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yakitoriさんのレビュー
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  • 僕は長い昼と長い夜を過ごす

    僕は長い昼と長い夜を過ごす

    小路 幸也

    ハヤカワ文庫JA

    人ってイイよね

    タイトル買いでしたが、正解!面白くて一気読み。 話しはDV、裏金、殺人、病気と暗い過去を背負った主人公が、いい意味で抜けているので(地頭はいい)、過酷な状況をどう切り抜けるのかが気になって読むのをやめられない。しかも「病気」という設定がタイムリミット感を煽り、否が応にも話しを盛り上げる。でも一番の魅力は、主人公以上の存在感を示す謎の人物「ナタネ」さん。この人物が何者なのか、何故主人公を助けるのかがわかった時、なるほど人ってそういう事もあるよな、捨てたもんじゃないよなと正直、感動してしまう。 さすが小路作品、本当にうまい。

    6
    投稿日: 2017.03.10
  • ケルトの封印 上

    ケルトの封印 上

    ジェームズ・ロリンズ,桑田健

    竹書房文庫

    避けては通れない人と食の問題

    ヴァチカンとアフリカとアメリカで起こった三つの殺人事件を追ってグレイとペインターがイタリア、アイルランド、ノルウェー北極圏、イギリス、フランスと世界規模で飛び回ります。 ローマクラブに世界種子貯蔵庫や遺伝子組み換え作物など世界の人口と食糧問題をメインに据え、ケルトの異教の十字架に「黒の女王」の伝説と中世にイギリスで行われた「ドゥームズデイ・ブック」作成秘話を絡めての物語り展開は相変わらずウマイ。今回はシグマの仇敵ギルドの謎に迫る三部作の第一弾ということでセイチャンが戻って来ます。なのでいつも以上にアクションシーンもたっぷりと用意されているのですが、やはり見所はグレイを挟んでのレイチェルとセイチャンの微妙な三角関係でしょうw。 本書は世界人口と糧食問題という自分が興味あるテーマだっただけにサクサク読めました。遺伝子改良した作物の現状や問題点などホント面白かった。泥炭の保存効果や日本でも一時話題になったミツバチがいなくなる蜂群崩壊症候群の謎にも言及しているのでわかってスッキリ。

    7
    投稿日: 2017.02.19
  • 大帝の剣 1

    大帝の剣 1

    夢枕獏

    角川文庫

    何回読んでも面白い

    さて一体何回目だろう本書を読むのは?版元や連載雑誌が変わる度、新たに1巻目が出版されるので毎回この巻を読んでいる気がするw。ただし今回はようやく完結したと聞いたので安心して読んでおりますが… 初版の角川ノベルズの1巻目と2巻目の合体本なのでボリューム的には読み応えのありますが、そこは「貘さん仕様」なのでそれでもサクッと読めてしまいます。謎の娘を追っての伊賀vs甲賀の忍法合戦に宇宙からの飛来物が絡んでの追跡劇。謎の美剣士に何事にも動じない巨漢の主人公「万源九郎」などキャラ造形はいつもの通りなのですが、刊行当時は半村良の名作「妖星伝」の貘さん版だ!と狂喜したものです。まあアレから二十数年を経たので新鮮味は全くありませんがw。 それではゆるりと、そしてほろほろと読んで行きますかね〜。

    7
    投稿日: 2017.02.18
  • 攻殻機動隊(1.5)

    攻殻機動隊(1.5)

    士郎正宗

    ヤングマガジン

    刑事もの

    アニメ「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」の設定に一番近いかなぁ。

    5
    投稿日: 2017.02.02
  • バイバイ、エンジェル

    バイバイ、エンジェル

    笠井潔

    東京創元社

    冬の堕天使

    アパルトマンの広間で、首なしの女性の死体が発見される。司法警察の警視モガールの娘ナディアは、友人アントワーヌの叔母がその被害者であったことから「ラルース家殺人事件」に巻き込まれて行く。現象学を駆使する奇妙な日本人矢吹駆とともに。 舞台はパリ、登場人物が主人公の矢吹駆以外はすべて外国人ということで和製の推理物ぽくない。作者は意図的にそのような設定にしているのだが、これはやはり「思想対決」にあたって日本人には余りそういった思想的背景が馴染みが無い為かもしれない。毎回、その筋の思想家をイメージした人物を登場させるにはやはりヨーロッパが舞台の方がしっくり来るのだろう。 話はワトソン役のナディアが先ず推理を展開し、探偵役の駆が現象学という哲学の「本質的直感」を使って新たな推理を構築し覆して行く。「そもそも探偵は、最初から犯人を知っていた」というかなり破天荒な現象学推理でアプローチする本作を初めて読んだ時はスゲー何だこれはと思った。確かに世紀の発見や発明と呼ばれるものは、まずひらめきがあってそれを実証する為に論理構築や検証を行っていくのだがミステリーに適用するとこうなるのかぁと感心した。 また小説の構造的には殺人事件の謎解きとは別にその殺人を起こさせた思想や観念についても言及し、「直接的な殺人者」とは「別の真犯人」を炙り出すという二重構造になっており、この駆と「真犯人」との思想的対決が実はこの矢吹駆シリーズの一番の見どころなのである。 とにかくこの風変わりな方法論で推理する無愛想な探偵が好きになれれば、本シリーズは読み応えある作品が沢山出ているので当分楽しめます。オススメは2作目の「サマー・アポカリプス」。 この謎の日本人:矢吹駆の正体ですが、作者の他の作品「ヴァンパイヤー戦争」の登場人物「ムラキ」か、「サイキック戦争」の登場人物「竜王翔」という話がありますが真相は。。。謎のままです。

