と、この本は問うている。メインキャラのひとり、ジョンポールは、途上国同士を内戦に導くことで、テロの矛先を先進国から逸らそうとする。それが独善であることを認知したうえで、その罪を背負おって生きることを決意している。――われわれは行為と決断を重ねていくごとにまた、罪を重ねていく。その罪のリアリティをわれわれは引き受けきれるのか。
1投稿日: 2015.10.09
powered by ブクログ虐殺と暗殺が溢れている世界観は自分の生活とはまったく異なるものだけれど、同時に今の現実が分かりやすい形になっただけなんじゃないかってくらい馴染みました。 主人公の精神と職業はアンバランスだけれど、こう生きてきたからこの職業だし、この職業だからあんなことを考えることになる。 虐殺とドミノピザはアンバランスだけれど、ドミノピザのある国のひとだから虐殺の舞台に行く立場になるし、虐殺があるからドミノピザは守られている。 そういうアンバランスで相反するように見えるものたちが相互作用しあって、おたがいに必然性を与えあっている構造が、世界観や人物像や物語の展開に散りばめられていて、つくりがすごく上手いなって思う。そのクオリティの高さが、遠くの国の紛争を見なかったことにしてアンバランスさにベールをかけて整えたことにしてしまう思考にそっと触れてくるような感じ。 教訓や説教めいた押しつけがましい物語ではない。登場人物たちはときどき饒舌だけど、作者の考えた教訓を喋らされてるわけじゃない。彼らは彼らの人生を生きてるだけなのだから、それを見て「考えさせられた」というのは、他人の人生を自分の教科書にしてしまうみたいで安っぽいかなって思う。そっと触れてくるだけ。そう思えるくらい、自然体な感じがいいなって思います。
1投稿日: 2015.10.05
powered by ブクログこの物語は一人称で書かれていることに意味があると思わざるを得なかった 足取りのつかめないジョン・ポールが訪れる国は内戦が起き大虐殺が起こる そんな彼を捉えるよう命令された主人公 世界の構造を批判的に冷静に描いていて読み応えがあった 「自由」の国のラストが真に「自由状態」のなったその状況がホッブズの「自然状態」でその恐ろしさは言葉にできない
1投稿日: 2015.10.04
powered by ブクログ普段、まったく映画館なんて行かないこのオレが、これはちょっと見てみたいな……と思ったくらい(こなみかん) 映像化後のガッカリ感が溢れるこの世の中で、ジャンル的・ストーリー的に合いそうな気がしたので。
0投稿日: 2015.10.03
powered by ブクログ世界観の設定や展開、主人公の掘り下げ方にとても魅力を感じました。 主人公の仕事への姿勢とメンタルの不安定さがアンバランスで、だからこそ整備されているように見えて、一枚はがしてみれば混沌としているアンバランスな時代を生きている人間らしさが象徴されているようで素敵でした。 ラストの終わり方も、そこに至るまでの経緯や感動を描こうと最初から流れが構成されていて、読み終わった後にストンと納得できる読後感の良さがあったと思います。 様々な作品からのオマージュや映画タイトルの羅列、実際に存在するメーカー名の連呼が、最初はフィクションの世界を身近に感じて入り込みやすく感じましたが、後半は少しくどくなってしまいました。 作品の中に存在する、類似していてもオリジナルな映画タイトルを1本考えてみても良かったのではないかなと。 虐殺の文法についても、もう少し触れてみて欲しかった…難しいところではありますが、中身に触れなさすぎて、私にはあまり存在感を感じられなかったので…。
1投稿日: 2015.09.24
powered by ブクログ奇しくも9月11日に読み終えたのがこれ。ネット上で非常に評判の高いSFってことで読み始めたのだけど、しばらくはIDタグを埋められた人が出てくるくらいで、未来設定が出てこないため、ハードボイルドかミステリ小説かと思った。 また、作品の書き出しはブラッドベリやディックのように、ある意味詩的で思わせぶりだったり、死のイメージの回想だったりして、ウーンちょっとなあと思ったが、読み進めるうちにどんどん読みやすくなってくる。 さらに、舞台も大筋のストーリーも、ハリウッド映画のような迫力が有り、文体を含めてかなり翻訳物の「洋物」を意識しているが、途中で自分の体験からの「死」を語ったりするあたりは、日本人の作家らしく理解しやすい。 内容的には、直接手を下さないが世界中の虐殺に関与するテロリスト(というか、煽動者)の暗殺のために、ヨーロッパやアジア、アフリカを飛び回る特殊部隊の男の話で、かなり現実に沿っている様な内容のため、SF初心者にもとっつきやすい。 個人的には、第2部(プラハ)の時点でオチは読めてしまったものの、最後まで面白く読めた。ただ、これはSFか?どうだろう? 途中で文学ネタから生物、映画、ネットネタまで細かく広く散りばめられているあたりも、サブカル魂をくすぐられるため、ネットで人気がでるのもよくわかる気がする。 あまり作品を残していない作家だそうなので、少ない作品を集めてみようかと思う。 ただなあ、ハヤカワの文庫が入るブックカバーが少ないんだよなあ…。
3投稿日: 2015.09.11
powered by ブクログいやー、素晴らしい!やっと読めた。911の頃、世界はこうだったかもしれない。でもいま、またもう少し明るいほうに、むいてきていたらいい。
0投稿日: 2015.09.10
powered by ブクログ非常に面白かった。これぞSFという感じ。特定のテクノロジーという媒体を通じて、人間の姿を、内面をありありと描き出す。淡々とした筆致で描かれる残虐な戦場の光景というアンバランスさから引き込まれた読者は、もはやその冷徹に社会を見通し、吟味する視線からは逃れられない。言語というものを通し、そして文化、哲学を通して人間の主体性の問題について正確に言及するやりとりの深遠さに加え、物語の筋も秀逸でエンターテイメントとしても完成されている。間違いなく傑作。作者の夭逝が惜しい。
2投稿日: 2015.08.30虐殺には、独特の匂いがある
劇場アニメのトレーラーを観て、興味が湧いたので読んでみた。これ、映像化するのか…アニメでもエグい事になりそうな(トレーラーではそんな感じはしなかった)。でもこの作品による虐殺のイメージは、オルゴールの様に辿々しく繰り返される箱の中の旋律、みたいな。読後感は悪くなかった(オチが良いとかではなく)ので、映画も観てみたいと思いました。因みに、主人公のビジュアルイメージ、新装版の表紙絵みたいなイケメンのイメージないな。もっとオッサンな感じがいいよ。角刈りの。
