
猫除け 古道具屋 皆塵堂
輪渡颯介
講談社文庫
だんだんおもしろくなってきた
災害にかけがえのない家族や友人を奪われ、ご遺体も見つからないってどんなに悲愴な思いだろう。そんな時に死者の姿を見られる太一ちゃんがいればいいのにと思う。今回の主役は親戚と妻にだまされて母も財産も故郷も失った庄三郎という若者だった。もちろん太一ちゃん、峰吉ちゃんの活躍も楽しい。魚屋の巳之助も熱くてなかなか魅力的だ。そういえば彼らはみな孤独の中で生きて来た人たちなのだ。その強さとしなやかさが不幸な若者を立ち直らせる様子が読みどころ。 丑の刻参りとお百度参りととり違えてるよ・・・って笑ってしまった!
3投稿日: 2014.11.28
空を見上げる古い歌を口ずさむ
小路幸也
講談社文庫
想像以上に感動しました
この街は北海道に実在するらしい。もちろん話は架空だけれど。空を見上げて口ずさむ古い歌といえば何だろう?やっぱりあれですね。単なるノスタルジックミステリーではなく深く寓意性に満ちた話でした。70年代に子供時代を生きた者としてはとても楽しめる一方、後半は世の中で変わっていってしまう人間の宿命や過酷さを痛感させる深い内容だと思います。デビュー作でこれだけ読ませるとはみごとです。この著者の力を感じました。もちろん私は「東京バンドワゴン」しか知りませんでした。
3投稿日: 2014.11.14
身も心も 妻は、くノ一 3
風野真知雄
角川文庫
ますます面白くなってきました。
とてもロマンティックな話です。事実を知らずに妻の手作りのおせち料理を食べるくだりは、じーんときてしまった。手習い所の子供たちもいい脇役として活躍しています。織江はとても魅力的。いろいろ事情がわかってきて不安がつのります。読んでいるほうもハラハラ。「はまぐり湯」「人形は夜歩く」が面白かった。各章が無関係のようで繋がっているので、ちょっとした脇役でもあとでひょっこり出てきて油断ならない。刀がなくても、とてもよく切れる頭脳と丈夫な体がある!彦馬がんばれー!と応援したくなる。続き読みたい。止まらない。
1投稿日: 2014.11.10
古道具屋 皆塵堂
輪渡颯介
講談社文庫
ちょっとしたどんでん返しもあり。
たしかに昔の骨董品は何か名状しがたい雰囲気を持つものがある。誰かが毎日使っていたものなのだから、念が移って物にも魂が宿ってもおかしくないかもしれないと思う。短編五編。ファンタジー色は薄く、文章はどれもすっきりしていてとても好きだ。「その娘はやめておけ」は特に面白かった。「猫屋敷に棲むもの」では主人公の秘密が語られ、胸がつまった。これで終わりはないでしょう。続きが読みたい。
2投稿日: 2014.11.07
星影の女 妻は、くノ一 2
風野真知雄
角川文庫
もどかしさがページをめくります
いらいらする。すぐそばにいるのに!織江の心もだんだんと変わっていっているみたい。彦馬がなかなか鋭く謎解きしていくだけでなく、手習い所の師匠としての彼の教育論がすばらしい。星を見ては彼女を想う彦馬を応援したくなってきた。織江危機一髪!で第二巻の終わり。ほんとうは強いんだけどね、彼女。
0投稿日: 2014.11.03
妻は、くノ一
風野真知雄
角川文庫
評判どおりおもしろい
ひっぱりますね。これじゃ第二巻を読まないわけにはいかない。お家にも立身出世にもこだわらない天文青年。主人公は情けないけど情熱も魅力もある人でした。すっかり物語に入り込み、一緒に旅をした気分。長崎から江戸までなんて、かなりの距離を旅して来る昔の人はすごい。今と違って西と東では異国のようになにもかもが違っていたんだろうな。つづき読みたい。
1投稿日: 2014.11.01
東京バンドワゴン
小路幸也
集英社文庫
楽しく切ない大家族
有名なベストセラーを初めて読みました。とてもおもしろい。日常の謎とじんわり心温まる人間模様がうまくいっしょになってドラマを織りなしている。語り部のおばあさまのユーモラスで優しい感じもいいし、登場人物たちは個性的。大家族や濃厚な人間関係が昭和っぽいところがノスタルジーなのかも。古書店の名は「東亰バンドワゴン」というのですね。終り頃気づきました。
2投稿日: 2014.10.11
江戸川乱歩傑作選
江戸川乱歩
新潮社
愛読書中の愛読書
何度読み返したかわからないくらいの再読。心理試験とD坂と人間椅子と二銭銅貨が読みたくて開いたが、結局昨夜ぜんぶ読んでしまった。蔵書の文庫はISBNが同じなのでこれなのだが、表紙は全然違う。赤&黒で鎖と指紋と鍵のデザイン。「五軒町正直堂からおもちゃの札を受け取れ受取人の名は大黒屋商店」 デビュー作とは思えない完成度で、ただものではないという雰囲気を醸し出している。昭和初期の他の作家のミステリーも、現代の乱歩賞受賞作も、いろいろ読んだけどここに戻ってくる。
4投稿日: 2014.10.08
耳袋秘帖 妖談うしろ猫
風野真知雄
文春文庫
はじめての風野作品でした
お里の尺八は、安寧を得た後には人々を魅了した力を減弱したらしい。人はみな悪の匂いに魅力を感じるということか。ヒーロー根岸様もけっこう「ワル」だし。少女尺八吹き、うしろ猫、虚無僧、サディスト与力、若旦那の謎の言葉、とちりばめられた伏線が最後に一気に回収。とてもおもしろかった。また追いかけたいシリーズができてしまった。うれしい!
1投稿日: 2014.10.06
少女
連城三紀彦
光文社文庫
さすがです
官能小説のようですが、文学的な格の高い表現はさすがです。ストーリーの展開も面白い。どんでんがえし、というより視点の転換が気持ちがいい。
2投稿日: 2014.08.19