    7
    投稿日: 2017.01.29
  • 放課後地球防衛軍 1 なぞの転校生

    放課後地球防衛軍 1 なぞの転校生

    笹本 祐一

    ハヤカワ文庫JA

    良くも悪くもいつもの笹本作品

    「ミニスカ海賊」は殆ど読まなかったので私にとっては久々の笹本作品の新作。ただし中身は良くも悪くも相変わらずの昭和テイストなラノベ。章立てからして「謎の転校生」に「ねらわれた学園」だし、冒頭のスピード狂の女顧問が天文部員を引き回しての山頂ドライブや炬燵での流星群観測シーンは、コタツネコさえいればまんま「うる星やつら」。登場キャラも笹本作品ではお馴染みの造詣なので安定感はあるが新鮮味はナイ。ストーリーもほぼ初めに予想した通りの決着に。物語り的には序盤も序盤なので次巻以降の展開に期待したい。

    8
    投稿日: 2017.01.14
  • うたかたエマノン

    うたかたエマノン

    梶尾真治,鶴田謙二

    徳間文庫

    長編だけど短編

    久々の新作エマノンしかも長編なので期待しておりましたが、内容はいつもの短編と同じB級SFモノ。登場するサブキャラが複数なのでそちらの描写に結構なページを割いています。 舞台は 19世紀の終わりカリブ海に浮かぶマルティニーク島。ゾンビ伝説が残るこの島に渡ろうとしていたゴーギャンはその連絡船の中で不思議な少女に出逢う。また島の少年ジャンもある夜行き倒れていた少女を救った事から彼女の「失われた記憶」を取り戻す手助けをしたいと申し出る。そこに記者のハーンも加わっての冒険譚が語られるのですがかなりユルユルの話なので緊張感の無い道行きになっております。 地球の記憶者であるエマノンが何故思い出せない記憶があるのか?というメインの謎を有名人であるゴーギャンとハーン(後の小泉八雲)を登場させて追うのですが、はっきり言ってこの二人必要だったっけ?と正直思った。多分ジャン少年だけの方が話がシンプルで面白かった様に思う。そういった意味では、いつもの短編エマノンと同じかなぁ。 ※ただしエマノンが何故タバコを吸い出したのか、定番のジーンズ姿になったのかの謎がわかります。

    5
    投稿日: 2017.01.09
  • 宇宙軍士官学校―前哨― 12

    宇宙軍士官学校―前哨― 12

    鷹見一幸

    ハヤカワ文庫JA

    最終巻で思うコト

    粛清者の「倍数攻撃」が何だったのと思える後半の展開はオイオイとツッコミたくなる事しきり。やはり余計なエピソードは挟まず全10巻でサクッと終わらせておいて欲しかった。粛清者や新たに登場した仲介者との関係が朧げながら見えて来る新たな展開は面白いが、どうにも登場人物がステレオタイプ過ぎてつまらなかった。特に主人公の恵一には全編通して感情移入できず。優等生過ぎて性格も薄味、スペシャル感を感じられないと致命的。続編が出るようですが新たな主人公での話を期待したい。ここまで書いて気付きましたが、私が主人公をただ単に嫌いなだけなのかもしれません。(笑)

    4
    投稿日: 2017.01.07
  • ギャラリーフェイク(33)

    ギャラリーフェイク(33)

    細野不二彦

    ビッグスピリッツ

    あの藤田が11年ぶりに帰って来た。

    サラと藤田はもっと以前に出逢っていた?NYキューレター時代の若かりし藤田の一夜を描いた「忘れられた一夜」、3・11震災後の復興支援につけ込んで火事場ドロボーをする悪徳業者を追い詰める「ガレキの街の美術商」、イギリスのヤードに逮捕された藤田がヨーロッパで吹き荒れる美術品破壊(アート・テロ)の捜査協力を求められる「アンソールの男」、企業統合の条件に要求された創業者が所蔵していた幻の九鼎の鑑定を依頼される「 九鼎の行方」。 今回も国内外で活躍する藤田の勇姿とサラの可愛さを堪能できます。震災やアート・テロ、3Dプリンターと相変わらずの時事ネタを取り入れての物語は面白くも考えさせらる話ばかり。その中でも特にアート・テロの話は深刻。戦争に起因する移民問題は今や欧州の社会問題となっており受入先での差別や格差が新たなるテロの温床となり、宗教による偶像崇拝を否定する教義が美術品破壊へと取って代わる。この話を読んだ時は正直うーんと唸ってしまった。 企画ものや雑誌の記念号での単発ものをまとめての本巻の発売は大変嬉しいのだが読んだらまた次はいつ読めるのか?と思うと複雑な気持ちになってしまう。

    2
    投稿日: 2017.01.07
  • 筺底のエルピス4 -廃棄未来-

    筺底のエルピス4 -廃棄未来-

    オキシタケヒコ,toi8

    ガガガ文庫

    全くもってやられました。

    不死者〈エンブリオ〉とバチカンの悪魔祓いの異能バトル全開からのスタート。そして今回もドンドン追い詰められてく主人公達の逃避行と惨劇。希望という名の絶望をまさに地で行く展開に、うう…相変わらず読むのが辛い、でも止まらない。シリーズ最大ボリュームで進行する人類滅亡へのカントダウン。相変わらずのスピード感で問答無用で進む話に涙無くしては読めなくなるコト間違いナシ。盛り上がります、魅せます、そして泣きます。 最終巻でも良いんじゃないのと思える程の内容に満足感でいっぱいになる最終章。しかし最後の最後で、ええ!次はそう来るの!となるのでまだまだ終わりません。あゝ・・早く次がどうなるのか知りたい、読みたい。ラノベとは思えない内容に全くもってやられました、完全にノックアウトです。

    3
    投稿日: 2016.12.31