
赦し
矢口敦子
幻冬舎文庫
「償い」の連作ですが・・・・(>_<)
「償い」からの連作で、ホームレスだった日高の変様が気になり読み始めました。 巻頭からダークサイトに陥る日高に「お前もダースベイダーになるのか~?」と心配(笑)しましたが、物語は少し人間らしく生きている日高が3つの「赦し」に対峙するストーリー展開です。 物語は日高の日記スタイルで進んで行きます。 ちょっとしたきっかけで世話に成って居る老女、スーパーで出会った幼児、この二人の「死」と自らの過去の妻子の「死」が日高に「赦し」と云う行為の有り方を問いて来ます。 事件性を問うミステリーでは無く、「人間の心の有り方」を問うミステリーです。 ですので、スッキリ晴れ渡る解決が示されるラストシーンには成っていません。 書籍説明には、感涙のミステリー(ミステリ?)と有りますが、私には「悲しく辛いミステリー」でした。 面白いが全体的にスッキリしなかったので★4つです。
3投稿日: 2016.04.09水上のパッサカリア
海野碧
光文社文庫
毛色の変わったハードボイルドも嫌いじゃないなぁ~ (^o^)/
普通の生き方に不器用な男が、幸せを知らない女との淡々とした純愛の日々を過ごす前半部は「おいおい、ハードボイルドじゃなかったのかぁ~(*_*)」と突込み処満載ですが、中盤以降のストーリー展開を読んで行くと、必要なプロットだったんだぁーと納得。 勉と菜津の生活の拠点と成る、家の改造を進める件を読んで行くと、何かしら大きな秘密を抱えて湖畔に移住して来た事が想像され、先の展開に期待を持たせてくれます。 しかし、菜津の事故死から、昔の仕事仲間が・・・・・と云う件に成ると、陳腐な展開に成り仕事もハードボイルドの世界と云うより極道の世界観的な展開と成って行くのが残念です。 ワクワクドキドキのハードボイルド小説では無く、頭脳戦的ハードボイルド小説です。 2つ3つの意外性の有る伏線は面白いです。 後書きの著者のクラッシク音楽への造詣の深さは感嘆ものです。本作もその中の1曲からプロットが浮かんだそうです。しっかりストーリーにも組み込まれています。 ★4つと思ったのですが、先読みし易い展開と云う事で★3つに。 (^o^)
1投稿日: 2016.04.03終着駅紀行 東日本編【文春e-Books】
大倉乾吾
文春e-Books
目のつけどころはプロですね。(^o^)/
私は鉄道に対しては、俗に「乗り鉄」「撮り鉄」と言ったマニアでは有りません。 ただ、昔は「働き鉄」だったので、掲載されてる車両の事とか、鉄道用語などについてはそれなりの知識を有しています。 本書の様な本は、鉄道に全く興味の無い方には詰まらない本かと思います。 でも、本州と北海道の「終着駅」(桜木紫乃描くターミナル)を見比べると、その違いに唸るものがありませんか? 何処か華やかさが有る本州のターミナルに対して、北海道のターミナルは消え行くような寂しさが感じられます。雪に閉ざされ埋もれて行くように・・・・・ ただ、2メートル先も見えない吹雪の中、現れる駅の灯りは海を守る灯台の灯りにも匹敵する安心感を人の心に与えてくれるものでした。 本書を観ると(読むより観るが正解かと 笑)桜木紫乃の「起終点駅」の理解が深まると思うのは爺だけでしょうか? 終着駅からノスタルジアを感じてみたい読者にはお薦めです。
3投稿日: 2016.03.19太陽は動かない
吉田修一
幻冬舎文庫
アクション系産業スパイ小説 (^0^)/
産業スパイ小説と云うと、懐柔、買収、ハニートラップ、恐喝、家族の誘拐等がその手口でしたが、本作はサイバー犯罪と誘拐が入り交じったアクション系の産業スパイ小説に仕上がっています。 舞台は日本と中国にまたがる地域で、スピード感あるストーリー展開です。 でも、やる事が派手すぎて、直ぐ素性がバレそうです。(笑) また、主人公の鷹野以外、人物の裏付が希薄な事と、AN通信なる産業スパイ組織の組織概要の情報が掴めず(掴めたらスパイに成らないか 笑)チョット(-_-#)と成ります。 AYAKOなるハニーも色を添えますが、文中で感嘆の美人ってどれ程よ~?(日本人の女優を思い浮かべても想像出来ない (T_T)) 裏切りに対するお仕置きは斬新です。(有りかよ~と突込みも入れたく成りますが) ただ、映画にしたらこの派手さが生きるかと思います。 毛色の変わった産業スパイ小説を読んでみたい方は是非!
