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yakitoriさんのレビュー
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  • エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)

    エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)

    オースン・スコット・カード,田中一江

    ハヤカワ文庫SF

    エンダーシリーズの記念すべき一作目で今や古典

    子供ばかりのバトルスクールや無重力バトルや戦闘シュミュレーション、「サード」などキーワードだけ見ても本書がその後の日本SFやアニメに与えた影響は計り知れない。天才としての孤独や努力、挫折と再生そしてバガーとの最終決戦と本作はSFエンターテイメントとして盛り上がるポイントが沢山あり、とにかくエンダーを応援したくなる。しかし本当の物語は最終決戦を経て真実を知ったエンダーがその真実に押しつぶされそうになりながら苦悩するところから始まっていると思われる。そのため続編の「死者の代弁者」として地球を後にしてからの話が彼にとっての本当の物語。(数冊出てます) ですが続編は本作のテイストからかけ離れた哲学的な話が多く個人的にはあまり面白とは思わなかった。むしろ本作で脇役だったビーンを主人公に据えた「シャドウ」シリーズが面白くエンダーが去った地球を舞台にバトルスクールのメンバやエンダーの兄姉のピーターやヴァレンタインとの物語がいろいろと展開する。特に「シャドウ」シリーズ第1作は、本作をビーンの視点から追ったもう1つのエンダーのゲームとなっており裏話が満載でオススメです。

    0
    投稿日: 2017.05.10
  • 蒲公英草紙 常野物語

    蒲公英草紙 常野物語

    恩田陸

    集英社文庫

    このシリーズはぜひ続けて欲しい

    恩田陸ラッシュですね。常野シリーズは「エンド・ゲーム」を先に読んでしまったので「しまう」などの表現が出てきた時は、これもわけわからん決着になるのでは・・と危惧しておりましたが物語としてはきれいに終わったので一安心。(悲しい結末ですが)このシリーズはぜひ続けて欲しい。

    7
    投稿日: 2017.04.30
  • 迷子の王様―君たちに明日はない5―(新潮文庫)

    迷子の王様―君たちに明日はない5―(新潮文庫)

    垣根涼介

    新潮文庫

    遂に迎えた最終巻

    大半のお仕事小説がニッチな業界の常識や技を主人公が覚え成長してゆく過程で働く楽しさや意義を見出していく物語が多いのに対して、本シリーズの面白さは「退職」という人生の岐路に立たされた主人公達がある種逆方向から見た仕事の楽しさや厳しさ・辛さ、必要とされない寂しさ、そして辞めるからこそわかる「働くというコトの意味」を見出して行くところにある。 金儲けの為、好きなことの為、家族の為、社会の為など働く理由は人それぞれ。それを狂言回し役の村上が引き出してゆくのが読んでいて楽しいのだが、最終話ではその村上自身がクビを切られる事になる。果たして村上が出した答えとは…。 高度経済成長、バブル崩壊、ITバブル、リーマンショック、アベノミクスなど我々を取り巻く社会情勢は刻々と変わっていく、それはつまり働く側にもその時々で働く理由は変わって行くというコト。単純だけどなかなか気付かない事を教えてくれる素敵な小説だ。(再掲)

    6
    投稿日: 2017.04.30
  • 私の家では何も起こらない

    私の家では何も起こらない

    恩田陸

    角川文庫

    生きてる人間が一番恐ろしい

    恩田陸らしい作品。丘の上に建つ一軒家は、色々な噂がある曰く付きの物件。ある筋のマニアには有名な幽霊屋敷なのだが住んでいる女主人は一度もソレを見たことがないという。なかなか皮肉の効いた表題作だがその後に続く連作短篇では噂の元になった話が語られる。キッチンで殺し合った双子の姉妹や夜中に家の外を這い回るナニカなど、それぞれの話は恐ろしかったり、グロテスクだったり、美しかったり、哀しかったりとバリエーションに富んでおり読者の想像力を試しながら進んで行く。各話、一人称で語られるので時系列や登場人物も曖昧なまま余韻を残しつつ終わる・・・・と思っていたのですが最後の補記は私的には余分だったなあ。(再掲)

