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ヤバい統計学
カイザー・ファング, 矢羽野薫 / CCCメディアハウス
統計の本のはずなのに必ずしも統計的な正解が心理的には正しくないというのが興味深い。
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邦題はちょっと狙い過ぎだが原題はNumbers rule your world 数字が世界を支配する。
統計がどのように使われているか、どういうときに役立つか紹介されているが難しい数式はない。
第一…章のファストパスと交通渋滞が面白かった。
テーマはばらつきをなくすこと。
ディズニーランドのファストパスは好評だが実は待ち時間は変わっていないという。
あるアトラクションの入場者数はファストパスを使っても使わなくても変わらない。
普通に並べばひょっとするとすごく早く入れるがものすごく待たされるかもしれない。
ファストパスを使えば何時間か後に確実にすぐ入れる。
その間の時間は別のことに使えるため心理的には待ってることにならないので満足感が向上する。
そういえば行列のできるラーメン屋も同じ様な話だったと思い出した。
店に入るまでは自分の意志で並んでいるので気にならず、店に入ってからは店の都合で待たされていると感じる。
厨房の処理能力が同じなら席数を減らして外で並ばした方が満足度が高い。
ラーメン好きは話題の行列店を制覇したとの物語でも満足してくれる。
ミネソタ州の交通局はランプメータリングという手法で渋滞を減らしていた。
高速道路の本線に流入する車の台数を規制し渋滞を起こさないようにする手法だ。
移動時間が短縮できるにもかかわらずこのやり方はあまり好かれていない。
目の前で空いてる高速道路があるのに待たされるというのが我慢できないらしい。
統計学者はランプでの待ち時間を一定時間までにするということで折り合った。 続きを読む投稿日:2014.11.16
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重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る
大栗博司 / 幻冬舎新書
わからないけどこういうことがわずか100年で理論と実証が進んだっていうのはすごいことだなあ。
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重力といえばニュートンのリンゴだろう。一般には地球とリンゴが引っ張りあ合ってると考える。他の引力でわかりやすいのは磁力だがこちらは引力だけでなく斥力も働く。電磁波がその力の元だがこれは波と粒子の双方の…性質を持っている。重力も同じように何らかの粒子が関連しているだろうと言うのがヒッグス粒子発見のスタート地点だ。重力の不思議は電磁気力と違って遮蔽できないこと。金属の箱の中では電磁波の遮蔽効果が働くが重力はとにかく質量と距離で決まる。質量は何かというと動かしにくさである。有名なE=MC²の式はエネルギーは質量x光速の二乗に等しいと言う式だが、同じ大きさで質量が大きい物はより動かしにくく潜在的には大きなエネルギーを持っている。高い所にあるものは重力エネルギーを持っていて落ちると音や熱に少しエネルギーを使って位置エネルギーを減らす。実はそのとき減ったエネルギー分だけ実際に質量が減っているらしい。知らなかったです。C+O2=CO2 炭が燃えて二酸化炭素ができるときに熱と光が出る。結合エネルギーの差で説明でき式の左右で質量は一般的には変わらないとしているが、ここでも実は少し使ったエネルギー分だけトータルの質量が減るらしい。
