ryunicoさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
三上延 / メディアワークス文庫
古書店を舞台にしたミステリ
5
全部で4話の短編が収められていますけれど、基底に一本大きな流れがあり、最終話で一段落つく……という長編と短編の両要素を備えた構成になっています。
第一話で古書の鑑定依頼をした客・五浦大輔がそのまま狂言…回しとなり、栞子の安楽椅子探偵をサポートする流れになります。
各章ごとにテーマになる古書があり、栞子によってその作品について解説されるものの、該当本のネタバレはしないよう配慮されている点は好感度大。
もちろん、その作品を知っている読者は二度美味しいことになるので、「古書を巡るミステリー」という切り口が最大限に活かされていると思います。
また、せどりなどの古書ならではのモチーフ使いも上手いです。
古書店という舞台効果をいかんなく発揮している反面、事件の真相の一つ一つが少々後味悪く、通読すると妙な苦みが残ります。
大輔と栞子の恋心未満みたいなハートウォーミングなやり取りもあるのに、読み終わった後「ほのぼの、すっきり」といった気分になれない……。
「町の片隅で起こる日常の不思議を解き明かす」系ミステリーかと思っていたので、悪い意味で予想外なストーリーでした。 続きを読む投稿日:2014.04.19
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イノサン 1
坂本眞一 / 週刊ヤングジャンプ
圧倒的な作画
5
代々続く死刑執行の家業を継ぐことに戸惑いを隠せないシャルルが、やがて家業を継ぎ、4代目として成長していく物語です。
ヨーロッパでは死刑執行は出店も並ぶ一種の見世物でしたが、一方でその当事従業者はこれほ…どまでに忌み嫌われるのか、という群衆の身勝手さがよくわかります。
あと死刑のやり方のために人体に精通する=医業として地域還元、というのも目から鱗でした。
必要職でありながら世間への知識還元を通じて地域に根差すあたり、本当に業の深い仕事です。
死刑執行(およびそれに付随する拷問)がこれでもかと繰り広げられるので、どう頑張っても明るい物語とは言えませんが、引き込まれる吸引力あるタイトルです。 続きを読む投稿日:2014.05.14
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つらつらわらじ(1)
オノ・ナツメ / モーニング・ツー
『参勤交代』を舞台にした群像劇
4
岡山藩熊田家当主・治隆の参勤交代道中を舞台にした、武士の群像劇です。
語りの中心となるのは供家老に選ばれた家老職4ヶ月目の新人・和泉ですが、型破り藩主の治隆や岡山に残ったの家老たち、そして道中に紛れ込…んでいる幕府老中の密偵など、さまざまな人物がそれぞれの思惑で動くさまを描いていきます。
プロットのしっかり練られている安全運転ストーリーテリングはもちろんのこと、なにより画面構成センスがずば抜けています。
コマ割りなどを見ると、浮世絵を思わせるカットも多く、かなり練り込んだ構図も楽しめます。
ただ、このシリーズはキャラクターが3頭身パターンで描かれるので、オノ・ナツメさんの絵柄を見慣れてないと、冒頭あたりキャラクターの見分けがつきにくいかも……。
(なお、4巻に登場する鳥人幸吉のエピソードが気になる方には、飯嶋和一さんの『始祖鳥記』をお勧めします。) 続きを読む投稿日:2014.04.05
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神様がうそをつく。
尾崎かおり / アフタヌーン
ヘヴィなテーマを透明感でくるんだボーイ・ミーツ・ガール
4
あらすじから予想するよりも、ヒロイン・理生の抱える秘密は重いです。
それを知ってしまった主人公・なつるは理生を守るため、自身のできる精いっぱいで頑張ります。
さらっとした絵柄や透明感あるネームのおかげ…でさらさらと読めてしまうものの、
それはあくまで上澄みであって、ちょっと身を倒すと暗い深淵を覗いてしまうような話でした。
適度に世間が分かり行動力もあるけど、それでもやっぱり子供でしかない「11歳」って年齢設定も上手いと思いました。
読後感はいいので、尾崎かおり作品の入門としてもいいかもしれません。
ただ全きハッピーエンドではなく、晩夏を思わせる切なさを余韻として噛みしめる内容なので、その点だけ注意。 続きを読む投稿日:2014.09.26
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犬はどこだ
米澤穂信 / 創元推理文庫
落とし方が米澤節
4
犬探し専門調査事務所を開業したはずだったのに、なぜか舞い込んだ依頼は古文書解読と失踪人探し。
高校時代の先輩後輩の男二人組が手分けして調査にあたるわけですが、無関係と思われた地味な依頼がリンクし、やが…てのっぴきならない状態へもつれ込むあたりは、安定のストーリーテリングです。
途中で「オチが見えたかな~これ」と思ったら、最後の一撃にやられました。
あれで一気に後味が悪くなって(褒め言葉です)、物語が引き締まりました。
途中から物語も一気に加速しますし、米澤作品を初めて読む方でも入りやすい一冊かと思います。 続きを読む投稿日:2014.04.05
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娚の一生(1)
西炯子 / 月刊flowers
西炯子が描く男の色気
4
五十代の大学教授と三十路半ばを過ぎた独身キャリアウーマンのまったり恋愛話ですが、ほどよくファンタジーで読みやすい。
そもそものシチュエーションが非現実的だと言ってしまえばそれまでなんですが、主人公つぐ…みの悩みがいやに現実的なので、そのあたりでバランス取っている感じでしょうか。
というか、片思い歴が長いはずの海江田なのに、いやに恋愛経験値が高いのも……。
あの突き放した物言いと包容力ある振る舞いとスマートな行動力のトリプルコンボは、強烈です。
それにしても、西さんの描く恋愛ものは不倫ネタが混じること多々なのは何故なんでしょう……。 続きを読む投稿日:2014.04.06