絶望の裁判所
瀬木比呂志(著)
/講談社現代新書
作品情報
裁判官というと、少し冷たいけれども公正、中立、優秀といった印象があるかもしれない。しかし、残念ながら、そのような裁判官は、今日では絶滅危惧種。近年、最高裁幹部による、思想統制が徹底し、良識派まで排除されつつある。 三三年間裁判官を務めた著名が著者が、知られざる、裁判所腐敗の実態を告発する。情実人事に権力闘争、思想統制、セクハラ・・・、もはや裁判所に正義を求めても、得られるものは「絶望」だけだ。(講談社現代新書)
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商品情報
- シリーズ
- 絶望の裁判所
- 著者
- 瀬木比呂志
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2014.02.20
- Reader Store発売日
- 2014.02.21
- ファイルサイズ
- 0.7MB
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この作品のレビュー
平均 3.0 (73件のレビュー)
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みずからの基本的人権をほとんど剥奪されている者が、どうして、国民、市民の基本的人権を守ることができようか?
裁判官といえば真面目ながらやや世間知らずというのが世間一般のイメージかも知れない。では裁判官はどういう人がなるのかというと司法試験に合格した人が司法研修所に入所し司法修習を受ける。裁判官、検察官、弁護…士のいずれであっても原則として同じカリキュラムを受け終了後、判事補(裁判官)、検事2級(検察官)、弁護士(弁護士会への登録)のいずれかを選ぶ。これが日本の法曹のキャリア・システムだ。最近では優秀な学生の多くが弁護士を希望している。
瀬木氏が批判しているのは主にこのキャリアシステムといっていいだろう。学生が社会に出ずに研修だけを受けすぐに裁判官になる。そして裁判官として出世するためには官僚制のウチワの理論が優先し、裁判官として優秀かどうかはあまり関係がないからだ。一般的な裁判官の評価は事件処理の数とスピードで決まる。そして最も労力がかかるのが判決文の作成なのでできるだけ和解に持ち込ませようとする。判決文を書かなければ後から批判されることもない。実質的には裁判というより前例に基づいた事件処理だ。
前例ではなく自分の考えを主張する様な人はほとんど高裁長官にはなれない。官僚制度は最高裁の事務総局を中心としている。最高裁長官は滅多に開かれない大法廷にしか関与しないので実際の仕事は裁判官を統制、管理することになる。1980年代以降は全員が事務総局系で4/9名が事務総長経験者である。また14名の最高裁判事のうち裁判官出身者の6名はこれまた近年ではほぼ全員が事務局系だ。事務総局局長は長官の言うことに黙って従う歯車でしかないが、現場の裁判官に対しては強大な権力を持つ。こうしてイエスマンが出世するヒエラルキーが出来上がって行く。
瀬木氏の見るところ裁判官によくある性格は四つに分類される。人間としての味わいを持つ個性豊かな人物は多くて5%、頭がよく人当たりもよくしかしあまり中身のないエゴイストが45%、出世主義者の俗物が40%、分類不能の怪物が10%だという。2番目のエゴイストタイプはまだましな方なのだ、そして怪物と俗物が出世して行く。例えば1976年に司法研修所事務局長と教官が「女性は法律家、裁判官にふさわしくない」との差別発言をし国会でも問題になったがこの事務局長はその後事務総長を経て最後に東京高裁長官となりもう一歩で最高裁入りするところだった。
セクハラ、パワハラも数多く瀬木氏自身も早期退官して大学教官への転身を決めた時、事務総局人事局は承認があるまで退官の事実も、大学に移ることも口外するなと告げて来た。講義準備の有給休暇を申請すると認めようとせず、有給休暇を取るなら早く辞めろという。審理中の裁判があったのにも関わらずだ。瀬木氏は日本の裁判所は実は制度の奴隷を拘束するソフトな収容所ではないか、「みずからの基本的人権をほとんど剥奪されている者が、どうして、国民、市民の基本的人権を守ることができようか?」と言っている。
日本の刑事司法はかなりの部分検察官の主張の追認となっている。問題点は2つあり異常なまでの検挙率の高さはよく知られているが、もう一つは拘留状の問題がある。きちんとした審査が行われている逮捕状と違い拘留状はほぼフリーパス。痴漢冤罪についてある弁護士は「相手の女性に名刺を渡してともかくその場を立ち去ること。(これで拘束には逮捕状が必要になる)その場で現行犯逮捕、拘留されてしまったらおしまいだよ」と言った実例も紹介されている。連続20日間に拘留に耐えられる人は法律家でさえ多くない。疑わしきは罰せられる。
ではどうするか?瀬木氏の意見は法曹一元化で優秀弁護士を裁判官に任官させることと、事務局は純粋な裏方として法律家以外に任せることだ。しかし検察以上に普通の人が興味を持たない裁判官、どうやってやるかが問題の様な。続きを読む投稿日:2014.05.15
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そして国民は途方に暮れる
第1章から第3章までは、裁判所にかかわらず官僚機構という閉鎖社会では、さもありなんと思いますし、それは国家公務員でも地方公務員でも、あるいは老舗大企業や銀行も同じなのかもしれません。
問題は第4…章からです。筆者は解決策として法曹一元化を唱えています。ただもっと根深い問題は、我々自身があまり関心がない、当事者意識がないということですよね。裁判を起こしたことも、起こされたことも、経験がない人が大多数でしょう。とは言え、いつ痴漢えん罪を被るかもしれませんし、民事訴訟で言えば、悪いこと?犯罪の意識がなくても、明日にでも関係者となるかもしれません。無関心ではいられない問題です。
付箋だらけ、いや電子書籍ですから、ハイライトだらけになってしまった一冊ですが、私が昔から気になっていた点が論じられていなかったのが残念でした。
それは、憲法に基づいている制度ではありますが、最高裁判所裁判官の国民審査についてです。これって完全に儀式ですよね。皆さんはどう考えますか?続きを読む投稿日:2018.09.21
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