hoge2さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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甲賀忍法帖 山田風太郎ベストコレクション
山田風太郎 / 角川文庫
山田風太郎氏の忍法帳シリーズを読むなら、まずこの作品を
6
伊賀、甲賀に分かれた忍者が生き残りをかけて忍法合戦を行う・・・という話ですが、そこに、伊賀・甲賀の若きリーダーの悲恋、奇想を聞かせた忍術の数々など話を面白く膨らませる要素が詰まっています。
特に、1対…1の対決を順番に見せるという単純な構成を避けた物語は、先が読めず、はらはらとした展開で楽しませてくれます。
似たようなタイトルの作品がたくさんありますが、忍法帳シリーズを読むなら、まずこの作品をお勧めします。 続きを読む投稿日:2015.08.17
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獣人伝説
半村良 / 角川文庫
半村良の良い面が詰まった作品
4
尻尾の生えている人が見えるという不可思議な現象から始まる物語は、半村良の作品の中でも特にリーダビリティが高いと思います。
冒頭の謎から、追う側から追われる側への転換する構成の妙、虚無感を湛えたラストま…で、半村良の魅力が詰まっているといえるでしょう。
代表作として挙げられる「石の血脈」や「妖星伝」といった大作に気後れしている人には、最初の一冊としてお勧めできます。 続きを読む投稿日:2015.05.18
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宝石泥棒
山田正紀 / 角川文庫
文句なしの名作
4
異世界を舞台にしたSFで、一癖ある登場人物が、想像力を駆使した不思議な異世界を旅する姿を楽しむことができます。
商品説明だけを読むと、よくあるような異世界ファンタジーや秘境冒険物語かと思いますが、徐々…に垣間見える違和感が大きなSF的な仕掛けにつながっていて、SFファンをうならせること間違いなしといえるでしょう。
連作短編風のつくりで、たとえば一見マクベスのパクリに見えても徐々にそれを乗り越えた独自の物語を語る第二部など、個々のパートも異世界ぶりやストーリーが面白く読めると思います。
そして終盤に、物語が隠されていた事実を提示するとき、読者は世界が一変するSFならではの面白さを味わうことができると思います。
SFファンなら、読んで損は無い名作だと思います。
続きを読む投稿日:2015.05.19
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タイム・シップ〔新版〕
スティーヴン バクスター, 中原 尚哉 / ハヤカワ文庫SF
これぞオールタイムベストSF
3
ウェルズのタイムマシンの遺族公認の続編という作品ですが、私がこれまで読んだSFの中でベスト級です。
時間旅行家が未来世界で助けることのできなかったウィーナを救うために、再度タイムトラベルするという導入…部から、過去に未来に時空を超えた壮大なスケールの旅が始まります。
バクスターの描く小説は、クラークと同じく、人類に対する突き放した視点があるものの、科学とそれに取り組む生物(人類だろうがなんだろうが)への深い共感を底辺に湛えていると思います。このあたりが読者を選んでしまうかもしれませんが、バクスターのほかの作品に出てくる、(科学とは)「何を知っているかではなく、何を疑問に思うかだ。」という言葉に共感を覚える人は、本作品で描かれるスケールの大きな未来世界の描写や、時間の根源への旅といった物語にSFを読む醍醐味を味わい、深い感動を覚えるのではないでしょうか?
長い小説ですが、科学が好き、SFが好きという人は読んで損は無いと思います。
続きを読む投稿日:2015.08.03
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黄金伝説
半村良 / 角川文庫
これまで読んだ半村良作品では、ベスト級
3
冒頭の謎の提示から、あれよあれよと物語が進んでいくので、読者を飽きさせない反面、物語世界の価値観が途中で変わるような点を好まない人がいるかもしれません。
しかし、半村良らしい、冒頭の謎、めまぐるしい展…開、がらりと変わる物語の世界観、唐突ながら思い切りの良いラストが楽しめる作品です。
これまで読んだ半村良の作品では、かなり上位に入っています。 続きを読む投稿日:2015.05.18
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パインズ ―美しい地獄―
ブレイク・クラウチ, 東野さやか / ハヤカワ文庫NV
ドラマが気に入ったなら小説も
3
マット・ディロン主演でドラマ化されている作品の原作で、ドラマの6か7話位までのストーリーが3部作の第一部に当たる本作の範囲です。
目が覚めると見知らぬ町にいる主人公が、なんとか町の外と連絡を取りたい、…脱出したいと四苦八苦するというのが大まかなストーリーですが、ドラマと原作を比べると、ドラマの方がキャラクター設定も不気味さや話に膨らみを持たせやすいように変えられているように思います。また、映像の特性を活かして、よりミステリアスな雰囲気を深めてくれていると思います。
小説も主人公の回想シーンなど無駄に思える描写もありますが、見知らぬ町で助けも無い主人公の苦悩や焦燥感など内面的な描写は映像よりも小説のほうがじっくり味わえると思います。また、いささか陳腐かもしれませんが、ドラマには無いラストは、それまでの主人公の苦労を思うとなかなか感慨深いシーンになっていると思います。
小説を読んでからドラマを見るか、ドラマを見てから小説を読むか、どちらでもよいと思いますが、片方が楽しめたなら、もう片方も楽しめると思います。 続きを読む投稿日:2015.08.09