ここで出て来たC光速に一度話が飛ぶ。光速は一定だといえばふーんそうで終わりなのだが日常的なスピードと比べると異常なことがわかる。例えば60Km/hで走る電車から100Km/hのボールを投げると受け取る側には160km/hになる。当たり前である。では超音速のロケットから発した光と停まってる人が発した光はどちらが速いのか、答えは同じ。これを説明したのがアインシュタインの特殊相対性理論で1905年アインシュタインの奇跡の年にベルンの特許局で働きながら仕事の間に研究し発表した。同じ年に量子力学の基礎になる光量子仮説、光が波と粒子の性質を併せ持つと言う仮説、そして原子が存在することでブラウン運動を説明できる理論を発表し1907年に得たアイデアで重力を説明しようとする。例えば加速する際に後ろに体が引っ張られる、これが重力そのものだと言うアイデアである。
同じ質量の2つの球を同時に落とすことを考えてみる。縦に並べたとき下に有る方が地球との距離が近く速く落ちる。横に並べた場合は同時に落ちるがもし地面で停まらないと想像するとどんどん地球の中心に近づき2つの球の距離は近づく。つまり重力は縦に引き延ばし、横に押しつぶす力が働いていることになる。これが地球サイズで働いているのが潮の満ち引きだ。ちゃんと理解できてないので説明をすっとばすが重力は空間をゆがめる力とも言える。
光速の話に少し戻る。移動していても停まっていても光速が一定だと言うことを説明するためにひりだした答えは動いている物体の中では時間が遅れると言う非常識なものだった。しかし実際に時間は遅れており人口衛生はこの遅れを補正してGPSがちゃんと働くようにしている。重力は空間をゆがめ、移動は時間をゆがめている。ここから時間、空間、重力の話が一緒くたになってくる。重力が空間をゆがめる証拠はブラックホールの観察から出て来た。ブラックホールの向こうにある星からの光は空間がゆがめられたために曲がる。なんと2点間に複数の直線が引けるようになってしまう。
ブラックホールの話も満載である。ブラックホールは大きな星がつぶれどんどん密度がましていったもの。地球から飛び出すロケットには重力に打ち勝つ脱出速度が有るがブラックホールからの脱出速度は光速を超え光も脱出できなくなる。ブラックホールでは空間だけではなく時間もゆがみ近づくほど時間の流れが遅くなる。ブラックホールから地球宛に毎日メールを送ると毎日送っているはずがだんだん届くまで時間がかかるようになりやがて届かなくなる。空想の望遠鏡でロケットを見ると近づけば近づくほど猛スピードで落ちて行くのだが時間の流れが遅くなるため外からは近づくほどに動かないように見えてしまう。もう一つの面白いエピソードは宇宙はものすごいエネルギー量であふれているのになぜ真っ暗なのかということ。宇宙の膨張速度が光速を超えているため光が届かないということらしい。
最後に重力を司る粒子を探るためにミクロの世界に話が移る。最近では陽子や電子はもっと小さい粒子からで来ていることや反物質(プラス電荷の反電子やマイナス電荷の反陽子)の存在なども明らかになって来ている。真空中から粒子と反粒子がぽこっと生まれ、ぶつかって消滅する。さあとうとう手に負えなくなってきました。(笑)
重力を司るヒッグス粒子を説明しようとすると次元が10次元まで必要だそうだ。時間と空間は同じように扱うのでこれで4次元、じゃあ残りの6次元をどうするかで出て来たのが超弦理論。さあわからない(笑) 続きを読む投稿日:2014.01.01
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絶望の裁判所
瀬木比呂志 / 講談社現代新書
みずからの基本的人権をほとんど剥奪されている者が、どうして、国民、市民の基本的人権を守ることができようか?
