
総合評価
(1123件)| 425 | ||
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powered by ブクログ9.11後の徹底した管理社会を背景としたSFだけど、物語の主題はそこにはあらず。 人間の感覚や言語、心が主題となる、一見SFらしくない内容ではあるが、非常に読み応えのある作品。
0投稿日: 2013.05.09
powered by ブクログどっぷりと伊藤計劃の世界に浸ることができた。SFらしく今はない未来の乗りものや兵器が登場する。それらをそれほど細かく描写しているわけではないのに、適格な言葉により明確にイメージすることができた。最後の1行まで飽きることなく一気に読むことができた。もう新しい作品を読めないことがとても残念だ。
1投稿日: 2013.05.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
昔、人間は「甘い」食べ物や「脂質」を多く含んだ食べ物には、なかなかありつけなかった。だから今、それがダイエットの天敵になろうとも、人間には深く刻まれていて、逆らえない。人間の身体が左右対称なのは、昔、魚として海を泳いでいたときの名残だ。男性が会話ですぐに結果を出そうとするのは、狩りをしていたから、女性が感情を確認し合うための会話をするのは、木の実を取っていたから。今の俺たち人間は、進化の過程に捕らわれている。最初からこの形で作られたのではなく、環境に合わせてその場その場で変わってきた。目標が最初からあったわけではない、眼球の作りはそれを教えてくれる。 人間は進化の過程で、「美味しい」とともに「協調」を「利他的」行動を会得した。レミングは集団自殺をしない。そもそも遺伝子は種の保存など考えていない。生物は自らの遺伝子を残すために生きている。ライオンの雄が他の雄から群れを乗っ取ったときに、群れの(自律できない)子供を殺す。そうすると、群れの雌は新しい雄に対して発情する。妊娠中のネズミが臭いの嗅いだことのない雄に出会うと、流産する。インドでは結婚の当てがないカースト最上位の女の子を中絶する。それらは全て自らの遺伝子を残すため。可能な限り自分に近い遺伝子を残す。それが主題だ。――しかし、「コンドームには人類の英知が詰まっている」なんて俺は言っている。コンドームを使えると言うことは既に人間は、遺伝子の縛りから解き放されているということだ。 さて、話がそれるというか、知識自慢なってしまうのが俺の感想文。本題に戻ろう。この小説の題名は「虐殺器官」、進化の過程で人間は「虐殺」を得て、フェロモンの代わりに「言葉」で「良心」をマスキングし伝播する、そういう器官のお話。ここで、フェロモンによって集団行動する生物の名でもあげられれば知識自慢に箔がつくというものだが、残念ながら思いつかなかった。そもそも、これは感想文である。知識を自慢する場ではない。感想を書こう。 色々と書くことがあるような無いような感じだが、まずは「良心」について書いてみよう。良心が魂などとは関係なく、進化の過程で生まれたものだとする。なら、良心は「お菓子」を食べて「美味しい」と思うようなものではないか、「失敗した料理」を食べて「まずい」と思うように、「人」を殺して「罪悪感に襲われる」。それに「良心」やら「善悪」という名前をつけ、ご大層なモノとして扱われる。まずい料理は食べたくないし、人を殺したくはない。うん、わかりやすい理由だ。 虐殺を悪とする、虐殺を否定する「良心」も進化で生まれたモノだとし、「虐殺」もまた進化の過程で生まれたとしたら、どちらかが間違っているというわけでもないのだろう。「良心」を肯定し「虐殺」を否定するなら、それぞれの価値を決め付けるというのなら、それこそが「言葉」だ。言葉には物事を祭り上げる機能も貶める機能もある、そもそも言葉がなければ「価値」という概念も生まれない。虐殺が悪だから、「虐殺は悪だ」という言葉が生まれるのか、「虐殺は悪だ」という言葉によって、虐殺は悪と定義されたのか。「良心」が祭り上げられるのは、祭り上げる価値があったからなのか、祭り上げられたから「良心」が価値を持ったのか。味の好みは味蕾の数によって決まる、味蕾の数は遺伝子によって決まる。善悪は言葉の情報によってきまる、言葉の情報はミームによって決まるのだろうか? 虐殺の文法というものが無くとも、人は言葉によって「良心」をマスキングされる。ネットでよく見かける例は「正義」を振りかざし「叩く」人たちだ。「犯罪」とされるような行動を取った者は「悪」とされる。叩く者は正義になる。「犯罪」とは便利な「言葉」だ、犯罪の名がつけばそれは即ち「悪」とされる。深く考えなくて良い、「犯罪なら悪じゃないか」、と。それは思考停止を招く、扉を開けばもっと奥に部屋があるのに、「犯罪」と書いてある扉を見つければ、それで全てがわかったかのようにそこで立ち止まってしまう。それが言葉の力だ。 ネットの言葉では「中二病」という言葉がある。それは恥ずかしいモノとされる。会話で「それって中二病だよね」との台詞が出ると、何かが解決したかのような気になり、その会話はそこで終了する。もっと深くつっこめばそれぞれのもっと違う部分に触れることが出来るのに、わかりやすい名前をつけて満足する。言葉には「物事をわかった気にさせる力」がある。「物事を決め付ける力」がある。「ニート」だと聞けば「やる気がないよね」と、「犯罪者」と聞けば「悪人だよね」で終わる。それぞれには一言では終わらない物語があるはずなのに、言葉は全てをひとまとめにする。それは虐殺である。一つの言葉生まれたことによって、他の言葉は滅ぼされた。 「虐殺器官」、その物語の最後で、主人公は自らを見ていなかった母の瞳を知る。俺たち人間は「虐殺」の言葉だけを聞いて、現場の人たちを見ていない。「犯罪」の言葉だけを見て、その人を見つめていない。「ニート」で終わらせて、その人間を真に見てはいない。俺は物語を書く身だ。だから、一言で終わらさず、ひたすら文字を綴ろうじゃないか、「美味しい」とい単語を使わずに、料理の美味しさを表してこそ作家だ。犯罪者も「犯罪」を抜きにして、その人間を語ることができる。「虐殺」という言葉の奥に秘められている、美しさだってきっと書き出すことが出来る、そう、美しいという言葉を使わずとも、それを読者の心に刻み込める。そして、その情報はミームとして世界を渡るだろう。俺が死んだ後もずっと――。
2投稿日: 2013.05.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
先進国での自身の生活を発展途上国のテロリストから守るために、発展途上国で内戦を「言語セット・文法」で促進する、という動機の犯人を追う、軍人が主人公。オチは、米国内で同じ「文法」で内戦を誘発するという復讐。ハイテクの軍事小道具もナカナカ。主人公のモノローグが中心で、雰囲気は『神聖喜劇』。 とっつきにくいが100頁を超えると400頁の最後まで一気に進む。
0投稿日: 2013.04.28
powered by ブクログ薦められて著者に関する予備知識が全くない状態で読みました。 久々にどっしりした作品にあった気がしました。SFはニガテ意識が先行してしまうのですが、この人の作品は近未来、または実際在り得たかもしれない世界、もしくはパラレルワールドのよう。なのでぐっとその世界に入ることが出来ました。 エピローグがせつなかった。
1投稿日: 2013.04.26
powered by ブクログ9.11後の世界の戦争を描いたSF小説、になるのかな?普段はあんまり読まないジャンルだったせいか、ちょい読みづらかったけど、まあ、面白かったです。 淡々とした文体のせいでなかなか感情移入しづらいんだけど、そんな文体自体がこの近未来の世界を表現する道具になっているという。 うーん、しかし「虐殺の文法」についてはもちっと現実感のある説明が欲しかったなあ。
