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  • 中国4.0 暴発する中華帝国

    中国4.0 暴発する中華帝国

    エドワード・ルトワック,奥山真司・訳

    文春新書

    大国になりたい中国

    中国1・0 2000年頃の中国は改革開放を継承した江沢民が経済を優先し、実質的な資本主義経済へと舵を切った。反日教育のイメージが強いが、WTOに加盟し、国際法も順守する。中国は台湾を含めた周辺国に対し平和裡に台頭するという戦略を実行した。 中国2・0 リーマンショックにより中国は経済力で世界一になるのに後10年でできると思い込んだ。第一の錯誤は「金は力なり」つまり経済力が国力そのものだと思い込んだのだ。中国国内では今でもこういうところがあるので無理はないのかもしれないが経済力に国力が追いつくには50年以上かかるのかもしれない。例えば空母だけをとっても中国がアメリカに追いつくには20年以上かかる。 第二の錯誤は「リニアな予測」China up,US downを信じ、ゴールドマンサックスのBRICsという投資のアイデアに世界中が踊らされたがこれを信じたウブな中国は「これからはわれわれが物事を決定する立場に移るべきだ」と考えた。その例が元は蒋介石の国民党が絵を描いた荒唐無稽な九段線だ。 そして第三の錯誤が「二国間関係」で物事を決められると考えたことだ。領土問題では中国はいつも二国間での解決を主張する。しかし小国が中国と揉めれば周りの国は次は我が身と小国に味方する。 胡錦濤は国内の「あまりに抑制的で中国の力を十分に発揮していない」という批判を受け対外的に強硬な姿勢を示すようになった。ルトワック曰く「ロシアは戦略を除いてすべてダメだが、中国は戦略以外はすべてうまい」日本に対しても巨大市場の中国を重視する企業が政府に圧力をかけ、腐敗した政治家はビジネスマンの言うことを聞くと言う幻想を抱いた。 中国3・0 2014年秋、反中同盟に気づいた中国は方針を変更した。それが「選択的攻撃」で抵抗のない相手は攻撃し、抵抗されれば止める。尖閣問題でも領海内への侵入は抑制されている。ロシアが国際社会の反対を無視してクリミア半島を実効支配したのに比べれば、中国が尖閣を自国領にするための実力行使はない。主張していれば国内では問題にならないからだ。アメリカの航行の自由作戦を中国は邪魔しない。航空識別圈を定めたが実際には守ろうとしない。 権力を集中させる習近平は反腐敗運動で10万人の党幹部を捜査し、人民解放軍トップ二人を逮捕した。徐才厚についてはガンで死期が近い入院中に逮捕しており極めて強硬な姿勢だ。天津爆発事故では習近平暗殺説が流れたが、これは一般市民も習近平がリスクを背負っていることを知っているということだ。結局中国は米国との「新型大国関係」G2を目指したが果たせなかった。中国3・0は今も続いている。 中国の第一の敵はアメリカ、アメリカが中国を敵視していると言うことではない。中国からすればアメリカは民主的にドナルド・トランプを大統領に選ぶ不思議の国だ。これは中国では起こりえない。薄熙来がいかに人気取りを実行しようとも大統領にはなれないのだが、アメリカはそれを許す国でそのこと自体が中国に影響を与える。 第二の敵は習近平その人だ。共産党を腐敗から救おうとする習だが反腐敗運動は共産党のパワーの元であるカネの流れを止め、求心力を失わせる。ゴルバチョフ同様に共産党を改革しようとした結果が共産党の解体に繋がりかねない。毛沢東時代の求心力はイデオロギーだったがもうそこには戻れない。カネという求心力を失えばこの本を読む限りでは大国意識しか残らないのだろう。 中国4・0 戦略がうまくない中国にルトワックが勧めるのは2つ、九段線を引っ込めること、空母の建造を止めることだがこれは受け入れられないだろうとルトワックも中国国内では政治的に受け入れられないだろうと考えている。だが、荒唐無稽な九段線も寄港地を持てない無駄遣いに終わる空母も、小国を反中国で団結させアメリカに近づけるだけなのだ。パキスタンやスリランカに寄港地を持ったところで南シナ海からインド洋をすべて敵に回しては実際には使えない。 では日本はどうすべきか、「封じ込め」と書いてるが要はリアクションだ。そのためには尖閣を守れるようにハードとソフト(法整備)を備え、外交的にも連携する。トランプの対中関税障壁のように中国がアクションを起こしたら、欧米やアジア各国が一致してグローバルな貿易取引禁止状態を作るように準備しておく。最大限の確実性と最小限の暴力を多元的に発揮できるように準備しておくべきだと言う。 結局中国の問題は過去100年の恥辱を乗り越えるためには大国として特にアメリカに認めさせないといけないという感情と、一旦言ったことは取り下げられないという面子、そして自国を基準にする限り外国を理解できないということになるのか。難儀なことだ。

