hoge2さんのレビュー
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闇の中の系図
半村良 / 角川文庫
半村良氏の良い面が出た作品
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おおよそ三部構成になっていて、天性のうそつきである主人公の日常、秘密組織にスカウトされ訓練の日々、彼らが大掛かりな仕掛けの3つに分かれています。
二つ目のパートは、やや説明的ですが、嘘が嘘を読んでいく…最初のパートの面白さは、半村良氏の作品の中でも上位の入ると思います。
短い作品ですが、皮肉さを湛えたラストを含めて、半村良氏の良い面が出ている作品だと思うので、お勧めできます。 続きを読む投稿日:2015.09.28
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スフィア-球体-(上)
マイクル・クライトン, 中野圭二 / ハヤカワ文庫NV
センス・オブ・ワンダーよりもスリラー
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クライトンの作品の中では、SF的な要素が最も強いのではないでしょうか。
本作を読むと、クライトンの本質がSFではなく、スリラー作家ということが良く分かるのではないでしょうか?
例えば、私が最もSF作家…らしいと思うA.C.クラークと比べると、深海で見つかる宇宙船や球体をめぐる謎やサスペンスはいたって薄く、人知を超えた壮大なビジョンやSFならでは仕掛けといった要素は余りありません。
その一方で、発見された球体を巡って、徐々に緊張感を増していく人間関係の描写や、その後のスリリングな展開は、小説作りがへたくそであるクラークには望むべくもありません。
ただ、クライトンは、同じ職人的な物語作りに長けたフレデリック・ブラウンやダン・シモンズに比べると、球体が何か、なぜ存在するのかという点ではなく、どのように助かるかという点に重点をおいた物語作りを選ぶという点で、スリラー作家であることに意識的であると思います。 続きを読む投稿日:2015.06.02
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ラスト・タウン―神の怒り―
ブレイク クラウチ, 東野 さやか / ハヤカワ文庫NV
まあ、終わりよければ。。。
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第2部の終了時点から、第3部がスタートします。ストーリー面でも、第2部で描かれた謎をきっかけに第3部の冒頭に当たる混乱が引き起こされるので、事実上、第2部と第3部は上下巻と思っても良いかもしれません。…なので、二冊まとめて購入しておくか、電子書籍のようにいつでも買える環境があったほうが良いと思います。
肝心の物語は、まあ、良くあるサバイバルものかな~というトーンで進んで、第1部にあったような奇想が見られなくて残念だと思って読んでいると、混乱が収束したあとに被とひねる用意されています。
最後に登場人物たちが取る決断は、第1部に負けず劣らずの、面白アイデアなので、このオチを読むためにも最後まで読んでよかったと思いました。
第2巻、第3巻は、ご都合主義的な展開や似たようなシーンが何度も出てきたり、登場人物の掘り下げがもう少しほしかったりと、欠点も多いと思いますが、勢いとアイデアのひねりで最後まで読ませてくれたと思います。
軽い娯楽作品を読みたい人にはお勧めできると思います。 続きを読む投稿日:2015.09.09
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ミステリーのおきて102条
阿刀田高 / 角川文庫
あくまでミステリを巡るエッセイ
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ミステリーの書き方ガイドや、ミステリのガイドブックではありませんので、その点にはご注意を。
ミステリに関する短めのエッセイが全部で102本掲載されているので、少しずつ空いた時間に気分転換で読むのに最適…です。
書き方ガイドではないと先に書きましたが、作者はミステリ作家でもありますので、作家ならではの創作上のエピソードも多くありますので、そういった面に興味を持つ人にもお勧めできると思います。 続きを読む投稿日:2015.07.16
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楽園伝説
半村良 / 角川文庫
伝奇小説とSFの幸福な出会い
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伝説と名のつく作品の中でも、半村良作品の良い面が出ている作品だと思います。
不思議な冒頭、一般的な価値観で描かれる社会の別の姿、その価値観がSF的なアイデアによって一変する中盤から後半といった半村良の…醍醐味が短い作品ながら楽しめると思います。
欧米のSFよりもどろっとした読後感ですが、伝奇小説とSFの幸福な出会いを楽しめると思います。 続きを読む投稿日:2015.07.07
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弥勒戦争
山田正紀 / 角川文庫
名作「神狩り」が気に入ったら、こちらもぜひ
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同じ神との戦いをテーマにした作品なら、「神狩り」を先に読んだ方が作者の作風/見方になれるという点から良いと思います。
ページ数が少ない分、書き込みが少なく、もっと読みたいと思わせる部分が多くありますが…、超能力者たちの悲劇的な生き様を描く、無駄の無い物語は「神狩り」を気に入った人なら、こちらも楽しめると思います。 続きを読む投稿日:2015.05.18