0投稿日: 2013.04.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「人々は見たいものしか見ない。世界がどういう悲惨に覆われているか、気にもしない。見れば自分が無力感に襲われるだけだし、あるいは本当に無力な人間が、自分は無力だと居直って怠惰の言い訳をするだけだ。」 この文章一つに出会うために読んだ本と言っても過言ではないぐらい今の自分にはぴったり当てはまる言葉だなと思う。見たいものしか見ず、見たくないものからは背を向け、逃げる。その先に行くのが怖い。なぜなら自分が無力だとわかってしまったからだ。無力だという言葉が自分から発せられた意思なのかわからないぐらい、淡い希望なんていうのも持ち合わせているから、嫌になる。
0投稿日: 2013.04.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
テロへの対策として、個人認証によるセキュリティが都市中にあふれている近未来の監視社会。軍の暗殺部隊所属の主人公は、世界中のテロの中心にいる人物を追ううちに... 現代の対テロ戦争物で、戦闘シーンもそこそこあるが、主眼そこにはないのだろう。 ハイテク装備や薬物による感覚の遮断、カウンセリングによる思考抑制により、暗殺をしても殺人をしている実感のなかった主人公が、母親の延命治療を中止してしまったことの罪の意識に苦しむ違和感。紛争がありふれる世の中になってしまったため、マスコミが目立つ事実のみ報道するようになったため、紛争の現場と先進国で「ピザを食べながら紛争の報道をみる人々」との間に大きな隔たりが生じている世界。主人公に対する思考抑制とジョンの煽動の相違。 こういったところが、印象に残る。 この作者の次の作品であるハーモニーを先に読んだが、ハーモニーのテーマとしている「人間とは?」「完璧な世界とは?」という内容の前段階といえばその通り。思考抑制は人間性を踏みにじってるといえるのか、「ピザを食べながら紛争の報道をみる人々」の生活を守るために紛争を起こすジョンの行動は、それらの疑問につながっているように感じられる。 ハーモニーのほうが、よりそれらの内容が直接的に書かれているが違いか。もっとこの作者の作品を読んでみたかった。残念。
1投稿日: 2013.04.16
powered by ブクログ稚拙で子どもっぽいハードボイルド。作者自身の集中力が最後まで持たなかったのが伝わってくる。それは病気のせいだろうか?才能は感じるけれど、帯の煽りを鵜呑みにしてバカをみた。
0投稿日: 2013.04.14
powered by ブクログ読んでて思い出したのはジェノサイド。でも実際にはこっちのが先に出版されてるから、その時系列通りに読んでたら、もっとインパクト強かったかも。それくらい、強烈な印象の残る作品。どちらもそうだけど、世界規模で描かれてるからスケール感も圧巻だし、犯人のイタイってかぶっ飛んだ感性も外人だから納得的なところも。いやいや、面白かったす。
0投稿日: 2013.04.11
powered by ブクログ伊藤計劃の才能の凄さを肌で感じる事の出来る作品。SFというジャンルを装いながら実は、愛と贖罪と生きる意味を考えさせられる、ジャンルの枠に縛られない壮大で衝撃的な芸術作品ではないか。戦場の惨たらしい描写、虐殺を司る器官の謎、愛するものの死への贖罪、全世界的な戦争ビジネス、近未来のナノテクロボットなど、どれもリアリティのある描写は素晴らしいし、それぞれがお互いの魅力を殺さないようなバランスで配置されているおかげで、いつ自分に降りかかってもおかしくないようなリアルな緊張感があれば、一方では良い未来の実現の為にまだ猶予が残されているような希望も持たせてくれる面もある。あとがきにあるとおり世界的SF作品として評された事実に違わない、一読の価値のある一冊だと思う。
1投稿日: 2013.04.07
powered by ブクログ映画時評集を買った際、なんとなく気になっていたんでついでに伊藤計劃を全部買ってしまった。 SFは全然詳しくないけど、面白く読めた。医学表現で間違っているところがあるのと同様、科学的にも間違っている/噴飯物な部分が多々あるんだろうけど(それがSFが苦手な理由だ)、それを差し引いたストーリーとして面白かった。 タイトルの「虐殺器官」のミーニングはジョンポールであり、主人公であり、押し並べては人類全てに敷衍することができる。 主人公の戦闘前カウンセリングその他は、敵の戦闘兵と同じことをやっているよなー、ジョンポールの虐殺の文法と全く一緒だよなー、って読んでいて思っていたらまさにそうで、そこが肝。 作者はこの話を10日間程度で書いた、っていうことだけど、その真偽は別に、若くしてこれだけのストーリーを短期間で作り上げた、才能はいかばかりだったろう。 夭折していなかったら読まなかったであろう小説だったが読んで良かった。
0投稿日: 2013.04.06
powered by ブクログ感情の表現が細かいのに自己陶酔に陥らず、特に母親の事を「考えるのに疲れ果てた」と言う表現使うと事か、すげぇなぁ…って。最初クラヴィスは物凄く若い、もしくは実は少年なんじゃ…と思った。それが職務とは言え遺体を物と捉えられる彼のある種の精神面での極度に未熟な部分の現れで、それが膨大な文章を読んでいるだけで読者が感じてしまうと言う作者の表現方法が…圧巻でした。具体的に性格や性質を説明している訳じゃないのに読者に感じさせてしまう、と言う書き方が…。ルツィアの肉体を見てやっと物ではないと気付いた下りとか…ラストは『ザ・ロード』の社会が崩壊する下りの序章を描いている様で、とにかく圧倒されちゃいました。もう1回読みたい本です。小説は滅多に読み返しはしないんですが『ザ・ロード』もそうでしたが、暫く手元に置いて気付いたらめくってる気がする。
0投稿日: 2013.04.05
powered by ブクログ近未来の軍事諜報SF。主人公の夢と現実に対する認識と、自分自身の考えが一部シンクロしながら、最後まで読み続けてしまいました。ミステリーとしてもおすすめです。
0投稿日: 2013.04.04
powered by ブクログなんて小説だ!!! 信じられん。もはや何と言っていいのか、わからん。 レビューのしようもない。あまりに圧倒的すぎる。
0投稿日: 2013.04.03
powered by ブクログ脳科学の発展と反比例するように電脳の開発(?)が下火になっていったという記述が印象的だった。 こういう、絶対的に定義していた自己が、相対的に判断する状況にさらされた時に揺らぐっていう戦争やSFの話はとても好みなので、最後1/3は時間の許す限りに読みまくってしまった。 地獄の黙示録をまた見たくなった。途中で寝るけど。
0投稿日: 2013.03.30
powered by ブクログ言葉の力がテーマのひとつだけに、全体から力を感じる。自分たちの世界を守るため、敢えて反勢力同士を戦わせるという発想力。あながちフィクションに留まらないと、思えてしまう。
1投稿日: 2013.03.21
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
宮部みゆきさんの「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」と言わしめた煽り文句は衝撃的だった。SFを読もうか、と探していたときにみつけた本の帯にはそう書かれていたのである。手に取ると、タイトルは虐殺器管。なんと攻撃的なタイトルだろう。ハードボイルドでダンディな紳士に憧れる私はそれを手にとった。 9.11以降のおそらくそう遠くない未来が描かれている。主人公はぼくこと、クラヴィス・シェパード大尉。米国情報軍に所属する軍人だ。暗殺を生業とする彼には人を殺す術の冷静な判断や方法が備わっている。彼はかつて失った母の影と対話しながら、虐殺の度、その存在をちらつかせる謎の男ジョン・ポールなる人物を逮捕すべく追い、虐殺の泥沼へと足を踏み入れていく。 読み始めはどこがSFなんだ?と思うくらい自然な社会が構築されている。舞台である時代の管理社会、戦闘に用いられるテクノロジーは現存の科学では実証されていないものばかりだが、永久不滅のドミノ・ピザや日本人のイメージするアメリカ像はそのままで、色濃く現代からの延長線上であることに違和感を抱かせない。 大量殺戮を引き起こす虐殺の器官のアイデアははっとさせるものがある。古来より信じられている本能論にまつわるそれらは、現代を通しても語り継がれるようにたしかに存在している。ときおり暴発する無作為な攻撃性、害悪と判断したものの存在のお陰で生存できる善良。虐殺という俗に言うアイキャッチな言葉を選んだ先にあるテーマに、常々考えていた曖昧なものを小説という形で明確化させてくれるよい作品に出会えたと感じた。 この作品は第七回小松左京賞に応募するも落選したものらしい。解説に乗せられた選評を読むと、確かに納得せざるを得ない部分もあった。たしかに「え?」と思う部分を言い当てていた。しかし物語の精度としては評価されるように素晴らしいものだと拙いながらも理解できた。構成も段階を踏み、流れるように進み、終末へと収束する。構成そのものが綺麗なのだ。ときたま頭の出来のせいで理解度が低いために作品をいまいち呑み込めない私ですらそう思う。 翻訳家大森望さんが伊藤計劃の作家歴と共にしたためてくれた解説ですら、新たな価値観を与えてくれる。作品に対し載せられている作家たちのコメントや、伊東さんの作家歴や抜粋された日記から覗く人柄すらも興味深く綴られている。どうか作品を読んだ後にあとがきや解説や読まない人もよければ目を通してほしい。
