bockyさんのレビュー
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「現代の怪談」
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2010/11/15読了。
舞台は、大阪船場にある木綿問屋矢島商店。
家督を男子が相続するのではなく、
長女が外から婿をとってくることを四代続けてきた。
そして、その婿旦那の死に伴って発生…する遺産相続という
肉親同士での異様なまでの物欲と憎悪にまみれた
駆け引き。中心は三姉妹だが、そこに先々代からつかえる大番頭、
叔母、妾などが登場し、駆け引きは複雑さを増す。
上巻はだらだらと半年以上かけて読んでいた。
上巻の前半は、舞台設定についての部分が
多く、かなりのスローペースになってしまったが、
ようやく、それぞれの思惑が見えてきて、
下巻は一気に読みすすめた。
目的の定まらない物欲。
何のためにそこまで執着するのか。
物欲というよりももはや、「奪いたい」「恨みを晴らしたい」
という気持ちの表れ。
それぞれが根雪のように積もり積もった感情が
一気に噴出する。
人間のもつ魂の愚かさと恐ろしさが遺産相続という
局面で描かれた秀作。
あとがきによると「現代の怪談」らしい。
なるほど。
なお、解説によるとこの作品は、
割合と初期のものらしい。(S38年)
生まれ育った大阪の商家を題材にした作品では5作品目とのこと。
このあと、有名な「白い巨頭」や「不毛地帯」などの
作品を発表していくらしい。
氏の徹底した取材力と研鑽力はどの作品を
読んでもすさまじいものがある。
それがこの方の作品の魅力。
続きを読む投稿日:2013.12.26