mogaさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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舟を編む
三浦しをん / 光文社文庫
美しい言葉が心をつかむ
36
このようにレビューを書いていても、三浦しをんさまに嫉妬します(おこがましい話ですが・・・)。美しい言葉の数々。「主人公マジメ氏の恋愛の章」の締め一行前の言葉が「・・・月夜だ。」。そしてカグヤさんの目は…・・・。こんな心の綺麗な文章をどうやって紡ぎだすのだろう。
全編を通しての主人公はマジメ氏ですが、何の違和感もなく、むしろごく当たり前のように各章の中心人物は変わっていきます。辞書が(実は辞書に限らずほとんどすべての仕事にあてはまると思いますが・・)一人の力でできるものではない事を感じさせる見事な構成だと感じます。 読んでよかった。 続きを読む投稿日:2014.05.25
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走狗
伊東潤 / コルク
暗黒面へ走る!
20
日本警察の父として(知っている人は?)知っている、川路利良の半生。警察組織創設という素晴らしい実績とは裏腹に、西郷隆盛、大久保利通の下に暗躍するダークな面を伊東節で綴ります。 明治維新の暗黒面に取り…込まれていく様は、まさしくダースベイダー。作者様は意識したのでしょうか?正義と信じた事がいつの間にか変質していくのはちょっと怖いぐらいです。自分もそんな風になっていないかな・・・。
元新撰組の斉藤一との絡みや、暗黒面に傾くきっかけとなったフランスの秘密警察の話など、もう少し厚く書いてもよさそうなところもありましたが、あっというまに読み終えてしまうのはさすがの伊東様。面白かったです。 続きを読む投稿日:2017.02.15
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散り椿
葉室麟 / 角川文庫
その想いに応えたくて・・・
20
不正を告発したため、本社を追われたエース社員が妻の死をきっかけに帰ってきた。おりしも妻の元許婚を筆頭とした創業者一族と、新規事業で会社を立て直した専務派の派閥争いの真っ只中。新入社員の甥っ子も、知ら…ず知らずに争いの中に巻き込まれていく・・・。そのまま現代版にできてしまいますが、時代劇でやらないと生々しすぎるかな。
ストーリーは上記のようにベタな流れですが、妻の愛しい気持ちが男たちを切なくさせます。ある意味、愛って残酷なのかな・・・。「褒めてくれるか?」って旦那(私の!)の本音です・・・、多分・・・。 続きを読む投稿日:2015.09.01
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神去なあなあ夜話
三浦しをん / 徳間文庫
神去マウンテンゲートパーク
20
主人公、勇気君が仮想読者に話しかける(文章を書いている)流れは「池袋ウエストゲートパーク」みたい。もっともこちらは犯罪や時事ネタとは無関係。伝統やちょっと不思議な出来事(もちろん勇気君の恋も)。そし…てその根底にある人と人とのつながりや、厳しくやさしい山に囲まれた環境を、三浦様の美しい言葉で語ります。
(今回はあまり林業そのもののシーンはほとんどありません。ほぼ生活のお話)
しかし三浦様の紡ぎだす言葉に、いつものがら感嘆。
クリスマスのご馳走にノコ(犬)が喜ぶシーンで
「ノコもご馳走の匂いに驚いたようで・・」と書きそうなところを「ノコも「ご馳走の香り攻勢」に驚いたようで・・」と。「匂い」を「香り攻勢」ってするだけでぐっと情感がわきました。プロってすごい。 続きを読む投稿日:2017.02.22
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帰ってきたヒトラー 上下合本版
ティムール・ヴェルメシュ, 森内薫 / 河出文庫
そしてあなたも我が党の!
19
タイムスリップモノの王道。過去の特徴のある人物(ヒトラーを偉人というのはちょっと・・・)が現代に現れたらなにが起こるか!
しかし保守本流の面白さ=「現代とのギャップによる勘違いや騒動」は導入期のみ…。。ヒトラーの現状認識力の高さは、「自分流に現状を解釈」して「自分の理想に向けて(積極的に!)活動」をする、一種のサクセスストーリー的な爽快感を感じさせます。「おぉ、結構正しいこと言っているじゃん!。その通り!」なんて思っていると、いつの間にか、登場する人物も政党も、そして私(あなたも)も・・・。怖い。 続きを読む投稿日:2016.06.10
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空飛ぶ広報室
有川浩 / 幻冬舎文庫
スカイよ!泣いてもいいんだぜ。
18
ドラマ(2013年放映:綾野剛・新垣結衣)を先に見ているのですが、ドラマ・原作共に大変よく出来ていると思います。ドラマは私が見た中で、初めて3.11の震災を扱った内容であったと記憶しています。その扱…いはただリアルな「悲しみ・苦しみ」だけでなく、自衛隊側からみたあの震災を、誇張しすぎずかつ不必要なドラマ仕立てもなく、とてもよいものと感じました。当本の別章「あの日の松島」がそれにあたります。
メインのストーリーは、航空自衛隊広報室のお話。有川様の2大得意分野「自衛隊」+「お仕事」の夢のコラボ?。 元パイロットの広報官、空井君の想いが発露するシーンが泣けますが、お涙頂戴になりすぎず、周辺も丁寧に描いてとてもバランスのよい出来です。その反面、平坦なイメージがするな・・・と思ってしまうのは読者の贅沢なのだろうとちょっと反省。 続きを読む投稿日:2016.07.23