1投稿日: 2013.03.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
近未来の戦争のお話。未来の高度な技術や兵器を駆使した戦争、PMF、遺伝子、ミーム、こういったパーツから構成される話はメタルギアシリーズの影響が強いなあ、という感じだった。作者が同シリーズのノベライズをやっているし。作中で、ちらっとリボルバー・オセロットらしき人物が出てくるところもあって、メタルギアシリーズファンはニヤッとすることうけあい。戦闘と日常の対比は面白かった。しかし、最後の主人公の行動が唐突に感じた。もっとルツィアと主人公のやり取りがあったほうが、オチに説得力があるように思う。
0投稿日: 2013.03.16
powered by ブクログ話題になりすぎていたのでちょっと敬遠しておりました。暫く予約が多かったので下火になった頃図書館で借りました。うん、素直にもっと早く読めば良かったという感想です。 もしこの作品がSFだから、とジャンルで読まない人が居たら非常に残念だなあと思った作品です。 個人的に湾岸戦争が勃発した時にアメリカに居たので遠い海の向こうの戦争と言うものを非常に恐ろしく感じた事を強く記憶しております。新聞、テレビ、ニュースでしか知らない戦争。確かに家族が軍隊に所属していて派遣された、と言う同級生も居ましたが基本的には肌で感じない戦争と言うものを知り、自分の国が焼かれない戦争と言うスタンスが今までのアメリカの戦争だったのかなと恐ろしく思ったことを覚えております。(勿論、独立戦争や南北戦争は自国での戦争ですが)その経験も踏まえて、海外の戦争により国内が一枚岩になり平和が(国内だけでも)訪れるという考えは個人的には賛同出来かねます。そこには攻撃を加えている国への恐れがあり、差別がある。bowling for columbineでは国外への攻撃によって内乱がおこるように捉えられていましたしね。 正直第一章で何だろう?と思ったのですが第二章がぞくぞくするほど面白かった。こういう小説を書ける人が日本にも居たんだ!と言うような。ジョン・ポールと接触してしまい虐殺器官が何かと言うトリックを知ってしまうとちょっとえ?っとなりましたがそれでも最後まで緊張感が続き最後まで一気によまさせられました。人の死に真っ向から立ち向かった作品と言えるのではないでしょうか。そこにキリスト教的精神論が出てこないのがまた面白かったです。これはキリスト教圏の人間は書くのが難しいだろうなあと思いその辺りも面白かったです。 作者が夭逝されたのは非常に残念です。もっともっと作品を読んでみたかった。優れた小説家を失った事を惜しいなあと思います。個人的にはSFを書いてくれてありがとうではなく、面白い小説を書いてくれてありがとう、と言いたいです。
0投稿日: 2013.03.13
powered by ブクログあまりSFを読まないせいか、読了まで1ヶ月以上かかってしまいました。 主人公は暗殺部隊の一員で、凄い戦場に行っているにも関わらず、淡々とした語り口で話が進んでいく印象でした。近未来での戦いも印象的でしたが、ラストへの展開は圧倒的で、その世界へ引き込まれたような気分です。
0投稿日: 2013.03.09
powered by ブクログ来世紀、人間もICタグで管理され通貨もいらずシステムに照会すれば人生も閲覧できる この設定は他の作品でも見たことがあったけどよりリアリティがあった 無くはない未来 倫理的問題がクリアできるのなら人間にタグが付く日も遠くない 虐殺文法って本当にあるのかな 死者の表現は目をそむけたくなるような文章ではあるけれど それはまちがいなく現在の世界のどこかに見えないだけであるんだろう 読みごたえがあって濃かった!
0投稿日: 2013.03.06
powered by ブクログ第30回日本SF大賞受賞。虐殺といえば、最近読んだ本で『ジェノサイト』が有名である。こちらの『虐殺器官』はそれよりも5年前に出版された本である。小説の舞台は近未来であり、イスラムの過激派がサラエボを核爆弾で地上から消え去った後の世界を描いている。アメリカの特殊部隊に所属する主人公は国家の指令で暗殺を仕事としている。非常に観念的な小説である。小説のエンターテイメント性よりもテロと戦う兵士のこころの葛藤を深くほりさげる。どちらかというと社会風刺的SF小説の印象だ。
0投稿日: 2013.03.01
powered by ブクログ難解。 やはりSFはややこしい。 戦争関連の話はあまり好きじゃないからか頭になかなか入ってこない。 それでもこの人の文章やセンスには心惹かれた。 亡くなったのが本当に残念。 もっと色んな作品を読みたかった。 ハーモニーも読んでみよう。 また人は虐殺の文法を歌う。
0投稿日: 2013.03.01
powered by ブクログ文章力はあると思う。ただ読んでるのが本当にしんどかった。 内容的にはなんとも言い難いんだが、総じて言えば「普通」 ラストで主人公が唐突にルツィアやジョンポールに傾倒したように見えた瞬間は結構イラッとしたんだが、結局エピローグに到って「そっち側」を選んでいたことで納得できた。 ただ世間ほど私はこの作品を絶賛できない。内容が、ではなく小説として読みにくかったから。 センセーショナルな内容ではあるだろうが、価値観に影響をあたえるほどの衝撃はないかな…
0投稿日: 2013.02.28
powered by ブクログ話題作を、やっと読んだ。 新しいSFは挫折する事が多いのだけど何とか持ちこたえて… 虐殺を進める言霊?ってどんな物だかもうちょっと示して欲しかった。
0投稿日: 2013.02.27
powered by ブクログ疲れた。 閉塞感の立ち籠める文章に辟易。さいさい挟まれる小ネタも無知ゆえ読むのに難儀した。さすがに「藤原とうふ店」には吹き出したけど。 それはさておき、第四部からは急に引き込まれた。というのも主人公クラヴィス・シェパード大尉の懊悩が乗り移ったかのような感覚に陥ったためだ。 語り手のシェパード大尉が作戦行動中、心理カウンセリングと痛覚マスキングを施されていることが、一人称小説である本作を読む上で重要な要素だと感じた。 そう意識しながら読み進めると、彼のドライな語り口から彼自身の通常と乖離した感覚がまざまざと伝わってくる。 脈絡はなさそうだが、読後ぼんやりと太宰の『人間失格』を連想した。
0投稿日: 2013.02.27
powered by ブクログ虐殺の文法。 仕事だからという言い訳は、人から罪の意識を奪っていく。軍人は仕事だから人を殺すかもしれないし。 少し、自分が好む本のペーストは違うかもしれないが、面白かった。
0投稿日: 2013.02.25