1投稿日: 2015.08.14
powered by ブクログサルトル的な自由の刑を軸に話は展開している。自由を得るためには何かしらの責任を被る。その様な、責任を逃れるために人は思考を停止させ、自由を甘受しない。仕事である故に人を殺す、戦争をするということは、自己決定により人を殺すことに対する責任を回避しており、アレント的な悪の凡庸さをも感じさせる。虐殺器官の時代設定はハーモニー同様に、過去から現在への延長としての未来の構想という基盤にたっており、これがとてつもないリアリティを持たせる。ソシュール言語学とそれに対する反証の内容があるルツィアとシェパードの会話は面白かった。誰も皆、正義を語るが故に戦争が起きるという悲しい事実を改めて認識し、自分の自由についての責任の自覚を持たねばならないと感じる作品だった。神の死は人を罪の呪縛から解放し得ない生き地獄を作り出したというニーチェからの示唆も面白かった。
0投稿日: 2015.08.06
powered by ブクログ完成度が非常に高い小説。面白かったです。他の作品もぜひ読んでみたいと思ったら解説を読んで作者がすでに故人であることを知ってショック。
0投稿日: 2015.07.31
powered by ブクログ「メタルギアソリッド4」のプレイと並行して、ぼくは伊藤計劃のデビュー作である「虐殺器官」を読んだ。伊藤計劃が小島秀夫の初期からのファンであったことはよく知られていて、ゲームショーの「メタルギアソリッド」のトレーラーを見て泣いた青年という逸話を残した彼らしく、「虐殺器官」は「メタルギア」を彷彿とさせる世界観で描かれている。 しかしながら「虐殺器官」はただのハードボイルドSFや戦争シュミレーションという枠を大きく逸脱している。「ハーモニー」のときのラノベのような文体からは想像できなかった、文学的な語り口や伊藤計劃のあまりある雑学的才能が披露される。「虐殺器官」のラストは「ハーモニー」に繋がる大災厄を主人公自身が起こすことでバッドエンドとなる。それは動物の本能であり、そうして「ハーモニー」ではそれをさらに進化させることになる。
0投稿日: 2015.07.25
powered by ブクログなんだか、作家その人の物語性やら、前評判やらが目立っているせいで、実際読んでみるとちょっと期待外れというかなんというか。 SF としては、近未来が舞台でそんなに突飛なアイデアが使われている感じがしないというか、とても自然で SF であることを忘れそうな感じ。 戦争物というか、国際謀略物としてはメインアイデアが面白いけれど、ちょっと冗長かなという思いも。 出版直後に読むともう少し印象が違ったかもしれませんが、割と普通な感じでしたかね。
0投稿日: 2015.06.27
powered by ブクログ設定の作り込みはすごいが、それだけ。ただでさえストーリーの進みが遅いのに、設定を盛り込みすぎてテンポが悪すぎる。伝えたい主題を加工もせずに盛り込みすぎるから、自分語りが多くてストーリーが進まない。好き嫌いが極端に二分されること間違いなし。文章も一昔前の訳文みたいで読みにくい。古典とか文学が好きな人は楽しめるかも。エンタメ好きな人にはまず合わない。80年代の海外SF小説のよう
2投稿日: 2015.06.14
powered by ブクログタイトルからバトルロワイアルのような過激な作品を連想していたが、蓋を開けてみれば本格的なSF小説だった。 ジョン・ポールの虐殺の動機や、進化によって人間が利他的になったという考えが印象的で、人間の本質というものを考えさせられた。
0投稿日: 2015.06.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
何をするにも本人確認が必要になっている近未来のアメリカで暗殺を専門とする特殊部隊のリーダーをやっている主人公が、発展途上国で凄惨な内紛を煽っていると思われる謎の男を追って世界中を飛び回る話。 正直に言うと、確かに面白いと思ったし、文もうまいと思うところが多々ある。世間で評価されたのも理解できる。んでも、僕はこの小説、読んでて反感を覚える箇所が少なくなかった。SFで哲学や言語を語ること、言葉フェチのわりには言葉をそんなに大事にしていない主人公、比喩過多な文。これらは、僕にとってはなんか違う。面白いんだけど、読んでてイライラした。 後、ラストはアレでいいと思う。かつて自分が追いかけていた標的と同じ存在になってしまうっていう、黄金パターンと言っていいんじゃないかな。
0投稿日: 2015.06.06
powered by ブクログタイトルから勝手にハラハラドキドキするタイプかと想像していたら違った。単にストーリーだけを楽しむのではなく、哲学的と言うか、考えさせられることも多く、含蓄があり示唆に富んだ内容だった。これをミステリーと言うジャンルに入れるのはどうかと思うが。エピローグの空虚な感じは好き。
0投稿日: 2015.06.06
powered by ブクログリアルなSF。9.11以降だからこそ産まれ、評価される作品。 面白いが、同時に恐怖を覚える、この中の技術は最早夢物語ではなく、あるか、近いうちに出来るだろう、そう思わずにはいられないほどに創造できる代物ばかり、根幹となるネタもあり得るかもしれないと思うと怖くてしょうがない。 正義とは罪とは平和とは愛とは現実とは、そんなものはどこに帰属しているかで変わり、正しいものなんてない、ことは誰もがわかっているのに、推進力は衰えることを知らずに突き進む。 主人公とボスキャラはまったく正反対の立場にあるのだけど、だからこそなのか出会った瞬間にどこか共感してしまう、白は黒になるが、黒は白にならない。そして、主人公はもう一つの現実へと舵を切る。 アニメ化されるので、いまから楽しみでしょうがない。ハーモニーも面白いよ。
0投稿日: 2015.06.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
夭折の作家 伊藤計劃の数少ない著作。ゲーム、メタルギアシリーズの影響を色濃く受けている。世界観はほぼ同一と言っていいだろう。虐殺を引き起こすことによって、紛争をコントロールしようとする男とそれを追う特殊部隊員。 どんな人間にも最初から脳内にある虐殺器官。最後にそのスイッチを自ら入れることによって、世界に復讐する主人公、そこにはいっさいの救いがない。
1投稿日: 2015.05.24
