kurosukeさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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仕事に効く教養としての「世界史」
出口治明 / 祥伝社
実は勤め人だけではなく、高校生にもおすすめでは?
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世界史の個々の出来事を、複眼的に世界全体の流れの中でとらえている。学者の様な一つ一つ証拠の積み重ねは無いが、著者の豊富な知識と、海外での駐在経験に裏打ちされた肌感覚による記述が、説得力の源泉となってい…る。軸は、宗教、技術、社会システム、思想、経済等、多岐にわたり、全体の流れの中で、歴史の必然を感じさせる。現代部分の記述は少ないが、これは未だ評価が確定していないからかもしれない。現在起こっている、一面的に不条理だと思う事も、その背景には理由があり、多面的な分析をすれば自ずと理解出来る事は、考えさせられる。 続きを読む
投稿日:2014.04.28
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イスラーム 生と死と聖戦
中田考 / 集英社新書
イスラムが良く分かる
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イスラームと言う宗教がどの様な思想を持っているのか?成立過程は?死生観やジハードとの関係、カリフ制国家とイスラム国の可能性、境界の無いイスラム教文化圏と西洋的な国境を持つ国家との矛盾等、が分かり易く解…説されている。
また、面白いのは、筆者が学者としてだけでは無く、一信者として、どの様に考えているのかが、生々しく語られており、「国家の個人に対する支配」の考え方等、その賛否は兎も角、新鮮な印象を持った。
筆者は、かなりイスラム原理主義的なのでは無いかと思うが、それも判っていて、確信犯的に主張していると感じた。 続きを読む投稿日:2015.04.06
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出世できなくても資産2億円 サラリーマンだからできる不動産投資
東海林満 / ゴマブックス
内容はとっても正直だが...
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さっと、読めました。
フルローン 15000万円の借金をして、入居率 85% での税引前 手取りが 360万円。
築年数 15年 / ローン 30年 / 金利 2.5% / 満室時表面利回り 11%… / 経費 売上 x 20%
の計算となっている。
どれだけ償却が取れるか判りませんが、ざくっと残り30年建物=銀行ローン期間と一緒。
返済には、土地も込みとすると、土地代/30+360万円/年が資産増も含めた手取りと言える。
リスクは、空室や資産デフレや金利増等、500万強の収入の為に、1億5千万も借金して
リスクに見合ったリターンが取れているのかと言うと疑問。
金利がノンバンク等の高利ローンであると、ほぼチャラになるので、つきつめると、会社員
の時の与信(低金利)を利用して、足元利益が出ているに過ぎず、真の意味で、「サラリー
マンだから出来る不動産投資」と言える。
不動産投資の構造を見る上では、非常に参考になるが、これで不動産投資を考えるのは危険。
語弊を恐れず言うと、ローンで家が持てない貧乏人が、資金の有り余る金持ちに家を建ててもらって住み、
その対価として家賃を払うビジネスで、いわゆる金持ち(土地持ち)の余剰資産の有効活用の側面が強い。
そこに、与信が高いサラリーマンが「鴨葱」で入っていくのは、業者に食い物にされ、資産下落時に(Loan to
Value に引っかかり)銀行の貸し渋りに遭い、身ぐるみ剥がされて、マーケットから退場させられるのがおち
である。
この著者の実際の不動産は、利回りは更に良いものの、北海道にあるらしい。本当に大丈夫??
この著者も含めて、大きな借金をして、不動産で Cash Flow を得ていると豪語している人が10年後、どう
なっているかを見てみたい。 続きを読む投稿日:2014.11.23
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資本主義の終焉と歴史の危機
水野和夫 / 集英社新書
行き詰った資本主義の現状とその処方箋
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資本主義の行き詰まりの原因、国家機能の喪失、民主主義という政治体制の終焉等、先進国からの観点でかかれている。特に、日本は1990年初頭のバブル崩壊以降の経済政策の迷走により、他先進国に比べてよりその行…き詰まりが突出しており、その意味で、現在の資本主義の解消、新しいシステム構築の先駆者になれるのでは、との期待を筆者はしている。少なくとも、今行われているアベノミクスに関しては、プライマリーバランスを損ない、その行き詰まりを更に深刻化しするだけで、実効性は全く無いとの立場を取っている。今後の引き金は中国での過剰生産設備のバブル崩壊と予言しているが、そうなれば冗談では済まされまい。 続きを読む
投稿日:2014.12.28
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米軍と人民解放軍 米国防総省の対中戦略
布施哲 / 講談社現代新書
一つのシミュレーションとしては面白い
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現状では、装備が予算の面で限定的にならざるを得ない中国人民解放軍と、既存の軍事的なストックを持った米軍の間で、何を理由(台湾問題)で両国が紛争に陥る可能性が有るのか。また日本が、その紛争にどの様に関わ…っていく事になるのかが、現実的且つ具体的に述べられていて非常に興味深い。
2030年の世界を想定しているので、今後の軍事技術の発達や、米中日の関係の変化によっては、シナリオ通りにはならないのではと考える。即ち、現時点では即時対応の為の地政学的な要因で、米軍が沖縄をはじめとする日本の基地拠点が必要な事は自明であるが、将来的には、中国の対台湾融和政策(事実上の併合)や、米国の軍事技術の進展等により、日本の立場が変化し、それは日本にとって不利な方向に働くのではと思う。
ただ一方、「尖閣」のミクロの衝突等を、マクロ的に把握する為にも、本書は非常に有意義と考える。
続きを読む投稿日:2014.10.05
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【電子特別カラー版】恋するソマリア
高野秀行 / 集英社文芸単行本
ソマリアの草の根レポート
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日本にはなじみの無い、ソマリアと言う地域を理解する上では、必読の書。国家としての政府の崩壊した現状と、古くから残る氏族社会と言う形で保たれている最低限の秩序が興味深い。本書の作者が、生活者としての視点…を重要と考える民族学的なアプローチが、ソマリア人の深層を理解する上で有効に作用している。地政学的に、アフリカとアラブの文化の衝突地点として、過去イギリス・イタリアの植民地であった同地域が、徐々にイスラム化されており、意識としてイスラムを西欧文明を高位に置いていると言う部分は感慨深い。 続きを読む
投稿日:2015.04.05