naotanさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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人質の朗読会
小川洋子 / 中公文庫
読み終えるのが惜しくなる、死者の朗読会
26
南米を旅行中にゲリラ事件に巻き込まれた8人の人質。その全員が死亡してしまうというショッキングな事件からこの物語は始まります。
やがて発見された朗読テープにより、この世にもう存在しない彼らの人生が明かさ…れます。
欠けたビスケットをベルトコンベアーから拾い上げる仕事をしている製菓業の女性、談話室で開かれる奇妙な集会に足を運ぶ男性、片目の老人が作るぬいぐるみに心惹かれる少年、それぞれの話はどれも幻想的で美しいのだけれど、それらが死者の声によって語られているというシチュエーションが、物語の緊張感と神秘性を一層引き立てます。
最後の一人が語り終えるその瞬間まで、どっぷりと小川洋子の世界に浸れる一冊。 続きを読む投稿日:2014.04.21
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神々の山嶺(上)
夢枕獏 / 集英社文庫
血わき肉おどる山岳ミステリー
21
「そこに山があるからさ」
登山に縁のない人でも知っている、有名なこのセリフ。イギリスの登山家ジョージ・マロリーは、エベレストの頂上を目指して出発したきり、帰らぬ人になりました。
果たして彼はエベレスト…に登る途中で死んだのか、それとも一度は頂上に辿りつき、下山途中で事故にあったのか?
エベレスト登山史上最大の謎を解く鍵を、日本人のカメラマン深町誠は見つけますが、せっかく手に入れたものの盗まれてしまい・・・
一度は日本に帰国したものの、諦めきれない彼は再びネパールの地を踏むことになるのです。
謎を追いかけるうち、いつの間にかエベレストの魅力に引き込まれる上巻。ドキドキハラハラしながら下巻に続きます。 続きを読む投稿日:2015.03.17
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神々の山嶺 上
夢枕獏 / 角川文庫
血わき肉おどる山岳ミステリー
17
※ハード版のレビュー再掲です
「そこに山があるからさ」
登山に縁のない人でも知っている、有名なこのセリフ。イギリスの登山家ジョージ・マロリーは、エベレストの頂上を目指して出発したきり、帰らぬ人になりま…した。
果たして彼はエベレストに登る途中で死んだのか、それとも一度は頂上に辿りつき、下山途中で事故にあったのか?
エベレスト登山史上最大の謎を解く鍵を、日本人のカメラマン深町誠は見つけますが、せっかく手に入れたものの盗まれてしまい・・・
一度は日本に帰国したものの、諦めきれない彼は再びネパールの地を踏むことになるのです。
謎を追いかけるうち、いつの間にかエベレストの魅力に引き込まれる上巻。ドキドキハラハラしながら下巻に続きます。 続きを読む投稿日:2015.10.01
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黄昏に眠る秋
ヨハン・テオリン, 三角和代 / ハヤカワ・ミステリ文庫
孫を失った老人の、決死の推理が光る!
15
深い霧に包まれたある日、幼い少年が失踪しました。それから数十年後、少年の靴と思われる品が届けらます。少年は、送り主の手によって殺されたのだ――!
そう確信したイェルロフ爺が、娘を呼び寄せて事件の究明に…乗り出します。
物語は、少年が最後に会ったと思われる人物、ニルス・カントの半生と、彼の周辺を探るイェルロフ爺の足取りを交互に行き来しながら真相に近づいていきます。
ミステリの常として、容疑者のほかに真犯人がいるに違いないと睨むのですが、それは誰か? 何故少年は殺されたのか?という謎が最後までつきまとい、驚愕の事実まで実に読み応えのある一冊でした。 続きを読む投稿日:2015.02.04
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罪と罰 上
ドストエフスキー, 江川卓 / 岩波文庫
ナポレオンになれなかった少年
15
引きこもりの大学生が殺人を犯し、自首するまでの物語。今なら一時、新聞の三面記事を賑わして忘れ去られるような事件も、ドストエフスキーの手にかかるとあら不思議、何とドラマチックな大作に仕上がることでしょう…。
主人公のラスコーリニコフは自分が選ばれた特別な人間であると思い込み、虫けらのように蔑んでいる老女を殺します。そして、運悪く居合わせてしまった老女の妹を巻き添えにしながら、まんまと逃げおおせるのです。良心の呵責など、つゆほども感じません。
一方では行きずりの家族のためになけなしの金をはたく、やさしい心を持ち合わせながら、どうしてそんなことができたのか?
上・中・下巻にわたる長編ですが、物語の中に入り込めば、意外とさくさく進みます。
実は手塚治虫の『罪と罰』を読んでいましたが、原作にはその後の話も描かれていて、このエピローグをもって『罪と罰』の完結と言えるのだと思いました。読後感が何とも良いです。 続きを読む投稿日:2015.04.07
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宇宙の戦士
ロバート・A・ハインライン, 矢野徹 / ハヤカワ文庫SF
名作は色褪せない
14
何の予備知識もなく、戦闘シーンばりばりの宇宙戦争モノかと思って読み始めたら、全く違う世界が広がってました。
物語の大半は軍部の生活や訓練について描かれるのですが、過酷な日々の中にもユーモアやジョークが…あふれており、まるで男子校の学園ドラマのよう、と言ったら本書のファンに怒られるかもしれません。
戦争とは、祖国とは、市民とは、といった命題の、やや説教くさいところも含めて面白く、不朽の名作です。 続きを読む投稿日:2013.10.26