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裁判官といえば真面目ながらやや世間知らずというのが世間一般のイメージかも知れない。では裁判官はどういう人がなるのかというと司法試験に合格した人が司法研修所に入所し司法修習を受ける。裁判官、検察官、弁護…士のいずれであっても原則として同じカリキュラムを受け終了後、判事補(裁判官)、検事2級(検察官)、弁護士(弁護士会への登録)のいずれかを選ぶ。これが日本の法曹のキャリア・システムだ。最近では優秀な学生の多くが弁護士を希望している。
瀬木氏が批判しているのは主にこのキャリアシステムといっていいだろう。学生が社会に出ずに研修だけを受けすぐに裁判官になる。そして裁判官として出世するためには官僚制のウチワの理論が優先し、裁判官として優秀かどうかはあまり関係がないからだ。一般的な裁判官の評価は事件処理の数とスピードで決まる。そして最も労力がかかるのが判決文の作成なのでできるだけ和解に持ち込ませようとする。判決文を書かなければ後から批判されることもない。実質的には裁判というより前例に基づいた事件処理だ。
前例ではなく自分の考えを主張する様な人はほとんど高裁長官にはなれない。官僚制度は最高裁の事務総局を中心としている。最高裁長官は滅多に開かれない大法廷にしか関与しないので実際の仕事は裁判官を統制、管理することになる。1980年代以降は全員が事務総局系で4/9名が事務総長経験者である。また14名の最高裁判事のうち裁判官出身者の6名はこれまた近年ではほぼ全員が事務局系だ。事務総局局長は長官の言うことに黙って従う歯車でしかないが、現場の裁判官に対しては強大な権力を持つ。こうしてイエスマンが出世するヒエラルキーが出来上がって行く。
瀬木氏の見るところ裁判官によくある性格は四つに分類される。人間としての味わいを持つ個性豊かな人物は多くて5%、頭がよく人当たりもよくしかしあまり中身のないエゴイストが45%、出世主義者の俗物が40%、分類不能の怪物が10%だという。2番目のエゴイストタイプはまだましな方なのだ、そして怪物と俗物が出世して行く。例えば1976年に司法研修所事務局長と教官が「女性は法律家、裁判官にふさわしくない」との差別発言をし国会でも問題になったがこの事務局長はその後事務総長を経て最後に東京高裁長官となりもう一歩で最高裁入りするところだった。
セクハラ、パワハラも数多く瀬木氏自身も早期退官して大学教官への転身を決めた時、事務総局人事局は承認があるまで退官の事実も、大学に移ることも口外するなと告げて来た。講義準備の有給休暇を申請すると認めようとせず、有給休暇を取るなら早く辞めろという。審理中の裁判があったのにも関わらずだ。瀬木氏は日本の裁判所は実は制度の奴隷を拘束するソフトな収容所ではないか、「みずからの基本的人権をほとんど剥奪されている者が、どうして、国民、市民の基本的人権を守ることができようか?」と言っている。
日本の刑事司法はかなりの部分検察官の主張の追認となっている。問題点は2つあり異常なまでの検挙率の高さはよく知られているが、もう一つは拘留状の問題がある。きちんとした審査が行われている逮捕状と違い拘留状はほぼフリーパス。痴漢冤罪についてある弁護士は「相手の女性に名刺を渡してともかくその場を立ち去ること。(これで拘束には逮捕状が必要になる)その場で現行犯逮捕、拘留されてしまったらおしまいだよ」と言った実例も紹介されている。連続20日間に拘留に耐えられる人は法律家でさえ多くない。疑わしきは罰せられる。
ではどうするか?瀬木氏の意見は法曹一元化で優秀弁護士を裁判官に任官させることと、事務局は純粋な裏方として法律家以外に任せることだ。しかし検察以上に普通の人が興味を持たない裁判官、どうやってやるかが問題の様な。 続きを読む投稿日:2014.05.15
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人工知能は人間を超えるか
松尾豊 / 角川EPUB選書
アルファ碁の衝撃
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グーグルのα碁がイ・セドルに完勝した衝撃から1週間、もはやα碁が世界トップクラスの実力を持ちさらに強くなっていることは疑いようも無い。相手の能力を吸収する人造人間セルに対する人間界の英雄ミスター・サタ…ンになぞらえられたイ・セドル(元々囲碁界の魔王と呼ばれている)が一矢報いた4局目ではα碁はまるでバグを起こしたようにミスを連発した。今日行われたコンピューター囲碁大会では日本のZENが優勝したが、ここでもディープラーニングを用いてレベルが上がったようだ。
