
隣の百合おばさん
城唯士
幻冬舎メディアコンサルティング
善意と正論で直球勝負
主人公の青年の周りは、タイトルにある「百合おばさん」を中心とした善意と正論に囲まれています。直球一本ど真ん中勝負、遊び球なし。ある意味潔い書きっぷり。そんな作者様の気持ちを受け止める。それも読書かもしれない。 作中、主人公や百合おばさんに「クソオヤジ」と連発される、男性登場人物達には同情すら覚えます。そんなにダメですか? 作者にそんな意図はないのでしょうが、確たる証拠もなしにその人の過去の仕事(校長先生)ぶりを推測で非難するのは、いじめの構図に近いと思いますが、いかがでしょうか? ■余談:デビュー作【「千」恵ねえちゃん】【「百」合おばさん】ときたので、次は【「十」和子ばあちゃん】あたりかな・・・・おそまつさまでした。
0投稿日: 2022.11.11天才
石原慎太郎
幻冬舎文庫
まあ、俺の話を聞けや。
一人称で語られる田中角栄元総理大臣の生き様。独白というより、ゴシック調の応接間で、「まぁ俺の話を聞けや」と紅茶を飲みながら(決してお酒の勢いなどではない!)、話を聞いている・・・いや聴きたい!と思ってしまう感じです。 以前、小泉元総理の講演を聞いた事があるのですが、その時もいつの間にか話に引き込まれてしまいました。この本もそれに近いものがあります。本当の政治家の話ってスゴイ。(石原様だからこそ書けるのかもしれません。政治家が政治家の事を、小説家の力を持って書く!現代日本政治の回顧には素晴らしい試みだと思います。) 田中角栄元総理。私個人的には強引、独善なイメージをもっていますが、決して自分の為だけに強引なのではなく、人や日本、そして未来について、考えに考え抜いての実行力だったのだなと思います。 考え抜いて、実行できることこそが「天才」なのでしょう。 *巻末の田中元総理の議員立法リスト、すごいです。
0投稿日: 2018.01.23合本 悪の教典【文春e-Books】
貴志祐介
文春e-Books
屈服<排除
サイコサスペンスというより、スプラッタ。下巻の”かなり!”荒い行動は、文中で語られるほど、”ハスミン”が天才的犯罪者とも思えなかったです。 確かに”無双”系ゲームでは殺戮??を快感として体験してしまっているが、文章でかつ人格をもった登場人物にそれをやると・・・。 結末見たさに最後まで読みきってしまいましたが、個人的にはあまり読後感はよくありません。 理不尽な犯罪小説をエンタメとして割り切れない方にはお勧めできませんのでご注意を。
0投稿日: 2018.01.18愚者のエンドロール
米澤穂信
角川文庫
完璧は正解なのか?
脚本家が倒れて宙ぶらりんになってしまった自主制作ミステリー映画(ビデオ)。女帝と呼ばれる先輩に踊らされて、解決編を探るホータローと古典部。 パーフェクトな結末は正解なのか? 本当の頂点に立つのは誰だ? ホータローの自問自答が終盤に向かうにつれて自己陶酔>いわゆる踊らされているのだなぁ。
0投稿日: 2017.12.08夜想曲集
カズオ・イシグロ,土屋政雄
早川書房
黄昏に響く
夜想曲の題名通り。”夜(黄昏)を迎えた夫婦”に”音楽”が巡る。もちろん音楽は夫婦仲をとりもつ万能薬ではない。でもなぜか切なくなるのは音楽魔力。 あれ?これは小説、文章なのになぜ音楽が聞こえてくるの? さすが!
