
BLACK BLOOD BROTHERS1-ブラック・ブラッド・ブラザーズ 兄弟上陸-
あざの耕平,草河遊也
富士見ファンタジア文庫
衝撃の結末が面白いです。
この巻は全てがラスト4ページに書かれた結末のためにあると言っても過言ではない作品でした。 膨大な設定が述べられる割に、吸血鬼兄弟の兄で主人公のジローがなぜこれほどまでに強いのか、そして、ストーリーにあまり絡んでこない弟のコタロウの役割・必要性は一体何なのかという点が最後の最後まで説明されず、ずっと気になっていたのですが、ラスト4ページにスッキリとまとめられていて面白いです。 しかしながら、ストーリー自体に目立った起伏はなく、敵である『クーロンチャイルド』の正体にも意外性は感じませんでした。 さらに、人間と吸血鬼の共存する特区という設定にリアリティがありませんでした。というのも、国際法・シンガポール協定で吸血鬼は見つけ次第殺さなければならないと説明される一方で、日本の国内法では吸血鬼の共存を認めている場所があるなど、明らかに法律に関して説明不足か設定の不備があるように感じました。そのため、吸血鬼の権利や、共存を進める公的組織のミミコの立ち位置や、各キャラクターの信念などが分かりづらかったです。
0投稿日: 2014.01.22わたしたちの田村くん
竹宮ゆゆこ,ヤス
電撃文庫
読みやすいです。
主人公の田村雪貞と、ダブルヒロインの松沢小巻、相馬広香の心の交流を描いたラブコメです。 読みやすいのですが、ヒロインが二人いるため、個々のストーリーは性急な上、一本調子です。わざわざヒロイン一人あたりの紙面を削ってまで二人のヒロインを登場させる必要性が感じられませんでした。 また、二人のヒロインにしても特殊な事情を抱えており、恋愛というよりも同情でストーリーを転がしている感じがしました。
0投稿日: 2014.01.20All You Need Is Kill
桜坂洋
集英社スーパーダッシュ文庫
文章が読みやすいです。
文章は読みやすく、また、主人公ケイジの目的も明確なので最後まで興味が持続しました。 しかしながら、タイムループをするために必要となる設定が70年代のSF設定であり、やや古くさい印象を受けてしまいました。また、タイムループをする理屈については論理的にかなり厳しいと思いました。 そして伏線が弱かったのか、ヒロインのリタとの秘密の合い言葉にただの合い言葉以上の意味を見いだせず、ハイライトのシーンで感情移入できなかったのが少し残念でした。
1投稿日: 2014.01.17電波的な彼女
片山憲太郎
集英社スーパーダッシュ文庫
私には合いませんでした。
主人公のジュウが、ヒロインの電波少女を傷つけるために強姦教唆するところから物語が始まります。 そういう意味で連続殺人犯とジュウは同類であるにもかかわらず、途中で正義漢となるジュウに何の感情移入もできませんでした。
0投稿日: 2014.01.14吉永さん家のガーゴイル1
田口仙年堂,日向悠二
ファミ通文庫
主人公が門番という斬新な設定が面白い。
門番のガーゴイルが成長していく様を書いたコメディです。 石のガーゴイルが、人間の感情とは何かを考察しながら行動する珍しい展開が斬新でした。 しかしながら、吉永家の和己と双葉の兄妹の性別が錯綜する設定などはドラマに関係しないにもかかわらず頻繁に説明され、何の効果を狙ったものか分からない設定も散見されました。 また、全体的にコメディタッチのせいか、シリアスシーンがシリアスになりきれず、ややしらけた印象も受けました。
0投稿日: 2014.01.09レンタルマギカ ~魔法使い、貸します!