powered by ブクログ攻殻機動隊やMATRIX の世界観が好きな人は好きだと思います! なぜなら私がそうだからです。何度読み返したか分かりません。 友人に勧められ、どっぷりハマってしまいました。 なぜ突然大量虐殺が起こるのか、そして虐殺と共にあるジョンポールとは。 そんな謎解きあり、アクションありのSFミステリーです。 途中色々な国が出てくるのですが、私が行ったことのあるインドの描写はとても生々しいものでした。私が、音や匂いなどでその国を感じるからでしょうか。 これが処女作ということもあり、周りの方の感想では、虐殺の仕組みが拙いとかいうものもありますが、私としては十分でした。 虐殺のための器官、そのために何を刺激すれば良いのか。。具体的にどれなんだ、と言われると答えられませんが、なんだか本当にあり得そうなよくわからない実感が、読了後にありました。 ちなみにハーモニーの方ともリンクしていますので合わせてぜひ。 伊藤さんが早逝されたことが悔やまれます。 今年公開の映画はちょっとイメージが違うのですが、楽しみです。
1投稿日: 2015.05.11
powered by ブクログ911後のアメリカから数十年後の世界。 高度の管理社会となった先進国と内戦絶えない後進国。 こんな世界もまもなくかもしれない。
0投稿日: 2015.05.06突き抜けていた、伊藤氏。
著者の早過ぎる訃報を耳にした当時、本当に言葉にならなかった。 読み手を選ぶジャンル。 それだけに、難解さはある。 自分も完全には理解しきれていないと思う。 それでも、たまらなく好きな作者だった。 ダークな世界観の筆力は勿論、 全体から滲む独特の雰囲気が、無双。 もう伊藤氏の著作が読めないとは、辛い。 「メタルギアソリッド」は渋く、 こちらは深い。 あれから月日は流れてしまいましたが、 心よりご冥福をお祈りいたします。
6投稿日: 2015.04.26
powered by ブクログ伊藤計劃作品初読み。物騒なタイトルなのでなんとなく読むのをためらっていた。日本人作家が描いたとは思えない海外のSF作品のよう。たとえば、ジョージ・オーウェルの『1984年』のような。処女作というにはあまりにも洗練されていて完成度が高い。惜しい人を亡くしたもんですね。2013/159
0投稿日: 2015.04.09
powered by ブクログジャケ買いしたが、それなりに読めた。なんだか今も気になる小説。もう一回読もうかな。 2015/05/19 2回目。単なるSFを超えた小説。テクノロジーは進んでも、変わらないものはある。罪と罰、言語は人間が獲得した器官なのか。
0投稿日: 2015.03.13
powered by ブクログ話題は知っていたものの予備知識なく読了。勝手にもっと観念的な小説かと思っていたけど、主線や人間関係はSFとしても非常にオーソドックス。ただそれを補う情報量が凄まじく物語を骨太にしている。やや知識をひけらかしすぎな感もあるけど。 近未来の暗示ではなく、一人称を通してまさにすぐそこの現代を描いているように思わせるところが高い評価の理由か。
0投稿日: 2015.02.24
powered by ブクログかなり時間をかけて読了。 というのも、中盤〜終盤にかけて少々飽きてしまって(笑) でも久々に読むと面白い。恐るべし伊藤計劃よ。 そして最終章は驚きの連続。唖然?驚愕?どれだかよくわからないが… とにかくそんな方向に向かうとは思っていなかったのでただ今は呆然としている。 そしてどうでもいい話、映画見ながらピザ食べて指に油ついたままスマホ画面スライドして電話を受けたい(俗称:ウィリアムズごっこ)
0投稿日: 2015.02.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SFを読んだことがない人でもハマってしまう作品だと思う。特にプログラミングをかじったことがあるとか、ITやガジェット好きなら一読をお勧めする。カラクリがとても理知的で、なるほど確かに、と思わせてくれる。ただ、中盤の盛り上がりに比べると終盤が少し物足りなくも感じた。同作家の作品であるハーモニーと繋がっているので、ハーモニーの序章(序章にしては豪華すぎるが)として読むのもありかもしてない。
1投稿日: 2015.02.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…。彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? 以上、amazonより。 絶妙なSF感。普段あまりSF見ないのですが、今とは違う時間軸の未来、みたいな。世界の中で、[戦争と平和のバランスが取られている]というのが独特の世界観です。ところどころ、説明不足の感もありますが、補って余りある筆力。兵士に施された施術と、死なない軍隊同士の戦いのインパクトがとても強かった。 「先進国・平和の国には顧みられない、見捨てられている不幸や戦争や内乱」は現実にもあるわけで…。現実の問題にSF異世界から問いかけられている気さえしました。
0投稿日: 2015.02.08
powered by ブクログこの本を手に取った時、誰しも「虐殺器官」とはなんなのか?そう思った事でしょう。 私もその、あまりにも異質な「虐殺器官」というタイトルに釣られ本書を購入しました。 アメリカの特殊部隊に所属する主人公、クラヴィス・シェパード、世界を虐殺に導くジョン・ポールという謎の男。 この二人が交差するとき、「虐殺器官」の物語は始まります。 読み終え、最初に感じたことは「愉快痛快」でした。 重っ苦しいタイトルとは一転して「愉快痛快」、この小説はSFの皮を被った愉快痛快ミリタリーアクションです。 面白い、実に面白い。これは賞賛されるわけだ! 物語が二転三転、読んでるとまるで映画を観ているかのような気にさせて貰いました。 「虐殺器官」とはなんなのか? 当たり前ですが答えはこの本を読めばわかります。 ですが虐殺器官、虐殺の言葉を綴るとはどういうことか?誰の為に綴るのか?そういうのを少し考えながら本を読み進めると一層この本を楽しく読め、一層好きになれると思いました。 「ベストSF2007」国内篇第1位。 「ゼロ年代SFベスト」国内篇第1位。 このレビューが目に付いた方は是非ともこの素晴らしい小説を一度読んでほしいと思いました。
0投稿日: 2015.02.04
powered by ブクログ読み始めた途端に例の事件があった。タイムリーにもほどがあるが「テロをなくすには」という問題に対する回答がそこにはある。ネタバレになるので直接は言わないが、寝小便の上に夜食のラーメンをひっくり返す……いや、この例えは無理があるぞ……?
