yakitoriさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン, 池央耿 / 東京創元社
コレぞSF!が読みたい方へ
66
初めて読んだ時はこんなにもセンス・オブ・ワンダーに溢れたSF小説がまだあったのかと感動しました。とにかく導入部の謎が奮っていて「月面で発見された五万年経った宇宙服を着た死体」たったこれだけ。たったこれ…だけなのですがこの遺体を調べるうちに次々と判明してくる新事実に世界各国から集められた科学者、技術者たちは自分達が立てた仮説を覆されて行く。このスクラッチ&ビルドが実に楽しく今度こそこれが真実だと納得した瞬間に新たなる事実や矛盾が提示され再考をせまられる、正に推理小説の様な展開。そして徐々に見えて来る太古から現在へと続く太陽系の本当の姿と人類起源の謎。多分、最後まで読まれた方は、最初の謎の提示からどれだけ遠くに来たんだろうと感嘆するとともにコレぞSF!という満足感で一杯になると思います。
ホーガンは新たなテクノロジーがもたらすメリット・デメリットが人類社会に対してどのように影響を及ぼして行くのかをシュミュレートしている作品を多数書いています。暗い未来や世界を描いた物語が溢れて返っている昨今では珍しく科学がもたらす明るい未来を描く作家で、科学的・理性的であれば人は人類はいくらでも繁栄していけると思っている節があり(笑)、ある種この能天気な作風が私は好きでかなり彼の作品にはハマりました。
とにかく判官贔屓ならぬホーガン贔屓の私としては是非とも本作から続くガニメアンシリーズをまずは読んで頂きたい。その後は「創世紀機械」「未来の二つの顔」「未来からのホットライン」「断絶への航海」などなど単発物も多数ありますのであなたも彼が描く人類の理想郷へ誘われてみませんか。
✳︎東京創元社のHPに載っていましたがこれから毎月ホーガン作品が電子化されるそうです。 続きを読む投稿日:2014.12.11
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幼年期の終り
アーサー・C・クラーク, 福島正実 / ハヤカワ文庫SF
SFファンならマストアイテム
27
SFと言えば当時ハミルトンやスミスのスペースオペラやハイラインやアシモフのエンターテイメントものが主流でクラークは少し敷居が高かった(私見)。ですがリバイバル上演していた「2001年宇宙の旅」を観て書…店でクラークを一冊読んでみるかと手に取ったのが本書。読み終わって最初に思ったのがすごいものを読んでしまったという興奮と作品内容自体を消化し切れていないという焦燥感。SFを読んでいたのにいつの間にか哲学的なものを読んでしまったというモヤモヤ感。それは再読しても思ったのですが「人間はどこへいくのか?」という普遍的なテーマと物語の後半の観念的展開と相まってそうおもったのだと思う。今まで読んできたSFの未来像の類型とは離れた結末にショックを受けたのと同時にSFの懐の深さを改めて実感させてもらった傑作SF。
人類進化やオーバーロードなどの設定は今や当たり前の様に世の中には溢れ返っていますが、この作品から始まったのだと考えると感慨深い。どことなく哀惜のある終わり方も好きでオーバーロードのカレルレンが選ばれなかった悔しさと観察者として矜持を思う最後のシーンがすばらしい。SFファンならマストアイテムでしょう。
※「幼年期の終り」と聞くと事務総長ストルムグレンの墓の前に佇むカレルレンの姿が思い浮かぶ。小説にはないシーンですがね。 続きを読む投稿日:2013.11.24
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県庁おもてなし課
有川浩 / 角川文庫
面白い試み
21
地方自冶体の職員が硬直した現状を突破して目的を達成するという成長物語は他にも沢山ありますが、本作は現実と地続きになって本物の地名やアクティビティが登場し、その観光資源に主人公が気づいていくこと自体が同…時に読者への観光案内になっている点が面白い。また作中に作者の分身であろう人物が登場しこの小説の企画自体の裏話まで語らせる入れ子構造になっており、ここでも読者を共犯者として取り込むあたりはお見事である。どこまでが真実でどこからがフィクションなのかを想像しながら読むのが本書の楽しみ方の1つだと思う。 続きを読む
投稿日:2013.12.13
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老人と宇宙
ジョン スコルジー, 内田 昌之 / ハヤカワ文庫SF
ゼロ年代SFの傑作、SF好きなら読むしかないでしょう!
