
101号室の女
折原一
講談社文庫
通勤・通学の電車の中で手軽に読めます。
友人に勧められて読みました。 全9編の短編小説です。 ストーリーが二転三転し、犯人を確信した次の瞬間には真犯人が現れるので飽きません。 ただ、叙述トリックなので推理をして犯人を追い詰めるというよりは、星新一のショートショートに近い印象を受けました。 一篇当たり30分くらいで読めるので通勤・通学のお供には最適でした。
3投稿日: 2014.10.20神狩り
山田正紀
ハヤカワ文庫JA
どうもしっくりきませんでした。
ウィトゲンシュタインの神観にインスパイアされたと思われる作品です。 論理空間そのものが異なるものを≪神≫と定義して、それを狩り出そうというアイデアは面白く序盤は夢中になったのですが、中盤以降は霊能力が中心になっていくので、あまり私の好みの展開ではありませんでした。 ウィトゲンシュタインの神と、死んだ女の霊や、学生運動などに関連性を見いだせず、どうもしっくり来なかったのが残念でした。
0投稿日: 2014.09.24みずは無間
六冬和生
単行本
非常にレベルが高い物語です。
タイトルや表紙などからラノベを想像していたのですが、中身は理系の、それも新人とは思えないくらいかなりレベルの高いハードSFでした。 ハードSFといえば世界観重視で人間を書かないのが一般的(?)ですが、語り手が主人公であり、また元恋人のみずはを中心にストーリーが進むので、抵抗なくストーリーに入っていけました。 全く余談ですが、同じく新人の『銀河風帆走』もレベルが高く、深宇宙を旅するAIが女性を想って旅するという共通点を持ったストーリーであり、そこからSFの「いま」が見えてくるようで感慨深いです。 さて、肝心の本作ですが、読後感が村上春樹作品のような印象でした。 一文一文が面白く、全体の流れとしても、分かりやすいです。読者は安心して作者の展開する論理に乗っかって深宇宙を旅できます。 読み終わったときも、え?もう終わり?となるくらい物語に集中しました。それほど文章は面白く読者を引き込む魅力を備えていると思います。 しかし、読み終わったとき、何が良かったかと聞かれると、答えようがない。それが実直な感想でしょうか。 選評にもあるように、宇宙と地球の出来事の流れを切ることなくスムーズに行き来するセンスはすごいと思いました。
0投稿日: 2014.08.14メタモルフォセス群島(新潮文庫)
筒井康隆
新潮文庫
傑作短編集です。
11編からなる短編集です。 筒井康隆作品は長編よりも短編の方が断然好みです。 読み始めたら最後まで一気に読んでしまいました。 追われるものの恐怖を描いた『走る取的』や、くだらないだじゃれに思わず笑ってしまう『こちら一の谷』、内容よりも定年が55歳だったことに驚く『定年食』など、バラエティに富んでいます。 もはや死語ですが、エログロナンセンスの真骨頂です。 書籍のタイトルにもなったメタモルフォセス群島では水爆実験がでてきますが、おそらく何の寓意もなく、ただそういう時代だったんだろうなと思いました。
1投稿日: 2014.08.12朝のガスパール
筒井康隆
新潮社
新聞連載メタフィクション。
1991年に新聞連載していたメタフィクションです。 読者の投書や書き込みの意見を取り入れたり、ときには読者を批判しながら物語が進んでいきます。 ストーリーが進むパートと、小説に対する解説や、読者の投書を紹介するパートの二つの異なる世界があります。 前者ではオンライン株取引や、オンラインゲームなど時代を先駆けたシステムが紹介され、当時としては斬新だったのではないかと思います。 また『パプリカ』の主人公も登場するなど、ファンにはうれしい仕様になっています。
1投稿日: 2014.08.03ダーティペアの大逆転
高千穂 遙
ハヤカワ文庫JA
コメディです。
コメディで読みやすいです。 ストーリーは陰謀系のストーリーですが、展開が一直線である印象でした。
0投稿日: 2014.07.21幻詩狩り
川又千秋
東京創元社
コトダマ系ファンタジーです。
作者得意の火星を舞台にしたファンタジーです。 読みやすいのですが、麻薬のような詩という設定や、それを実現する理屈にあまりリアリティを感じられなかったのが残念でした。
0投稿日: 2014.07.13新装版 ロードス島戦記 灰色の魔女
水野良,安田均,出渕裕
角川スニーカー文庫
冒頭の地図だけでワクワクしました。
まず、主人公のパーンを含めてパーティー6人全員にそれぞれの役割や過去があり、旅の動機も様々なところがストーリーに広がりと奥行きを持たせていたと思います。 それに加えて魔女カーラとの手に汗握る追撃戦や、意外な結末に最後まで夢中で読みました。とても密度の高い作品だと思いました。 敵のカーラにしても意外な正体や志を持っており、勝者も敗者もなくただ人の営みが綴られるところに深い感銘を覚えました。
0投稿日: 2014.06.15カゲロウデイズ -in a daze-
じん(自然の敵P)
KCG文庫
読んでみました。
異能系群像劇でした。 電気屋に押し入り、警察に10億円を要求するテロリスト……きっと、事情があったんだろうと思いましたが、あまりにも脅威としてのリアリティがなかったのが残念でした。 しかし、今この場が突然テロリストに制圧されて男の子が一人活躍してみんなを助けるというのは、誰しもが一度は想像するであろうシチュエーションだなあと確認できました。
1投稿日: 2014.06.09ノーゲーム・ノーライフ 1 ゲーマー兄妹がファンタジー世界を征服するそうです
榎宮祐
MF文庫J
ゲームのルールなどが曖昧で恣意的なので、あまり集中できませんでした。
まず気になったのは、絶対守るべき総則の第一条が、殺すな盗むなであるにもかかわらず、命などを賭けても良いというのが腑に落ちませんでした。 特に疑問だったのが、魔法によるイカサマの扱いです。 人類に魔法が認知できないのであれば中立の第三者を審判にたてるのが普通だと思いますし、そもそもイカサマがあるないを誰がどうやって判定するのかも分からず、とりあえすゲームが進行してるからルール通り進行しているはずとか、完全にテレビゲームのノリをアナログゲームに持ち込んでいるような気がして、興が乗らなかったのが残念でした。
1投稿日: 2014.06.08