powered by ブクログ自由と秩序、脳と魂、戦争と良心、などなど さまざまなジレンマに悩む「ぼく」。 ジレンマに絶対の正解はなく、立場が違えば正解も変わる。 正しいという確信もなく「選択」は行われ、 その選択は自分が行ったのかどうか、なんてことでも悩む。 最後に「ぼく」がとった行動は正しかったのか? 決して正しくはないと思うし、むしろ悪ともいえる。 しかし「ぼく」は自分の意思で選択した。 その結果に対する責任の大きさを理解した上で。 だから決して共感できないし、 もっと平和な、皆が幸せな解決があると信じたいが、 読後には不思議な爽快感があった。
0投稿日: 2013.02.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初めて読み終えたSF小説。 今のところまだ一度目の完走で何を書いていいのか・・・悩む。 いろいろな専門用語やら、「虐殺の文法」なる話の中核の部分がわかっているようで、わかっていない。 ただいえることは、この「虐殺の文法」ってどういうものか知りたくなるくらい、この本には中毒性があった。 また機会があれば読み返したい。
0投稿日: 2013.02.20
powered by ブクログ内容が拙くて読むのがだるかった ライトノベルの一冊として時間潰しとして何とかならない事もないだろうけど
0投稿日: 2013.02.19
powered by ブクログ帯につられて買って二年寝かせたけど、100ページほどで心が折れてしまったよね。おもしろい、すごいって言わなあかん雰囲気があるけど、まだ全然おもんなかったし、なんせ、しんどかったー。 また寝かせてから挑戦する。 いや、せえへんか。雨に濡れてしまったから売るにも売れない。 誰か、あげるよ。
0投稿日: 2013.02.18
powered by ブクログ9.11の同時多発テロ以降、徹底的な管理体制のもと先進諸国が"平和"を取り戻した一方で、 後進諸国では内乱や虐殺が急激に増加していた。 異常なまでの混乱の多発、 世界の"平和"のため、首謀者を殺害すべく近付く米軍大尉が目にするのは…自ら起こした殺戮に困惑する彼らの姿。 その影にいつも存在を囁かれるのは1人の男… 大量殺戮を誘発する「虐殺の器官」とは一体何なのか? 伊藤計劃が放つ0年代SFフィクション。 *** 物凄いです。 もう本当に…凄いの一言。 過去にレビューを書いた「ハーモニー」と同じ方の作品です。 若くして亡くなった彼を惜しむ声に本当に共感します。 ちなみにハーモニーは虐殺器官より後のお話。 世界が絶対的な生命至上主義を掲げる未来、体に組み込まれた医療チップの外部操作によって同時刻に7000人が突発的に自殺する。 こっちも衝撃的な内容です。 SF好きな方もそうでない方もぜひ。
0投稿日: 2013.02.05
powered by ブクログ非常におもしろかった。なぜ彼が虐殺を生み出すのか、その理由を知ったとき、ああこれは今の世界にもあるエゴと矛盾なのだ、とすごく納得できた。 とにかく人に勧めまくっています。
0投稿日: 2013.02.04
powered by ブクログ年末に友人に薦められて手にとった。 正直、SFはそれほど好きな分野ではないがスムーズに読み進めることが出来た。 出てくるシステムや環境が地に足が着いたアイデアで想像しやすかったのが原因かな。 突飛過ぎるとひいてしまうことがあるので。 近未来って設定のSFが良ったんだろうな。 文章も読みやすく、人物描写もストーリーを追うごとに内容が見えてきてミステリーを読んでいるような感覚に陥る。 逆に人物もしっかり描かれている、生身っぽいからこそSFの設定に違和感を覚えてしまったりもして。 それを言っちゃ、SF読むなって話になるのかもしれないけど。 良質なエンターテイメントであることは間違いない。 SFもまた読んでみようかなって気になりました。 素直に面白かったです。
0投稿日: 2013.02.02
powered by ブクログ物理的に目に見える肉体だけが、人間が持ち得る「器官」なのだろうか? 本当は、「目に見えない感受性器官」を備えているんじゃないだろうか?という問いを、米軍特殊部隊の一兵卒の身に起こるテロ撲滅作戦の過程から解き明かしていく、人類学×進化論×ミリタリーの混在小説。 犯人を追い詰めていくミリタリー&ミステリー小説の体裁をとっていながら、「人間が持っているかもしれない、ある力の可能性」を、引いた目線で語っていく作者の視点に痺れる。 その可能性のベースは、『ドグラ・マグラ』やミーム概念を唱えたリチャード・ドーキンスの著作の延長線上にあるように感じられたけれど、それをミリタリー小説の手に汗握るやり取りの中に織り込んだのは、読みやすさという意味でも謎解きの快感という意味でも、上手だ。 「情報の認知」に対する考え方がちりばめられているのも興味深い。以下に「へ〜」と思った一文を抜粋。 ********* 「情報を発信するのは用意だが、注目を集めるのはより難しくなっている。世界は自分の欲する情報にしか興味が無く、それはつまり情報そのものは普通に資本主義の商品に過ぎないということだった」 「実際には、ヒトの現実認識は言語とはあまり関係がない。どこにいたって、どこに育っても、現実は言語に規定されてしまうほどあやふやではない。思考は言語に先行する。思考が対象とするさまざまな要素の中に言語が含まれていて、それを取り扱っている。言語は思考の対象であて、思考より大きな枠ではない。それは、ビーバーは歯が進化した生き物だから、歯で思考しているに違いない、と言っているに等しい」 「ことばは、人間が生存適応の過程で獲得した進化の産物よ。人間という種の進化は、個体が生存のために、他の存在と自らを比較してシミュレートする―つまり、予想する、という思考を可能にしたの。情報を個体間で比較するために、自分と他人、つまり自我というものが発生した。<中略>やがてそれぞれの個体が『予測』した情報を個体間で交換するために、ことばは発生し、進化したの。自分が体験していない情報のデータベースを構築して、より生存適応性を高めるために。ほかの器官がいまそうあるのと変わらないような、ね」 ************ 以上。 SFが研究者たちの情熱を煽ることで、未来へのひとつの羅針盤となるように、この本のような近未来の情報戦小説は「情報に関わる仕事の今後」を冷静、かつ大胆に予測しているようにも思える。
0投稿日: 2013.02.02
powered by ブクログ多くの人に評価されるだけあって素晴らしい小説でした。 グロいし重いしなのに読み始めると止められない。 ハーモニーももう一度読みます。 作者が若くして亡くなってしまったのがほんとに悔やまれます。 素晴らしい作品を残してくれてありがとうございます。
0投稿日: 2013.01.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「ハーモニー」の原型といった印象を受けた。先にハーモニーを読んでいたせいか、特に言うことは無い。あとオチも弱い。 あたかも痛覚マスキングを施されているような、描写ではなく説明じみた独白。
0投稿日: 2013.01.21
powered by ブクログ近未来SFと言ったジャンルになるのだろうか。読み終わった瞬間、かなりの衝撃を受けた。これがデビュー作で、しかしその後著者が早世してしまったというのが悔やまれる。 伏線が張り巡らされていて、しかもそれに関する明確な説明はなく。それでいて、自分の頭にその世界観が組上がっていく感じ。 テロとの戦いと虐殺、というメインストーリーではあるが、自分が守りたいものを守るためにどういきるか、いかに人間が利他的を装った、利己的な存在であるか。その部分を深くえぐった作品だ。 主人公は、自分は好んで殺人をしているわけではない、という、意思決定の放棄を自分の罪として考えていた訳だが、途中の描写には、戦闘がまるでセクシーなものかのような隠喩が見られた。このときの主人公は、薬とカウンセリングで麻痺している。とはいえ、根本的な部分で人間には破壊願望があることを示しているように思った。 ハーモニーもこのあと読んで、筆者の言葉や戦争、意識に関する考え方をさらに感じた。もう一度読み返したら新たな発見があるだろう。
0投稿日: 2013.01.20