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    投稿日: 2018.09.03
  • アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―

    アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者―

    中島真志

    新潮社

    仕組みはわからなくても使う日が来る

    初めて聞いた頃には意味がわからなかったビットコインのマイニング、中国の企業が大量のパソコンを並べて新規に発行されたビットコインを受け取るってなんじゃそらって感じだった。ビットコインの本質はブロックチェーンと呼ばれる分散化された台帳技術で、一定の取引の塊「ブロック」をつなげた台帳がネットワーク内に同時に多数存在するようになっている。誰かがこの台帳を書き換えようとしても一つのブロックのデータを書き換えると後のブロックに影響してつじつまが合わなくなる。 新たな取引データが加わるとビットコインの場合は10分おきに新たなブロックが作られる。この時最後のブロックを元に一定の計算により規則性のない固定長のハッシュ値という値が作られる。新しいブロックを作るためにはそのブロックのハッシュ値が「最後のブロックのハッシュ値」+「取引データ」+「使い捨てのナンス値」という複雑な計算の結果最初に一定数のゼロが並ぶという条件を満たす必要があり、このナンス値を探す計算作業がマイニングだ。そして最初にナンス値を探し当てた参加者に報酬として新規のビットコインが渡される。過去のブロックを改ざんしようとすると続く全てのブロックのハッシュ値が変わってしまうというのが台帳の信頼性を担保している。また10分おきに新たなブロックが作られることで台帳の安全性は確認され続ける。 よくできた仕組みだがビットコインが既存の貨幣を置き換えるには無理がある。まず10分間の取引件数が4200件を超えると承認が間に合わず取引が遅れ始める。ビットコインのウォレットは世界に1600万個あるというが実際にビットコインを保有しているのは10万人程度らしい。全体の1%以下の参加者が90%以上のビットコインを保有している。またビットコインのマイニング13社のうち10社が中国企業で安い電気料金を生かして寡占化しており上位2社が中国の5割、全世界の1/3のシェアを持つ。 さらに本質的な問題としてはビットコインの発行上限がある。無限に発行を続けるとインフレが避けられないためあらかじめ発行上限が決められており、2017年8月に79%が発行済みだ。そうすると今度はマイニングの報酬が限られてくる。インフレにせよ報酬の減額にせよマイニング=新しい取引の承認作業が割りに合わなくなり取引できなくなった通貨は価値を下げるしかなくなる。 ブロックチェーン技術に関してはさらに発展が見込まれている。中央銀行が中心となった電子通貨は今後拡がっていくだろう。マイニングは報酬ではなく費用として受益者が負担することになる。また国際送金や証券取引でブロックチェーンによる効率化が期待されている。クロスボーダー取引には中央銀行が存在しないためSWIFTのネットワークで送金メッセージをやり取りしている。相互に口座を開設しているコルレス関係にある銀行間取引であれば比較的簡単に送金が行われるが、そうでない場合は中継銀行を挟んだ送金となるため手数料も高くなり、確認作業の為時間もかかる。これに対しブロックチェーンを使ったリアルタイム国際送金の仕組みが開発されようとしている。また証券取引では証券の引き渡しと送金がワンセットで完結する実験が進んでいる。 将来的には中央銀行が中心となった電子通貨と国際的なネットワークが繋がり輸出業務が誰にでもできるようになるかもと思えるのだ。

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    投稿日: 2018.07.08
  • ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)

    ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(下)