21
さすがにヨボヨボの老人が戦争するはずないとは思っていましたが、コロニー防衛軍が持つオーバーテクノロジーと絡めて背景説明から入隊までの過程を紹介する第一部は素直に楽しく面白い。人類の永遠の夢である若返り…。しかも経験値をそのままに若返ることができれば…という反則技は、SFの定番であり王道。読んでいてワクワクします。第二部では入隊後の訓練から実戦、理解できない決して相容れることない多種多様な異星人を相手に戦う日々。ここは数多あるミリタリーSFと同じく超人的な能力と新兵器で活躍する主人公ペリーに同化し興奮します。そしてクライマックスの第三部。コロニー防衛軍の最強部隊ゴースト部隊との共同作戦と運命の出会い。ナノテクなどのオーバーテクノロジーを超えた先にあるものについて考えさせられる展開に。最後はベタですが、嫌いではない終わり方。
作者スコルジーのデビュー作にして代表作でもある本作は、「火星の人」と同じく(というかこちらが大分先)出版するあてもなくウェブで公開していた処、人気に火がつきアレよアレよという間にベストセラーに躍り出たと言うアメリカンドリームを成し遂げた作品。邦題を見るとヘミングウェイのパクりっぽく見えますが中身は至って野太いミリタリーSFで現在(2016年)5作品が出版されているシリーズモノ。
どれも安定の面白さで内容はシリアスですがどこかユーモラスで洒落が効いた話ばかり。本作の謳い文句は「宇宙の戦士」の21世紀版ですが、私的にはブリンの「知性化シリーズ」っぽいかなぁと思いました。何せ異星人が沢山出てくるので。
とにかくようやく電子化された海外ゼロ年代SFの傑作、SF好きなら読むしかないでしょう!
続きを読む投稿日:2016.03.01
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機動戦士ガンダム THE ORIGIN(5)
安彦良和, 矢立肇, 富野由悠季, 大河原邦男 / 角川コミックス・エース
ザクとは違うのだよ!ザクとは!
19
劇場版Ⅰの最終シーンとして印象的なガルマの国葬とギレンのアジテーション。そしてアムロの前に立ちはだかる新たな敵ランバ・ラル。また今回、「坊やだからさ・・」とつぶやいた後、アニメ本編から消え、ジャブロー…内での戦闘でアムロの前に現れるまで赤い彗星が何をしていたのかがオリジナルエピソードとして描かれます。本編がアムロを主役に据えているのでどうしても連邦からの視点が多くなっていることを考えると漫画でジオンサイドの話が補完されるのは大変うれしい。 続きを読む
投稿日:2014.09.25
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スカイ・クロラ
森博嗣 / C★NOVELS BIBLIOTHEQUE
押井守が映画化したので読んでみた。
19
押井守が好きそうな話ではある。どうやらパラレルワールド?死なない歳をとらない「キルドレ」が、民間(会社)として戦争代行して戦っているようなのだが。。。本作だけ読んでは何がなんだかわからんというのが正直…な感想。シリーズは5巻で完結しているようですが、どうやら刊行順と小説内の時系列が一致しているわけではなく第1巻は、シリーズでは最終巻にあたるようなのだ。・・・・確かにそれなら読んでいてもわからんわけだ。
本作は、雰囲気で読む、そして読み終わった後にも何も残らないというのが正直な感想。一人称で淡々と語るスタイルなのですが物語としてみた場合、作者が何を語りたいのかが見えてこないし、感情移入できる人物が登場するわけでもないので読み切るだけで精一杯でした。まあ、完結しているわけではないので評価のしようがないのですが・・・。
作者の推理モノは面白かったのになあ。 続きを読む投稿日:2014.04.09