powered by ブクログ初めは読みにくい文体だと思ったが、慣れると大丈夫だった。 特に盛り上がりのある内容ではないが、SFとして世界観の描写が素晴らしい。 読後感に重きを置く私としては、たまらん読後感。 最後の主人公の行動にしろ、色々と説明不足で理由がわからない、と書いてる書評も在るけど別にそんなことないと思う。
0投稿日: 2013.01.18
powered by ブクログ絶望で殺しているんじゃない。 愛する人々を守るためだ。 憎しみの矛先が、いまにもG9に向かいそうな兆候のある国を見つけ出す。 自分たちの貧しさが、自分たちの悲惨さが、ぼくらの自由によってもたらされていることに気がつきそうな国を見つけ出す。 そして、そこに虐殺の文法を播く。 あんたはまた虐殺の文法を歌いはじめる
0投稿日: 2013.01.18
powered by ブクログなるほど、これぞゼロ年代最高のSF。あとがきと同じような感想になってしまうかもしれないけれど、これはSFという形式でありながら、現在の問題に対しての警告?であり現在を生きる自分たちへ訴えかけられているのを感じる。決して近未来の、全くの架空のはなし、ではない。 私たちは見たいものしか見ようとしない。 臨場感もあり、心理制御による心の変化や主人公の罪の意識の描写がとても繊細。そしてラストの締めもなるほど、と思う。感嘆とともに読み終わった。
1投稿日: 2013.01.17
powered by ブクログ何名かにオススメされていたので読んでみました。 近未来。内戦が絶えない世界で暗殺を生業とする主人公が命じられたのは、とある人物の確保。その人物が訪れた国では必ず虐殺が行われる。その方法とは何か。そして、無事に確保できるのか。 他の人が感想を残しているように、設定や情報量は確かにすごいと思います。でも冗長気味かな。 アメリカを守るため、他の国で内戦を引き起こしていたジョンポール。彼は言葉という虐殺器官を使って内戦を引き起こし、最終的に殺害されました。その後、主人公はアメリカ内に内戦を引き起こします。 逮捕して虐殺を止めるどころか、真逆の結末を迎えました。 ジョンポールは頭がいい。主人公たちが自分の近く現れたとき、自分の終焉が近いことを悟ったんじゃないか。そして、同じように教養のある主人公に目を付け、それこそ虐殺器官、虐殺文法を用いて、主人公がアメリカ内の内戦を引き起こすように仕向けたんじゃないか。主人公はアメリカの内戦を見届けたあと、ジョンポールと同じように世界を渡り歩くんじゃないかなぁ、と。そんな気がします。
0投稿日: 2013.01.17
powered by ブクログまだ読了前だけど。 みなさんの評判が凄いので読み始めたのだが、合わないのかなぁ。。。30年近く前だったら、SFとサイバーパンクばかり読んでいたので、もっと楽しめたのかもしれない。
0投稿日: 2013.01.16
powered by ブクログ途上国を扱う小説ということで読んでみたが、まず小説の文章の構成・展開は完ぺきと言ってよく、ほとんど予想できない。SFとしての出来はばっちりだろう。途上国での紛争についても、よくまとまっているし世界認識についても相当なものだと思う。レベルの高い本だし、純粋に面白い。
0投稿日: 2013.01.14
powered by ブクログ9.11後、人と社会が完全に情報管理される世界で激増するようになった虐殺事件を追う、特殊部隊員のお話。 面白いです。重厚。 ハイデガー的な、と読んでるとき思ったけど、なんだっけな。 機械というものが生まれて以来、人型機械であるロボット、というものが考え出され、それと人間が友好関係を築いたり、叛乱を起こされたり、というものをフィクションは想像してきたけど、実際はこういう、人と機械の区別が曖昧になる、っていうのがありそうな未来なんだろうなと思う。 自分と大事な人たちの世界を守るために、外にトラブルを作り出し、自分たちが幸せを感じるために不幸な人を作り出す。 そんな言ってみれば当たり前なことを一級のエンターテインメントに仕立てて突きつけられる話。
0投稿日: 2013.01.13
powered by ブクロググロテスクな描写は苦手だけれど、それでも引き込まれてどんどん読み進めてしまった。 主人公の最後の行動には違和感があるためスッキリしなかったが、とても面白くて考えさせられる作品だった。 この本を読むという選択は間違いじゃなかったです。
0投稿日: 2013.01.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
いま、話題の伊藤計劃の本を読んでみました。著書は1974年生まれ、ということは僕の一つ上。しかしながら、日本SF界にセンセーションを引き起こしたとい言われるこの著者は、作家としての活動期間は3年と短く、この世を去ってしまいました。 2006年に刊行されたこの「虐殺器官」は、最近読んだ「閉じこもるインターネット」的な危機感をあおりながら、9.11以降のテロリズム、国際紛争を繰りながらスパイ小説的な様相を呈しています。「ワーク・シフト」に描かれた近未来的な生活感も感じます。 この勢いで今は「屍者の帝国」を読んでいます。
0投稿日: 2013.01.11
powered by ブクログ年始から細々と読んでいた伊藤計劃のデビュー作。 9.11後の近未来のアメリカが舞台。 先進国が何もかもをタグで管理してテロを一掃した一方で後進国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 その理由を探る米軍大尉クラヴィスは混乱の影に常に姿を現す男•ジョンポールを追っていくが・・・。 「人はなぜ人を殺すのか?」に一つの答えを出した作品なのかなぁと思う。 上手くまとまっているけど、ラストが結構意外。 うーん、全体的に分かるような、分からないような。とりあえず時間を置いて、もう一回読みます。
0投稿日: 2013.01.07
powered by ブクログ誰に『ババ』を引かせるか 国家に雇われた暗殺者である主人公の内証と行動がスピーディーに展開し、ドンドンひきこまれる。 結局、全員が幸せになる事はないということでしょうか… 別の作品も読んでみますが、作者がお亡くなりになってしまったのは残念です…
0投稿日: 2013.01.02
powered by ブクログ―――9・11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。 先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。 米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう… ゼロ年代最高のフィクション、ついに文庫化。 身も蓋もないソリッドなのが読みたくて 『ミサイルマン』と一緒に衝動買いした分 今俺たちが立っている、歴史の積み重ねを前提にして アメリカのWTCビルへ、旅客機が衝突した瞬間に 「この世界」から枝分かれしたパラレルワールドが舞台 近未来SFであり、国際軍事小説であり、現在の世界に対する問題提起でもある。 戦闘行為の圧倒的ディテールと 先進テクノロジーの魅力と ともすれば哲学の領域に踏み込む会話 今まで読んだことのない小説で実に面白かった
0投稿日: 2012.12.30
powered by ブクログ初・伊藤計劃。面白かった。好きな文体、好きな世界観。なんとなくだけどスカイクロラに似てる?安直過ぎだけど(笑)が、故にこれだけの才能がありながら夭折された事が残念でならない。もっと沢山読みたかった。
0投稿日: 2012.12.30
powered by ブクログ【読了レビュー】現代における『罪と罰』。これをSFの中に緻密に表現していると思った。 現代人なら少なからず誰でも持っている「自分の見たいことしか見ない、知りたいことしか知らない」という傾向が、資本主義、民主主義的に発展した未来においては更に支配的になる。 そして、限られた人々だけが、自分のしていることの罪と、その罰について考えることになるだろう、という予言にも受け取れた。 面白かった。
0投稿日: 2012.12.29
powered by ブクログ積ん読になってたのをやっと読み終えた。理由はわからないが非常に読みにくかった。SF 文法に慣れてないからだろうか?