    デイヴィッド・ハルバースタム,山田耕介,山田侑平

    文春文庫

    マッカーサー対毛沢東

    スターリンは日本に対する強大な朝鮮を望み、中国と米国の敵対を願い中国をけしかけた。毛沢東はスターリンが望むような操り人形からはほど遠かったが米軍が半島を統一すれば直接脅威を受けるのは中国だ。もはやいつ、そして誰が指揮するかが問題だった。そして農民の将軍、彭徳懐が選ばれた。長征をともにした毛の腹心の部下であり、兵士からの人気の高い中国軍の英雄だった。 マッカーサーの後を継いだマット・リッジウェイは40年後に「私が最も理解しがたく、そして許せないのは、東京の司令部が、兵士達がどんな状況で戦わなければならないかということを完全に忘れていた事実である」と述べている。マッカーサーは敵を侮り、北朝鮮の厳しい冬や待ち伏せに格好の山道の事を気にもせず。あらゆる危険信号を見ないようにした。さらにマッカーサーは毛の中共軍がいかにして内戦に勝利したかに驚くほど無関心だった。 11月25日ついに中国軍が動いた。中国軍は米軍に関して正確な情報を持っていた。北朝鮮には18万人の連合軍が長く伸びた前線の西側で待っており東には12万人の部隊がいた。中国軍も同様に30万いたが姿を現さず、情報本部のウィロビーはマッカーサーの望むように中国軍は最大7万人と見積もった。同様の情報操作はベトナムやイラクでも繰り返されている。 マッカーサーのお気に入りで西海岸の軍団司令官コールターは東京が自分のことをどう見ているかのみに関心を持ち1個師団が壊滅しかかっている時にも何もできなかった。同じくマッカーサーの子分で東部戦線を指揮したアーモンドは攻撃を受けてもさらに北へ向かえと主張した。それがマッカーサーの望みだからだ。アーモンドの命令を危うく思った海兵隊のスミスは意図的に侵攻を遅らせ、連隊の分裂を防ぎ結果としてアーモンドの司令部を救ったがアーモンドには臆病者と謗られた。スミス以外にも優秀で勇敢な将校は多くいたがマッカーサーの狂気のために多くのものが倒れ、11月の最後の数日間に数千の命が失われ、恐怖に感染した国連軍は潰走した。年末には38度線まで逃げ、1月末にはソウルを明け渡した。 状況が不利になるとマッカーサーは政府批判を始める。ワシントンが中国国内基地の攻撃を認めないからだと。さらにマッカーサーは蒋介石の国民党軍を引き込もうとさえした。本来マッカーサーがやるべきだったのは自ら二つに分けた第八軍と第十軍を統合し防衛戦を再編することだった。火力は米軍が圧倒しているので互いの側面を守って補給を整えば持ちこたえることができたのだ。朝鮮半島の大きな問題は兵站の長さであり、今度は毛沢東が米軍を侮り中国軍の能力を超えた目標を追求し始めた。彭徳懐は懸念を示したが毛は受け入れなかった。 米軍では 事故死したウォーカーに変わり冷徹な現実主義者のリッジウェイが登場する。リッジウェイが最初に覚ったのは、中国軍が攻撃してきた時に退却するのは大惨事につながるということだった。中国軍は内戦の時と同様に常に逃げ道に伏兵を置いていた。自陣を守り圧倒的な火力で中国軍に打撃を与え続ける。リッジウェイにとっての勝利とは中国軍に耐えがたい損害を与え続け、自分達は勝てないとわからせることだ。 決戦の地はソウルから釜山へ向かう交通の要所原州と砥平里。ポール・マギーの小隊はこの戦闘で最も激戦になる砥平里の南の陣地を守り、ここは後にマギーヒルと名付けられた。マギー小隊は今や中国人に包囲されていた。しかし自分達のいる場所が連隊全体の弱点になっており、中国軍に奪われればさらに多くの中国軍が攻めてくる。最期まで持ち場を守ったマギーが撤退した時に自力で脱出したのは4人だけだった。中国軍はついにマギーヒルを占拠したがそれは中国軍にとっても大きな犠牲を伴うものだった。 「老兵は死なず。ただ消えゆくのみ。」もしマッカーサーが仁川の後に退役していたら偉大な英雄であり続けただろう。金日成と李承晩にとっては多大な流血と犠牲の挙げ句の果てに得られたものはほとんどなかった。中国軍は大きな犠牲を払ったが毛沢東にとっては中国が米軍を退けたこと自体が大きな勝利となった。毛沢東の権力に並ぶものはなく、誰も毛を止められない。毛が指導した大躍進政策では数千万人が飢饉で亡くなった。彭徳懐は毛に私信を送ったことがきっかけとなり文化大革命で吊るしあげられ、紅衛兵に殴り殺された。 分断国家を統一すると言う金の妄想が米中の戦争に発展し、休戦後60年たった今では南は大きく発展し、北は時間が止まったままでいる。この本で多くの前線で戦った米軍兵の姿が描かれている。同じく勇敢に戦った中国兵は名前も出てこないが朝鮮戦争はマッカーサーと毛沢東の頭の中の戦争であると同時に現場の兵士にとっては得られるものの少ない悲惨な戦争だった。

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    投稿日: 2018.06.11
  • 牛と土 福島、3.11その後。