0投稿日: 2017.12.08悟浄出立(新潮文庫)
万城目学
新潮文庫
俺、八戒。人間の気持ちよくわかる。なぁ悟浄
中島敦の「わが西遊記」の続編を意識して書かれた本書。現代風に言えばスピンオフってヤツなのでしょう。といっても、悟浄が主体的な主人公として大活躍する物語ではありません。中島版は自問する沙悟浄/沙悟浄の見た悟空批評。そして万城目様版では「沙悟浄が見た八戒」を語られます。悟浄は「八戒はなぜ豚なの?」「なぜそんなに自堕落なの?だって君はかつて・・・・」と語りかけ、考え悩みます。 悟浄は悟浄の人生?の中で主人公だけど、西遊記という時のなかでは主人公にはなりえない。そんな悲しみを、読んでいる私自分も感じてしまいました。 その他、三国志の趙雲(劉備や張飛に対して)、史記の虞美人(項羽に対して)など、時の主人公たちを受け入れながらも、小さな嫉妬や羨望をもっている方々が登場します。脇役が脇役のまま、でも自我をもつスピンオフ。お勧めです。
0投稿日: 2017.09.19天冥の標 IX PART1 ヒトであるヒトとないヒトと
小川一水
ハヤカワ文庫JA
河の流れに身を任せるのが、大河の本懐。
Ⅹが最終巻といわれていて、その一つ前。2009年から延々と語り継いでようやく?ここまできたかと感無量??。(私的な分類ですが・・・)「冥王斑とDr.セアキの流れ」「恋人たち、ラゴスの流れ」「海の一党、アウレーリアの流れ」「ノルルスカインとミスチフとカンミアの流れ」といった各々の源流が、上流(過去)から流れ出て、大きな河(現在~未来)へと繋がって行くのはまさしく大河SFの王道です。 このⅨ巻で随分下流まできて各支流が合流してきました。でもまだどんな海にでるのかはわかりません。さてどうなることやる。 このような大河ドラマは結末から読みたいヒトもいるでしょうが、最初から読むことを強くお勧め。できれば期間を空けずに読みましょう。
0投稿日: 2017.09.14まほろ駅前狂騒曲
三浦しをん
文春文庫
考えるな!感じろ!
「便利軒」「番外地」に続く3作目。過去の2作の登場人物と事情もあいまって、まさしく「狂騒曲」な内容。とても面白いです。 多田と行天(←名前です)のたどりつく場所はどこなのか?がシリーズを通してのテーマなのかな思いますが、「一つの旅」と評されるいろいろな事の決着がみられるこの「狂騒曲」は、帯どおり完結編ともいえるかもしれません。ただし、続きそうな匂いもプンプンします。第1期の終了なのでしょうか? まほろシリーズはテーマや設定がややダークなのですが、三浦様らしく、素敵できれいな文章は健在。あやしげな野菜販売団体や、ヤクザ(根はいいやつら)がらみもさらっとかつやさしく包んでくれます。 (以下、やや批判的) ただ少し三浦節?が強すぎて、「行天のいたところ」なんてちょっと「どうかなぁ?」と思います。男(というか当事者)だったらさらっと流せないと思うのですが・・・。三浦様にかかれば、それもやさしいオブラートの中。 三浦様の作品はどれを読んでも面白く、大好きなのですが、多くの作品の趣向が似てきているようにも思います(わたしが読んでいないだけかもしれませんが・・・)。考えすぎかな?感じた方がよいかもしれません(by ブルース・リーと○×△□)^^
0投稿日: 2017.09.14天冥の標 IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと
小川一水
ハヤカワ文庫JA
行き着く先は? それは21世紀の今も不安
抜き差しなら無い戦闘シーンも多くなってきて、いよいよ終盤に向かうのかという雰囲気が伝わってきます。もうすでに因縁もわからず戦ってしまう冥王班と未染者、そしてそれを止めようとする動き。まさしく20世紀の人類が経験した戦争の流れなのかなと感じました。 そしてさらに追加される<<男塾のような??>>混沌。 後書きにもありますが、これまでの戦争のように「戦いに倦んで和解しようとする動き」が「新たな混沌の方々」に通じるかは不明です。21世紀の今まさに直面する紛争もそうだよなぁと感じる2017年秋でした。 *男塾のようなとは?>>茜華根禍(アカネカ)と梧桐路無(ゴドロン)などの漢字な方々(あくまでも個人的なイメージです!わかるヒトであるヒトとないヒトがいるでしょう^^)。どんな方々なのかは、是非1巻から読んでみてください・・・たどり着けるかな?
0投稿日: 2017.09.12機動戦士ガンダム THE ORIGIN(24)
安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男
角川コミックス・エース
ハヤト純情・・・アムロの想い
ファーストガンダムの前後日譚の小話としてとても素敵なお話です。 Z以降の前日譚としてハヤトの話やアムロの想いを読むと、ちょっと悲しくなってしまいます。 ハヤトの純情は、かなわないライバルをもってしまった男の胸に突き刺さります。 そこまでしても守りたいものは私にも・・・あった・・・のかなぁ。 アムロのサイド7への想いも・・・。みんなまだ希望をもっていた時代のお話でした。 余談:表示の浴衣を着たアムロが持っているビールは、ベイスターズマークか?
0投稿日: 2017.09.06