わせみかん。さんのレビュー
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85
このユーザーのレビュー
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平壌ハイ
石丸元章 / 文春文庫
読書する意味を改めて確認できる良書です
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かなり変な人、石丸元章による北朝鮮旅行記。
フィクションなのかノンフィクションなのか分からないくらい濃いキャラクターたちが織りなす珍道中がこの上なく楽しい気分にさせてくれます。
サービスをしないのが北…朝鮮流のサービスとか、北朝鮮のマスゲームは某夢の国のパレードと同じ、などユーモアを効かせた観察が非常に面白い。旅するとはこういうことかととても参考になりました。
食事シーンはリアルで、まるで千と千尋の神隠しの冒頭シーンのような、犬を食べたい!と思わせる力があります。
ドラッグシーンもかなりあるので苦手な人は苦手かもしれませんが、暴力シーンなどはありませんので安心して読めると思います。
読んだあとは北朝鮮のイメージががらりと変わりました。 続きを読む投稿日:2014.11.01
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消滅の光輪 上 《司政官》シリーズ
眉村卓 / 創元SF文庫
伏線の回収が秀逸の一言に尽きます。
2
星雲賞受賞作の中には、こういう秀逸な作品があるので読むのをやめられません。
主人公のマセ司政官が、植民者たちを新星に移動させるために四苦八苦するストーリーです。司政官の権威が過去の物となってしまった時…代、言うことを聞かない植民者たちに対して、マセ司政官がロボット官僚を駆使してあの手この手を使いながらオペレーションを進めていくストーリーそれ自体が面白いです。
そして、私は本作のハイライトは下巻のお遊びの司政功労賞授与式にあると思います。これだけ見事なドラマを展開されると、それを支える構成の精緻さに思わず震えました。 続きを読む投稿日:2014.02.04
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とらドラ!
竹宮ゆゆこ, ヤス / 電撃文庫
良作です。
2
前作の「田村くん」と異なり、今回は主人公の竜児と大河の二人の関係にクローズアップされ、二人のやりとりが十分に描かれており、読み応えは十分でした。逆に、キャラクターの心情を書き込みすぎて、心情を読み手の…想像にゆだねる余地が少ないのが残念でした。
そして、二人が恋の共同戦線を張るために接近するという展開は面白いのですが、それから先の仲良くなる展開が「田村くん」と同じ設定で進んでいくので、なんだかなあと思いました。 続きを読む投稿日:2014.02.04
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おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!
村上凛, あなぽん / 富士見ファンタジア文庫
自分の失敗をエンタメに昇華させた良作です。
2
タイトルからよくあるラブコメを想定していたのですが、中身は実体験をもとにしたフィクションで、非常にリアル。
作者が人生を切り売りしながら真剣に書いた物だというのが伝わってきました。
キャラクターの悩み…のリアルさ故に引き込まれました。
主人公の柏田の行動に、これやるの自分だけじゃなかったのかと安心しました。
ライトノベルのあとがきは変に狙ったものが多くて好きにはなれないものが多いのですが、このあとがきには笑わせてもらえました。
続きを読む投稿日:2014.05.23
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図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1)
有川浩 / 角川文庫
残念ながら私には合いませんでした。
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メイン設定の図書隊と良化委員の構図にリアリティを感じることができませんでした。
法治国家であるはずの日本で、紛争を裁判で解決せずに銃撃に訴える委員会と、図書館を守るための武装組織に正義や信念といったも…のを読み取ることができませんでした。 続きを読む投稿日:2014.01.27
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丘ルトロジック 沈丁花桜のカンタータ
耳目口司, まごまご / 角川スニーカー文庫
構成が涼宮ハルヒっぽいです。
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丘研なる部活で世界征服を目指す代表・沈丁花桜のもとに、ただの人間ではない個性豊かな仲間が集まり、主人公・咲丘が振り回される連作短編です。
サブタイトルも涼宮ハルヒの~を踏襲していることから、涼宮ハ…ルヒの憂鬱のオマージュ作品だと思われます。
涼宮ハルヒの憂鬱は、個性的なキャラクターがそれぞれ情報を持ち寄ることで、多様な視点から『涼宮ハルヒ』は何者かという身内の謎に迫る構成だったのに対して、こちらは『切り裂きジャック』とは何者かという殺人鬼の謎に迫る過程で、沈丁花桜や主人公を含めたそれぞれのキャラクターに潜む狂気が明らかになるという構成を取っています。
そこがハルヒとの違いだとはおもうのですが、しかし、連作短編のストーリーを統一させるキャラクターである『切り裂きジャック』に魅力が欠ける上、各キャラクター同士の繋がりが弱く、若干まとまりに欠けるのが正直な感想です。
特に、一篇当たりの量が短く、そこにキャラクターの濃さを詰め込まれているため、感情移入する前にキャラクターが内面の暴露を始めるので、カタルシスとかはあまり感じませんでした。 続きを読む投稿日:2014.11.15