    牛と土 福島、3.11その後。

    眞並恭介

    集英社文庫

    さらにその後はどうなっているのだろう

    原発事故が発生した当初警戒区域内には約3500頭の牛がいた。それが2015年1月20日現在、安楽死処分が1747頭、処分に不同意の所有者にいる飼養継続が550頭、畜舎内で死亡した牛を合わせた一時埋却処分が3509頭となっている。事故後に自然交配で生まれた数と餓死・病死などで死んだ数はわからない。 2011年5月11日菅総理は福島県知事に対し「家畜は所有者の同意を得て殺処分するように指示を出した。犬や猫のような愛玩動物であれば、動物愛護の精神からも殺処分になんてできないはずだ。しかし、家畜は産業動物といわれ、経済的価値がなくなれば存在理由はない。その状況下で牛飼いはどうやって牛を生かせ続ける意味を見つけるのか。 国の指示に同意した牛飼いの方が多数派で、飼養を続けるとそこにはいがみあいも起こる。「なんでおめえらは国の言うとおり、安楽死の指示に従わないんだ」「警戒区域の牛は平等に死んでもらわないと、おめえらが牛を生かしているうちは、同意したおれらがばかを見る」東電や国ではなくどうしても近くにいる意見の違う人に当たってしまうのだ。 牛を飼い続けるためには電気柵を作ったり、特に冬場は限られた時間内に餌を運んだりとやるべきことは多くある。そして殺処分に同意しない飼い主には圧力もかかる。「牛が他人の土地に侵入してものを壊したり迷惑かけたりしたら、それは飼い主であるあなたの責任ですよ」と言う県職員もいた。一時帰宅をした時に逃げ出した牛の被害を受けた人からの苦情はある。そしてここでも身近な飼い主に不満は向いてしまう。 警戒区域内への立ち入りにはオフサイトセンターの許可が要る、そして国の指示に反して牛を飼い続けることを理由にするとなかなか許可が下りない。「我々としては立ち入りを拒んでいるということではなくて、公益のルールで入っていただくなら、公益のルールの範囲で申請書の中身を、ちゃんと我々のほうで読めるものにしていただかないと、町が許可してうちが同意というかたちはとりにくいのです。」これに対する牛飼いの吉沢は警戒区域内に住んでいることを暴露し、さらに職員を責める。「僕は一生問うよ。あんたたちは逃げた、腰抜け役所ですよ。それが今更何を制限するというのか!」 農家だけでなく研究者の中からも警戒区域の牛を生かす動きが出てきた。牛がどんどん増えないように警戒区域内の牛を去勢をしてまわった医者は生体除染の見通しが立っているという。汚染されていない飼料を3ヶ月程度給餌すれば、被爆前と同じレベルまで清浄化できることがわかってきた。警戒区域の牛の40%が出荷基準を満たしており一律に殺処分する理由はないという。実際には売れないだろうが。行き場のない牛を生き残らせる可能性があるとしたら研究対象に使うしかない。被爆だけでなく牛による農地保全の研究もある。 不幸なことではあるが、事故からしか学べない科学的知見もある。今回の事故で被爆した牛の調査によって、筋肉の種類によってセシウムの残り方が違うこととその規則性がわかってきた。また、牛が汚染された山野菜を食べたエリアでは、土壌のセシウム汚染は低減し、排泄した場所の汚染度が上がる。うまく糞尿を回収すれば農地の除染ができる可能性はある。 チェルノブイリの野生生物の調査ではがんや奇形など有害な影響が数多く報告されているが、今の所福島では重大な遺伝的損傷はまだ観察されていないという。「チェルノブイリの森」によると森で見られる野生生物は健康な個体ばかりだったというが、おそらく障害を負った個体は生き残れないからだろう。家畜の肉牛の寿命は30ヶ月ほど。事故後に生まれた中にもすでにもっと長く生きている個体もいる。本書で何度も登場する双子もそうだ。

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    投稿日: 2018.06.08
  • ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上)

    ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争(上)