0投稿日: 2012.12.28
powered by ブクログ近未来のシビアな世界情勢が書き込まれているのに、すらすらとイメージを描き読み進めていける文章力と描写力。この才能が紡ぎだす物語がこれ以上増えないことが本当に惜しまれる。
0投稿日: 2012.12.23
powered by ブクログ攻殻機動隊、メタルギアシリーズなど、 SF系フィクションが好きな方にはもってこいの小説だと思います。 世界観と設定が細かく造りこまれているので、 上記が好きな方は特に引き込まれます。 「虐殺」の文法と説く流れや、生体的な軍事兵器のリアリティは大変秀逸かと思います。 ただ、もう少し最後に捻りがほしかったなぁ。というのが本音です。
0投稿日: 2012.12.20
powered by ブクログメタルギアソリッドの世界観を引き継いだ近未来の話。これはもっともっと評価されるべき。でも、作者は34歳で既に逝去されてるそうで。長篇は、これと「ハーモニー」の二作のみだとか。もっと読みたかったなぁ。
0投稿日: 2012.12.20
powered by ブクログ自由とは、選ぶことができるということだ。できることの可能性を捨てて、それを「わたし」の名のもとに選択するということだ。 人間は、見たいものしか見ない。
1投稿日: 2012.12.15
powered by ブクログ心理学の教授が進めていた本。文学部で学んできた、哲学・社会学・心理学の話がうまくミックスされていて、楽しく読むことができた。人の感情やテロの脅威、未来の話ではあるけれど、今の問題、人の内面の問題につい
1投稿日: 2012.12.14
powered by ブクログ本屋で平積みになっているところに、表紙につられて購入。和製SFの傑作。この人の作品をこれからももっとたくさん読みたかった。
0投稿日: 2012.12.10
powered by ブクログ「痛覚マスキング」や「感覚マスキング」による「心理状態の調整」が施された兵士が主力となる近未来の戦争下での物語。 この本の兵士の心理描写が,以前読んだ内田樹氏の『戦争における「人殺し」の心理学』におけるベトナム戦争からの帰還兵の記述とマッチしていて,妙なリアリティを感じた。
0投稿日: 2012.12.08
powered by ブクログ近未来の米国情報軍に所属する主人公が、中東やアジアで虐殺を主導する「虐殺の王」を追うSF小説。脳の構造が解明され、痛みを「知覚」することはできても「感じる」ことはない痛覚マスキング処理や、少年兵を殺害するのに罪悪感を感じないように薬物とカウンセリングによってフィルタリング処理される。実際に起こりえそうで、おぞましい。高度に処理された軍人である主人公は、数々の暗殺と肉親の死に対する、自分自身の「罪」に対する「罰」がないことに苦しむ。「虐殺の王」を追う過程で出会った女性に恋に落ちて、彼女だけが自分を罰す人間だと信じる。 先進国の平和は、発展途上国で終わりのない内戦や紛争で成り立っている。それがなくなった瞬間、テロの牙は先進国を囲う。多くの罪に、無関心である先進国の国民たちに、罪を明示しようとするのが、この本の主題なのか。それとも、日常に潜む自分たちが犯している罪に目を向けよ、と説くのか。安全保障が話題になる今、考えさせられる一冊だと思う。
1投稿日: 2012.12.07
powered by ブクログ圧倒的な空想力と緻密に考察された哲学と問題提起。 SF作品は初めて読んだが、これほどまでに、心理的な側面が大きい物語がSFにあるのかと、ワクワクした。
0投稿日: 2012.12.06
powered by ブクログ近未来が舞台のSF小説。 先ごろ芥川賞作家円城塔氏が書き継ぎ完成させたことで話題になった「屍者の帝国」の作者伊藤計劃の第一長編小説である。 小説を読んでいて鳥肌が立ったのははじめてだ。 いや、喩えではではなくリアルに。 緻密でありながら難解でなく、残酷でありながらエンターテイメント性も失っていない。 すごい小説だ。
2投稿日: 2012.12.06
powered by ブクログSF。理系的な技術やモノにあふれた世界にいながら、主人公は内省的な性格の軍人で、彼の思考や会話は文系的で面白かった。 ミーム形成に対する言語の影響は興味深い。 なにげなく書かれている同僚との軽口のやりとりがすごくいい。 藤原とうふ店のハチロクが未来の海外で活躍していてなにより。
0投稿日: 2012.12.06
powered by ブクログ人間は、どこまで自由になれるのか。 自由意志が、脳によって構造的にプログラムされたもの、遺伝的に行動が決められているとしたら。 ハイテク、情報化の世界で、絶対勝利部隊の主人公。 反面、併せ持ったナイーブさ。 これからの自由のありかたについて問うていると思う。 「人は、選べる。」 殺すのも、生きるのも。 主体的に生きる。 情報化されていることに満足している社会。 それ、今の日本だ。 人が自由なのは、みずから自由を捨てられるから。
0投稿日: 2012.12.03
powered by ブクログ社会科学や人文科学、医学等、様々なジャンルの幅広い素養が伺える。あっという間に読んでしまう。読後感はとても重い。
0投稿日: 2012.12.03
powered by ブクログ長いこと積ん読になってたのを一気に読んだ。 ジャンルはSFらしいが、なんというか道具がSFで言いたいことは別にある感じ。自分て何?言葉って何?みたいな哲学的な内容もあった。 あくまで道具としてのハイテクなのでそこまで詳しく説明はしてない。話を広げようと思えばもっと広がる。 面白い…けど前評判が高かった分物足りなさも感じた。 あと超絶スペシャリストなのかと思えば簡単に襲撃されたり後ろとられたりしてるよね、そこは違和感あった。
0投稿日: 2012.12.01
powered by ブクログどちらかといえば好き、ではない。けれど、作者が下地に持っている読書量や知識と想像力の奥行きの深さに触れ、出版された作品の少なさを残念に思う。 本書にて扱う材料は、残虐的で暴力的で苦しくて割り切れない。だがそれをつなぎ、ならべる文章はていねいできれいでうつくしい。文章はとても好きだ。 他人を巻き込み何かをしようとする時、多分犠牲を出さないことはない。器官に徹するか脳になって疑うか、生死が関わらなくてもそれは常に側にある。
0投稿日: 2012.12.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
前から気になっていた作者。すでに亡くなっていた事を今更ながら知りました。作者の名前が固く、小難しいのかなとおもったが全然そんなことなく、勝手にイメージしていた内容もちがっておもしろかった。表現がややグロテスクだが、面白い内容でした。残された作品は数少ないが読んでみようとおもう。
0投稿日: 2012.11.30
powered by ブクログ筆力の高さは感じたがそのせいで少々わかりにくい言い回し も生まれているように思った。ちょっとお固いイメージ 作者の世界観と表現力の高さに脱帽
0投稿日: 2012.11.28
powered by ブクログ世界中で起こる内戦や大量虐殺の裏で暗躍する男を追跡する米軍人の話。というわけで、話の骨子は面白いのだが、それに肉付けされた知識が時にマニアックかつ細かすぎて、所々読みにくかった。
