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yakitoriさんのレビュー
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  • 筺底のエルピス3 -狩人のサーカス-

    筺底のエルピス3 -狩人のサーカス-

    オキシタケヒコ,toi8

    ガガガ文庫

    読むのが段々つらくなる

    前作で辛くも白鬼捕獲班を撃退した圭達は、本部から脱出してきた〈門部の頭脳〉間白田と共に第三の組織〈i〉の包囲網からナントカ逃げ切る。しかし彼らを追うのは元〈門部〉の追跡者〈ハウンド〉とスナイパー〈ティンガン〉。〈i〉の不死者相手にバチカンの悪魔祓いをも巻き込んで圭達は起死回生の作戦に打って出るのだが… 前半から中盤の追う者と追われる者の追跡劇は、互いのウラのウラまで読んでの頭脳戦がメチャ面白い。しかし後半の最凶最悪の柩使い〈エンブリオ〉の登場から柩使い同士の物理戦に雪崩れ込むのだが、この不死者の反則的な強さとエゲツない闘い方に主人公達と同じくらい心が折れます。 このシリーズ、読み出したら止まらなくなる程面白いのだが主人公達の追込まれ振りが半端ないほどキツいので読むのがドンドン辛くなる。しかも内容的には本巻と次巻で前編と後編になっているので、そこで終わるの?ってぐらいいいところで終わっている。 SF的面白さ、異能バトルとしての面白さ、主人公達の人間ドラマの面白さ等、どれを取っても一級品。とにかく後編読まなきゃ!

    3
    投稿日: 2016.12.17
  • 機動戦士ガンダム THE ORIGIN(21)

    機動戦士ガンダム THE ORIGIN(21)

    安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男

    角川コミックス・エース

    僕は…取り返しのつかない事をしてしまった…

    ゲル・ドルバ宙域で秘密裏に和平交渉に入ろうとしていたデギン公とレビル将軍にギレンのソーラー・レイが襲い掛かる。この攻撃で艦隊の大半を失った連邦はワッケイン少将を中心に残存戦力を集めてア・バオア・クー攻略へ総力戦を仕掛けるコトになる… 本巻の見所と言えばやはりララとアムロの邂逅シーン。相手の事をすべてにおいてわかってしまうニュータイプの可能性と苦悩が描かれるのだが、愛するヒトを守る為、盾となるララにアムロが呟く自責の念。戦争がなければ開花しなかった能力、その為に分かりあえるのに殺し合わなければならないという矛盾(人の業)、ガンダムシリーズの根幹であり最高の見せ場である。ホント、素晴らしくも考えさせられる話の展開に唸るしかない。

    6
    投稿日: 2016.11.27
  • マルドゥック・アノニマス 2

    マルドゥック・アノニマス 2

    冲方丁

    ハヤカワ文庫JA

    シティの核心に迫るハンターの野望

    1巻が派手なアクション作品だとすれば本作はグッと渋めのノワール小説。〈クインテット〉という新興勢力がシティの5大勢力を敵にまわして如何にのし上がって行くかが克明に語れる。ハンターという稀代のエンハンサーが仕掛ける均一化(イコライズ)の波にのみ込まれるマルドゥックシティ。全編を通して描かれる血と硝煙渦巻く展開は凄惨だが爽快感もあり最後の方では彼ら〈クインテット〉を応援しておりました。さてファンドマネージャーの正体もわかり、核心へと迫るハンター達はさらなる高みへと登りつめるのか! しかし余りにも強くなり過ぎてないか〈クインテット〉の面々。このままでは幾ら何でもウフコックを含めたイースターオフィスのメンバーに勝ち目がないような…。

    7
    投稿日: 2016.11.26
  • 天冥の標 IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと

    天冥の標 IX PART2 ヒトであるヒトとないヒトと

    小川一水

    ハヤカワ文庫JA

    数々のシーンに感無量

    世界の真の姿を知ったカドム達一行は、苦難の旅の末メニーメニーシープへの帰還を果す。咀嚼者との戦闘状態にある新政府エランカ大統領との会見で彼等は自分達の置かれた状況と本当に戦うべき敵を語るのだが、、、。海の一統、カルミアン、救世群、恋人たち、地球軍。ヒトとヒトでない人々は「真実」という驚愕の苦い事実を前に恩讐を越えて一つになることができるのか! 本巻の見どころは用意された数々の謎(伏線)を主人公達が知り得た時、どう向き合いどう対処して行くのかがそれぞれの立場で克明に描かれている点にある。ある者はその事実に慟哭し、またある者は沈黙する、そしてまたある者は世界を正しく認識し前へと進み出す。巻数を重ねて来たシリーズ物だからこそ描けるシーンの連続にやっとここまで来たよと感無量になってしまった。 また最後に用意された新たな展開に本シリーズのテーマの一つである、番い殖えて行くという生物としての本能と進化が見て取れる。最終巻の予告題名「青葉よ、豊かなれ」もそれっぽいしなぁ。まあ、どちらにしても七年という歳月をかけて紡がれてきた物語りも残すところあと1巻(複数巻)。残念ながら刊行予定は来年2017年ではなく18年とのコト。楽しみに待っております。

