
盤上の夜
宮内悠介
東京創元社
ガチンコ勝負の醍醐味
囲碁、将棋、チェスなどの卓上ゲームをモチーフとした連作短編集。「勝負事小説」としてエッジが立ち、読み応えがあった。ただしキャラ設定がぶっ飛び過ぎなのが難。いきなり都市伝説の「ダルマ女」がヒロインで本因坊っすか? でも、その抵抗線さえ乗り越えれば、「盤上」のガチンコ勝負の醍醐味を、心ゆくまで堪能できることを保証します。
0投稿日: 2013.09.26
天使たちの探偵
原りょう
早川書房
原リョウ…懐かしいなあ
沢崎を主人公とした短編集。どれも良く書けている。どの作品にもこどもがなんらかの形でからんでいるのが特徴。ハードボイルドなのに「女」ではなく「こども」だというのが現在を感じさせる。かといって「こどもは純粋だ(大人は汚い)」てな単純思考はもちろん、「こどもへのお説教」とも「俗流教育論」とも無縁のストイシズムがかっこいい。
1投稿日: 2013.09.26
四季 春 Green Spring
森博嗣
講談社文庫
幼女にして天才
森博嗣S&Mシリーズの第1作「すべてはFになる」でミステリ界デビューを果たした、天才科学者にして稀代の女性犯罪者・真賀田四季の幼女→少女時代を記述し、さらにシリーズのラストを締めくくる四部作。「なるほど天才ってこうなのかもしれない」という説得力があったが、それ以上に著者の「四季可愛いよ四季」状態が垣間見えて微笑ましい。「春」は多重人格を使った叙述トリックがツボ。ちなみに春→夏→秋→冬の順番です。
1投稿日: 2013.09.26
ニコニコ時給800円
海猫沢めろん
集英社文庫
「働く」って楽しいね
面白かった。読めば労働意欲を刺激されるお仕事小説。ロスジェネだろうがフリーターだろうが「時給800円」だろうが、人間にとって働くことは基本的にとても楽しいことなんだよね、という著者のメッセージがビンビンに伝わってくる。もっぺん20代に戻っていろんな仕事してみれたら、と夢想した。
1投稿日: 2013.09.26
神様のラーメン
多紀ヒカル
幻冬舎文庫
食欲のわく短編集
表題作は往年の筒井康隆を思わせるスラップスティックな佳作。この路線かと思ったら、他の作品はそれぞれに違ったテイストで読ませてくれる。「料理小説集」と銘打たれていて、さまざまな料理が登場する。読んでいると腹が減る。一番評価すべきは「73歳の新人デビュー作」というところか。それだけでも十分すばらしいことである。
1投稿日: 2013.09.26
グレート・ギャツビー
フィツジェラルド,野崎孝
新潮社
村上春樹もイチ押し
面白かった。ある時期非常に新しかった小説で、その新しさが今なお匂い立っているようだ。モダンな骨董品というか。自動車事故が出てくるのもそうした「新しさ」の一つ。ただしラストについては、前世紀の教訓小説のようでちょっと嫌。今書くならば、永遠に生き続けるギャツビーをこそ書くべきだろう。
1投稿日: 2013.09.26
第三の時効
横山秀夫
集英社文庫
最悪にして最強の捜査官
傑作! 朽木、楠見、村瀬の三班長それぞれの個性と確執で読ませる構成が見事。で、公安出身の楠見のキャラ造形が、おそらくは前代未聞の素晴らしさ。冷血で協調性ゼロで性格歪みまくってて、同僚や上司としては最悪だが、捜査官としては最強。いわゆる「名探偵」が警察組織の中にいたら、こんな最悪野郎だろう、と。打ち上げも懇親会も欠席だし(笑)
3投稿日: 2013.09.26
グッドラックららばい
平安寿子
講談社文庫
非凡なるホームドラマ
信用金庫の庶務課長と専業主婦の夫婦と二人の娘。長女が高校、次女が中学を卒業した春、突然母が家出してしまう。その後、20年間にわたる、家族それぞれの人生を描く。スタートはテレビドラマ「岸辺のアルバム」を連想させられたが、あの名作をボリュームにおいてもスケールにおいても軽く超えている。平凡なご一家の非凡な20年史。読みごたえ感満点。
0投稿日: 2013.09.26
東京プリズン
赤坂真理
河出文庫
ヘビーでした
女子高生がホームステイ先のアメリカの高校で「東京裁判」をテーマにしたディベートをさせられるという、リアルでもファンタジーでも辛かろうストーリー。それに、現実だか夢だかSFだか分からんあれこれが重層し、村上春樹的なリトルピープルまでが登場し、311の津波と原発事故にまで言及する。時空を超越した大作でした。
0投稿日: 2013.09.26
ピンク・バス
角田光代
角川文庫
ちょっとシュール
妊娠した若妻の家に、軽く気が狂った義姉が同居する話。学生時代にホームレスと同棲?した思い出が臭くもまた痛い。「公園のピンクのバス」がシュール。都市伝説の「黄色い救急車」みたいなものなのだろうか。併録「昨夜はたくさん夢を見た」は、彼氏がインドに旅立ってしまう女の話。友人の男女の描写がいかにも「貧乏で退屈でエネルギー持て余した若い連中」で悪くない。
0投稿日: 2013.09.25