    デイヴィッド・ハルバースタム,山田耕介,山田侑平

    文春文庫

    戦争はクリスマスには終わるはずだった

    「戦争はクリスマスまで終わる」仁川上陸作戦に成功し平壌を占拠した連合軍はマッカーサーを筆頭に楽勝気分に浮かれていた。第8軍のカイザー少将は1950年10月25日に「われわれは帰途につく。もうすぐだ。クリスマスまでにだ。命令が出ている」と士官らに語った。連合軍の一部はすでに鴨緑江に達していたが、戦線は伸びきり11月1日に始まる中国軍の大反攻により各個撃破の標的とされていった。ますますと罠にはめられたのだ。 戦争そのものが互いに間違った認識のもとで進められていた。中国、ソ連、北朝鮮は38度線を突破してもアメリカは参戦しないとたかをくくっていた。アチソン国務長官の演説で朝鮮半島が明確な介入の対象に入らなかったことも影響したのだろう、中国の国共内戦同様に朝鮮半島の内戦にも米軍は参戦しないと。一度は釜山に追い詰められ朝鮮半島から追い払われる寸前だった米軍もマッカーサーの天才的な仁川上陸作戦の後、半島全体をすぐに制圧できると思い込み、中国軍が参戦しない方にかけた。中国の参戦がわかった後でも朝鮮統一を望むマッカーサーは意図的に中国軍の人数と意図を矮小化し、11月6日東京で戦争は事実上終結したと声明を発表した。 金日成と李承晩はいずれもソ連とアメリカが後押しした指導者で、いずれも民族主義者で朝鮮半島の統一を望んでいた。階級的で専制的な北朝鮮軍の方がソ連の支援により最初の兵器を揃え軍も訓練されていたのに対し、南は半封建社会から抜け出していなかった。 若き日の李承晩はウッドロー・ウィルソン元大統領に気に入られ、たった一人の朝鮮人工作隊となった。生涯の大半を亡命生活で送った李はアメリカ人の支援団体を要する唯一の候補者として大統領となった。癇癪持ちでけんかっぱやい李はアメリカに全面的に依存しながら、主人の言うことは聞かなかった。生涯にわたる裏切り、投獄、政治亡命、破約の数々がかれを変え、非常にした。日本とアメリカが李を作ったのだ。北朝鮮との戦争を始めたがる李にアメリカは希望する武器を与えていなかった。 一方、満州の抗日ゲリラとして頭角を現した金日成はスターリンの忠実なしもべだった。毛沢東やチトーとは違い金にはモスクワ以外に後ろ盾がない。中国に近いものや独立心のある者は粛清されスターリンの忠実な信者の金が残った。独裁者の手際と権力とで嘘を真実にし、北朝鮮では金は英雄となった。毛沢東の成功が金の欲求不満を高め金は信じた、今度は自分の番だと。 6月25日人民軍は南に進撃を始めた。おもに農民出身の兵士達は占領下の日本軍への怒りの矛先を日本人に協力した上流の朝鮮人同胞に向けられそのままアメリカ人に向けられるように洗脳されていた。彼らの家族の過酷な貧困は彼らのせいだ。27日にアメリカ軍主導の国連軍が参戦したが人民軍は勢いそのままに8月末には連合軍を釜山に追い詰めた。補給線が伸びた人民軍に対し連合軍にはアメリカからの援軍がようやく届き、戦力の集中は続いていっていた。 マッカーサーの最大の軍事的成功をもたらした仁川上陸作戦は日本軍に対する飛び石作戦の焼き直しだった。陣地を奪い取るのではなく孤立させ無力化する。問題は目的地をどこにするかだ。マッカーサーの選んだのは仁川だったが上陸作戦の立案と実行を担当する海軍は反対していた。仁川は上陸作戦を実行するには最悪の条件を備えていた。潮の流れは早く複雑で小島により港は分断され、上陸に適した砂浜はなかった。しかし本当の危険は干満差で最大9.6mもあり、岸壁と埠頭に上陸できるのは事実上9月15日しかなかった。人民軍がもし他の港のように機雷を敷設していれば作戦は失敗しているところだったが、「敵の司令官は、だれもそのような無謀な試みはするまいと推理するだろう」とマッカーサーの魅力的な説得が功を奏しマッカーサーは賭けに勝った。実は日本の港湾には中国軍のスパイが入り込んでおり持ち運ばれる装備とマッカーサーの性格から毛沢東は仁川上陸作戦を予想していた。ロシア人顧問も同様に金に助言していたが金は聞き入れない。毛はこの時点で参戦の覚悟を決めていたようだ。 大成功に終わった仁川上陸作戦の裏では連合軍側にも危機の目が生まれていた。釜山橋頭堡を支えた第8軍司令官のウォーカーは上陸作戦に反対したためマッカーサーは取り巻きのアーモンドに指揮権を与えた。アーモンドは威勢がいいだけの気取り屋で、後に中国軍の反攻に際しては無能さをさらけ出している。北方進撃に向けウォーカーの第8軍から分割された第10軍の指揮権は参謀長ポストとともにアーモンドに与えられた。マッカーサーにとって仁川は北朝鮮だけでなくワシントンに対しての勝利となった。仁川の魔法使いマッカーサーは神格化され、誰もマッカーサーを止められなくなった。

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    投稿日: 2018.06.05
  • アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

    アレルギー医療革命 花粉症も食物アレルギーも治せる時代に!

