
万能鑑定士Qの事件簿 II
松岡圭祐
角川文庫
莉子の心情を察すると泣けてくる
犯人の意外性は兎も角、凜田莉子を万能鑑定士として開眼させた恩人を糾弾しなければならない心境は計り知れません。 そのあたりの莉子の心理描写がないので、どれだけ苦しい思いをしたのか想像するしかありませんが、切り裂かれる思いだったことでしょう。 それとも世間の混乱を考えれば意外とすんなり折り合いがつけられたのか。 今後、この件についての言及があるなら続きを読んでみたいけど、どうなんだろう。
1投稿日: 2014.05.07万能鑑定士Qの事件簿 I
松岡圭祐
角川文庫
ライトミステリの佳作
薀蓄がふんだんなのかと思ったら、分かり易いし読みやすかった。 周りの人の善意と手助けによって万能鑑定士となった凜田莉子。受けた恩をしっかり恩送りできる人間性を備えている上に美人で頭脳明晰だなんて、最強だな。
2投稿日: 2014.05.07ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~
三上延
メディアワークス文庫
栞子さんの印象が変わった
栞子さんが抱える母と同じ衝動に対する不安と大輔との関係に一応の決着がついて一安心。 何ですが、今まで栞子さんの本が好きというところも容貌も素敵だと感じていたのに、この巻を読み終えたら、惹かれる大輔よりも辞めていった歴代のバイトたちの気持ちに同意したくなった。 大輔のフィルターを通して見ない栞子さんは、印象がガラリと変わるもんだ。恋は盲目とはよく言ったものです。
7投稿日: 2014.04.20魚舟・獣舟
上田早夕里
光文社文庫
ドライでハードボイルド
全編共通するのは、あまりハッピーとはいえないキャラたちが主人公ということ。 でも視点はキャラクタから一歩引いた距離感が保たれているので、ハードな内容でも重くなく、ドライでハードボイルドな印象。この淡々とした調子、嫌いじゃない。
2投稿日: 2014.03.30南極点のピアピア動画
野尻抱介
ハヤカワ文庫JA
もしかしたら有り得る未来かも
野尻作品ははじめて読みましたが、リアリティを持たせる部分のさじ加減がとても上手い。なので、空想の翼を広げた部分の物語もひょっとしたら有り得るんじゃないかと思えてしまう。 その分、最終章へ向けての急展開にはグッと引き込まれた。
1投稿日: 2014.03.02マリアビートル
伊坂幸太郎
角川文庫
魅力的な殺し屋が多すぎる
上野発仙台行き新幹線の中というワンシチュエーションに集う殺し屋たち。 殺し屋だというのに、不運な七尾に、トーマス好きな檸檬と物語を引用する文学青年蜜柑と、出てくるキャラがとても魅力的。 七尾の不運によって次々と事態が変わり行く展開は、スピーディかつスリリングでとても面白かった。
2投稿日: 2014.02.23科学するブッダ 犀の角たち
佐々木閑
角川ソフィア文庫
タイトルのとおり「なるほど、科学と仏教は共通点があるんだな」と膝を叩くこと請け合いです。
内容の大半は科学の説明に割かれていますが、面白いのは仏教の説明に入ってから。 ブッダは、悟りを啓いたけどあくまで普通の人だという説明はフラットに宗教と向き合う距離感を保ってくれるし、仏教が何故こんなに多種多様な宗派に枝分かれしているのか? という発端の考えについても、とても合理的な理由があって親近感が持てます。 褐色の恋人で有名なスジャータさんが、実は、ブッダの命の恩人だったり、大乗仏教の経典の内容はブッダの言葉ではないと結論が出ていたり、トーマス・ヤングは言語学にも顔を突っ込んでいたり、面白いエピソードも満載で楽しめます。
5投稿日: 2014.02.04パティシエの秘密推理 お召し上がりは容疑者から
似鳥鶏
幻冬舎
物語はビター
パティシエが探偵だし、おいしそうなスイーツが出てくるのに、物語は随分とビターでした。 許すというのは褒められる行為なのでできた方がいいんでしょうが、とても難しい。
2投稿日: 2014.01.07盤上の夜
宮内悠介
東京創元社
なかなかに深い作品
盤上ゲームを題材にした短編集でしたが、共通しているのはプレイヤーが盤上ゲームにかける情熱でしょうか。 強欲に勝利を求める姿は悟りの境地に達したような思考が垣間見えるし、短期決戦でありながらも対局にはプレイヤーの人生が凝縮されているようで、そこに、人生の真理があるように思えた。
0投稿日: 2013.12.21怨霊になった天皇
竹田恒泰
小学館文庫
恨みを持って憤死した人物は怨霊になる
いかにして死者が怨霊となり、生者がいかにして陥れた人物を恐れたのか、そのメカニズムを論理的に解き明かすロジックが面白かった。
3投稿日: 2013.12.11