三田誠
角川スニーカー文庫
私には合いませんでした。
設定を説明するためにストーリーがある作品です。 キャラクター、ストーリーの全てが世界の設定を説明するためだけに動いているという印象を受けました。 キャラクターの葛藤でストーリーが進むのではなく、設定を説明するためにストーリーが進んでいくので、興味を持続させるのが難しい気がしました。 主人公のいつきは読者と同じ視点である一般人として物語に登場し、魔法使いの世界にいきなり放り込まれるのですが、その世界を批判しながら独自の認識を作り上げるというわけでもなく、先輩たちの言うことをすんなり受け入れてしまい、あっという間に物語の一登場人物として世界の中に埋もれてしまいます。 したがって、私は、この作品世界の中に入っていく手がかりとなるキャラクターの視点を見いだせませんでした。
0投稿日: 2014.01.07砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet
桜庭一樹
角川文庫
実弾の意味が深くて面白い。
少女たちの揺れる心が、こなれた文章で丁寧に書かれており、引き込まれました。 “弾丸”や“実弾”は当初は単なるお金を意味していますが、読み進めていくうちに様々な意味を持っていくことが分かり、興味がぶれません。 主人公のなぎさにとっての兄の“神の視点”や、もくずにとっての“人魚”など、その当人にとって力を持ちうる虚構が“実弾”であり、読者にとっては、このストーリー自体が“実弾”になりうると思います。 未読の方は、ぜひ一読をお勧めいたします。
4投稿日: 2014.01.06ゼロの使い魔
ヤマグチノボル,兎塚エイジ
MF文庫J
読みやすく面白い。
本作は、異世界でのボーイ・ミーツ・ガールものです。 文章はストレスなくさくさく読めます。 またどのキャラクターにも好感が持てます。 ただストーリーは一本調子のうえ、多くの伏線が回収されず、物足りない印象でした。
0投稿日: 2014.01.05されど罪人は竜と踊る1(上) Dances with the Dragons(イラスト簡略版)
浅井ラボ,宮城
ガガガ文庫
とんでもない力作です。
竜、咒式(じゅしき:魔法)、教会などのワードから西洋ファンタジー世界かと思っていたら、アスファルト舗装の道路や単車、忍者、権謀術数などとにかくなんでもありの世界観です。 咒式は、科学の知見を元に非常に練られており、思わず、そうきたかと唸ってしまいます。雰囲気としては、先行作品ではBASTARD!!に似ていると思います。 また、ダークファンタジーの雰囲気がありますが、キャラクターの会話は面白く、シリアスになりすぎるのをうまく調整しているように思いました。 この上巻では、主な登場人物の紹介や事件の導入がメインになっており、作品として評価するには下巻も読む必要があるので、以下、上下巻をとおした感想になります。 本作では、主人公のガユスと相棒のギギナを中心として様々な事件が起こりますが、すさまじいまでの戦闘描写と会話“劇”とを通じて、それまでに回収されていない伏線が最終的に一つの真実に収束していく様は、もはや圧巻としか言えません。未読の方には、一読をおすすめします。 ただ、ガユスとギギナは人格がほぼ完成しており、感情に揺れるような小説が好きな私としては、それほど感情移入できませんでした。 また、緻密な化学・物理描写に比べて、それを実現する技術や機械の描写は、潔いほど削ぎ落とされており、機械好きの私としては少し残念でした。 さらに、通読すれば明らかに分かる簡単な誤記も目立ちました。
3投稿日: 2014.01.04よくわかる現代魔法 1 new edition
桜坂洋
集英社スーパーダッシュ文庫
主人公のこよみがかわいらしい。
コンピュータを使って魔法を発動させるというアイデアが面白いです。 作品もコンピュータ用語を、魔法の用語に翻訳するような形で進んでいきます。 しかしながら、魔法の定義が広すぎて、魔法で何ができるのか、あるいは何ができないかといった限界が決められていないのが残念でした。 そのため、どんなピンチになっても、魔法で助かるだろうという安直な答えが浮かぶので、物語に入り込むことができませんでした。 とはいえタイトルのとおり、わかりやすく、またこよみに好感が持てるので、面白いです。
0投稿日: 2014.01.03