本書の発行は2015/3/10、そしてちょうど1年後の今年3/9のα碁の勝利でディープラーニングの有効性は証明されたと言って良い。1,2局はイ・セドルにもチャンスがあるように見えた。4局目ではα碁がバグを起こしたように見えた。しかし、3局目や5局目はほぼ完勝に見える。どうやったらこんなに強くなるのか本書にディープラーニングがどういうことをやってるのか解説されている。
チェスや将棋では駒得を点数化したり最近の将棋ソフトでは3つの駒の位置関係を点数化したりしてどの手を選ぶかを判断している、この場合点数の重み付けをするのはプログラマーだ。そしてモンテカルロ法という手法で手を選ぶ。将棋の場合先手の勝率が52%程度でこれがベイズ確率で言う事前確率だろう。モンテカルロ法ではランダムに次の手を選び何通りもの対局をさせてみる。点数の重み付けは勝率に跳ね返るので、例えば次の手が10通りなら一番平均点数の高い手を選べば良い。
しかし囲碁ではこれまでは良い重み付けができなかった。またオセロが10の60乗、チェスが120乗、将棋が220乗に対し囲碁は360乗の変化がある。ちなみに100乗はgoogolと言う単位だ。1年前までは人工知能学者以外は囲碁はAIは人間の敵では無いと考えられていたし、α碁がヨーロッパチャンピオンに5連勝した昨年10月でもイ・セドルに勝てるようにはとても見えなかった。ではどうやったらこんなに強くなるのか。
コンピューターに黒白どちらが優勢かを教えるのは難しい、そこで取られた方法がディープラーニングで簡単に言うと画像処理装置を持ったα碁は過去のプロの対局を学習し、どうなれば優勢かの特徴を自分が集めた画像データーを元に解析した。α碁は過去の対局から独自に特徴を見つけだし、自分で重み付けを作り出す。残念ながらそのアルゴリズムを言語化する事ができないのでα碁が何を考えているのかはわからない。手だけを見てると、過去の常識が通じない、新しい常識が生まれるというような感想が出てくるわけだ。「特徴表現をコンピューター自らが獲得する」ことができれば後はひたすら学習を繰り返しセルのように成長していく。
何がディープかと言うと人間の神経系を模式化したニューラルネットワークの階層が深い層になっている。特徴表現は何種類もあるので例えば10通りの特徴の程度を入力し、さらにその影響度に重みをつけて次の階層に送る。人間の場合は刺激によって神経同士をつなぐシナプスが強化されて重み付けをしている。そこに色だとか形だとかの情報が取り込まれ統合されて一つの認識を作る。コンピューターも多層化するとAからJの10通りのうち次の層ではABC、BDIなど複数の組み合わせでデーターを処理しさらに次の層に送る。そうして高次の特徴を積み上げていくとそこに概念が生まれる。
ここで面白いブレークスルーが入力と出力を同じにするようにした事だ。多層にすると浅い層までフィードバックがうまく働かなかった。平社員の情報を統合して社長まで伝え、それに対する答えを平社員に伝えるといつの間にか前提が変わっていたと言うようなものだ。そこで、出力を同じにして答え合わせをし処理がうまくいっている事を確認する。他にもある特徴はまとめて集団化したりわざとノイズを与えて頑健性を強めたりという事もする。
2012年グーグルは「ネコ」を認識するのに1000万枚の画像をニューロン同士のつながりが100億個という巨大なニューラルネットワークを使い、1000台のコンピューターを3日間走らせている。金額にして1億円相当だ。α碁の場合はCPU1202、GPU176からなりグーグルのHPで見積もるとお値段は60億を超えるらしい。
「目の誕生」によるとカンブリア大爆発は視覚の獲得によって起こったとされる。コンピューターはすでにイメージセンサーという視覚とGPUという視神経を手に入れ自ら学習するようになった。コンピューターが自分より賢いコンピューターを設計できるようになる日は思ったよりも近いかも。 続きを読む投稿日:2016.03.20
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2052 今後40年のグローバル予測
ヨルゲン・ランダース, 野中香方子, 竹中平蔵 / 日経BP
成長の限界は先に延びたが
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1972年ローマ・クラブが公表した「成長の限界」、読んでないが「人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」というマルサスの人口論がベースなのは何となく知っている。実際にはピークオ…イルは技術の発展や新しい油田(例えば海底油田)の発見で可採年数が伸び、一方で緑の革命や灌漑面積の増加、遺伝子組換え作物などの技術も有り食料も増産されてきている。成長の限界を作成するのに関わった物理学者のヨルゲン・ランダースが40年後に再度40年後の世界を予想したのが本書だと思ってもらえば良い。基本的には過去40年の変化を下敷きにして、ある程度のイノベーションを織り込んだ予測になっている。
