
氷菓
米澤穂信
角川文庫
地付き家付きお嬢さま
学園日常ミステリ。上手い。短編を積み重ねていく手法が巧み。田舎の地付き家付きお嬢さまが相方というのも悪くない。そういや大昔、早見優が「アイスクリーム、ユースクリーム」と珍妙な歌を歌ってたっけ。
1投稿日: 2013.09.30
幻想郵便局
堀川アサコ
講談社文庫
人は死んでも生きている、かも
この世とあの世の境界にある郵便局を舞台とした物語。臨死者が幻視する「お花畑」が実在し、それを毎日メンテしてる人がいるとは思いもよらなかった(笑) タイトルから予想していたよりも、数段骨太な作品だった。短い一生をベッドで寝たきりで過ごすことを余儀なくされたこどもも、死後は元気いっぱい走り回れる…というように、「死」はある意味で「救済」であるというのが、著者のメッセージと感じた。泣かせを売りにした作品じゃないが、泣ける。ちうか泣いた。
3投稿日: 2013.09.28
妖怪アパートの幽雅な日常1
香月日輪
講談社文庫
家賃10倍払います(笑)
こんなアパートが実在したら、家賃10倍払っても住みてえです。25万円ですか。そんで朝晩るり子さんの絶品飯を食えて、地下の天然温泉に浸かれるなら、安いもんです。高校生、大学生時代だったなら、その後の人生変わったでしょう。
0投稿日: 2013.09.28
羆嵐
吉村昭
新潮社
本当にあった話
時は大正時代、舞台は北海道・天塩地方。現代のように堅牢な家屋、オフロード車、道路などのインフラが揃っていれば、野獣など恐るるに足りなかろう。それらを全て欠いて、ギリギリの生活をしていたところを、自然の猛威に襲われた人々の恐怖と悲惨の物語。ちなみに、その後、同じ地域でヒグマが100頭以上狩猟されたとのことだが、そもそもそこはヒグマのテリトリーであり、人間は迷い込んできたエサでしかなかったということだろう。
0投稿日: 2013.09.28
ファントム・ピークス
北林一光
角川文庫
長野山中の恐怖
怖かった。「ジョーズ」を嚆矢とする「猛獣ホラー」に連なる作品で、なかなかよく描けていた。いかに山の中とは言え、「日常」の延長で突然殺され喰われるなんてのは、レクター博士さんでもようおやりになりまへんわ。人類は元々非力なおサルさんで、食物連鎖のてっぺんから2番目か3番目だったから、そのDNAレベルの恐怖が喚起されるのかも。
0投稿日: 2013.09.28
探偵はバーにいる
東直己
早川書房
ススキノアル中探偵
アル中探偵ちうことで、ローレンス・ブロックのマット・スカダーシリーズを想起。それを札幌ススキノ舞台に移植しちまった、と。主人公はマットよか数段カッコ悪いが、実にリアル。北大出のインテリっぷリも、対するチンピラや「こども」の頭悪い感じもリアルで良い。著者も冒頭で書いているが「今は昔」感が味。そっか、ケータイが無い時代って、誰かに何かを伝えたい時はこうするしか無かったんだ、と。
3投稿日: 2013.09.28
石の血脈
半村良
祥伝社文庫
伝奇小説の白眉
初めて読んだのは中学生の頃だから、もう何十年前? 人類創生以来の闇の歴史に、巨大建造物、暗殺教団や吸血鬼伝説を重層させていく奥深さを堪能させられた。「香織女王さま」筆頭に強烈にエロティックな描写も…中学生でしたから(笑) 文化人類学や民俗学に興味をもったのも、この作品がキッカケ。「建築は権力の象徴」という言葉は今でも覚えていて、今なお説得力を感じる。
2投稿日: 2013.09.28
夜市
恒川光太郎
角川ホラー文庫
心地よい喪失感
エンターテインメントでありながら、深い喪失感が描かれている。もちろん悲劇なのだが、不思議と心地よい。泣いて泣いて泣きつくした後に、じんわりと心を満たす寂しい幸福感のようだ。この感情を、ホラーで味わわせてくれた前例があっただろうか? 着想はRPGかもしれない。「昼間は廃墟で夜になると出現する町→そこでしか買えない貴重なアイテム」とか「死んだ仲間を復活させてくれる教会」とか、ドラクエその他のRPGで味わった「感じ」が、そこはかとなくあるように思う。
8投稿日: 2013.09.28
清須会議
三谷幸喜
幻冬舎
まんが的キャラ描写
そこそこ面白く読めた。テレビドラマというより、まんがレベルのキャラ描写。それも池上遼一版「信長」じゃなくて、重野なおき四コマ版「信長の忍び」の方。「イノシシ」さんまでキャラにする素晴らしさ。
2投稿日: 2013.09.27
博士の愛した数式
小川洋子
新潮社
「数学」啓蒙小説としてもお奨め
映画を先に観てて佳作だった。小説はどうかと思っていたのだが、こちらも佳作。「80分しかもたない記憶」という、悪く言えば「ご都合主義的ワンアイディア」の感傷的なお話なのだが、数学ウンチクと阪神タイガースネタを巧みに使って手堅い作品にまとめ上げている。上手い。「数学者」を魅力的に描いた作品って、実はあまり無いのではないかと思う。「理系離れ」が指摘される昨今だが、これを読んで「数学」に興味を抱き、「数学者」を目指す少年少女が増えたなら、日本の未来は安心だ。
1投稿日: 2013.09.27
