
チャーチルが愛した日本
関榮次
PHP新書
イギリスの宰相チャーチルと日本のつながりとは、、
一般の日本国民にあまり知られていないこととして、イギリスが世界に誇る大政治家、チャチーチルが大の親日家であったことがあります。彼の母親はニューヨーク生まれの美女であり、才媛であったが、イギリス名門の貴族と結婚し、彼が生まれました。。その母が明治時代、日本を旅行し、チャーチルに日本の美しい思い出をつたえたのです。その後、政治家の道を歩むチャーチルは戦前、戦中、戦後の厳しい時代を通して親日家であり続け、今上天の皇太子時代や吉田茂との親交もあったのです。彼の人となりは誠実で、特に彼の乳母とのエピソードなど優れた政治家になる人としての片りんを見せています。最終章で、著者はこう結びます。「先の大戦での連合国の勝因は、チャーチルやルーズベルトらの資質が日独伊枢軸国側にくらべ卓越していたことにあったことを忘れてはならない。」と、、。考えさせられる作品です。
2投稿日: 2015.08.09
政と源
三浦しをん,円陣闇丸
集英社文芸単行本
東京に下町にほんとにあるかもしれない長い友情の物語
しをんさんが描く人物は 少年少女から人生の黄昏にさしかかった老年まで 幅が広い。この本はその後者であり、老いというものが 本のいたるところに 静かな翳りを投げかけている。東京の下町の川べりに住む対照的なこの二人は 人生の喜び、哀しみの思い出をかかえながらも しっかりと生きている。特につまみ細工の簪職人である源は 頭にほんの少し残った髪の毛を 赤や青に染めて なかなかのキャラ立てである。二人を取り巻く人々とのエピソードに 私も一喜一憂しながら 一気に読んでしまいました。
1投稿日: 2015.07.23
散り椿
葉室麟
角川文庫
青春の思い出と恋にまつわるお話です。
扇野藩の坂下藤吾は父の不始末によて減らされた禄高と家名の回復を願って 日々、生真面目にお役目についている。。そんなある日、やはり不始末によって 妻と藩を出た瓜生新兵衛が妻をみとった後かえってくる。。その時から藩にうずまく陰謀や古い恋の顛末が明らかにされていく。やがて藤吾にもふりかかる難儀と縁談のどたばたが藤吾を大人にしてくのである。若い恋と大人たちの古い恋が切なく胸にほろりと来ます。最後ははっぴーえんどでありながら、切ない思いも残ります。心に染み入るお話です。
6投稿日: 2015.07.05
刀伊入寇 藤原隆家の闘い
葉室麟
実業之日本社文庫
現代にも通じる国難とそれに対処した人々のお話です。
平安時代隆盛を極めた藤原道長という人については、学生時代、日本史の時間に学んだ記憶がありますが、その甥、藤原隆家という人については全く聞いたことがありませんでした。国難の時、この国を救ったのは実は 国の政治のトップにいた藤原道長、頼道親子ではなく、確執のあった甥の 隆家だったのです。女真族である刀伊との合戦の様子の臨場感は素晴らしい描写で迫力があり、葉室麟さんの筆力と懐の深さを感じます。最初から最後まで堪能しました。
3投稿日: 2015.06.30
まほろ駅前多田便利軒
三浦しをん
文春文庫
しをんさんの小説はやっぱり面白い。。
心の底に癒されない思い出を持つ主人公。自身が営む便利屋にこれまた転がり込んできたかつての同級生。どちらも胸にくったくがあるが、便利屋という仕事を通じてかかわりあう人々との交流も相まって、少しずつ何かがほぐれていく。男二人の独特の心のつながりが魅力です。読みおわると、心はほのぼの、、なぜか幸せな気持ちになります。
0投稿日: 2015.06.04
カーリー <1.黄金の尖塔の国とあひると小公女>
高殿円
講談社文庫
子供時代に読んだ「小公女」の冒険スパイバージョンです。
イギリスのじょぷ流階級の娘シャーロットは母の秘密のせいでさびしい生活をおくっていたが、外交官である父の要望で、インドの寄宿学校に入校する。そこで出会ったカーリーというインドとイギリスのハーフの美少女。ひょんなことから事件に巻き込まれ、母の秘密も解き明かされていく、、カーリーの妖しい魅力に胸がドキドキです。。
0投稿日: 2015.04.26
泣くな道真 大宰府の詩
澤田瞳子
集英社文庫
菅原道真が実はヒステリー気味の癇癪持ちだったかもしれない
都から左遷され一気に凋落の憂き目にあった道真が太宰の権の帥として赴任した筑紫の国で、一つの政治的な事件をきっかけにより深みのあるおもしろみのある人として成長するお話。昼行燈のような役人や美しくスキャンダルの絶えない小野小町など、みりょくてきなわき役たちも道真を盛り立てます。 福岡で育った私としては懐かしい地名とその土地の歴史にも 夢中になりました。
1投稿日: 2015.04.23
蔵盗み 古道具屋 皆塵堂
輪渡颯介
講談社文庫
落語のおうな面白さ
皆塵堂シリーズも3冊目、楽しみに待っていた期待を裏切らず、今回も楽しませてもらいました。 ひょんな縁でわけありの町の青年が、皆塵堂に奉公することになり、心にわだかまっていた霧が晴れていく。輪渡さんのいつもの筋立てがカタルシスをかんじさせてくれます。先日亡くなった桂米朝さんの いわゆる「落語国」の住人そのものの人々が落語のような会話で軽妙に物語を紡いでいきます。ほんとに満足のいく作品でした。
1投稿日: 2015.04.16
木暮荘物語
三浦しをん
祥伝社文庫
古くさアパートの住人と周りの人々の心に潜む物語
それぞれの章にセクシャルなテーマを持たせつつ、深刻だったり コミカルだったり 若い人のお話だったり 年配の人のお話だったり いろいろのシチュエーションとエピソードが楽しめます。深刻なテーマですが、しをんさん特有の登場人物への視点の優しさで 心が癒されます。
1投稿日: 2015.04.06
韓国人による沈韓論
シンシアリー
扶桑社BOOKS新書
これは決して嫌韓本ではありません
韓国人である「シンシアリー」が描くセウォル号の真実、内情、背景。その内側には決して自己への反省を良しとしない韓国の社会の弱点があり、反日とも相呼応している。韓国人である「シンシアリー」自らが描く韓国の姿はとても悲しい。でもそれを韓国の人が書いたということは韓国の未来にとっても大きな意味があることかも知れない。
2投稿日: 2015.03.18
