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このユーザーのレビュー
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新釈 走れメロス 他四篇
森見登美彦 / 祥伝社文庫
「走れメロス」が白眉
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「走れメロス」が白眉ですが、元ねたを知っていれば、その巧みなパロディぶりに爆笑できると思います。
「走れメロス」は、本家は時間内に王の下に戻る、本作は時間まで逃げ切ると、間逆の前提に立ちながら、随所に…本家を髣髴させるシーンを交えて、より大きな笑いにつなげてくれます。
どこを本家から踏襲して、どこを直したかという点だけでも興味深く読めるのではないでしょうか?
続きを読む投稿日:2015.09.28
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題未定 怪奇SF
小松左京 / 文春文庫
ユーモアあふれるSF
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シリアスな作品も多く書いている作者ですが、本作は、ユーモアにあふれる物語です。
とはいえ、内幕話のような作者と編集者のやり取りや筆が進まないことを嘆く日常?的なシーンから、SF的な仕掛けが表に出てくる…シーンへの切り替えなど、かなり考えられた構成になっているように思いました。
「怪奇SF」という副題は、ご愛嬌としても、SFの道具立てが惜しげ無く投入された物語は、おおらかに楽しめるSFとしてお勧めできると思います 続きを読む投稿日:2015.09.28
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フォックスの死劇
霞流一 / 角川文庫
捻った文章が面白い
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映画界を巡る連続殺人事件を描いたミステリですが、人を喰った文章が面白く読めます。
空を飛ぶ死体など、いろいろな謎も盛りだくさんですが、解決編はかなり無理な点もあったように思いました。
真面目に謎解きを…しながら読むというよりも、要所要所に仕込まれたくすぐりネタを楽しみながら読むような本だと思います。 続きを読む投稿日:2016.01.23
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物語 イタリアの歴史II 皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで
藤沢道郎 / 中公新書
どちらから読んでも良いが、第1巻を先に読むほうがお勧め
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もともと雑誌に連載されていた記事をまとめたもののようです。
「物語 イタリアの歴史1」では、イタリア分裂から統一までを描くという大きな流れがありましたが、今回はそのような趣向は無いようです。
とはいえ…、特定の人物を中心にその同時代史を説明するという基本コンセプトは同じなので、前巻を楽しめた人には、こちらも楽しめると思います。
どちらの巻を先に読んでも良いと思いますが、第1巻のほうがイタリアの通史を理解しやすいので、第1巻を読んでから、第2巻を読んだほうが良いと思います。
続きを読む投稿日:2016.02.13
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怪盗レトン
ジョルジュ・シムノン, 稲葉明雄 / グーテンベルク21
人間の弱さを描く描写が真に迫る
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エラリー・クイーンの国名シリーズのような論理性や、ウイリアム・アイリッシュのサスペンスや叙情性はありませんが、人間が弱さを見せる姿の描写は卓越しているといえるのではないでしょうか。
単純に弱い、可哀そ…うな姿を描くのではなく、強がっていた人間が崩れ落ちる姿とそれを見つめるメグレ警部のまなざしは、なかなか他の作家には見られない、真に迫った印象を与える描写だと思います。
忘れ去られつつある作家かもしれませんが、電子書籍で多く再刊されていることを機に再評価されても良いと思います。 続きを読む投稿日:2016.04.04
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マラッカ海峡
谷恒生 / 集英社文庫
70~80年代の日本映画の雰囲気が濃厚
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70~80年代の日本映画の雰囲気が濃厚な作品ですが、今読んでも、却って時代のもつ空気の差を楽しめるのではないでしょうか?
登場人物の動機付けに説得力が欠ける点や、ややご都合主義的な展開がマイナスポイン…トですが、主人公のストイックで非情な価値観など、登場人物のキャラクターは良く描き分けられているのではないでしょうか。
ご都合主義と書きましたが、その一方で物語りはさくさくと進み、読者を飽きさせないつくりとなっているので、読んで損は無いと思います。 続きを読む投稿日:2015.04.01