    8
    投稿日: 2016.11.05
  • 強行偵察 宇宙兵志願 2

    強行偵察 宇宙兵志願 2

    マルコ クロウス,金子 浩

    ハヤカワ文庫SF

    続編はさらに面白い。

    前作後半のあっと驚く展開から五年後の世界。グレイスンの所属する北アメリカ連邦軍は前線を異星人ランキーのコロニー強奪、後衛を敵対するロシア・中国軍に狙われ、過密な地球ではコロニー移住ができない人々が暴動を起こしてと四面楚歌の状態。その状況を主人公がランキーが占拠するコロニー「ニューウェールズ」への降下~核攻撃ミッションから休暇中の地球での母親との小旅行や恋人ハリーとの月でのデート、そしてロシア・中国軍のコロニー「シリウスAd」への強襲と次々とスピーディーに場面展開しながら手際よく説明していきます。 前回同様、本作もやはり面白い。かなり絶望的な状況のグレイスンが冷静かつユーモアを交えながら客観的に語る世界情勢は、悲壮感よりも異星人という共通の敵がいるのにもかかわらず同士討ちを繰り返す(ロシア・中国軍や地球での暴動など)人間の愚かさや可笑しさをあぶり出す内容になっており、それは核攻撃でしかランキーに対抗できない自らが所属する軍隊の非力さにも同等に向けられます。特に後半の物語展開を見るとかなり皮肉が効いた内容になっており、この事が本作を単なるSF戦記ものとは違うモノにしています。 あ、だからといってアクション少なめなことはないのでご心配なく。今回も巨大異星人ランキーやロシア・中国軍のコロニーでの戦闘、中盤からの急転直下の展開でさらなる緊迫したリアルな戦闘がたっぷりと用意されているのでハラハラドキドキしっぱなし。また本書でも最後にえっ!という話が用意されているので期待を裏切ることはありません。 さて「あとがき」を読むと本国では好評の為、第5巻まで発売、第6巻まで刊行予定が決定しているらしいのでさっさと翻訳お願いします。

    4
    投稿日: 2016.10.24
  • 静かな炎天

    静かな炎天

    若竹七海

    文春文庫

    四十肩になった女探偵の活躍を描く連作短編集。

    前作「さよならの手口」で見事に探偵に復帰した葉村晶のその後(2014年の7月から12月)の活躍を描く連作短編集。 「青い影~7月~」バスとダンプカーの衝突事故に遭遇した晶は、事故の被害者女性のバッグを探す羽目になる。 「静かな炎天~8月~」ひき逃げ犯の素行調査。従妹の消息。白熊探偵社に持ち込まれる沢山の案件に晶はある疑問を抱く。 「熱海ブライトン・ロック~9月~」35年前に行方不明になった作家を探す晶は失踪直前の日記に登場する5人の名前を渡される。 「副島さんは言っている~10月~」元同僚の村木から突然かかってきた電話で晶は事件の渦中に巻き込まれる。 「血の凶作~11月~」ハードボイルド作家・角田港大からの依頼は「死んだ自分の身元調査依頼」だった。 「聖夜プラス1~12月~」イブのイベントの目玉『深夜プラス1』初版サイン本に翻弄される晶の過酷な一日。 古本屋でもある「白熊探偵社」なので今回は作家や本にまつわる話からスタートする話が多く、どのエピソードも軽いノリやユーモア風に始まるのですが、やはりそこは「葉村晶」シリーズ、最後の最後は苦い終わり方が多いかな。 一番面白かったのは最終話の「聖夜プラス1~12月~」。クリスマスイブの日にオーナーの富山や依頼人の無茶振りを相変わらず断れない晶が東京都内を駆け巡る壮大なるお使い劇。笑わせます。

    9
    投稿日: 2016.10.04
  • 宇宙兄弟(29)

    宇宙兄弟(29)

