bockyさんのレビュー
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沈黙
遠藤周作 / 新潮社
「神はいるのか?」
6
2010/03/21記録。
10年近く前に「深い河」を読んで以来の遠藤作品。
物語は、尊敬してやまない先輩司祭のフェレイラが、
島原の乱の後、切支丹への迫害がキツイ日本において、
棄教したと…いう知らせがローマ教会に入ったところから
始まる。
ローマ教会にとってフェレイラの棄教は、
ヨーロッパ信仰の極東における敗北をも意味する。
主人公ロドリゴと同胞のガルペは、マカオ経由で
長崎に入り隠密行動の中で布教に務めるが
やがて、囚われの身となる。そして、
奉行所が切支丹信徒へ容赦のない迫害を加えるのを
目の当たりにする。ロドリゴは神へ祈りを捧げるも。
神は沈黙を破らない。決して救いの手は差し伸ばされない。
まさに、「あなたは神を信じますか?」
「神はいるのか?」を命題にした内容。
前段は、なんとなくだるくてなかなか読み進まなかったが、
ロドリゴの心の葛藤がクライマックスになるにつれ、
カレの中の祈りとそこに含まれる疑念が渦巻く感じが素晴らしい。
個人的に「絶体神」という存在はいないものだと
思っているので、その点のロドリゴの苦悩に共感は
しなかったが、極限状態に追い込まれた宣教師の苦悩の描写が
素晴らしかった。
最も興味深かったのは、フェレイラのいう、
「日本には、キリスト教が根付かない。
彼らは、神の存在を自分達の手でねじ曲げてしまい、
大日と同じようなものにしてしまう。
キリスト教にとって日本は沼地。根はいずれ腐っていく。」
という内容。どういう事なのだろう。。。
Wikiを読む限り、このあたりが遠藤周作がノーベル文学賞候補と
なりながらも選考員から嫌われた理由なのだろうか。。。
疑問は尽きないが、とりあえず読了。
続きを読む投稿日:2013.12.26
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最貧困女子
鈴木大介 / 幻冬舎新書
リアル闇金ウシジマくん
6
闇金ウシジマくんは、徹底した取材に基づいて描かれているらしいが、まさにあの世界を地で行くルポルタージュ。
家族縁、地域縁、制度縁を失ってセックスワークに従事せざるを得ない過酷な状況をつぶさに見せつけら…れる一冊。本当に追い詰められた事例がわんさか出ていてまともに感情移入してたらとても読んでいけない。
いろいろ、不満はあれど、自分の与えられた家族縁が大概恵まれていたのだと認識させられるという意味では、読む価値のある一冊だと思う。
著者は、かなり社会正義を感じている方らしく拙いと前置きしながらも何とか改善の道筋を探ろうとしている。おそらく取材を通してかなり精神的にも疲労したに違いない。
大変申し訳ないが、「こういう世界もあるのねー」ぐらいで構えておかないとつらすぎる内容。 続きを読む投稿日:2014.12.20
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二つの祖国(一)
山崎豊子 / 新潮文庫
第一巻~日系アメリカ人強制収容所
2
2011/10/25読了。
今年度に入ってすぐに手に取った記憶があり、
ずいぶんと時間がかかってしまったように思う。
新装文庫版により全4巻。
トヨコさんの作品は、いつものごとく第一巻を読み終…わるのに
時間がかかってしまう。
本作品においては、ざっくりと下記のように分かれるかと。
第一巻~日系アメリカ人強制収容所
第二巻~戦場における日系二世
第三巻~東京裁判 前
第四巻~東京裁判 後
第一巻では、戦争時下の日系人家族がどのような
処遇を受けたかを通して、小説構成上の舞台設定、
登場人物の心理スケッチを読みながら
彼らの人となりを理解する工程を踏むのだが
その作業に時間を費やされてしまう。
第二巻以降は、戦場ないし裁判という局面において、
本作品のテーマでもある二つのアイデンティティの端境の中で
自分の果たすべき役割を見出しながらもそれに伴う苦悩に
悶える主人公にぐっと感情移入することができ、
夢中になって読み進めることができた。
また、第三巻以降では、東京裁判というあまり馴染みのない
話題に触れ、戦争指導者たちの証言から
全く知らなかった事実や、意外な思想・信条に
触れることができる。
個人的な一番の関心事は、天皇についての扱いについて。
法的理屈とは無関係に、日米ともに現実に即した
暗黙知の中でことが進んでいったのだと実感。
この点は日本人にとって絶対に譲れない聖域であり、
そこを侵さなかったGHQは懸命だと再確認。
この作品を読了できたので、最新の「運命の人」及び、
「ぼんち」「華麗なる一族」以外の
代表的な作品はほぼ網羅できたかな?
戦争三部作を完読して思うのは氏の描く女性像って
なしてここまで男目線の理想像が描けるのかしらと
毎度のごとく感心してしまう。ナギコーーー。
Wikiで本作のモデルは誰だろうと調べると
思わぬネタバレに合ってしまったのが悔やまれるところ。
余談だが、「不毛地帯」の壹岐正のモデルである瀬島龍三が
後の作品の「沈まぬ太陽」だけでなく、本作にもちらっと登場。
まあ、東京裁判を扱えば必然ではあるけれど。
広田弘毅については、悲しいかな予備知識が足りず。
東条英機は割合良く描かれているが、さもありなんかなと。
続きを読む投稿日:2013.12.26
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沈まぬ太陽(一) -アフリカ篇・上-
山崎豊子 / 新潮文庫
読み応え抜群!
2
2006/03/21記録。
昨晩5巻まで読破しました。
最初の1巻目はゆっくりと暇なときを
見つけて読み進めていましたが、
3巻目ぐらいから怒涛の勢いで読み進めて
完読に至りました。
…オスタカ山篇での強烈な事故描写を読んでいる
うちに、平気でJALのマイレージを集めている
自分が不思議に思えてきました。
当時は小学校4年生ぐらいだったと思いますが、
親から見せてもらったFridayのスクープ
写真がまるで戦争跡のような状態だったのが、
しっかりと脳裏に焼きついています。
会長室篇は、やっと日の目を浴びた恩地の
大活躍かと思っていましたが、決して
そんなこと単純な展開はなく、ひとつの企業体の
腐りきった状態にいらだちながらも
単純な勧善懲悪とはならないところに
人間という動物の根の深さを感じた
作品でした。読み応え抜群! 続きを読む投稿日:2013.12.26
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歩兵の本領(『歩兵の本領』講談社文庫所収)
浅田次郎 / 講談社
理屈では整理できない感情の動き
2
2005/03/27記録。
久しぶりに浅田次郎作品を読了
自衛隊についてなんて、普段考えもしないが、
たまたま高松出張の折に夜行列車で帰る羽目になったので、買ってみた本。
自衛隊の泥臭い世界…と、理屈では整理できない感情の動きを表現されていて、楽しく読ませていただく。 続きを読む投稿日:2013.12.26
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ザ・ゴール コミック版
エリヤフ・ゴールドラット, ジェフ・コックス, 岸良裕司, 青木健生, 蒼田山 / ダイヤモンド社
とりあえずさわりだけ
2
ザ・ゴールの書籍は電子書籍になる前から買っていたのだが完全に本棚の肥やし状態。本書でどれだけ本編の内容を網羅できているのかは未知数だけどエッセンスだけは学べたかも。読書時間約1時間。すんなり読了。
投稿日:2015.01.03