0投稿日: 2015.01.25
powered by ブクログ暗殺部隊に所属する主人公が、後進諸国に次々と虐殺を生み出す謎の人物を追う話。 緻密な描写と筋道だった理論、膨大な引用と的確な国際感覚、どれをとっても一級品。ひたすら圧倒された。 淡白で陰鬱な雰囲気が近未来の紛争地帯における重厚感を生んでいる。「虐殺器官とは何か」というある種ミステリー的な部分も内包するのがさらに魅力的。もっと早くに読んでおくべきだった。
1投稿日: 2015.01.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
もともと友人から薦められていた本だがなかなか読めなかった。精神と肉体が切り離され、再生も可能な近未来において死とは何かを問い直している。今後再生医療などが進んだ世界ではきっとこのようなことを日常的に考える人が増えるのではないか。
0投稿日: 2015.01.19
powered by ブクログタイトルからして、グロテスクなものを 想像しがちだったけど、読んでみると 人体の破壊描写とかはあるけど 殺人快楽のようなものではなかった。 どストレートな長編SFで、内容自体は 少し難しかったけれど文体が とても読みやすかった。 後半のジョン•ポールの虐殺文法の あたりからグッと面白くなった。 『言葉』と『人間の死』への関係性を 深く考えさせられた。 作者が34歳の若さで亡くなっており、 虐殺器官と、もうひとつ『ハーモニー』 という遺作のオリジナル長編があるので そっちも読んでみたい‼︎
2投稿日: 2015.01.19
powered by ブクログレイ・ブラッドベリの華氏451度を読んだから、ちょっとSF小説読んでみようという気に。調べてみるとこの『虐殺器官』とかいう、いかにも中二病っぽいタイトルの小説が2千ゼロ年代最高のSF小説らしいので手に取ってみた。 とんでもない名作に出会ってしまった。凄まじい世界観。戦争や内紛の最中で、遺伝子や倫理や愛情や言語や罪や罰や宗教やテクノロジーや動物愛護やアイデンティティや母権や国家や認証や自由やらを考えさせる。多分、小説が語れる友情以外すべてのテーマを語る。とてつもない作品だった。控えめに言ってもここ数年読んだ小説で個人的最高作品だな。
0投稿日: 2015.01.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ハードなSF作品。 メタルギアに世界観が通じるものがある。 (同じ作者がメタルギアの小説も書いている)
0投稿日: 2015.01.05
powered by ブクログ残酷な内容にもかかわらず、不釣り合いなほどに静謐で、軽やかで、うつくしい文章。 久し振りにすごいものを読んだ。
1投稿日: 2014.12.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
旧版。購入は2年以上前だが、無性にフィクションが読みたくなり、当初の予定を変更して読み始めたのが数日前。いやいや、これはもっと早く読んでおくべきだった。己の見る目の無さを激しく後悔。認証によって凡てが管理され、テロの猛威が過去のものとなった代償に様々な国で内戦が頻発するディストピア的世界。大量虐殺の陰に謎の男ジョン・ポール(元ネタはジョンジー?)の姿あり。要人暗殺のため、感情を脳医学的に調整される主人公の、装飾を抑えた冷静な視点。そんな主人公が真相を知り、採った最後の選択に打ち震える。思弁小説の大傑作。
4投稿日: 2014.12.03
powered by ブクログ本屋さんで見かけておもしろいのかな~と思って手に取った アメリカの近未来、戦争が商売になる(今も?) テロ対策として徹底された情報社会 貧しい国などで起こる内乱虐殺 虐殺の起こる国にみえる人影・・ わりとすっきりする結末でよかった 罪の意識とかそういう話はちょっとむずかしかった 若くしてなくなってる作家さんらしく、 巻末のお母さんの言葉に涙涙・・>< やりたいことがいっぱいあって、しかも才能があった人が早くに死んじゃうのはやりきれない
2投稿日: 2014.11.29
powered by ブクログ著者の伊藤氏は34歳の若さで癌で亡くなっている。本書は10日ほどで書き上げられたというのが信じられないほど、渾身の作という感じで、密度が高い。 未来型SFというか、主人公はアメリカの諜報的軍人とでもいうべき人物で、世界各地で虐殺を煽る人物を逮捕または暗殺すべく活動する。その目的のためには、子どもを殺すこともいとわないよう、脳が調整されている。一方、事故にあって植物状態の母親の延命措置を止めるという決断を下した罪悪感に悩まされ続ける。 この作品を執筆したときには著者はすでに病気だったというが、彼の死への向き合い方というか、魂の叫びが生々しくつづられている気がする。自分の存在意義は何なのかという自問自答が聞こえてくるようで、壮絶である。 テーマ自体は個人的にはあまり興味を持てなかった。
1投稿日: 2014.11.24
powered by ブクログすごいおもしろいなぁ。もったいないなぁ。もっともっと読みたかった。もっともっとどっぷり浸かりたかった。すごいなぁ。 久しぶりにSFで感動。 伊藤計劃氏に合掌。
0投稿日: 2014.11.14これだけのテーマが一本の小説に収まるという奇跡
この濃密さとこの疾走感が両立すること― 改めて、作者の早すぎた死を惜しむ。 物語の始めの方で、読者は主人公が母親を殺したことを知る。 そして、このような「殺人」は自分の身にも起こりうるということも。 生命維持装置を外すか否か。決めるのは家族。外せば死。 しかし、そのような状態で生きていると言えるのか?どこまでが生でどこまでが死なのか? このテーマだけでも、十分、一つの小説になるだろう。 しかし、この話は、主人公が行っている違う種類の殺人と、 この「母親殺し」がクロスし、フラッシュバックする形で進行する。 彼は米軍特殊部隊に所属し、世界各地で「虐殺」を行っている「悪人」を暗殺することで、 世界の平和を維持するのが「職務」である。 こうした「正義の戦争」に対する批判、これだけでも一つの小説になりそうだ。 小説でなくてもよいかもしれない。 また、戦場での彼の葛藤。 自分のしていることは「職務」であり、「命令」の遂行であり、罪の意識から逃れたい。 しかし、その一方で、その罪が自分のものでないとすれば、 自分が自分でなくなってしまうような恐怖感を覚える。 このあたりの心的外傷は少し前に読んだ日本軍BC級戦犯に関する本と通じるものがあり、 戦争と心的外傷を巡る一冊の本になりそうだ。 そして何よりも「ことば」と人がどのように関わっているのかという根本的な問題。 言語論の入門書としても読めそうだ。 ブックマークをつけたところを振り返ってみると、 一体何冊分の内容が凝縮されているのだろう、とレビューに困る。 が、読んでいるときは、そうではなかったのだ。 主人公は、任務として”ジョン・ポール”なる”虐殺者”を追っていく。 普通に、続きが気になって読むのが止まらない、スパイ小説のような感じだった。 が、後になって付けたブックマークを見直していくと、何と濃かったことか! 良い作家に出会えた。 が、もう、この人の新作を読むことはないのか・・・と思うと残念である。