3投稿日: 2016.03.10壇蜜日記 0(ゼロ)【文春e-Books】
壇蜜
文春e-Books
壇蜜さん半値で買って御免なさい m(_ _)m
半値で購入しました。でも、まとも買いしてもお買得の内容でした。 グラビアお姉さん(アイドル年齢ではない!)の日記風戯言が書かれている本と思い、半値にポイントが有ったので、つい購入。(^0^) しかしながら、掲載されている桜木詩乃さんとの対談で、桜木さん(同郷なので、さん付け 笑)も言ってますが、韻の踏み方が絶妙と云うか、壇蜜型の文章が小気味良く読み手に話し掛けてくれます。 僅か3~7行位の日記(1日分)ですが、起承転結の結(落ち)が絶妙!納得あり、笑あり、壇蜜の感性が光まくります。 私は、「うちの子」(壇蜜流ファン総称)ではなかったので、本名も知りませんでしたし、姓は「壇」 名は「蜜」ってのも知りませんでした。壇蜜は熟語だと思ってました。(笑) しかし、この本を読むと「壇さん」の「うちの子」に成ります。 昭和女子大学卒の才媛だったのかぁ~とこの本を読んで、納得。 「私の奴隷になりなさい」のボテ感あるボディーにガッカリしたのですが、この本は期待を裏切りません。 兎に角読み処満載です。 18歳(一応 笑)以上の男女にお薦めします。食わず嫌いの人に「蜜」を味わって頂きたい。
5投稿日: 2016.03.07弟
石原慎太郎
幻冬舎
石原慎太郎ってこんなに優しい人(*_*)
私の知る「石原慎太郎」と云う人物は「自民党の絶対たか派」で故中川一郎亡き後の派閥のドンとのイメージが強く、議員時代、東京都知事時代も含めて、決して好感を持てる人物では有りませんでした。 勿論著書を読んだ事も有りませんでした。 この本は、20年程前に出版された物であり、「弟 石原裕次郎」と「兄 慎太郎」の小樽時代の幼少期、少青年期以降の湘南での二人兄弟としての、心の交わりと生活の変化、有名人と成った兄弟としての苦労、家族とは、と云った事が細かく描かれて行きます。 もっと早く、この本を読んで居たら人間「石原慎太郎」がもっと好きに成れたかも、と思わせて呉れる本でした。(笑) 「弟 裕次郎」が肝臓癌で亡くなるまでが描かれていますが、ノンフィクションの私小説ながら、その兄弟愛、家族愛、仲間達との信頼感に感服すると共に、泪せずには居られませんでした。 成功した者同士の兄弟だから、家庭が良かったから、では片付けられない物語が面白かったです。 流石、流行作家だった(古いかぁ 笑)著者の力量が、「私小説」を「小説」として読ませて呉れます。 くどい様ですが、もっと早く本書を読んで居たら、石原慎太郎が好きに成ったと確信出来ます。 でも、流行作家は使う漢字が難しい(^^; 石原慎太郎が嫌いな方にお勧めです。(好きな方は既にお読みと思います (笑) )
4投稿日: 2016.02.27腕貫探偵
西澤保彦
実業之日本社文庫
探偵物と言って良いのかなぁ~ (^_^;)
極いっ時の登場だけの主人公。 探偵らしき行動は一切無し。 依頼者(物好きな暇人?)からの相談に必要最低限な解決法(アドバイス? カウンセリング?)を伝えるだけで、依頼者の悩みを解決 (?_?) 各々のエピソードはストーリー展開も良く、読ませてくれます。 喜び・哀しみ・怒りを取り混ぜた構成も良いのですが、タイトルに書いた様に、「これって探偵物?」って疑問が無きにしも有らずでした。 腕貫公務員(と思われるが?)の解決法には「おい!オイ!」と云う突っ込み入れたい処も多いですが、エピソード中のストーリーの一部(舞台裏ト書き)と考えれば納得の部分も。 探偵物としてより人情物として読めば、繋がるエピソードも有りますが、短編の面白さが感じられるかと。
3投稿日: 2016.02.21幻想郵便局
堀川アサコ
講談社文庫
ライトホラーファンタジーって趣が面白い!
