hoge2さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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闇の中の系図
半村良 / 角川文庫
半村良氏の良い面が出た作品
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おおよそ三部構成になっていて、天性のうそつきである主人公の日常、秘密組織にスカウトされ訓練の日々、彼らが大掛かりな仕掛けの3つに分かれています。
二つ目のパートは、やや説明的ですが、嘘が嘘を読んでいく…最初のパートの面白さは、半村良氏の作品の中でも上位の入ると思います。
短い作品ですが、皮肉さを湛えたラストを含めて、半村良氏の良い面が出ている作品だと思うので、お勧めできます。 続きを読む投稿日:2015.09.28
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ラスト・タウン―神の怒り―
ブレイク クラウチ, 東野 さやか / ハヤカワ文庫NV
まあ、終わりよければ。。。
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第2部の終了時点から、第3部がスタートします。ストーリー面でも、第2部で描かれた謎をきっかけに第3部の冒頭に当たる混乱が引き起こされるので、事実上、第2部と第3部は上下巻と思っても良いかもしれません。…なので、二冊まとめて購入しておくか、電子書籍のようにいつでも買える環境があったほうが良いと思います。
肝心の物語は、まあ、良くあるサバイバルものかな~というトーンで進んで、第1部にあったような奇想が見られなくて残念だと思って読んでいると、混乱が収束したあとに被とひねる用意されています。
最後に登場人物たちが取る決断は、第1部に負けず劣らずの、面白アイデアなので、このオチを読むためにも最後まで読んでよかったと思いました。
第2巻、第3巻は、ご都合主義的な展開や似たようなシーンが何度も出てきたり、登場人物の掘り下げがもう少しほしかったりと、欠点も多いと思いますが、勢いとアイデアのひねりで最後まで読ませてくれたと思います。
軽い娯楽作品を読みたい人にはお勧めできると思います。 続きを読む投稿日:2015.09.09
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ミステリーのおきて102条
阿刀田高 / 角川文庫
あくまでミステリを巡るエッセイ
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ミステリーの書き方ガイドや、ミステリのガイドブックではありませんので、その点にはご注意を。
ミステリに関する短めのエッセイが全部で102本掲載されているので、少しずつ空いた時間に気分転換で読むのに最適…です。
書き方ガイドではないと先に書きましたが、作者はミステリ作家でもありますので、作家ならではの創作上のエピソードも多くありますので、そういった面に興味を持つ人にもお勧めできると思います。 続きを読む投稿日:2015.07.16
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弥勒戦争
山田正紀 / 角川文庫
名作「神狩り」が気に入ったら、こちらもぜひ
2
同じ神との戦いをテーマにした作品なら、「神狩り」を先に読んだ方が作者の作風/見方になれるという点から良いと思います。
ページ数が少ない分、書き込みが少なく、もっと読みたいと思わせる部分が多くありますが…、超能力者たちの悲劇的な生き様を描く、無駄の無い物語は「神狩り」を気に入った人なら、こちらも楽しめると思います。 続きを読む投稿日:2015.05.18
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出口のない農場
サイモン ベケット, 坂本 あおい / ハヤカワ・ミステリ
読後感は意外と爽やか
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訳ありの男が怪我をして農場に身を寄せる、という冒頭部分は昔話題になった「飛蝗の農場」を思い出しますが、本作も負けず劣らず楽しむことができました。
冒頭のシーンを基点にして、そこから先の話を語る現在パー…トと、なぜ男が逃げているのかということを語る過去パートが交互に語られる構成で、分かりにくいと思う人がいるかもしれませんが、過去パートはシンプルなので、類似の物語内の時点があちこちに飛ぶ小説の中では、判りやすいほうだと思います。
多くを占める現在パートは、エキセントリックな農家の家族の中で、戸惑いながらも徐々に居場所を見つけていく男の日常が語られる中、破滅への伏線をほのめかす描写のバランスが良く、残りのページ数がカウントダウンのように、静かにサスペンスを盛り上げてくれます。
決して明るい物語ではないかもしれませんが、悲劇の果てに作者が提示する主人公の姿は爽やかな読後感を残してくれました。 続きを読む投稿日:2015.08.11
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闇の中の黄金
半村良 / 角川文庫
3部作の中では、一番面白い
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サラリーマン社会に属する主人公が邪馬台国を巡る謎に巻き込まれていく、、、というストーリーは、「伝説」シリーズに通じるものがあり、嘘部シリーズの中でも一番面白く読めました。「黄金伝説」などの「伝説」シリ…ーズを面白く読んだ人は、本作品も楽しめると思います。
その一方で、嘘部シリーズの一つということ自体が、重大なネタ晴らしになっていて、最後の驚きを損なっているのが残念です。
続きを読む投稿日:2015.09.28