31投稿日: 2014.11.05
powered by ブクログまだ若いうちに亡くなってしまった作家さんだというのは知っていたのですが、読み終えた今では、そのことがすごくすごく惜しまれる。設定も着想も鳥肌ものなのだけれど、語り口がセンスに満ちていて、人の才能に触れるってこういうことなんだよ、と痺れていました。
0投稿日: 2014.10.18
powered by ブクログ読みながらワクワクした! 古くは、竹宮惠子の「私を月まで連れてって!」、また歌舞伎を観始めた時も同じく、知らない単語を調べたくて堪らない。引用されたモノを知りたい解りたい欲求に駆られる。 当分、伊藤計劃に嵌るだろう。
0投稿日: 2014.10.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
すごい。今までで読んだ本の中で最高傑作かもしれない。主人公の倫理的葛藤と、その葛藤は錯覚だと断言してくる仕事という名の世の中。作者がすでにこの世にいないことを後書きで知り、さらに衝撃を受けた。
0投稿日: 2014.10.10
powered by ブクログ好きか嫌いかで言えば、大好きな類。そう、大好き。でもうまく感想がまとまらない。ナイーブな主人公はまさに自分と同世代+5もしくは10くらいがどこかに抱えてそうな雰囲気だし、自由について責任について平和について戦争について出てくるたくさんの言葉や思いもまた同じ。ラストもそう。言わないけど抱えてる不安な思いを冷静に優しく突き付けられたよう。どうしよう。またしばらくおいて再読したい。
0投稿日: 2014.10.01
powered by ブクログ思考は言語の外か内かぐらいは誰でも一度は考えそうなことだ。そこからの、人が利他行為と殺人衝動を両立できるのはなぜか。潜在的に備わった本能は潜在文法で 呼び覚ますことができる。虐殺器官もそのひとつ。ってなる発想が面白い。主人公の、自分特製の罪を背負いたい、赦されるの前提で罰されたい願望が呆れたエゴイ ズムでイライラしたが、小説世界の説明が続くうちにわかる。そうか•••まだ子供なんだね。かわいそうに。そんなセンシティブな主人公だから成立する話ではある。 もう30だけど。「初体験リッジモンドハイ」がなんかツボったw
0投稿日: 2014.09.19
powered by ブクログ面白そうやなと思って購入。造語や専門的な用語が多くて、世界観に入っていくまでに時間がかかる。結局ストーリーもほとんど頭に入ってこなんだな。ハードなSFやった。
0投稿日: 2014.09.14
powered by ブクログ戦争の中で遺伝子と良心について考えるという忙しい小説。設定は面白い。戦争の中で良心はどこにあるのか、罪と罰はどこにあるのか、選択はどこにあるのか、というようなことを扱っている。言いたいことが多いようで登場人物が十行単位でよく喋る。 設定は面白いものの、全ての種明かしのはずのエピローグが短すぎるのが残念。虐殺文法とは何なのか、母の伝記の内容は何だったのか、主人公の行動の動機は何なのか、全てが曖昧で、具体的な情報がない。結局何の話だったのか、さっぱりわからない。突然主人公が抜け殻になって陰謀に暗躍すると言われても突拍子もない。長編小説にも関わらず、終わりだけショートショートというか、意味怖的な強引さがある。 また、文体が苦手だ。漢字読みがなカタカナという言葉がいっぱい出てくる。機関名やデバイス名なら許せもするが、アメリカ人の台詞の中に「いきまっせ(ヒア・ウィー・ゴー)」「捕まえた(ガッチャ)」「そ(ヤップ)」とか出てきて、クッソ痛々しい。そんなに英語使わせたかったら英語で書けばよかったのに。なーにがガッチャや。ガッチャってなんや。百歩譲って英語併記なら辻褄合うけど、ガッチャってそれ日本人の耳にしか通用せんやないか。主人公アメリカ人で一人称の小説書いてるのに耳だけ日本人の耳ってどないやねん。 wikiで知ったけどノイタミナでアニメ化するらしい。映像にした方がわかりやすい小説だと思うので、良かったと思う。そのときヤップはどうするんだろうwww
0投稿日: 2014.09.11
powered by ブクログ書店で名前はずっと見かけていて、『すごいペンネームだしすごいタイトルだな』と思っていた。早逝した作家ということと、タイトルや装丁から、勝手に自殺した作家なんだと思って敬遠していた。 読み終わって、久しぶりに完璧な読書だった、と思った。 もっと早く読みたかった、とは思わない。この作品が理解できるようになってから読むことができてよかった。 私が深夜ラジオで9.11のニュースを聞いた時、彼も病院のベッドでそれを聞いたなんて信じられない。そして、その彼がもうこの世にいないなんて、さらに信じられない。 彼の新刊が出ないことを淋しく思うが、失望しなくて済むという安堵もあって、今日はもう何も出来そうにない。
1投稿日: 2014.09.08
powered by ブクログ近未来を舞台にしたテロとの戦い、ゼロ年代のSF小説第1位【虐殺器官 – 伊藤計劃】 http://on-the-road.co/?p=2062
0投稿日: 2014.09.01
powered by ブクログもしかして、今あちこちで繰り広げられている紛争を予言していたのかと思ったほど臨場感があり、斬新というかエキセントリックな兵器や装備の説明でどうにか、これがSF小説だということを思い出した。 クラヴィスとジョン・ポールは鏡合わせのような、一対ともいうべきキャラクターだと思う。どちらも家族を失い喪失感を抱え、一方は虐殺を遠回しに仕掛け、一方はそれを制圧する。そしてそんな恐ろしい残酷な現場に関わりながらも、頭の中は妙に冷め正気を保っている、というような。 特別な存在だったルツィアを目の前で失い、特別な絆と罪悪感を感じさせていた母が、自分のことをさほど心に留めていなかったと知ったクラヴィスだからこそ、「虐殺の文法」を用いてアメリカを虐殺の場にしてしまうラストは納得。 日本語による作品なのに、ちょっと翻訳されたような、海外SFやミステリのような文体も魅力的だった。 「虐殺の文法」ももちろん作りごとなのだけど、でも実は現実に存在していてもおかしくない…と思わせられる現在の世界情勢が、やりきれない。
2投稿日: 2014.08.27
powered by ブクログジョン・ポールが言ってる事は理解できる。虐殺器官の事を耳にまぶたは無いと表現したのは素晴らしい。殺人マシーンとして訓練されてきた特殊部隊の心理、家族や恋した女性への思い、仲間の死の悲しみ。最後は予想できた展開だがそこに至るまでの葛藤があった分スッキリした。