    NHKスペシャル取材班

    文藝春秋

    皮膚からか腸からか、それが問題だ

    現代の都会の生活がアレルギーを増やしたというのは誰しも感覚的には納得できるだろう。花粉症へ悪影響を与える因子としてはの原因は食生活だけでなくストレス、タバコ、睡眠不足、大気汚染などがあげられている。またアレルゲンの許容量を超えると発症するというのもある。しかし、最新の医学では少し違う角度でアレルギー治療が行われ始めている。 電気を使わず、昔ながらの生活を続けるアーミッシュにアレルギーの発症はほとんどない。追跡調査の結果、遺伝ではなく環境因、加熱していない牛乳を飲むことと、牛や馬との日常的な接触がアレルギーになりにくい理由だとわかったI g Eという抗体が明らかに少ないのだ。そしてある免疫細が35%も増えていることがわかった。制御性T細胞、通称Tレグ。本書の主人公の登場である。家畜の細菌を体内に取り込むことでTレグが増える。そしてこのTレグがI g Eの過剰な生産にストップをかけるのだ。 Tレグ細胞発見のきっかけは自己免疫疾患はなぜ起きるかという疑問からだった。発見したのは大阪大学免疫学フロンティアセンターの坂口志文教授。同センターには自然免疫の研究でノーベル賞の有力候補だった審良静男教授(新しい免疫入門はかなり専門的でした)もいる。免疫の司令塔T細胞は体内に異物が入ってくると攻撃命令を出すのだが、たまに相手を間違えることもある。本来攻撃すべきでない自分自信を攻撃してしまうのが自己免疫性疾患だ。間違った攻撃を止める仕組みがあるはずだというアイデアがTレグ細胞の発見につながった。 「あまりに清潔すぎない方が抵抗力がついて良い」と言うのが俗説とは言い切れない。少なくともアレルギーに対して衛生仮説はTレグ細胞の発見により有力な仮説となっている。細菌が多い環境だと認識した免疫システムは将来の感染症に備え、攻撃を担うT細胞をより多く作る。と同時にその攻撃を止めるTレグもより多く作る。これは例えば花粉など特定の物質に反応するTレグの元になる。 子供をアレルギー体質にしないために母親は食事にどう気を使うべきなのか。少なくとも以前指導されていたアレルギー原因物質を食べないという方法に効果がないことは明らかになっている。むしろ色々なものをバランスよく食べた方が良さそうである。因みに妊娠中の母親がダイエットしすぎると胎児は省エネ型の体質になり、生活習慣病になりやすくなる。飢餓の世界であればそれも間違いではないのだろうが。 日本の花粉症同様にアメリカではピーナッツアレルギーが非常に多い。最新の研究では妊娠中の母親がピーナッツをよく食べていた方がアレルギーの発症率が低い。さらには子供達が非常に早くからピーナッツを食べるとアレルギーを予防すると言う。体内の最大の免疫器官は腸だと言われている。単純に表面積が広いこともあるかもしれないが食事を通して異物と接触する最大の器官でもある。 毎日大量に異物を取り入れても腸はアレルギーを起こさない。腸でTレグ細胞が大量に作られているからだ。 ピーナッツアレルギーの原因の一つに生後半年以内にピーナッツオイル入りのスキンクリームの使用があったことがわかった。免疫システムを作り上げる子供の頃に同じ異物が皮膚から入った場合は攻撃対象と認識され、腸から入った場合は専用のTレグ細胞が作られてアレルギーを起こさないようにする。アレルギー予防としては離乳食をできるだけ早くから色々なものを与えた方が良い。すでにアレルギーを発症しているとアナフィラキシーショックを起こすと命に関わるため最初は耳かきひとさじ程度から異常がなければ徐々に増やしていく。先に腸から吸収するのが鍵となる。皮膚から入る異物は攻撃対象となる、花粉症も経皮感作と考えてられている。 すでに花粉症を発症した大人にも救いはある。田舎暮らしもいいが即効性には欠ける。舌下免疫療法は腸からではないが同じ仕組みでTレグ細胞を増やしアレルギーを抑える。他にもアレルギーを起こすのとTレグを作るのが花粉のタンパク質の違う部分にかかることからTレグ用タンパク質を含んだコメが開発されている。さらには専用化されていないTレグ細胞が多く存在するリンパ節に花粉成分を直接注射する治療法も開発されている。 前出の新しい免疫入門によると自己免疫疾患とがんの免疫治療は表裏一体のものである。自分の体を攻撃しないようにするか、体の一部のがんを攻撃するか。ここでもTレグ細胞が鍵となるのだろうか。

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    投稿日: 2018.05.27
  • 秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの真実

