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hoge2さんのレビュー
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  • 亜空間要塞

    亜空間要塞

    半村良

    角川文庫

    稚気あふれるパロディ

    4人のSFファンが体験する冒険物語です。 主人公たちの名前が、芸能人の名前をもじっているように、遊び心に満ちた作品です。 主人公たちは、いくつかの世界を冒険していきますが、それらはSF作品のパロディになっていて、SF好きの人が読めば、にやりとしてしまうでしょう。 物語として楽しく描かれているので、オリジナルを知らなくても楽しんで読めると思います。

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    投稿日: 2016.04.04
  • 怪盗レトン

    怪盗レトン

    ジョルジュ・シムノン,稲葉明雄

    グーテンベルク21

    人間の弱さを描く描写が真に迫る

    エラリー・クイーンの国名シリーズのような論理性や、ウイリアム・アイリッシュのサスペンスや叙情性はありませんが、人間が弱さを見せる姿の描写は卓越しているといえるのではないでしょうか。 単純に弱い、可哀そうな姿を描くのではなく、強がっていた人間が崩れ落ちる姿とそれを見つめるメグレ警部のまなざしは、なかなか他の作家には見られない、真に迫った印象を与える描写だと思います。 忘れ去られつつある作家かもしれませんが、電子書籍で多く再刊されていることを機に再評価されても良いと思います。

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    投稿日: 2016.04.04
  • 異種間通信

    異種間通信

    ジェニファー フェナー ウェルズ,幹 遙子

    ハヤカワ文庫SF

    つまらなくは無いが、まとまりに欠ける

    物語としては、小惑星帯に潜むなぞの宇宙船、ファーストコンタクト、異星のテクノロジー、メンバー間の対立、異生物との戦闘などなど、面白くする要素がたくさん盛り込まれており、それなりに面白く読むことができました。 ただそれぞれの書き込みが表面的で、例えば ・主人公がアマゾンで経験したサバイバルや幼少期の記憶など語られていますが、それが主人公の行動や意思決定などに与える影響に説得力がありません。 ・視点人物を変えて、登場人物間の誤解や認識の齟齬を示唆していますが、そこから生まれる緊張感は無く、ただロマンスものにありそうなすれ違い演出するためのアクセント止まり ・もっと大胆なストーリーにできる可能性がありましたが、(おそらく)続編を書くために安易な展開を選んだために、どこかで読んだようなエピソードの集まりに物語がなってしまった。 SFらしい要素はたくさん含まれていますが、SFを呼んだという満足感は残念ながらありませんでした。 とはいえ、肩の凝らない、さくさく進む冒険ものを読めればよいという方にはお勧めできます。

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    投稿日: 2016.04.04
  • 物語 中東の歴史 オリエント五〇〇〇年の光芒

    物語 中東の歴史 オリエント五〇〇〇年の光芒

    牟田口義郎

    中公新書

    ややこしいイスラム王朝の歴史を学べる

    中心となって描かれるのは、イスラムの歴代王朝の歴史です。 イスラム帝国といっても、いろいろな王朝の入れ替わりがあり、一読しただけでは覚えきれないほどです。 読んで驚くのは、各王朝が時にキリスト教徒と、時にはモンゴル人と年がら年中?戦っていることです。多少は平和な時代もあったようですが、戦いの連続にさぞ住んでいた人たちも大変だったろうと。 例えば十字軍はイスラム社会から見れば蛮族の突然の乱入、といった視点は、ヨーロッパ/中国中心の義務教育では得られないような気がするので、そのような教養を補足するためにも読んでみる価値があるかもしれまん。

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    投稿日: 2016.02.13
  • さよなら、シリアルキラー

    さよなら、シリアルキラー

    バリー・ライガ,満園真木

    東京創元社

    同じようなシーンが繰り返されて、やや飽きる

    つまらなくは無かったですが、もう少し頑張って欲しかったなと。 シリアルキラーに育てられた主人公というアイデアは、まあ良いのですが、人物の描き方に不満が残りました。 登場人物の性格や関係を説明する同じようなエピソードが何度も出てきます。例えば主人公の恋人は、僕は君を傷つけるかもと、うじうじする主人公に、私は「気にしていない、あなたを信じている」と慰めるという描写が何度も出てきます。また主人公の祖母に関しても、主人公にぼけて暴言を吐くシーン、それに傷つき殺意を覚える主人公、というシーンが繰り返されます。 その一方で犯人がわかるシーンは、かなりあっさりしています。 それなりに面白く読めましたが、途中で飽きたのも、また事実です。

