
ルルとミミ
夢野久作,戸田健
青空文庫
悲しく残酷なのは夢野作品だから
美しい物語の中に昔の社会の通念や価値観がちらりと見える。それにしても昔の人の言葉づかいはきれいで心が安らぐ。
0投稿日: 2014.08.05
O嬢の物語
ポーリーヌ・レアージュ,澁澤龍彦
河出文庫
想像力がふくらむ
前から読んでみたいと思っていたが、思いのほか長くて手こずった。もう少し娯楽性があるなら軽かったけど、哲学的でもあり、途中で”なんだかなぁ”と食傷気味になって疲れた。1950年代発表当時はこれはセンセーショナルだっただろう。自分には誰かの所有物になって思いどおりになり愛を得るなんて理解できない。自由や自我に対する考え方は欧米人と日本人では異なるので、小説に関する感じ方もまた違うのだろう。
0投稿日: 2014.08.05
ナルミさん愛してる その他の短篇
山川直人
月刊コミックビーム
泣けます
せつない純愛物語。好きな人の幸せを願うのが本当の愛。教えてくれたのはぬいぐるみのカエル「ドミノ」でした。
1投稿日: 2014.07.28
タルト・タタンの夢
近藤史恵
東京創元社
下町の商店街にある小さなビストロ
連作短編集だった。七つの小さな事件を限られた情報をもとにシェフが解決する。おもしろかった。ミステリーの部分はちょっとピンとこなかったものもあったが、全体的に雰囲気の楽しい、いいお店に自分もいるように思えた。お料理はもちろんのこと、従業員たちも魅力的。たくさんフランス料理とお菓子の名前や用語を覚えた。続編も読みたい。
2投稿日: 2014.07.19
いちば童子
朱川湊人
文春文庫
大阪ことばがかわいらしい!
企業のWEBサイトに掲載された、香りをテーマにした朱川テイストを満喫できる小品。いちばは「市場」のこと。いい匂い、景気のいい掛け声のあふれる商店街ってほんとうにいいものだ。私が子供の頃も、買い物に行くことを「市場に行く」って言う大人がいたことを思い出す。商店街を歩いたら、鼻の頭にほくろのある少年を探しちゃうかもしれない。
3投稿日: 2014.07.04
百万の手
畠中恵
東京創元社
ずいぶんたくさん人が死ぬ
なるほど百万の手が求めていたものとはそれだったのか。うすら寒いような様々な欲望やら信条やらが渦巻いて、大きな悲劇を生んでしまった。それにしても中学生が主人公のわりには展開がハードボイルド過ぎないか?ホストあがりの義理の父がいい味出していて、二人の距離が縮まる様子が微笑ましかった。「しゃばけ」の作者とは思えない作風の変化。いろんなものを書ける作家なのですね。
0投稿日: 2014.07.04
奇談蒐集家
太田忠司
創元推理文庫
同じパターンで畳みかけ、最後は。
構成がおもしろいです。奇談蒐集家が出した広告に応募してきた客が、自分の体験談を語り、ほほうと感心すると助手がつっこみをいれて謎解きをするという形式が続き、最後にちょっと変わり種が出ます。夢に出てきそうなお店です。お話の中では「不器用な魔術師」が気に入りました。
0投稿日: 2014.07.04
鉄道員(ぽっぽや)
浅田次郎
集英社文庫
『角筈にて』にじーんときました
表題作『鉄道員』がやはり秀作。でも私は『角筈にて』が一番感動した。中年男性に人気らしいけど私はこれが好き。この短篇は東京の新宿あたりの古い地名が懐かしくて、それが感情を盛り上げる。『ラブレター』はあざとくて好きじゃない。中国人売春婦は日本人に感謝なんてしない。たどたどしい日本語がわざとらしくて白けた。『オリヲン座からの招待状』もノスタルジック。『うらぼんえ』は話としてはつらいんだけど、登場人物に魅力を感じる。さすがにどの短編も文章はすばらしくて、安心して読める。
0投稿日: 2014.03.26
ホテル・アイリス
小川洋子
幻冬舎文庫
それでも美しい
登場人物がみんな変態。それでも美しい小川ワールドです。海辺のホテルで働く少女と島に住む翻訳家のSM話は、水にまつわるエピソードでじっとり、しっとり運ばれていきます。読後、どうしてこんなに哀しいのかと、自分の心も不思議に思われます。
2投稿日: 2014.02.27
土曜夫人
織田作之助
青空文庫
退廃的だけど魅力的
唐突に終わったかと思ったらなんと遺作で未完とは。それでもおもしろかった。偽酒、ヒロポン、ダンサー、売春婦と、昭和21年という殺伐とした暗い世相なんだけど、読むうちに個性あふれる登場人物たちに愛着がわく。本当に淋しがりやばかりでどうしようもないが、愛おしささえわいてくる。ずっと前に「夫婦善哉」読んで、あんまり興味わかなかったのだけど、オダサクさんをもっと読んでみようかなと思った。文章がとても緻密で、それでも難解ではなく、よく読むととても美しい。電子書籍で好きな表現に線をひきながら読んだ。
0投稿日: 2014.01.19
