ryunicoさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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月刊少女野崎くん1巻
椿いづみ / ガンガンONLINE
実はけっこう「漫画あるある」
5
男子高校生でありながら少女漫画家である野崎くんを中心にした4コマ漫画集です。
野崎くんへ片思い中の同級生・千代ちゃんが突っ込み役ながら、実は恋愛要素は少ないです。
むしろ同級生(兼アシスタント)な周辺…キャラとのどたばたなやり取りを楽しむタイトル。
漫画描いたことがある人なら「ああ! あるある」となるネタも結構ちりばめられていて、
高校生活ネタだけでないのも楽しめるポイントでした。 続きを読む投稿日:2014.01.19
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神無き月十番目の夜
飯嶋和一 / 小学館文庫
超ド級に面白いけれど、重い
5
慶長七年、常陸国の小生瀬にて、村人約三百人が一斉に消えた。
この地へ派遣された大藤嘉衛門は、囲炉裏の灰やお供え餅の様子から数日前までは確かに村が機能していたことを確信する。
そして地元民から聞き出した…山道にある「カノハタ」で、遂に夥しい数の死体を発見した。
果たしてこの村で一体何があったのか―――といった出だしです。
導入こそミステリー仕立てなものの、それ以降は完全な歴史小説です。
出だしで既に語られた通り、結末は文字通りの村民皆殺し。
これは一言で言うと、一揆の物語です。
ただ一揆の理由が税率の高い年貢に不満だから~というような、時代劇でよくあるタイプのパターンではなく、戦国時代の名残を色濃く残した半農半士の土豪蜂起による新体制(=江戸幕府)への反発的カラーも含んでいるところが異色。
一方、読み進めるほど、こちらの胸はどんどん重くなります。
全ての条件が悉く悪い方へ悪い方へ転がっていくので、まさに奈落へ落ちていくように小生瀬の運命が定まるのを見るのが辛いです。
でもストーリーテリングが絶妙で、先が気になって仕方ない展開であることも事実。
正史では語られない史実を掘り起こし、それにここまで迫真の肉付けを施した物語に呆然となった一冊です。 続きを読む投稿日:2014.04.05
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豚飼い王子と100回のキス
海野つなみ / Kiss
海野版童話はハッピーエンド
5
原作のアンデルセン童話は未読のまま手を出しましたが、きれいに最後が収まって読後感のいい一編でした。
あとがきで「ポルノ」と書かれていましたが、ポルノという言葉からイメージされる雰囲気は感じませんでした…。
むしろ硬質で乾いた絵柄の作家さんのため、ベッドシーンもさっぱりしたものです(むしろキスシーンの方が色気があります)。
S気質で行動力ある王子と世間知らずのツンデレ王女のラブストーリーが、海野さんの静謐かつスマートなストーリーテリングで上質な童話に昇華した一作です。 続きを読む投稿日:2014.04.27
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ラギッド・ガール 廃園の天使II
飛浩隆 / ハヤカワ文庫JA
〈数値海岸〉を外側から覗き込む中短編集
5
前作『グラン・ヴァカンス』は〈数値海岸〉という仮想リゾートの一区画〈夏の区界〉の崩壊を描きましたが、今作『ラギッド・ガール』ではその外側を描き、『グラン・ヴァカンス』を補完する構成になっています。
…〈夏の区界〉のジュリーとジョゼの交流を描いた『夏の硝視体』が全体のイントロ。
続いて、〈数値海岸〉開発秘話である『ラギッド・ガール』。
仮想リゾートのAIへ仕込まれた“潜在的恐怖”について触れる『クローゼット』。
〈数値海岸〉に訪問者がなくなった〈大途絶〉――その理由と、〈大途絶〉が発生した瞬間の区界を描いた『魔術師』。
最後に、〈夏の区界〉を襲ったランゴーニの少年時代の物語『蜘蛛の王』。
仮想世界に始まり、その外側の物理世界の動きを時系列で走り、最後にまた仮想世界に戻る章立ても、純粋に面白かった。
時には『グラン・ヴァカンス』を上回る残酷さなのに、区界はおしなべて皆美しいし、物理世界は適度にサイバーパンクだし、SF小説を満喫しました。
まさに情報的似姿がそれぞれの仮想世界で蓄積した情報をロードさせたような読後感でした。 続きを読む投稿日:2014.04.05
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ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~
三上延 / メディアワークス文庫
古書店を舞台にしたミステリ
5
全部で4話の短編が収められていますけれど、基底に一本大きな流れがあり、最終話で一段落つく……という長編と短編の両要素を備えた構成になっています。
第一話で古書の鑑定依頼をした客・五浦大輔がそのまま狂言…回しとなり、栞子の安楽椅子探偵をサポートする流れになります。
各章ごとにテーマになる古書があり、栞子によってその作品について解説されるものの、該当本のネタバレはしないよう配慮されている点は好感度大。
もちろん、その作品を知っている読者は二度美味しいことになるので、「古書を巡るミステリー」という切り口が最大限に活かされていると思います。
また、せどりなどの古書ならではのモチーフ使いも上手いです。
古書店という舞台効果をいかんなく発揮している反面、事件の真相の一つ一つが少々後味悪く、通読すると妙な苦みが残ります。
大輔と栞子の恋心未満みたいなハートウォーミングなやり取りもあるのに、読み終わった後「ほのぼの、すっきり」といった気分になれない……。
「町の片隅で起こる日常の不思議を解き明かす」系ミステリーかと思っていたので、悪い意味で予想外なストーリーでした。 続きを読む投稿日:2014.04.19
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ゴーストハント(1)
小野不由美, いなだ詩穂 / なかよし
黄金コンビ、さすがのホラー
5
原作は小野不由美さんの『悪霊シリーズ』です。
スーパー・パーフェクトなナル(渋谷少年の愛称)と麻衣を中心に、高野山の元坊主や自称・巫女さん、神父や霊媒師の少女など、個性溢れるメンバーで数々の心霊現象に…挑む連作集です。
最初は絵がこなれていなかったり、主要メンバーの顔見せのニュアンスがあったりで、正直それほど人気のワケが理解できなかったんですが、2巻(『人形の家』)以降から俄然面白くなりました。
第1話のニュアンスでは、ホラーと科学の螺旋構造なのかな~と思ったんです(科学で説明できるとこ
ろはきっぱりケリをつけるが、心霊現象の不思議も残る……というスタイル)。
ですが予想は裏切られ、第2話以降は完全にホラーになりました。
特に『血ぬられた迷宮』(6巻~)あたりは最高潮にホラーではないでしょうか。
「ゴーストハント」シリーズのホラーの特徴として
・ 箱物の中で事件発生
・ この箱物の中にいる人が一人、二人……と消失する
・ その空間には下手をすると生存者の数よりも多数の霊が存在する
・ 箱物の中だから、逃げられる場所が限られている
などが挙げられます。
読者の恐怖心を煽るポイントが結構明確です。
全巻通して読むことにより、シリーズの根底に流れる大きな謎が解明される展開も見事。
表紙絵から単なる少女漫画だと敬遠されているとしたら、とてももったいない力作シリーズなので、ホラー好きな方へ大いにお勧めします。 続きを読む投稿日:2014.04.06