0投稿日: 2014.08.24
powered by ブクログメタルギアソリッドの人なわけだが、解説や評釈に書かれている通り、とことんこちらは繊細である。 繊細が過ぎると言いたい訳でなく、それがこの作品の主眼なのだと思う。淡々と任務をこなす戦士は選択の責任として罰を求めている。いまいちヒロインのどこがいいのかわからなかったが、そもそも主人公が優秀すぎる戦士でライバルも研究者上がりの文民エリートと、簡単にいうと共感できないので感覚の差異だろう。 SFは「ありえそうな未来」を見るのが好きなので、作り込まれた「ありうる設定」に感嘆する。確かにSFとして最高峰だろうと思う。SF名作として名高いオーウェルやギブスンより、母語が現代日本語であることで入りやすくなっていると思う。SF好きにはあまり本を読まない人種にも勧められる一冊。 各所に皮肉のスパイスが効いててクスリと来るので、なんとなく引っかかる言葉があったら調べてみるのも面白いと思う。たいがいは元ネタが見つかるだろう。
0投稿日: 2014.08.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
30代半ばにしてガンが原因で夭折したSF作家、伊藤計劃のデビュー作。世界を股にかける壮大なプロットを背に、人間の弱さに正面から向き合った傑作。ところどころに挿入される哲学的な思索も豊富な知識に裏打ちされていて、無理がない。僕がファンである伊坂幸太郎を初め、数多の作家に絶賛され、数々の賞を取ったのもむべなるかな。 ただ、僕にとっては、やはり「SFとの相性が良くない」のを再確認させられた、とも言える一作。それまでの暴力的な360ページよりも、ラスボスとの対話を中心とした最後の35ページに釘付けになってしまうというのは、やはりSFファンとしては「正しい」反応じゃないものね。 それにしても、このスケールの大きさはなんだ、というくらいの作家ではある。で、この400ページもある作品の草稿を10日で書き上げたっていうのだから、やはり天才ってのは存在するんだよなと思うとちょっと寂しくはあるかもw。返す返すも短い生涯が残念だった作家です。 合掌。
0投稿日: 2014.08.13
powered by ブクログSF戦争もの 暗殺部隊のエージェントが、世界中で紛争を引き起こすジョン・ポールを追う… 単純な戦争ものではない深みがあった メタルギアソリッドシリーズが好きな人は絶対ハマると思う
0投稿日: 2014.08.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
未来設定?の話。戦争というか内戦を背景に人間とは生きるとはなにかって感じの、装備とか常識とかが色々ぶっ飛んでて詳細な設定があって読んでてわくわくして楽しかった。これ読んで以来ニュースとかテレビで戦争についてやってるの見るとこの本思い出したり戦争の現場の生々しさについて考えるようになった。お母さんの生命維持装置を止めるのに同意する書類にサインしたことを、母を殺した決断だったとしてずっと気に病んでいる主人公。ある人物に対する調査、暗殺命令が出る。その人物がかかわった地域では必ず内戦がおき、虐殺が行われるという。その人物を追っていく過程で出会った女性に恋?をし、許してほしいと願ったり、せめて欲しいと願ったり、結果的にある人物よりもその女性を追って調査を続ける。最終的に女性は死んでしまい、ある人物もとい言語研究者の男性を捉え、虐殺の謎を解き、女性の望んだとおり虐殺の実情をUSAに広めることで贖罪とする予定だったが、政府の作戦により、男性も死んでしまい、絶望、男性の残した知恵を用い、USA全土で内戦をおこして終わり。性悪説?とか精神的な話というより、そもそも人間に備わっている器官の話。自分の意志で殺すとは何か、どっからが生きているのか、自分の意志とは、ずっと問われている気がして、疲れた。読み応え抜群。 あ、ウィリアムズが死んだところ、悲しかった。
0投稿日: 2014.07.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SFは難しいからやめようと思ってたのにまた借りてしまった。 でもこれは比較的読みやすかったかな。 本当にこんな仕事をしてる人がいるのか、映画観たいな世界だけど、暗示をかけて殺人マシンになるなんて、本当にいたらすごく大変な仕事。 ----内容紹介---- 9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。
0投稿日: 2014.07.17
powered by ブクログポスト3.11の世界にテロとの戦いを小説の舞台とする中で、言語という民族固有の、蓋の無い感覚器官である聴覚を巧みに利用したSFホラーとでも言うべきか。
0投稿日: 2014.07.08
powered by ブクログ「この豚を殺したのは、間違いなく俺なんだけどさ」 そう言いながら、蛹は皿の上のソーセージにフォークを突き立てた。 半分ほど囓り、口の中で玩ぶ。多分、食欲がないのだろう。目の前の問題から逃避するために、面倒くさいことを言い出す。いつものことだ。 フォークに残されたもう半分を指さし、僕は言う。 「そのソーセージを僕が食べたら、その豚は誰が殺したことになるんだろう?」 蛹は口の中の肉片を飲み下し、答える。 「俺が食べた分は、俺が殺したんだ。先生が食べた分は、先生が殺した。当たり前だと思うけど」 そう、と僕は適当に頷く。 うん、と蛹も適当に頷く。 他愛ない、いつもの世間話だ。 それはともかく。 「虐殺器官なんてものがあるとして」 蛹は、傍らに置いてある本に、ちらりと目をやる。先ほど読み終えたばかりらしい。 「あるとして?」 僕は聞き返す。 「どうだろう、と思って」 いきなり丸投げされた。 仕方ない、考えよう。 「……平和を模索するしかないんじゃないのかな。僕はあまり死にたくないし」 僕は、思うままを述べる。 「僕らに備わっている虐殺器官が、どういう形で僕らを動かすのかは分からないけれど……どうあっても身近な人と殺し合うような状況になるというならば、生きる目的も揺らぐのかもしれないしね。そして、そういう状況になるまで、理性は現実を理解できないのかもしれない」 「実際に死体を目の前にしなければ、現実感がないのかもしれないってこと? 何が見たいんだろうね。頭を吹き飛ばされた死体とか、腹から捲き散らかされた小腸とか、そういうものを見なければ、死を想像することもできないのかな」 そんな話をしながら腸詰めを食べるというのは、どう考えても狂っているんじゃないかな、などと思いながら、僕はフレンチトーストに生クリームを塗りたくって、口に放り込む。 もっとも、僕が言う「正常」とか「狂っている」とかいう基準は、その言動が第三者に有益か不利益かという程度のものでしかない。