naotanさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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ペンギン・ハイウェイ
森見登美彦 / 角川文庫
初めて森見作品を読む人にもおススメ
13
秘密基地と探検、いじめっ子への逆襲、女友だちとの微妙なカンケイ、そして失恋・・・
ジュヴナイルのツボを押さえつつ、突然お姉さんがペンギンを生み出す場面に遭遇するなど、突飛な世界観は森見ワールド健在!
…少し大人びた少年と、彼の成長をあたたかく見守るお姉さんとのやりとりも楽しく、読みながら顔がニヤケてしまいました。
最後はちょっとせつない終わり方。泣くな、少年。 続きを読む投稿日:2013.09.28
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竜が最後に帰る場所
恒川光太郎 / 講談社文庫
少しずつタガが外れてゆく快感
12
どこにでもありそうな普通の話。そんな日常から始まり、気が付くと異質な世界の入り口に立たされていて、遂には後戻りできなくなる。そんな不思議な力を持った5つの短編集。
どの話もそれぞれに魅力的だけど、特…に印象に残ったのは「夜行の冬」と「鸚鵡幻想曲」。
「夜行の冬」は、最初「銀河鉄道の夜」みたいなお話?と思ったけれど、最後は「蜘蛛の糸」のような恐さにゾクっとさせられます。
「鸚鵡幻想曲」は、よくもまあそんな設定を思いつくなあと感心しながらも、決して独りよがりでない世界観に引き込まれました。
ラストは壮大な生命の物語、「ゴロンド」で幕を閉じます。
久しぶりに心地よい読後感に浸れた一冊でした。 続きを読む投稿日:2014.07.29
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妊娠カレンダー
小川洋子 / 文春文庫
美しく恐ろしい不思議な物語
12
芥川賞を受賞した表題作ほか3篇からなる短編集。
「妊娠カレンダー」は、妊娠した姉夫婦と同居している妹の視点で綴られる日記形式の物語。自分に近しい存在だった"姉"が、まるで別の生き物のような"母親"に変…容していく様を、時にはグロテスクに、時には悪意さえ持ちながらレポートしていきます。
美しい文体で、ゾッとするような恐ろしいことをさらっと書く、小川洋子の不思議な感覚に引き込まれました。 続きを読む投稿日:2014.09.13
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ハーメルンの笛吹き男 ――伝説とその世界
阿部謹也 / ちくま文庫
史実から伝説へ!? ハーメルンの謎を解き明かす
12
子供の頃に読んだ童話『ハーメルンの笛吹き男』。それは単なるおとぎ話ではなく、中世のドイツ・ハーメルンで起きた子供たちの大量失踪事件がもとになっていた!?
ひょんなことからこの話に興味を抱いた著者が、当…時の歴史や伝承、文学を辿ってハーメルンの謎を解き明かします。
130人もの子供が忽然と姿を消した失踪事件。大量発生した鼠を駆除する職業人の存在。この2つがどのようにして結びつき、ハーメルンという土地に根付いたのか?
著者と一緒にロマンを追いかけてみませんか。 続きを読む投稿日:2015.03.11
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野蛮な読書
平松洋子 / 集英社文庫
衣食「読」住
12
タイトルからイメージした言葉は乱読。手当たり次第に本を読みまくる話かと思いきや、そこには同じ本を何度も繰り返し、大切に読む人の姿がありました。
思わず「野蛮」の意味を調べると、「文化の開けていないこと…、教養のないこと」とあります。いや、むしろ著者の教養の高さがいやらしいほどにおってくるのですが……。
本書には、読書と同じくらい食べ物の話が出て来ます。
美味しいものを貪り食うように、面白い本を貪り読む。
食べなければ生きていけないように、書を読まないと死んでしまうんじゃないかと思わせるほど、本能の赴くままに読書する、その様子を「野蛮」と評したのかな、と理解しました。 続きを読む投稿日:2016.07.28
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ハサミ男
殊能将之 / 講談社文庫
再読必至のサイコミステリー
12
ターゲットの情報を収集し、いつでも実行に移せるように用意していた犯行が、模倣犯のせいで無駄になってしまう。偽物は誰なのか、私は真犯人を突き止めるために動き出す。
自殺癖のある多重人格者というキャラクタ…ー造形から、主人公の只者でない雰囲気が伝わってくるけれども、本当にびっくりするのは物語が核心に迫る終盤から。
トリックが明かされることで、逆に読者は混乱し、何度も前のページを見返すことになります。
ぜひ新鮮な気持ちでこの作品を味わって下さい。 続きを読む投稿日:2013.10.30