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このユーザーのレビュー
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わくらば日記
朱川湊人 / 角川文庫
「三丁目の夕日」的ミステリ
3
サイコメトラーの姉とその妹を主人公にしたミステリ連作。舞台は昭和30年代で、お化け煙突、東京タワー、狩野川台風、「太陽がいっぱい」の若きアラン・ドロンなど、当時の事件や風俗が描写され、物語のキーポイン…トになったりもする。夭折した姉の思い出を、数十年後に妹が語るというスタイルで、懐かしさとともに哀しみが通低音となっている。続編「わくらば追慕抄」と併せてお薦め。 続きを読む
投稿日:2013.10.28
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幻想郵便局
堀川アサコ / 講談社文庫
人は死んでも生きている、かも
3
この世とあの世の境界にある郵便局を舞台とした物語。臨死者が幻視する「お花畑」が実在し、それを毎日メンテしてる人がいるとは思いもよらなかった(笑) タイトルから予想していたよりも、数段骨太な作品だった。…短い一生をベッドで寝たきりで過ごすことを余儀なくされたこどもも、死後は元気いっぱい走り回れる…というように、「死」はある意味で「救済」であるというのが、著者のメッセージと感じた。泣かせを売りにした作品じゃないが、泣ける。ちうか泣いた。 続きを読む
投稿日:2013.09.28
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探偵はバーにいる
東直己 / 早川書房
ススキノアル中探偵
3
アル中探偵ちうことで、ローレンス・ブロックのマット・スカダーシリーズを想起。それを札幌ススキノ舞台に移植しちまった、と。主人公はマットよか数段カッコ悪いが、実にリアル。北大出のインテリっぷリも、対する…チンピラや「こども」の頭悪い感じもリアルで良い。著者も冒頭で書いているが「今は昔」感が味。そっか、ケータイが無い時代って、誰かに何かを伝えたい時はこうするしか無かったんだ、と。 続きを読む
投稿日:2013.09.28
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天地明察 上
冲方丁 / 角川文庫
気持ちのよい時代小説
3
気持ちのよい時代小説。冲方丁って「ロリコンハードSFの人でギャンブルにも詳しい」という程度の認識だったが、こんな小説も書けたんだ。後半の意外な逆風展開がドラマの質を一段と高めた。主人公の遅い恋の成就も…「こんな風になれたらな」という理想の夫婦像を演出している。 続きを読む
投稿日:2013.09.25
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第三の時効
横山秀夫 / 集英社文庫
最悪にして最強の捜査官
3
傑作! 朽木、楠見、村瀬の三班長それぞれの個性と確執で読ませる構成が見事。で、公安出身の楠見のキャラ造形が、おそらくは前代未聞の素晴らしさ。冷血で協調性ゼロで性格歪みまくってて、同僚や上司としては最悪…だが、捜査官としては最強。いわゆる「名探偵」が警察組織の中にいたら、こんな最悪野郎だろう、と。打ち上げも懇親会も欠席だし(笑) 続きを読む
投稿日:2013.09.26
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サイバラバード・デイズ
イアン・マクドナルド, 下楠昌哉, 中村仁美 / 早川書房
めくるめくインド版サイバーパンク
3
近未来のインドを舞台にした、サイバーパンクセンス溢れる傑作SF。7編の短編からなっていて、それぞれに小技が効いていて楽しめる。ラストの「ヴィシュヌと猫のサーカス」が圧巻。中盤以降のとてつもないスケール…アップ感に、めまいがしそうになった。他には、血なまぐさい生き女神に選ばれ、インドに連れて行かれるネパール少女の数奇な生涯を綴る「小さな女神」が良かった。「ハイジ」みたい。少年たちがロボット兵器をヴァーチャル操作する「サンジーヴとロボット戦士」は大友克洋にコミック化してほしい。 続きを読む
投稿日:2013.10.07