    小山宙哉

    モーニング

    宇宙兄弟ならぬ宇宙兄兄w

    木星の衛星エウロパの水柱が大きなニュースになっておりますが、本作でも月の「水」発見?と横穴探検がメインになるのかと思いきや今回はシャロンとムッタの想いが結実したシャロン天文台がメイン。 とある事からシャロン天文台に存続の危機が迫り回避の為に動き出すジョーカーズ。そのなかでムッタとエディの宇宙兄弟コンビが最難関ミッションに挑むのだが順調に見えたミッションに次々と問題が発生する。限られた時間と資源の中でそれらの問題を宇宙飛行士としての「ライトスタッフ」で解決してゆく二人の様が素敵でイッキ読み間違いなし。 また「現地調達」で解決する事を考えれば自ずと行き着く先が見えてくる後半のストーリー展開は、今まで用意周到に準備されていた伏線がビシビシ嵌っていくので読んでいてすごく気持ち良い。

    5
    投稿日: 2016.10.03
  • 筺底のエルピス2 -夏の終わり-

    筺底のエルピス2 -夏の終わり-

    オキシタケヒコ,toi8

    ガガガ文庫

    本巻もマジ面白い。

    前半は、前巻で心許した叶を中心にラブコメ風な展開になるのかと思わせてからの中盤から終盤にかけての怒涛の急展開! 特に謎の第三組織の<門部>本部への急襲と白鬼確保ミッション別働隊との戦いを描いた後半は息もつかせぬスピーディな展開に途中で止めることができません。 そして第三組織の実態と真実があきらかになるラストは登場人物といっしょに呆然自失になること間違いなしです。 いやー、このシリーズ、文句なしにマジ面白い。

    4
    投稿日: 2016.10.03
  • 筺底のエルピス -絶滅前線-

    筺底のエルピス -絶滅前線-

    オキシタケヒコ,toi8

    ガガガ文庫

    ライトノベルなのにナニこの圧倒的な絶望感!

    主人公の百刈圭は小学生の時に「鬼着き」に家族を殺された被害者。葬儀の席で鬼を狩る〈門部〉と呼ばれる組織に引き取られた圭は、其処で鬼を封印する討伐員へと成長する。その圭に付き従う新人討伐員は同じく家族を鬼に殺され天涯孤独となった女子高生の乾叶。そして今、ツーマンセルでの叶の現場デビュー(赤鬼討伐)が始まろうとしていた・・・。 歴史の闇で跋扈する鬼を人知れず討伐する影の組織、討伐員は16歳の女子高生で武器は「蟬丸」という虚無の刀、敵は取り付かれると同族殺しをする鬼など如何にもなライトノベル設定ですが、ナカナカどうしてこの様々な仕掛けの裏には緻密なSF設定が用意されており読ませます。討伐員が待つ「天眼」と「停時フィールド」、異次元からの侵略や同族殺しプログラム、果ては異星人に人類滅亡と壮大なる世界が広がったガチSFモノ。 しかもライトノベルなのに何だこの圧倒的な絶望感は!二人の主人公が背負った重い過去以外にも物語が進むに連れみえて来る人類が置かれた状況と救われない未来。そして有史以来六体しか発見されなかった白鬼が叶の親友に憑依するという事態になり、その白鬼を巡っては人同士での争いに発展するという厄介な状況に。ただ話の展開はうまいので複雑な話ではありますがテンポ良くサクサク読めます。またバトルシーンも各人が発現した「停時フィールド」武器を使ってのアクションが独創的で面白い。後半は鬼だけではなくバチカンの悪魔祓いとの討伐員同士のバトルが用意されているのでかなり盛り上がります。 とにかく次巻以降の展開が気になって仕方がないのですぐ読みます。作者の別作品が面白かったので本作も読んでみたのですが、本シリーズもアタリかも。

    9
    投稿日: 2016.09.24
  • ガブリエルの猟犬

    ガブリエルの猟犬

    高千穂 遙

    ハヤカワ文庫JA

    久々にクラッシャー・ジョウを読んだ気分

    前巻では良い所が無かったジョウ達クラッシャーが母星アラミスで休業して訓練を積んだ1年後からスタートするという冒頭には驚いた。しかもクラッシュジャケット等の装備品リニューアルからミネルバやガレオンの搭載機に至るまでチューンナップしての再登場。 本編前には彼等がどれだけ強くなったかのエピソードが挟まり、久々にクラッシャー・ジョウを読んでる気分。ところが今回も双子が登場し敵対勢力の亀獣が出て来るので、またまた戦闘シーンの半分は竜と虎一族との闘いになります。どうやら作者は本シリーズの中で神拳シリーズの復活を企んでいるのか?と勘繰りたくなりますが、最後はジョウも活躍するので前作ほどの不満はないです。 まだ暫くは犯罪組織ルーシファとの死闘は続く様で次巻以降も双子が登場しそう。

    8
    投稿日: 2016.09.18