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    投稿日: 2016.02.13
  • 物語 イタリアの歴史II 皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで

    物語 イタリアの歴史II 皇帝ハドリアヌスから画家カラヴァッジョまで

    藤沢道郎

    中公新書

    どちらから読んでも良いが、第1巻を先に読むほうがお勧め

    もともと雑誌に連載されていた記事をまとめたもののようです。 「物語 イタリアの歴史1」では、イタリア分裂から統一までを描くという大きな流れがありましたが、今回はそのような趣向は無いようです。 とはいえ、特定の人物を中心にその同時代史を説明するという基本コンセプトは同じなので、前巻を楽しめた人には、こちらも楽しめると思います。 どちらの巻を先に読んでも良いと思いますが、第1巻のほうがイタリアの通史を理解しやすいので、第1巻を読んでから、第2巻を読んだほうが良いと思います。

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    投稿日: 2016.02.13
  • 物語 イタリアの歴史 解体から統一まで

    物語 イタリアの歴史 解体から統一まで

    藤沢道郎

    中公新書

    イタリアの歴史を手軽に

    ローマ帝国の崩壊によるイタリアの分裂から、その後の統一までを10人ほどの人物に焦点を当てて、説明してくれています。 取り上げられている人物は、必ずしも日本で著名という人ばかりではありません。しかし、ただ伝記を10人分並べたのではなく、その時代の全体の動きに関する話を多く取り上げているので、一度分裂してしまったイタリアが統一されるまでの歴史を俯瞰することができると思います。 また、主な舞台となる都市が10人、それぞれで異なるので、イタリア旅行の前後に自分の訪れたい(訪れた)都市を拾い読みしても良いかもしれません。 通読すれば、イタリア各都市、教皇、諸外国、多民族の動向が入り乱れるややこしいイタリア史を手軽に俯瞰できるので、一般教養として興味を持っている方にも、本格的な勉強を始める前の取っ掛かりにも、役立つのではないのでしょうか。

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    投稿日: 2016.02.13
  • 始皇帝

    始皇帝

    塚本青史

    講談社文庫

    手軽に中国史

    始皇帝が誕生する少し前から、その最後までを描いた小説です。 戦国時代末期の状況を多くの登場人物を交えて描いていますが、整理されているので、あまり混乱せずに読むことが出来ると思います。 専門書ではありませんが、一般向けの中国史の本で読んだ内容と比べると大きく脚色されていないようなので、(中国の)戦国時代を舞台にした漫画やドラマを楽しむための予備知識を仕入れるのにも便利な一冊ではないでしょうか?

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    投稿日: 2016.01.23
  • 本能寺遊戯

    本能寺遊戯

    高井忍

    東京創元社

    歴史のif...を面白くエンターテイメント

    雑誌の検証に応募するため、本能寺の変などの歴史的な事件の真相を女子高生3人がワイワイガヤガヤと推理し合うというのが、各短編の基本的な枠組みです。 学術的な検証というよりも、あくまでエンターテイメントとして、このようなことがあったかもしれない(可能性がある)という説が展開されていて、専門に歴史を勉強したわけではない私としては、楽しく読むことが出来ました。 物語の性質上、通常の推理小説のフォーマットと異なり、真相が確定して終わりという書き方ではないので、そこを割り切ってよんでほしいと思います。

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    投稿日: 2016.01.23
  • フォックスの死劇

    フォックスの死劇

    霞流一

    角川文庫

    捻った文章が面白い

    映画界を巡る連続殺人事件を描いたミステリですが、人を喰った文章が面白く読めます。 空を飛ぶ死体など、いろいろな謎も盛りだくさんですが、解決編はかなり無理な点もあったように思いました。 真面目に謎解きをしながら読むというよりも、要所要所に仕込まれたくすぐりネタを楽しみながら読むような本だと思います。

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    投稿日: 2016.01.23