0投稿日: 2012.11.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
主人公は特殊任務を受けて作戦を遂行する。 何度も暗殺命令が下るジョン・ポールという男は何者なのか。何故、彼の行く先々で虐殺が起こるのか。 先に「ハーモニー」を読んでいたからか、ジョン・ポールの動機や主人公がラストでとる行動なども理解しやすかった。 とても面白かった。
0投稿日: 2012.11.18
powered by ブクログ久しぶりに一気読みした。1/3あたりでネタが予想できてしまったけれど、それでも十分楽しめた。ほぼ同じ文章が何回も出てくるのってこの方の手法なのかな。デジャブったかと思った。
0投稿日: 2012.11.16
powered by ブクログまあSFなんだろうな、と軽い先入観を持っていたら裏切られた。。 不条理でテクノロジーな世界を、詩的に紡がれる物語。
0投稿日: 2012.11.14
powered by ブクログ近未来SF戦争物。 世界各地で紛争が勃発し内戦や民族虐殺が続く。 その背後でつねに囁かれる謎の人物の後を追う。 民事武装会社、民間代理戦争、ディストピア。 現実が抱える問題を小説にほんのりと映してます。 物騒なタイトルで硬派な内容ですが文章は非常に読みやすいです。 ※※※ 以下ネタバレ雑感 ジョン・ポールの虐殺の動機がイマイチしっくりこなかった。 え?みたいな感じ。 でもそれだけの理由で事に及ぶのもまたなにかの理由があったのかな。 って今思った
0投稿日: 2012.11.11
powered by ブクログ世界は思った以上に不条理でグロテスクだ。状況によって、その時の倫理観念は変わる。正解も不正解も存在しないのだ。 そんな感じ。
1投稿日: 2012.11.07
powered by ブクログ脳科学と民営化がポピュラーになったゼロ年代後半にふさわしいSFとして、世に迎えられたのだろうな。今でも、十分に面白い。良心さえも脳の特定部位への化学的な刺激によってコントロールできるようになった近未来、できる国家「直営」特殊部隊の兵士である主人公が、だめな国家「直営」スパイ組織や、「戦争遂行業務」を受託する企業と協力したり、敵対したりしながら、世界中で頻発しはじめた大量虐殺事件のなぞを追うのだ。
0投稿日: 2012.11.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
最初のうちは、ずっと一人称視点で進められる話に馴染むことができなくてなかなか読み進まなかったけど、世界各地で起こる内戦、それに付随して引き起こされる大量虐殺は、1人の人間によって引き起こされているって話が出てきてから面白かった。 虐殺を起こす器官、それは人間に生来的に備わっていて、特定の文法によりその器官を活動させるという虐殺の王、ジョン・ポール。彼がなぜ虐殺を引き起こすのか、その理由には共感は難しいけど、そういう思想は現実的に有り得るかーなとは思った。
0投稿日: 2012.11.07
powered by ブクログ最後まで飽きずに読み進められました。 ストーリーは突っ込みどころも多いものの、それなりに読ませてくれるレベルでした。 しかしこの文体は好き嫌いが分かれそうです。 その人の人格や人格形成の過程などを分析し、論じているところが多いですが、そんなコメンテーターのようにはいかないだろうと、人の心はもっと複雑ではないかと、私は反発してしまいました。 細かいことでもやけにインテリぶって解説されているような、そんな気になってしまいます。 と、マイナスなことを言っていますがエンターテイメント小説として面白いです。
0投稿日: 2012.11.07
powered by ブクログ民間委託される戦争、どんな武器よりスペシャリストの人間の方がコストがかかる、といった近未来の予測のリアリティが抜群。一方で貧しさのために原始的な戦争方法を続ける世界もある、という描写は冷たく残酷だけれどいやになるほど現実をとらえてると思う
0投稿日: 2012.11.03
powered by ブクログテーマ、世界観はとても好きで面白いのだが、焦点がぼやけてしまっていて時折挫折しそうになった。なんというか、全体をパズルとしたら、ピースがそれぞれ独立したがって、ハマらない感じ。一本のストーリーとしてはちょっと物足りなさを感じた。☆二つかなって思うけど、世界観が好きなので☆三つ。
0投稿日: 2012.11.03
powered by ブクログSF的なハイテク社会と非現実な戦争風景の中で、主人公の母を殺した罪の意識とルツィアを想う気持ちが繰り返し繊細に描かれることで主人公の存在がとてもリアリティがあった。テクノロジーが進みすぎて人間の五感が使われない社会において、言葉が人の行動を規定するものになるってゆーのは妙に納得。 ジョンポールの言葉はどれも真相をついていてとても惹かれた。「すべての仕事は、人間の良心を麻痺させるために存在するんだよ。資本主義を生み出したのら、仕事に打ちこみ貯蓄を良しとするプロテスタンティズムだ。つまり、仕事とは宗教なのまよ。信仰の度合いにおいて、そこに明確な違いはない。」 「人は誰しも、自分の物語のなかに他者の物語を組みこんでいる。」
0投稿日: 2012.10.27
powered by ブクログ『虐殺器官』なんていう恐ろしいタイトル故に、読むのを避けていました。実際読んでみると、ストーリーもしっかりしており、細かい描写によって作られた世界観にあっという間に引きずりこまれてしまいました。最近読んだSFの中では五本の指に入る良作だと思います。
1投稿日: 2012.10.23
powered by ブクログサイエンス・フィクションとしてはまる人はハマるだろうな、という印象。作者独特の世界観が面白かった。おそらく人工筋肉ビクンビクンは一生忘れないと思う。 しかし、ジョン・ポールの虐殺の動機や、ラストの主人公の行動がイマイチしっくり来ない。動機については設定につられた感じがし、行動については奇をてらっただけな部分が大きく、もうちょっと丁寧に描写できないもんかな、と思った。 文体は比較的読みやすく、ところどころでおっ、と思うような表現もあった。
0投稿日: 2012.10.21
powered by ブクログ不思議な読み応え。映画のようなゲームのような。リアルなようでそうでもなくて。概念的な会話は思考を停止させたけど、じわじわとやってくる怖さ。気味の悪さ。なんか癖になっる余韻です。
0投稿日: 2012.10.20
powered by ブクログこの”器官”は、臓器などの器官、という意味か。 虐殺を引き起こす文法がある・・・? 必要悪としての虐殺。 生と死の境界が判別できないほどの人間の”生”に、どれほどの価値があるのか? 思索的な、通り過ぎることのできない問いを投げかけてくる。
1投稿日: 2012.10.17
powered by ブクログ近未来の戦争を描いている.本当にこのような状態になるとは思わないが,非常にリアルに戦争を表現している.平和な所に侵入して内戦状態を作り出すプロであるジョン・ポール.その恋人のルツィア.テクノロジーに制御された殺戮が当たり前になっている世界で,前世紀の恋愛感情に近いものが出てくるのに,なぜかほっとした.作者は既に死去している由だが,新作が読みたかった.