前者の方が円滑に社会生活を営むことができるのは明白で、だからこそ、患者をそちらに誘導するのも僕の仕事だった。 ちなみに、世の中には円滑な社会生活というものに全く興味がないというタイプの患者がいて、それが目の前でロイホの朝メニューを食べている青年だ。11時ギリギリに、ソーセージとスクランブルエッグとトーストのプレートを注文し、しかも本人は昼食のつもりなのだ。 ちなみに、便乗してフレンチトーストを注文したのは僕だけど、それは甘いものを口にしないと目が覚めないからで、つまり僕にとっては朝食だということ。朝食をとる人間と昼食を食べる人間が同席するために、時空を越える必要はない。 さて。 「僕らの世界では、死はまだ近くにあるよ」 僕は拙い抵抗をする。医者として、あるいは人としての、最低限の抵抗を。 「そこら中の病院で、毎日誰かの家族が死んでいる。場合によっては、延命治療をするかどうか、判断を求められる場合もある。ちゃんと、残酷な世界だよ。心配はいらない」 「そう?」 「そうだよ」 ちなみに蛹は先ほどから、フォークでスクランブルエッグを掬っては、僕の皿に乗せている。 「どうだろうね」 フォークをペロリと舐め、静かに笑いながら、蛹は言う。 「ねえ、生きているものが死ぬことを、どれだけ遠ざけるのかが、社会というものじゃないのかな。そういう世界では、屠殺も虐殺も同じなんだ。同じくらい遠くのものなんだよ、先生」 「屠殺と虐殺は違うよ」 僕は言う。 「そうかなあ。同じだと思うけれど」 蛹は言う。 僕は反論の言葉を探す。けれども蛹が口を開く方が、早かった。 「少なくとも、殺される方にとっては同じだよ。死は死だから。殺す方にとっても同じだ。殺すことに意味があるから殺す」 僕は、どうにも納得できないという顔をしてみせる。蛹が悲しそうな顔をしたのを、僕は見逃さない。 「先生が言いたいことは分かるよ。すごく。みんな、そうやって逃げてきたんだ」 「殺す理由を仕分けしてあれこれ言うのは、いつだって外側にいる人間だってことなら、うん、そうかもしれない。自分は外側にいると思っている人間。お前が大嫌いな人間だね」 それはそれとして今日は平日で、僕はいい加減クリニックを開けないといけないし、今日最初の予約患者といつまでもファミレスでだらだらしているわけにもいかない。 「コーヒー」 そう言ってカップを差し出す蛹には、せめて僕に対してだけは、多少の社会性を身に付けてほしいと思わないこともなかった。 「ところでこの本、映画化って、冒頭のシーンどうするのかな?」 僕は気になったことを口に出してみる。 「え、普通にやればいいんじゃない? どうせ最初にテロップだすんだろ。この作品には残虐な表現がどうこうってさ」 「いや、さすがに色々無理じゃないかなあ……」 脳漿はともかく、腸はね。
4投稿日: 2014.07.06
powered by ブクログストーリーとしてはおもしろい。 ただ、不要な度重なる説明がしつこい! もぉーええから。人工筋肉のくだりとか、お母さんのくだりとか。 どんだけマザコンか!笑
0投稿日: 2014.07.02
powered by ブクログすごく面白かった。小説ならではを存分に味わえたし、近未来の設定も、こういうことがあったためこうなった、ということまで作り込まれていて今と地続きの未来のように感じられよかった。タイトルがなかなか衝撃的で手に取りがたいかもしれないけれど、実際読めば本当にすごい衝撃をうけると思うし、ハリウッド映画とか好きな人読んでみてほしいわ。
0投稿日: 2014.06.29
powered by ブクログ伊藤計劃さんは全然知らなかった。でも、本のカバーデザインのあまりのソリッドさに、見て即買い。 内容は他の方がレビューしているので割愛。ただ一言、傑作。買って良かった。 内容は本のカバーにも表れる。それを実感した本。
0投稿日: 2014.06.29
powered by ブクログSFをほとんど読まない私でも、この本はすんなり読めました。グロテスクな描写がけっこうな割合で頻出しますが、作者の筆力のせいなのか、あまり気にしないで読みました。ストーリー展開や、物語の核になる部分の説明がやや弱いですが、テンポがよく、あっという間に読めます。惜しむらくは、著者が夭折されたことです。生きていたら、この次はどんな作品を書いたのか・・・残念でなりません。
0投稿日: 2014.06.28現代の寓話
作者の名前を聞いたことがなかったので、あまり期待もせずに読み始めたが、素晴らしかった。読み終わった後にどういう人なのだろうと興味が湧いて調べたら、すでに34歳で亡くなっていた。惜しい才能と思うよりも、こんなに早逝だからこそ書けた作品なのかもしれない、と思った。作品全体にあまねく流れる「死」のリアリティが半端ない。と同時に、近未来のテクノロジーや社会システムとその中で生きる人間との対比が否応もなく現代という社会を映し出している。考えるのを上に投げ、文明で痛みに無感覚になり、不平等の上に成り立っている社会を守るために誰かを見殺しにする。現代の延長線上の未来がとてもリアルだった。 会話が、人と話しているというより自問自答に近いと感じた。
4投稿日: 2014.06.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
情報化が進んだ近未来のお話。プライベートの自由を差出し、代わりに安全を得るという、自由の取引のようなもの横行している。 主人公はとある機関の暗殺部隊で、各地で紛争を引き起こしている要人たちを始末する仕事に従事しているがそれを繰り返していくうちに、紛争のある場所で必ず現れる不気味な男の存在に気づく。その男ははどのようにして争いを生み出しているのか・・・人間にならばかならず備わっているというその仕組みを虐殺器官といった・・・はず・・・ ちょっと忘れてるなこれ。 直接的ではないものの続編がある。「ハーモニー」。
0投稿日: 2014.06.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
作風は「和製翻訳小説」という感じ。ID、オルタナ、人工筋肉といった近未来的なガジェットがいろいろ出てくるのは面白い。 ただし肝心の「虐殺の文法」についての描写が淡泊すぎるように感じた。カルチャーが20世紀で止まっているのもアンバランス。
0投稿日: 2014.06.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SFの賞レースをだいぶ勝ったということで。 言語のアイデアであったり、考え方には勉強させられたというか。面白かったです。 意識無意識の二面的な捉え方であったり、感情ひとつだったり、テクノロジーが進むことと、今までの自分たちの価値観や哲学がぶつかりあうことは、現在の生命倫理議論を見てればわかることだけど、 SF的にテクノロジーを想定し、世界や思想がどう変わるのかをしっかりイマジネーションすることは大切だと痛感する。