    7
    投稿日: 2017.04.09
  • クレオパトラの夢 新装版

    クレオパトラの夢 新装版

    恩田陸

    双葉文庫

    恩田陸の「MAZE」シリーズ第2弾。

    不倫相手を追いかけていった双子の妹:和見を連れ戻すため、北の大地に降り立った神原恵弥。だが、妹とは別に彼にはもう1つの目的があった…「クレオパトラ」…その正体をつかむ為、調査を開始する恵弥であったが、妹の不倫相手の死をきっかけに、妹の失踪や自分を監視している男の存在など彼の周りで矢継ぎ早に事件が起こりだす、果たして恵弥は、妹を無事取り戻し、「クレオパトラ」の謎に迫れるのか! 正直、第1作目の方が面白かった。前作では強烈なサブキャラだった恵弥が今回は主人公として登場し師走の北国でいろいろな謎を追って奔走します。しかし何を考えているのか読めない謎の人物も昔からの付き合いである妹にはカタナシ。出し抜かれ振り回されてしまう。前作では「MAZE」という大きな謎の中でのもう一つの謎、その中心人物であった恵弥が生彩を欠いていたように思えたのは、私だけでしょうか?少しシリーズが先に進んでからならまだしも、2作目でいきなり身内話をもってくるのはあまりよろしくなかったのでは? 謎が売りだった人物だけに… 緩急つけて巧みに話は進みますが、本作の大きな謎もそれほど魅力的でないのも問題。また殺人事件なのか、事故なのかも一応の説明はされるのですが、どっちつかずの中途半端な状態で放り出されてしまった感が強くある。主人公:恵弥の性格とこのいろいろな問題の中途半端さ、モヤモヤ感が何かしっくり来ないと思わせてしまう、いつものオチでしたね。w

    7
    投稿日: 2017.04.08
  • CRISIS 公安機動捜査隊特捜班

    CRISIS 公安機動捜査隊特捜班

    周木律,金城一紀

    角川文庫

    新ドラマのノベライズ

    今クール(2017年春)に始まるドラマの中ではかなり期待している作品のノベライズ。原作・金城一城で小栗旬が主演と来れば先ず間違い無く観るでしょう。 刑事ドラマですが前作「ボーダー」とは違い殺人事件を追う話では無く、国家転覆を狙うテロ事案を追う公安内に組織された特別捜査チームの話でストーリー的にはドラマ「SP」の方が近いでしょうか。オリジナルエピソードなのでドラマ本編とどこまで絡むのかはわかりませんが発表されているキャストを思い浮かべながら読みました。 組織に馴染めないはみ出し者がそれぞれの秀でた能力を生かしテロ事件を解決するという何処かで見て来た設定ですが、個性的なキャラがなかなか良くてサクサク読めました。さてドラマ本編はどうなるのやら、今から楽しみです。

    10
    投稿日: 2017.04.02
  • オービタル・クラウド 上

    オービタル・クラウド 上

    藤井 太洋

    ハヤカワ文庫JA

    ギークでクールなオービタルSF

    流れ星の発生を予測するWebサービス〈メテオ・ニュース〉を運営するフリーランスのWeb制作者・木村和海は、衛星軌道上の宇宙ゴミ(デブリ)の不審な動きを発見する。それは国際宇宙ステーション(ISS)を襲うための軌道兵器だという噂が、ネットを中心に広まりりつつあった。同時にアメリカでも、北米航空宇宙防衛軍(NORAD)のダレル・フリーマン軍曹が、このデブリの調査を開始した。その頃、有名な起業家のロニー・スマークは、民間宇宙ツアーのプロモーションを行うために自ら娘と共に軌道ホテルに滞在しようとしていた。和海はある日、イランの科学者を名乗る男からデブリの謎に関する情報を受け取る。ITエンジニアの沼田明利の助けを得て男のデータを解析した和海は、JAXAに驚愕の事実を伝えた。それは、北米航空団とCIAを巻き込んだ、前代未聞のスペース・テロとの闘いの始まりだった──電子時代の俊英が近未来のテクノロジーをリアルに描く、渾身のテクノスリラー巨篇! いやー文句なしに面白い。衛星軌道上、東京、テヘラン、シアトル、NORAD、ディスヌ島(離島)と当初は6視点で物語は展開されますが時系列に謎の提示とその解明がされていくので混乱する事なくどんどん読めます。むしろ時差や国のインフラ差を使ってのジレンマをうまくストーリーに織り込んでいるのでおいおい早くなんとかしろよ的な焦りにも似たドライブ感に後押しされながらかなりボリュームある本作もあっという間に読めてしまいます。前半の軌道上の謎とネットを使ってのミスデレクション、中盤から後半のエスピオナージ的展開と和海たちによるの謎解き、そしてオービタルクラウドの意味がわかってからの畳み掛けるような地球規模のオペレーションと二転三転する結末にとにかく最後まで目が離せません。 しかし作者は格段にうまくなっていますね。Gene Mapperの頃はかなり技術寄りな話に偏っていて小説としてのバランスがいまひとつに感じていたのですが、本作は技術偏重ではなく人やストーリーにも目配せが行き届いておりバランス良くそしてなによりも読ませる。もちろんいつものように技術設定もてんこ盛りなのですが、舞台が2020年なのでSF設定は低めで現在の地続きの技術で話は積み上げられていきます。とにかくIT用語やビジネス用語、宇宙航空用語などのオンパレードで少しあげただけでもデプロイ(展開)、ラウンドロビン(負荷分散)、ラズベリー、スリーピングガン(眠り砲台)、エグジット(出口)、レベニューシェア(利益配分)、コモディティビジネス、TLE、テレメトリ、ISS、SDI、ASAT(対衛星兵器)、デブリカタログなど盛りだくさん。 私的には今年度(2014年度)の日本SF作品の中では今のところ1か2位。作家には化ける作品があるのですが、本作がそうなるやもしれません。(再掲) ※CIA本部は今はラングレーじゃないんですね。マクレーンだって。

