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  • 舟を編む

    舟を編む

    三浦しをん

    光文社文庫

    読後感がとても良い

    15年がかりで「広辞苑」みたいな中型国語辞典を編纂する…それだけの話なのに、読後感がとても良い。主人公と美人板前の恋愛、ファッション誌から異動してきた女性編集者のカルチャーショック、辞典完成間際に執筆者の先生が逝去する。ドラマらしいドラマはそのくらいで、あとはひたすら辞典づくりという地味なストーリーなのに、まったく退屈させない。モノを作る人びとの姿が美しい。

    4
    投稿日: 2014.08.09
  • 対岸の彼女

    対岸の彼女

    角田光代

    文春文庫

    星十個つけたい、角田光代の最高傑作

    「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、うんと大事な気が、今になってするんだよね」 葵のこの言葉に、打ちのめされるような感動をおぼえた。 「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達」なんて、一緒にお弁当食べたり、一緒にトイレ行ったりじゃ必要でも、自分が「ひとり」で戦わなければならない時には何の助けにもならないという、残酷な真実。そして、そのことを自覚した者同士でなければ、本物の友情なんてありえない。 いわゆる「女の友情」ではない、女同士のとことん熱い友情の物語。

    7
    投稿日: 2014.08.07
  • 私と月につきあって

    私と月につきあって

    野尻抱介

    ハヤカワ文庫JA

    本質はハードSF

    日本少女チームの「スキンタイト宇宙服」に対して、フランス少女チームの「外骨格型」がこれはこれでスタイリッシュであり、それを下敷きにした展開もあり、萌える、じゃなくて、燃える。 ラノベテイストながら、本質はハードSF。こういうきちんとした科学的知識(とそれを踏み台にした大胆なアイディア)がベースにあれば、物語の説得力が担保できる。ああそうだ。同年輩の男が一人もいない「女子校部活もの」の範疇なのは昨今のオタク仕様でもあります。

    1
    投稿日: 2014.08.03
  • 天使は結果オーライ

    天使は結果オーライ

    野尻抱介

    ハヤカワ文庫JA

    「女子校部活もの」です

    良かった。1作目よりもずっと出来がいい。こんなテイストで文字通りの「サイエンス・フィクション」をどんどん書いてほしい。半歩先の未来を味わわせてほしい。「けいおん!」「ガルパン」などの「女子校部活もの」の範疇だから、最近のオタクさんたちもだいじょうぶ、安心して読めます。

    2
    投稿日: 2014.08.03
  • 源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか

    源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか

    中川右介

    PHP新書

    ドラえもん研究の力作

    1960年代生まれの幼年誌学年誌の読者がどの時点でドラえもんに出会い、どこで別れたかを年度別に検証しているあたりが白眉。 朝井リョウ的「スクールカースト」がドラえもん体験から始まったのではないか、という指摘も重要。現にギリギリドラえもん体験以前の世代に属する自分は中高生時代、「カースト」は体験していない。「のようなもの」はあったかもしれないが。

    7
    投稿日: 2014.04.10
  • 修業論

    修業論

    内田樹

    光文社新書

    「キマイラ」がよく分からなかった

    何ができるようになるのか分からないまま、師の命じる通りのことを、意味が分からないままやる、というのは、「下流志向」その他でお馴染みの内田教育論。至極ガテンがいくのだが、その先の「キマイラ」が正直よく分からなかった。格闘する両者がキマイラと化し、自分が主導権を握る、というのなら、相手は弟子以外あり得ないじゃないか、と思ってしまう。自分に格闘技の素養が無いからだろうか? 合気道やれば分かるのだろうか?

    1
    投稿日: 2014.04.10
  • 女子高生、リフトオフ!

    女子高生、リフトオフ!

    野尻抱介

    ハヤカワ文庫JA

    スキンタイト宇宙服!

    スキンタイト宇宙服(のカバーイラスト)で決まり(笑) さらに異母姉妹萌え。いきなり中国人が「アルよ」とか、何これいつの時代の作品?と思ってしまったが全部許す。自分世代のSF者の急所を押さえてる。

    4
    投稿日: 2014.04.10
  • 蔵書の苦しみ

    蔵書の苦しみ

    岡崎武志

    光文社新書

    古書マニアの地獄巡り

    自分は古書ユーザーであっても古書マニアじゃないのは確実だが、かつては岡崎さんやお仲間諸氏と同じく「本を捨てられないひと」だった。スチール本棚10数本抱えてたこともある。 が、結婚を契機に「本を捨てるひと」に進化し(嫁さんに無理くりさせられ)、さらに電子化の恩恵もあって、「(紙の)本を持たないひと」へとさらなる進化を遂げつつある。 岡崎さんはイッパシの古書マニアなのだろうが、「本読み」としては、「自炊」が分からんようじゃあ、まだまだだな、と思う(偉そう)。往来堂、古書ほうろうなど、知ってる(遅まきながら最近知った)店の話が出てて嬉しい。

    0
    投稿日: 2014.04.10
  • 福家警部補の挨拶

    福家警部補の挨拶

    大倉崇裕

    創元推理文庫

    コロンボオマージュの佳作

    「刑事コロンボ」のオマージュ作品で、なかなかよく出来ている。映像化ワナビーであろうし、現にTVドラマ化されたらしい。女優にとっては演じやすくお得な役柄だろう。女性にして酒豪なのもポイント高し(笑) ちなみに犯人側から描く倒叙ミステリはTVドラマと非常に相性がいい、という一点に目をつけたのが「コロンボ」の勝利。なんたって分かりやすいっしょ? 同じくコロンボオマージュの「古畑任三郎」の時はまだ「コロンボ」で分かってもらえたが、最近の人は「コロンボ何それ美味しいの?」状態らしい。ちと悲しい。

    2
    投稿日: 2014.04.10
  • ランチのアッコちゃん

    ランチのアッコちゃん

    柚木麻子

    双葉文庫

    おいしい小説

    とにもかくにも「おいしい」。それに尽きる。 OLやリーマン人生における、ささやかでありつつも、絶対に外せない楽しみが「ランチ」である。夜に生きる歌舞伎町ホストや新聞社整理班にとっては、仕事明けの「夜食」。 で、「こんなランチが(夜食が)あったらいいなあ」という願望に、真正面から応えてくれた連作短編。 読んでいて、何度もお腹が鳴りました。

    1
    投稿日: 2014.03.03