0投稿日: 2014.06.10
powered by ブクログ普段あまりSFを読むことはしないが本屋の煽りにて購入。映画を見ているようだった。 知識がない分すごさはわからないが、重いテーマなのにどんどん読める。 やはり文章は書き出しが重要だと再認識した。
0投稿日: 2014.06.08
powered by ブクログ以前から気になっていた小説。独特の世界観が秀逸。言語学がこんな使い方をされている小説は初めて見た。後半になるとモンティパイソンのネタが随所にでてくるのもよい。他の作品も読んでみたいが、もう新作が読めないのは残念。
0投稿日: 2014.06.07
powered by ブクログ練り上げられた世界観がすごい。 近未来における主人公の苦悩。感情を調整されすべてが情報管理される社会。将来こうなるのだろうか。 ただ確かに、解説でもあったように主人公の行動理由が腑に落ちないことがあった。
0投稿日: 2014.06.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
SF自体あまり好きでは無いが、この作品もあまり好みでは無かった 現実の価値観で読み進めていくので、その価値観が通用しない世界の物語だと、どうしたって意味が理解できない部分が出てきてしまう そこを読み解いて解釈していく能力が私には不足しているようだ 終わりの歌を英語で。。。という終わり方の方向性は良かったように感じた
0投稿日: 2014.06.01
powered by ブクログすごい世界に飲み込まれた気がしました。何から何まで凄まじい。SFというカテゴリーはあまり読んだことがないのですが、これはSFなのですか?という問いに疑問が生じるほどの作品です。すぐにこの作品の何かにのめり込み、縛られてしまう感覚になります。それだけ、魅力的なのだと思います。もっとこの著者の作品を読みたかったというのが個人的な感想。唸ります。 個人的には、ハーモニーの方が好きですが。
1投稿日: 2014.05.31
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
久しぶりにSFを読みました。 未来の話なのに、現在のアジアで起こっていることがエンドレスで続いているような世界。 解説は褒めすぎという気もするけれど、奇妙な読後感がずっと残る不思議な味わいの小説。
0投稿日: 2014.05.31
powered by ブクログ題名のエグさからは想像もつかないほどの繊細な心理描写、文章の美しさは圧巻でした。 ホラーではなくSFであり、専門用語を知らなくてもそれを補うだけの物語と筆者の考察力によって終始楽しんで読むことができました。 哲学、世界情勢に興味がある人は是非手にとってほしい作品でした。
2投稿日: 2014.05.25
powered by ブクログ最初、この人のハーモニーを読んでなかなか面白かったので同じSF枠の本作を読んでみるも、戦争ものという流れ、また、いまいち現実味がないというか調べ物的な知識が綴られているような描写、というところから挫折。
0投稿日: 2014.05.24
powered by ブクログ2014年6冊目…の筈。 いつ読み終えたか怪しい… ハーモニーよりも読みやすかったな、こっちの方が…
0投稿日: 2014.05.20
powered by ブクログいやあ、すごいもんを読ませてもらいました。もっと早く読めばよかった。マーガレット・アトウッドと対談とかしてほしかったなーと思います。
0投稿日: 2014.05.17
powered by ブクログSF世界観の割には大事なところが概ね舌戦なのでこの世界観でなくてもいけそう…と思いつつも管理されたID社会とかハイテク暗殺部隊とかの設定そのものは描写も丁寧で面白かったのでそれはそれはそれこれはこれと別で楽しめた感じ。エピローグが好み。 会話劇なのもタイトルを改めて見返せば納得。 そして「仕事は宗教」の一言にせやな…って顔になったのであった。
0投稿日: 2014.05.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
『殺人が最も忌まわしい罪であるのは。償うことができないからだ。お前を赦す、というそのことばを受け取ることが、絶対的に不可能になってしまうからだ。 死者は誰も赦すことができない』 この一言だけでも価値がある、単なるSFではない。作者が夭折なの、本当に切ない。
1投稿日: 2014.05.05
powered by ブクログ9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…… 彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは? ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。 ・レビュー これはなかなか説明の難しい小説だと思う。個人的には高評価だし、良かった。読みながら、色々と考えることもあった。短い小説だし、図書館にもあるから、気になったらサクッと読んでしまって、その後で「良かった」とか「普通だった」とか「読む程でもなかったとか」とかそんなことを思えばいいかなと、珍しく「考えないで読んでみたら」という感じの感想を持った。 まず、サクッと読んでしまって、などといえるのは内容が凄まじく濃厚であるにもかかわらず文体は非常に軽やかで読みやすいというところにある。内容が無理じゃなければスラスラ読むことができる。 内容は近未来、テロとの戦いが現代とは少し変わった未来。明示されてはいないけれど、ほんとにそう遠い未来じゃない話だというニュアンスだったように思う。2025年か30年か、そのあたりか。 ネタバレ無しだと非常に難しいのだけれど、この物語は現代人が過去から脈々と受け継いできた幾つかの根深い矛盾とか葛藤をテーマにしている。その手法として、現代よりも進んだ科学だとか、テロと向き合うために変化してきた世界の有り様を用いている。そういった現代を超越したSF的な道具を使うことで現代的なテーマを浮き彫りにしているという感じ。 タイトルからは想像できない繊細さのある小説で、一人称視点だということが大きく鍵になる。 ネタバレになるのでこれがどういう意味なのかは書けないのだけれど、これは非常に重要なポイントだと思う。 エピローグは賛否あるようだけれど、個人的には小松左京の評価がある意味では正当で的確だったということを述べた上で、それでもあのラストにすべきだったと思う。 『ハーモニー』の方も、あまり時間を開けずに読んでおこうと思う。ノイタミナでアニメ化されるようなので。 ネタバレの上での感想に関してはブログの方に警告付きで加えます。
0投稿日: 2014.05.05