    9
    投稿日: 2017.03.29
  • ギルドの系譜 上

    ギルドの系譜 上

    ジェームズ・ロリンズ,桑田健

    竹書房文庫

    ギルド三部作の最終巻

    ギルド三部作の最終巻は、シグマの仇敵ギルドの中核に位置する謎の一族に迫る話。前作の最後で明らかになった超有名な秘密結社の登場と不老不死をテーマに誘拐された現大統領の娘アマンダを追ってグレイとセイチャンはソマリアからドバイへと駆け抜ける。 本巻では今までの様に歴史的な遺物や遺跡を巡るワケではなく、ある一族の系譜を追うという物語とタッカー&ケインという新たなコンビが加わるので新鮮味はありますが、展開はいつも通りアクションと推理の繰り返しなので結末へと向けての話のたたみ方はここまでシリーズを読んでいると想像の範囲内、黒幕も結構早い段階でわかってしまいます。まさかのサプライズ設定も1つはありましたけど… とにかくギルトとは決着がついたので次回作からはどうなっていくのか気にはなりますが、一旦こちらも読むのを打ち止め。シグマシリーズは安定した面白さはあるのですが、かためて読み過ぎたせいか食傷気味で当分はもういいかなぁ。

    5
    投稿日: 2017.03.25
  • 機動戦士ガンダム THE ORIGIN(23)

    機動戦士ガンダム THE ORIGIN(23)

    安彦良和,矢立肇,富野由悠季,大河原邦男

    角川コミックス・エース

    安彦ガンダム最高‼︎

    モビルスーツ戦からノーマルスーツ戦となる最終巻は、この物語がやはり人間ドラマであるコトを思い起こさせる。それは中盤の見せ場、シャア対アムロの対峙でクライマックスを迎える… シャアが語る「ジオン対連邦ではなく! アースノイド対スペースノイドですらなく‼︎ 真に戦うべきはオールドタイプ対ニュータイプなのだと‼︎」に全てのガンダムのテーマが含めれているのだが、その理想論を吐くシャア自身でさえ打倒ザビ家という怨念に囚われたヒトであったという最後がやるせない…けど素晴らしいドラマ展開、深い、深いよガンダム。 そして「戦争の道具」としてしか使って来なかったニュータイプ能力を自身を、仲間を生かす為、生き残る為に使うアムロが最後に呟く「僕にはまだ帰れるところがあるんだ…」は何度読んでもグッと来る。最後まで読んで来て良かった!と報われる瞬間だ。 安彦ガンダム最高‼︎ そしてありがとう!

    7
    投稿日: 2017.03.24
  • 煙突の上にハイヒール

    煙突の上にハイヒール

    小川一水

    光文社文庫

    ライトに読めるSF短編

    近未来もの2話、ロボットもの2話、パンデミックもの1話の合計5話。「カムキャット~」は今の技術でもまんまいける話で一番面白かった。「俺たち~」は、山本弘の「アイの物語」にも通じる世界。最後の「白鳥熱~」は、作者の他のシリーズと同じパンデミックもので、視点が生き残ってしまった人々側から描かれている。SF色は薄いのでさくっと読めます。

    4
    投稿日: 2017.03.10