まず予測の基本となるのは人口動態でここでは人口は約81億で飽和すると見ている。先進国だけではなく発展途上国においても衛生状況の改善による若年死亡率の低下、長寿命化は進んでいて、農村から都市への移住も大きな流れとなっている。農業主体で若年死亡率が高い場合は児童労働が経済的にプラスになり出生率が高くなる。一方で都市で住むのは一人当たりのコストが高くなりがちで、長寿命化し若年死亡率が低下すると教育費の問題も有り少ない子供に高度な教育を受けさせる方が経済的に得になる。日本の少子高齢化は個々人が合理的な行動をとった結果であり、世界がこれから経験する方向でもある。
過去40年間成長の限界は来なかったが今後40年間はと言うと、未来は暗いが暗すぎはしない。避ける方法は有るが人類は総体として問題の先送りを続けるだろうと言うのが著者の基本的なシナリオになっている。過去40年新しい資源を発見してはいるが地球と言うバランスシートの上では資源は消費され続けており、ストックは減り続けている。例えばシェールガス革命は天然ガスの可採年数を大きく伸ばしたが、中東の在来型天然ガスより安く掘り出せるわけではない。大消費地のアメリカが産地になったためアメリカは大きく恩恵を受けたがいずれは無くなる。最も問題なのは今の所は水だろう。著者はエネルギーが豊富に有れば海水の淡水化や新しい灌漑技術など解決方法は有ると見ているようだがコストが上がることは間違いない。
気候変動、いわゆる温暖化は進むだろうというのが一つの予測の基本でおそらく今世紀中には2℃ほど気温が上昇する。気候は100kmほど極地に向かって移動し高緯度地域が今より発展し、砂漠はさらに拡がる。これを防ぐには出来るだけ早く二酸化炭素排出量を減らす取り組みをするべきながらおそらく国際的な合意はできず、痛い目に遭った後でより高いコストをかけて対策をすることになるだろうと予測されている。見過ごせないのが海水の酸性化の影響で一番わかりやすい例としてはカルシウムが水に溶けやすくなり、珊瑚礁が死滅する。これはあまり来てほしくない未来だ。
この本での政治的な決断に関する象徴は「既得権」に有る。民主主義や金融資本主義は短期利益やポピュリズムに流れやすいと言う見立てには賛成で、NIMBY(Not In My Back Yard、日本語で言えば総論賛成の各論反対、「やるのはいいがよそでやってくれ」という素直な感想・・・)が積み重なるとあらゆる所で抵抗勢力という自分の権利(既得権益)を守ろうとする普通の人々が現れる。ここにはもう一つ見えていない世代間闘争が有りNot In My Generationとでも言えば良いのか「やるのはいいが後でやってくれ」と既得権者は本人も気がつかずに言っているに等しい。
乱獲により魚がいない海はニューファンドランド島のタラが有名で、ウナギもほぼ仲間入りしているがまあそういうことだ、原発の放射能廃棄物も同じ様な問題である。
結局はGDPが資源を掘り起こしたときにも成長としてカウントされるのが問題なんだろう。持続可能な成長とは良く言う話なのだが持続可能性と成長の二者択一になったときにどうしますかと言うのが本書の質問なのだと思えば方向はあってるはずで、そんなことは起こりえないと言うのも、ただ祈るのも同様に役には立たない。市場経済で無視されている外部コスト(例えば乱獲、天然資源の浪費、環境の悪化、公害などなど)がいずれ対策が必要になったときに思いもよらぬ高コストにならないように早めに手を打つべきだが、おそらく短期利益を追求する政治体制はその決断をしないだろうと予測されている。天然資源のバランスシートとCF(資源フロー?)計算書が必要なんだろう。
本書には30本以上のいろいろな未来予測が載っておりこれはどれが正しいと言うものではないのだと思う。こういう予測があるでいいのではないか。全般的な予測の方向はおかしくない。 続きを読む投稿日:2014.01.01
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戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス>
楠木建 / プレジデント社
この本を読んでも何かが身に付くわけではけしてない。ちゃんと帯にもそう書いてある。
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楠木氏は自分のことを経営学者ではなく経営論者だという。正しい理論を作ると言うより少しでも役に立つ方を目指すあたりはこの本でも取り上げられているものづくり論の藤本隆宏氏のような方向だ。とは言え「ストーリ…ーとしての競争戦略」を読めば上手い競争戦略が作れるようになるとかではなく、この本もどうやって戦略的に本を読むかなんかではない。楠木氏が読んだ本を脳内で著者や登場人物と対話しながらその競争戦略はこういうことかと日記風に綴ったものだ。語り口はとにかく熱い、松岡修造かっ!
