kurosukeさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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戦場観光~シリアで最も有名な日本人
藤本敏文, 安田純平 / 幻冬舎単行本
内戦のシリア旅行記
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内戦のシリアを見たままに素直に書いた旅行記。
思想的な背景は感じられず、著者の抜群のコミュニュケーション能力で、シリア人と友達になり、それを生かして、内戦下のシリアを詳細に記述している。イスラムに関し…ても、ありのままに受け入れて、最後は自分自身もイスラム教徒になった事も言及している。
理念的な事は無く、FSA(自由シリア軍)の国際的な立位置等に対する記述は無いが、その分、民衆の目線での実態を知る事が出来た。
非常に面白いので、一読の価値が有ると思う。
また、最近拘束されたと言われている、安田純平氏の後書きも、興味深く、戦場に向かうジャーナリストとしての心構えや覚悟が分かって、これが本当の自己責任だと考えさせられるものが有る。 続きを読む投稿日:2016.01.02
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心に狂いが生じるとき―精神科医の症例報告―
岩波明 / 新潮文庫
オーソドックスな症例報告 精神病を大雑把に知りたい人にはお勧め
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精神病に興味を持つ方には、おすすめである。
症例を示しながら、精神疾患の類型化を平易に解説している。
客観的に淡々と書かれているが、精神医療の現場の大変さを推測する事が出来た。
患者の人権問題に関して…も、ただ患者の好きな様にさせても、寛解したとしても、その後
悪化する場合も多く、非情に難しい問題をはらんでいる事が書かれている。
また、犯罪に関しても、司法制度の中での精神鑑定には問題が多く、専門家が居ない
事や、裁判官がその判断を、鑑定者に丸投げする形になっており、主観的な判断が入り
込む事になり、法律制度上の欠陥が大きい事を示している。
続きを読む投稿日:2016.03.13
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黒人に最も愛され、FBIに最も恐れられた日本人
出井康博 / 講談社+α文庫
明治の若者達のアメリカでの生き様が描かれていて面白い
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丁寧な取材を元に、アメリカ大陸の日系移民の姿を掘り起こし、アメリカの過去の人種差別の状況を元に、中根中 氏の黒人解放運動への係わりを描いている。ビンラディンよりFBIが恐れたかどうかは別にして、同氏を…含めた一部の日本人が黒人解放運動を利用し、黒人も日米関係を利用した、相互の利害の一致した局面が戦前にあった事は非常に興味深い。また、志を持った明治の若者達が、外人宣教師の布教を通じたアメリカへの夢を持ち、渡米するが、その後、白人優位の現実を見て失望した後、どの様にその人生の方向性を変えていったのか、その生き様、時代に翻弄される様が数多く描かれていて、とても感動的である。 続きを読む
投稿日:2015.01.04
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永遠の旅行者(上)
橘玲 / 幻冬舎文庫
素直に、読み物として面白い
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素直に面白い
縦糸に税制、横糸に物語。物語自体は兎も角、これにタックスプランニングを加える事で、非常に興味深いケーススタディとなっている。プライベートバンクや、国税当局とのいた…ちごっこ等、本当の世界を垣間見る事が出来、現実性と、非現実性の間で、読み物としても面白く、また気が抜けない展開となっている。書かれた時期は若干古いので、現在そのまま適用する事は出来ないと思われるが、それでも考え方自体は変わっていないのではと思われる。 続きを読む投稿日:2014.12.28
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知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語
橘玲 / 幻冬舎単行本
自由主義・国家の役割・個人の経済的合理性
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本自体は、2004年と10年前に書かれたもの。5年後に若干の書き直しはしているらしい。とは言え、2014年の現在に有っても、全く古さを感じさせないし、むしろより問題点がハッキリしてきたとも言える。政治…が10年前の問題を全く解決出来ず、むしろより一層深刻化している事が判る。海外との対比を行いながら、民主制と自由主義の相容れない政治体制の中、悪い部分が増幅している事を説得力を持って、綴っている。筆者は、極論も多く、実行不能な論も少なくないが、この極論を提起しなければ、現在の問題を解決出来ない事も、よく判っており、その上での極論だと思われる。経済的な面でも、示唆が多く、大きな流れを見て今後の投資方針を決める上でも、良書と考える。 続きを読む
投稿日:2014.11.23
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世界史の中の資本主義―エネルギー、食料、国家はどうなるか
水野和夫, 川島博之 / 東洋経済新報社
世界に新天地の無い今、金融に支配された資本主義は立ち行かない
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より投資効率の良いフロンティアを探し求めるマネーは、リスクは高いがリターンの大きい新天地を探して、世界の隅々を網羅する。既に、新天地の無くなりつつある世界は、金利も下がり、物資(エネルギー、穀物、資源…)の生産過剰となり、長いデフレに突入する事となる。書かれている事は、多くの例を引用しながら、非常に分かりやすく議論が展開されており、現状の経済状況を理解する上でも、必読の一書であると考える。政府債務が大きく膨らむ今、デフレを防止する事により金融を過剰に支援する為の施策には限界が有る。商品相場は需給で決まるのでは無く、金融機関の投機で決まっている。今後、この様な状況を乗り越える為に、どの様な転換が図られるのか?に関しての記載はなされていない。全てを肯定できないし、足元の状況に合致しているとは思えないが、筆者の洞察は鋭い。 続きを読む
投稿日:2014.07.12