mogaさんのレビュー
参考にされた数
1372
このユーザーのレビュー
-
家康、江戸を建てる
門井慶喜 / 祥伝社
施政者が目的を示したなら、現場が応える!応えたい!
18
小田原攻めの秀吉-家康の連れションで「関東を(家康に)やる」というシーンより始まります。ちょうどNHK大河「真田丸」(2016年6月)でも同様のシーンがあり、個人的にはタイムリーな読書でした。
合…戦ではなく、内政による江戸幕府の出来ざまを描きます。造成(河川治水)、鋳造(貨幣)、水道、土木建築、そしてランドマーク(天守閣)と都市行政とはこういう事だと納得の一冊。最初と最後に施政者(家康)の視点が示されるのも秀逸。なるほど、後は現場が動くだけ!・・・そうありたい・・・。 続きを読む投稿日:2016.07.08
-
泣くな道真 大宰府の詩
澤田瞳子 / 集英社文庫
よいキャラを活かすのはムツカシイ
17
菅原道真は「学問の神様」と「恨み節の怖い人」とギャップのあるキャラクターで知ってはいるけど実際は? 小説なので史実かどうかはともかく、当本のような頭は切れるがちょっと根暗。でも正義感もちゃんとあると…いった道真観はよいかも。
話の展開も、道真を上げて下げてといじくって?他の登場人物も魅力的な配置をしているので面白いのですが・・・。如何せんボリュームが足らない感じがします。悪徳貿易商や京からのイヤミな使者、破れ寺の住職等々。うーん、もったいない。 続きを読む投稿日:2017.01.30
-
ペンギン鉄道 なくしもの係
名取佐和子 / 幻冬舎文庫
過ぎ去った優しさも今は甘い記憶♫
17
ペンギンが乗ってくる鉄道を中心に展開する4つのハートフルストーリー・・・・。といってしまえば簡単なのですが、本当にその通りなので、ホワッとしたい方にお勧め。なぜペンギンがということもふまえて、ちゃん…と収めてくれるので安心の一冊であります。 続きを読む
投稿日:2016.07.27
-
昨夜のカレー、明日のパン
木皿泉 / 河出文庫
想いに気付いて前に進もう
16
夫に先立たれた嫁とその義父(本文中でもギフとよばれています。彼も奥さんをはやくに亡くしている状況)二人のフラットな生活。でもドライで無機質な日々ではありません。登場人物がそれぞれに故人にかかわる色々な…こと、体温が残る想いに気付き、前にすすんでいきます。 あぁ、こういうのって生きていくって事だなぁと思います。思い出だけにとどまってばかりではだめなのですね。 続きを読む
投稿日:2016.12.02
-
桜の森の満開の下
坂口安吾 / オリオンブックス
結晶のような文章に魅せられて・・・怖い・・・
16
桜の下はいつでも花盛りとつい思ってしまう私を、あっと云う間に不安に陥れる冒頭。美しいものを求め、欲したのは「男」なのか「女」なのか・・・。美しい桜に潜む陰をこれほどまでに洗練された文にできるものなの…だろうか・・・。わずか50ページ弱に凝縮された”人”を堪能してください。
蛇足:森見登美彦様版「桜の森の満開の下」を先に読みました(「新釈 走れメロス」より)。森見版も現代に置き換えて大変よくできています。オリジナル文章のすごさと、”新釈”版のトライアル。読み比べもとても面白い試みだと思います。 続きを読む投稿日:2015.09.09
-
国を蹴った男
伊東潤 / 講談社文庫
漢気譚に胸を震わす。
16
まさしくハードボイルド。戦国時代物なので敢えて和訳するなら”漢気譚”でしょうか。各譚の主人公はスーパーエース級(信長、秀吉など)や有名エース級(三成、光秀など)ではありません。浪人軍団の師団長?や千…利休の高弟など、知っている人は知っている硬派な方々・・・多分(私は知らなかった人多数。おそらく実在)。しかも彼らが超人的な力を発揮するわけでもなく、只々戦場の中で、時に翻弄され、人に裏切られ、己を信じ、去ってゆく様を描きます。 切ないと思うにはあまりにも過酷。潔いとするにはあまりにも不運。
さて、この作品を読んで、かの武人を、「愛の武将」 と呼べるかな? 続きを読む投稿日:2015.10.01