0投稿日: 2012.10.17
powered by ブクログいやいやいや、単純に面白いっすね。 読みやすく、そしてストーリーも面白いので人に薦めやすい小説です。 (まぁ、グロいのはあれですが) ハーモニーを先に読み、そのあとこの小説に手を付けましたが、 読み終えた今となっては、実際、その順番でよかったなと思っています。 ただまあ、ハーモニーと比べてしまうと、 あれほどの驚きはないですねぇ、いや、あれは傑作でした。
0投稿日: 2012.10.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
近未来を舞台にしたSF。他の方のレビューにもあるとおりメタルギアっぽい雰囲気で、個人的に好きなジャンル。 内容については、戦場でのスニーキングミッションや銃撃戦などアクション的な要素ももちろんあるが、主人公とターゲットやその関係者とのやり取りにむしろ引き込まれる。 言葉とは何か、なぜ虐殺がなくならないか。あくまでも作者の世界観ではあるが、「人は見たい現実しか見ない」や、「悲惨な現実の上に我々の生活が成り立っている」など、今我々が生活している現実においても、考えさせられることが多い。
0投稿日: 2012.10.08
powered by ブクログすごい!ハリウッド映画のように細部まで作り込まれた感じ。いや、今はハリウッドが日本のゲームを原作にしていたりするか•••
0投稿日: 2012.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
タイトルのインパクトと、評判から購入。 『虐殺』の言葉から、ただ残虐な描写に溢れるストーリーを想像していたが、むしろグロいシーンは淡白にあっさりと描かれていた印象だった。 主人公は、SF的な高性能装備・武器を使い任務を遂行する、国家抱えの暗殺部隊の一員。 SF要素や暗殺任務といったものが、現実離れした感覚をもたらす一方、人を殺すことに葛藤を覚え自問自答していく主人公の内面世界は、とても人間的で身近なものに感じた。 そうゆう意味で、斬新でありながらも、普遍的なテーマを含んでる話だと思う。 読みにくくはないが、文章に独特の雰囲気がある。 私は、著者のテーマにしたいかった事・伝えたかった事はおぼろにわかる気がしたのだけど、中途半端なSF的要素と、ある種予想範囲内の主人公の葛藤が淡々と間延びして綴られていくことによって、逆にテーマがチープになってしまっている感覚がした。 中途半端なSF、中途半端な現実感、中途半端なグロさ、に感じてしまった。 が、一つ斬新だったなと感じるのは、読み進めるにつれ明かされる『器官』という考え方だった。 大勢の人と大勢の人が殺し合うとき。 普通の人が、虐殺をはじめるとき。 国と国が憎しみあうとき。 そこに共通の『何か』があるんじゃないか。 この着目点が、おもしろいなと感じた。
0投稿日: 2012.10.05
powered by ブクログ読む前は、タイトルからホラー的なものを想像していましたが、思っていたものとはまったく違う物語でした。 しかし、結果的にはその違和感はいつしかなくなり、最終的にはあっという間に読み終わってしまいました。遺された作品は少ないので、すべて読んでみたいと思いました。
0投稿日: 2012.10.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
すごいタイトル。中身を読む前に、このタイトルで引いてしまう人が多いのではないだろうか(自分はそうだった)。中身は、ホラーでも、SFを背景にした人間ドラマでもなく、まさに正統な「サイエンス・フィクション」。読んでいなかったことを後悔すると共に、いかにも一見さんお断り的な雰囲気を醸し出すタイトル・装丁は、この作品の価値を正しく知ってもらうにはマイナスなのではないかと思った。 ちょっと内省的でソフトな「ぼく」の、それほどドライでもなく、ウェット過ぎでもない語り口のため、目を覆うようなシーンもあるにも関わらず、全編通してスムーズに読み進めることができた。最初は神林長平か?と思ったけれど、もう少し一般向けなので、他人にも勧めやすいかな(それだけに、手に取りづらい外見はどうかなぁと思う)。 ストーリーは、世界にあふれる悲劇的な内戦。実はその裏には陰謀が…という感じの流れ。序盤の、一見、何の裏もない現実世界に対して少しずつ違和感が挿入され、黒幕の存在が明らかになるくだり。中盤の、主人公が黒幕を追う、本当の理由。終盤での、明かされた黒幕の目的と幕切れ。中心となる魅力的なアイデアと、考えられた展開、そこかしこにちりばめられた、SF的に説得力のあるガジェット。読んでいてずっと楽しく、ぐいぐい引き込まれて一気に読んでしまった。SF好き、本好きの人がこぞって高く評価するのも分かる気がする。 気になるところとしては、やはり、あまりに救いのないエピローグ。ここまで読んできた読者には、ある意味、想定の範囲内ではあるのかもしれないし、賛否両論あるだろうが、辛い思いを乗り越えた上で、前向きな終わり方をして欲しかったと思うのは、高望みしすぎだろうか。また、主人公のキャラクターが、アメリカ人っぽくないという意見もあったが、確かにそうかも。日本人とアメリカ人では、日本語と英語の性質の違いから、自ずと論理的思考の組み立て方に圧倒的な差があると感じるが、本作の主人公,どうも思考が日本人的(情緒的)。話の背景上、どうしても「アメリカに住んでいる人物」である必然性はある。であれば、人物描写をもっとアメリカ人っぽくすべき。あるいは、日本人移民などの設定とした方が、かえってエピローグの決断にもつながって良かったのではないか。 自分の中で、この作品の魅力は、やはり中心となる「虐殺器官」のアイデアと、説得力のある近未来のテクノロジー描写による「サイエンス・フィクション」的な部分にある。自分の気になった点は、その輝きを減じるものではなく、全体として非常によくできた作品だった。今後さらに磨きをかけていくのが楽しみな作家であると感じただけに、やはり、あまりに早く亡くなってしまったことが、惜しまれてならない。ただ、あまりに限られた時間が見えていたからこそ、こんな作品が書けたのだろう。
1投稿日: 2012.09.29
powered by ブクログ読書会にてお薦めされていたため購入。ソフトカバー版の時に手を取り、挫折した経験あり。文章や内容が独特なのか、読み始めて十数ページで「これ、読んだことあるなぁ」というのを思った。ともかく一通り読んでみた。が、やはりよく分からない。和製翻訳小説らしい言葉遣いは嫌いじゃない。
0投稿日: 2012.09.29
powered by ブクログ通勤電車の中でまったりと読むつもりが一気に読んでしまいました。 一頁の情報量が物凄い。著者の知識量が物凄い。 ストーリーは追えたけれどもこの本に書かれている「宗教」「神」「自由」などの 思想や、披露されている数々のネタ含め知識に至るまで全て 追えたかと言われると全く持って自信が無い状態。 もう一度読み返すつもりです。
0投稿日: 2012.09.29
powered by ブクログ初出2007年。5年間も知らなかったなんて。 すごい小説でした。しかも、もう伊藤計劃はいない。 この中で最も印象的な文章を引用。 「君はこう思うことはないか、言葉に意味はない、とね」 ぼくは黙っていた。この男が何を言いたいのか、さっぱりわからなかったからだ。 「好きだの嫌いだの、最初にそう言い出したのは誰なんだろうね。いまわれわれが話しているこのややこしいやり取りにしても、そんなシンプルな感情を、えらく遠まわしに表現しいてるにすぎないんじゃないか。」
0投稿日: 2012.09.28
powered by ブクログ久々のSF。SF…だよね?外人が主人公だけど、登場人物がそんなに多く無いので、通常の海外作品のような「カタカナ名を覚えられない病」に苦しめられることなく読めます。暗殺部隊の話で血生臭い描写もありますが、グロいというほどでは無い。近未来における生と死の境界の話や、人が人を殺すことの生物学的な意味の話とか、作中で取り上げられている哲学はとても興味深かった。
2投稿日: 2012.09.28
powered by ブクログ言語や進化、自由という核となるテーマについてはピンカーやデネット、ドーキンスといった一流の学説を引用することによって思考をビルドさせ、箸休めにカフカやモンティ・パイソン辺りをスパイスとしてまぶすことで感性を刺激する。メタルギア的世界観やガジェットのディティールを突き詰めることでエンタテイメント性を確立させながらも戦争とテロに塗れたディストピア的世界を描きつつ、それをゴシップとピザと娯楽映画に首まで浸かった僕らの「日常」へ着地させる。徹底的に洗練されながらも、高度に構築された物語はまさにゼロ年代そのものだ。
0投稿日: 2012.09.24
powered by ブクログスペクタクルに展開したがっつりSFなのに哲学的で、 読んでいて飽きない面白さ。 主人公の淡々とした語りと、 抱える感情へのもどかしさが合わさって、 全体的に憂いを帯びた雰囲気。 「ジョン・ポール」って、名前だけだとビートルズを思い浮かべるけど、 ……皮肉ですね。 第一部を読んでいる途中で、先に巻末の解説を読んでしまったので、 作中の「死生観」を強く意識せざるをえませんでした。
1投稿日: 2012.09.24