この本の前に、洋物ファンタジーの「スウィッチ」を読んだのですが、舞台の大きさの違いが、和洋ファンタジーの違いかな~と・・・ v(^-^)v 洋物ファンタジーは、映像にすると舞台の大きさが生かされて手に汗握る壮大なファンタジーと成りますが、和物ファンタジーは「古道具屋・・・」「幽落町・・・」「流星ワゴン」等々の様に、アヤカシと人間の交わり(交友関係?)が主軸となり、温か系のストリーが多いですね。 これは、「日本昔話」等を聞かされて育った日本人特有のアヤカシへの感情のせいでは?と思うところです。(外国のアヤカシは怖い!!!・・児童向けでも) 本書もまさしく「アヤカシと主人公アズサ」の交流を「登天郵便局」を舞台にホンワカと描かれています。(登天郵便局の由来は読み進める内に・・・(? _ ?) ) 登場人物も個性豊かな人(アヤカシ?)に描かれ、人物像を想像しながら読み進められます。 ホラーでもスプラッタ系で無くコメディー系で(ホラーで無くてアヤカシ物かな~)楽しく読めます。
3投稿日: 2016.02.14スウィッチ
アマンダ・ホッキング
ゴマブックス
映画のファンタジーは好きなのですが・・・(^_^:)
連作物の1作目は状況説明になり、忙しいストーリー展開になりがちですが、本書も同様で登場人物の相関関係も主人公「ウェンディー」同様読者への開示は少なめです。 チェンジリングの発想は鳥にこの様な行動を取るのがいましたね。他の鳥の巣に入って、そこの卵を巣から落して自分の卵を抱かせてふ化させる鳥。(カケス?) 本作では、除けた卵は殺さず育ててますが、醜いアヒルの子的扱いを受けています。 私的には1作目の「ウェンズデー」は余り好きになれないキャラかなぁ~と(映画に成って主演女優を見れば変わるか・・・笑) 性格が「自分勝手な、軽い色ボケ?少女」たら言い過ぎかなぁ(笑) ファンタジー的には「チョット我が儘な恋する少女」の活躍は・・有りませんでした。 当作では「ウェンズデー」の住む街の(村?)描写も少なく、舞台を思い描くのに苦労します。 やはり、ファンタジーは映像が有った方が物語に没頭出来ますね。 まぁ2作目以降どう展開されて行くのかは気になるところですが・・・待ちましょう。
4投稿日: 2016.02.09路傍
東山彰良
集英社文庫
大藪春彦賞の選考基準て??
大藪春彦賞受賞作と云う事で、ハードボイルド系を期待して読みました。 ガッカリでした。(;_;) しょむない2人が、酒とソープとドラッグとカツアゲ(弱気を挫き、強気にベコ振る)に明け暮れて、俺の「男気を気取った言葉遊び」だけの話でした。 まぁそれなりのストーリー展開は有るので★2つにしました。 大藪作品には、どこかに「正義」と云う物が有りましたが、この本には「正義」は有りません。 今度暇が有ったら、選考基準を調べてみたいと思います。
3投稿日: 2016.01.30