    秘匿捜査 警視庁公安部スパイハンターの真実

    竹内明

    講談社文庫

    スパイ天国日本

    「スパイ天国」日本、「日本のスパイハンターは、国際インテリジェンスという概念に乏しい国家を基盤として闘わねばならないという大きなハンデキャップを背負っている。与えられた権限も予算もあまりにも小さなものだ。しかし磨きに磨かれた技術は世界のどんなカウンターエスピオナージ機関をも凌駕し、諜報大国ロシアの機関員を恐れさせる存在となっている。 ロシアでは連邦法で「諜報活動において非公然の方法、手段を取ることができる」と定められておりエージェントは守られている。スパイの現場を押さえても在日ロシア大使館はこんなコメントを発表するのだ。「武官の行為に問題はないと考えている。本人は任期満了により帰国した」と。スパイハンター達は事件を「成功」させてもいつも突然の無力感に襲われる。捜査の打ち上げと称して美酒に酔うことはない。自慢話をすることもない。捜査が終了しても、静かに日常の活動に戻るだけなのだ。 本書では海上自衛隊員がリクルートされたボガチョンコフ事件を中心にすえながらスパイとハンターそして狙われるエージェント候補者の姿を追っていく。冒頭に紹介された事件では内閣情報調査室長である大森義夫が「内調職員は積極的に外部の人間と食事などをともにして、情報を取るべし」と指示したため1994年に中途採用で入った水谷がカウンターエスピオナージの訓練も受けることなく無謀な冒険に突入していった。キャリアを無視した組織への水谷の不満はGRU工作員にとって教科書通りのリクルート対象者となるスパイ天国を象徴するエピソードだ。 ボガチョンコフ(ボガ)と海自の森島との出会いは偶然だったのか仕組まれたものかは明らかではない。しかし二人で食事をしたところから森島は徐々に取り込まれていく。1999年9月は北方領土問題が解決に向けた兆しが見え始めていたころだ。情報畑の森島であったがボガの人柄にほだされていた。いっぽうのボガは冷徹に森島をリクルートする価値があるかを見極めていた。防衛大の修士論文のためにロシアの論文を欲しがる森島に対しお互いに資料交換を持ちかけるボガ、最初は公開資料を渡し、食事をおごってもらうだけの関係だったが、協力者としての運営は森島が意識しない間に始まっていた。この後毎月のように二人は会合を重ねた。森島の息子の死という不幸もボガにとっては森島を籠絡するための材料でしかない。森島を気遣うふりをしながら接触の頻度を上げ、論文締切の迫る森島の足元を見るように見返りの資料の要求レベルを上げ始めた。 ボガの犯したミスは些細なものだった。森島との最初の食事の日、麻布警察署のミニパトが路駐している外交官ナンバーに気づき報告していたのだ。スパイハンターはボガが日本人といるところを発見し2週間後には森島の身元が割れていた。翌2000年3月に森島の息子が亡くなった日にもスパイハンターは病院に潜入している。 6月森島はついに「秘」指定文書をボガに渡す。この頃には森島は完全にボガの支配下に置かれていた。一方でこの日の接触に使われたレストランでは客もウエイターもスパイハンターが入り込み二人の金銭のやり取りを確認していた。現場を押さえるチャンスは一度きり。森島が秘文書を渡す現場を抑えられればスパイハンターの勝ちだ。 この年スパイハンター達にとっては一つ屈辱的な事件があった。SVRロシア対外諜報庁の大物スパイスミルノフに対する強制追尾が鈴木宗男の横槍で中止させられたのだ。9月には平和条約締結と北方領土返還に向けた森ープーチン会談が予定されていた。スミルノフは過去にジャーナリストに偽装して諜報活動をしていたことがわかっていたが「PNG(好ましからざる人物)であっても日露友好のために受け入れる。これは官邸の意向でもある」との添付資料がつけてあったと事務官が述べている。さらにスミルノフは日本の情報機関と連絡を取りたいと公然たる「情報外交」を申し出てきた。しかし、残念ながら日本にはカウンターパートとなる情報機関がない。ギブアンドテイクの情報外交が成り立たない状況で過去に身分を偽った情報機関員を受け入れてしまえば日本は正真正銘の「スパイ天国」というレッテルを国際社会から貼られることになる。 9月4日北方領土の解決は事実上見送られ、このことが影響したのか次の接触がXデーと決まった。9月7日だ。ボガと二人が合流し向かった店内は14人のスパイハンターで埋め尽くされた。勝負は1度ついに茶封筒が渡された瞬間を押さえた。森島が逮捕され、残されたボガは外交官の身分証を差し出した。逮捕はされないがスパイとしては敗北以外の何者でもない。実はこの時渡されたものはボガの妻へのお土産の折り紙の折り方で、森島が自白しなければスパイハンター達もまた大きな傷を追うところだった。

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    投稿日: 2018.05.15
  • デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論―潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋

    デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論―潜在能力を活かせない「日本病」の正体と処方箋

    デービッド・アトキンソン

    東洋経済新報社

    俺はまだ本気でやってないだけ・・・

    2015年 購買力調整後一人当たりGDP 世界27位、シンガポールの半分以下でアジアでは香港、台湾に次ぐ第四位ながらすぐ下に韓国が迫る。労働者一人当たりのGDPは先進国17位でついでにアメリカの州別ランキングと比べると50位に相当する。一人当たり輸出額は4914$で44位、ただこれはアメリカもそれほど変わらないが。 技術立国なのかというとデータはそれも否定する。一人当たりでは研究開発費はシンガポール、韓国、台湾に次ぎアジア4位で世界では10位。研究開発費の対GDP比率は3.58%と世界3位つまり研究開発が経済の成長に貢献できていないということだ。最近増えた印象のノーベル賞授賞者は1000万人あたり2人で世界39位、科学・経済分野に絞っても1.7人で29位。ついでに夏季オリンピックのメダル数も一人当たりでは50位に落ちる。 業種別では製造業の一人当たり生産額では約1万$で先進国の中では11位ものづくり大国というよりは平均やや下、農業では12位そしてサービス業が14位。一人当たりGDPで日本は先進国の平均より1万$ほど低いがそのほとんどがサービス業の差だ。1995年以降先進国ではIT技術によってサービス業の生産性を改善してきた。一方で高スキル労働者の割合は50%に近く先進国で最高だ。潜在力を生かせていないというのがこの本の骨格になる。 ではどうするか。遅れてるんだから進んだところをまねるんでしょうね。例えば農業の場合、国民一人当たり生産額ではデンマーク2729$、オーストラリア2415$、オランダ1423$に対し日本は437$。農産物の輸出額のGDP対比の世界平均は1.6%で日本に当てはめると8兆円。オランダは日本より狭い耕地面積で8.5兆円を輸出しておりGDP対比では11%になる。ユーロ圏が有利に働くという事もあるにせよ花きなど高いものばかり作ってるかというとそうでもない。調べたところ生産量の77%はジャガイモ、トマト、ニンジン、タマネギで生産地や生産施設を集約し、ロジスティックを効率化し、巨大な温室はITで環境が一定になるように制御されている。農林省のHPにはオランダが小さな経営面積でも高い収益をあげるできることのできる農業を振興し、と書かれている。減反などで既存の枠組みを守ろうとしても高齢化と人口減で続けられないのは目の前だ。 いいものを安く、たくさん作れば、今は利益が出なくても、そのうち出る。人口が増えていればその成長に貢献しているという考え方ができた。私益よりも公益、本当にそうであればいいのだが利益を上げないことの言い訳になってないか。実は個人の利益に対し過保護になってないか。「中小企業かわいそう」と補助で延命させた結果、業界全体としては非効率な状態を続けてしまってるのではと耳の痛い話が続く。一時的な痛みはあってももっと儲けられるようになるはずだということなのだが。 決済サービスだけを見ても中国ではほんの3年前には見なかった携帯のQRコード決済が一気に普及した。ここだけは中国の方が進んでいる。現金が使えないレジができているのだ。わずか7分で新幹線の掃除が終わるのはTESSEIという会社のレベルの高さだけでなく、秩序を重んじる日本社会の奇跡と言える。そこでむやみと日本はすごいと煽るのではなく、現状をちゃんと見ましょうよということです。

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    投稿日: 2018.04.22
  • チョコレートの真実

    チョコレートの真実

    キャロル・オフ,北村陽子

    英治出版

    真実は苦い

    カカオ農園で働く子供はそれが何になるか知らない。 コートジボワールに行けば自転車が買えると隣国マリやブルキナファソから来た子供はだまされてカカオ農園で働かされるが給料をもらえることもなく搾取されている。穀物メジャーのカーギルやADMが買い付け、製菓メーカーがチョコレートを作る。児童労働を禁じる法律に対して製菓メーカーは調査をしぶり、見ないふりをする。 子供達を働かせる農家も儲かっている訳ではなく、カカオの集配人は私兵に賄賂をせびられ、カカオ公社は権力と結びつき輸出した代金は闇に消える。 チョコレートを食べる人が責任を感じる事はないが、真実は苦い。

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    投稿日: 2017.10.14
  • ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸――メーヴェが飛ぶまでの10年間

    ナウシカの飛行具、作ってみた 発想・制作・離陸――メーヴェが飛ぶまでの10年間

    八谷和彦,猪谷千香,あさりよしとお

    幻冬舎

    「ガンシップは風を切り裂くけどメーヴェは風にのるのだもの」

    クマがメールを届けるポストペットの開発者八谷和彦氏がイラク戦をきっかけに実際に飛ぶメーヴェを作ろうとしたのが2002年ごろ、当初の予定ではメーヴェをイメージした尾翼のある機体だった。宮崎監督も実際にはメーヴェは飛ばないと言ってたらしいが設計を担当した有限会社オリンポスの代表四戸哲が「メーヴェの形でも飛ばせますよ」と言ったばっかりに無尾翼機ででのプロジェクトが始まる。 ペットワークスにはポストペットなどを開発しているソフトウェア事業部、稼ぎ頭でもある人形遊びをする大人のためのドール事業部そしてオープンスカイプロジェクトを手がける航空事業部が有る。メーヴェの開発に突っ込んだ費用は9000万円以上、アート作品の制作費としてはかなり高額だ。オリンポスに依頼した3機の見積もりだけで3000万円だが、1億円以上したらしい鉄人28号やガンダムの制作費と比べるといくら材料費がかからないとは言え割安に感じる。事業としては完成したメーヴェの貸し出しとなるのだろうが「中二の心のまま、大人としてそれをビジネスにできれば最高!」という会社なので作りたいから作ったと言う感じだ。ドール事業部も非売品ながら1/6モデルのAKB48ドールを作成したりしている。 1/2モデルのラジコン機、人力でゴムを引いて飛ばすグライダー機に続き、2010年にはジェットエンジンを搭載した滑空テストが始まった。380万円をかけて購入した初号エンジンのベアリング破損では製造メーカーが倒産し、修理がきかずこのエンジンを放棄するしかなくなった。しかし、代替のエンジンをオランダから120万円でネット購入することができプロジェクトはなんとか生き延びた。推力40kgと言う小型ジェットエンジンを売ってる会社があるというのもドローンの技術が転用されているからだそうだ。 メーヴェが飛ぶ姿はこちら直近は振展がなさそうだが。 http://www.petworks.co.jp/~hachiya/works/OpenSky_movie.html

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    投稿日: 2017.07.08