ondankbarehondさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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虐殺器官
伊藤計劃 / 早川書房
現代の寓話
4
作者の名前を聞いたことがなかったので、あまり期待もせずに読み始めたが、素晴らしかった。読み終わった後にどういう人なのだろうと興味が湧いて調べたら、すでに34歳で亡くなっていた。惜しい才能と思うよりも、…こんなに早逝だからこそ書けた作品なのかもしれない、と思った。作品全体にあまねく流れる「死」のリアリティが半端ない。と同時に、近未来のテクノロジーや社会システムとその中で生きる人間との対比が否応もなく現代という社会を映し出している。考えるのを上に投げ、文明で痛みに無感覚になり、不平等の上に成り立っている社会を守るために誰かを見殺しにする。現代の延長線上の未来がとてもリアルだった。
会話が、人と話しているというより自問自答に近いと感じた。 続きを読む投稿日:2014.06.23
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ななつのこ
加納朋子 / 創元推理文庫
ちょっと退屈
4
わたしにとってはちょっと冗長で退屈だった。上品で癖がないともいえるが、ストーリーにしても、キャラクターにしても、文章にしても、すべてがまあまあ。悪くはない。でも何回も繰り返し読むことはないと思う。
投稿日:2014.05.13
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パレード
吉田修一 / 幻冬舎
群衆の中の孤独
3
吉田修一氏の作品には、一緒にいることの地獄と、天国のような人間関係における孤独と、つまりは人間関係のままならさが良く出て来て、読んでいてその通りなのだけれど辛くなる。
草食系の外側の一皮を向くと肉その…ものが出てきちゃうような独特の雰囲気がある。
「悪人」ほどではないけれど、面白く読めると思う。 続きを読む投稿日:2014.05.01
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妻は、くノ一
風野真知雄 / 角川文庫
しみじみ
3
文章が平易で、味があって良い。全体にのんびりとした穏やかさがあり、優しい感じの小説。このシリーズをすべて読んだが、こんなに長い必要あるのかと途中から思ったほど、内容的には濃くも激しくもないが、何となく…暇な時に読みたくなるし、主人公が好きになる。一巻と最終巻を読めば中は全部飛ばしても良かったのじゃないかと思うこともあるが、全巻購入したことを後悔はしていない。 続きを読む
投稿日:2014.04.09
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昭和元禄落語心中(1)
雲田はるこ / ITAN
八雲師匠がヤバい
3
内容がギュッと詰まっていて濃いが、人物たちが淡々としていて、楽に読める。八雲師匠の古典的な東京弁が美しく、「ああ、昔はこういう話し方の人いたよなー」としみじみ。失われていくものの美を惜しむ気持ちで、読…後感がほんのり哀しいが、面白い。
いつもシリーズ物や漫画は一巻づつ買っていて、つまらなくなった時点で買うのをやめているが、これは次巻が出るのが待ち遠しい。 続きを読む投稿日:2014.09.06
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水の柩
道尾秀介 / 講談社文庫
良かった
2
情景が浮かんでくるような文章と、巧みなストーリー展開。なんとなく不穏な空気が漂っているので、最後はものすごくグロイ展開になるのかなとドキドキしていたが、意外にも感動してしまった。
投稿日:2014.05.15