そもそも良くあるビジネス書はスキル系にかたよっている。しかし、楠木氏は経営者に必要なのはセンスだという。いくらスキルを高めてもセンスを磨くことにはつながらず、基本的には体験からしかセンスは磨けない。鞄持ちなんてのもセンスを磨く方法の一つだが楠木氏のお勧めは読書、特にノンフィクション系がよくあらゆる自伝などは疑似体験をするにはもってつけらしい。しかし、いちいち本を読むたびに自分だったらこうするだとか、 この戦略はこうかとかやってられるかいな。まあ、インプット目的で読むのは趣味であり仕事はアウトプット目的だそうなので趣味の本読みは面白いかどうかだけでいいと思う。ちなみに楠木氏は仕事以外に趣味でも本を読み、重い本を読むのに疲れたら軽めに、そしてさらに軽めに同時に3冊くらい読むと言う。ちょっと本好きなら年間300冊くらい読むでしょうとかいうが・・・読めるかいな。マンガ入れれば行くけどね。
本書のテーマではないが競争戦略は因果関係の連鎖であり、良い競争戦略はそれ自体がストーリーとして良く成り立っていると言うことらしい。豪速球もものすごいフォークもないピッチャーが直球とカーブとスライダーをどう組み立ててバッターを打ち取るかと言うようなものだと言う。内角高めを投げた後外角低めに投げれば打たれにくいという因果関係がありその連鎖がストーリーになるのだがみんなで同じことをすると差がでない。そこで違うことをするのがセンスで、ただピッチャーが違えばバッターも違い絶対の正解はない。楠木氏はその因果律を読み取りストーリーとして切り取って提示しているだけなのだ。それがはまる人には効くだろう。
取り上げられているのは例えば柳井正の「1勝9敗」いつのまにか楠木氏にも柳井氏の口癖が移ってしまった様だ。「当然ですけど。当たり前ですけど。」ほかにもマクドのレイ・クロックを取り上げたかと思えばレコーディング・ダイエットの岡田斗司夫、井原西鶴の日本永代蔵やら石原莞爾と一件とりとめもない。なんせある本を読むとズルズルと関連図書を読みあさるらしいのだ。何冊も読みたい本が見つかっただけでも十分な収穫だわ。
と言うことでこの本を読んでも何かが身に付くわけではけしてない。ちゃんと帯にもそう書いてある。こういう本の読み方もあるよってことであり、しかも楽しそうにやってやがんなと思うだけだ。これもこの人のセンスなので、センスをまねしても意味がないだろう。どういう本を読んでそれがどう役に立つのか立たないのかは人それぞれ。当然ですけど。当たり前ですけど。
ちなみにかの出口治明氏(本人も取り上げられている)が大絶賛していることは付け加えておきます。 続きを読む投稿日:2014.01.01