Reader Store
くっちゃね村のねむり姫さんのレビュー
いいね!された数863
  • すごい科学論文(新潮新書)

    すごい科学論文(新潮新書)

    池谷裕二

    新潮新書

    とても興味深い雑学がわんさか。すごい本ですよ。

    専門外の論文なんて読んで理解できるのかなと思っていましたが、そんなことは全くの杞憂でありました。  本の構成としては、こんな論文があって、その論文ではこんなことが解明されています。といったスタイルです。論文における論の中身を詳しく説明されたら、素人の私にはちんぷんかんぷんとなりますが、その美味しいところだけを紹介してくれていました。  ジャンルは、実に多岐にわたっています。アルツハイマー病から始まって、宇宙人まで、一つ一つの話は短いので、スキマ時間にちょいと読むには最適な、出典は全て論文からのトリビア集でありました。

    0
    投稿日: 2026.07.02
  • 生殖記

    生殖記

    朝井リョウ

    小学館

    とても面白い視点からの小説。でも本当に言いたかったのは?

    読む前は、ウッディアレンのある映画の中の「ミクロ精子圏」みたいな話かな?と、思っていましたが、全く異なっていました。  性的マイノリティーについて、あるいは生き物の性について、面白い視点から洞察しているような小説ですが、その内容には難しさも深刻さも感じませんでした。物語としてとても面白いものでありました。  しかしひょっとすると、マイノリティーに対する差別について一言言いたいというよりも、世界いや世間の?大きな流れに対して、もの申す、といった感じなのかなと思いました。  同性愛者に対し、「生産性」がないと発言して物議を醸した人もいましたけど、この感覚自体に著者は違和感を感じています。生産性、効率化、あるいはコスパ?それを猛ダッシュで追求しているのが、現代社会です。  でも一方で、もうこのまま走り続けることなんてできない。つまり、このまま発展していくことだけを目標にしていて大丈夫なのか?誰しも疑問を持っていることです。少子化が国レベルでは問題になってますが、世界の人口は微増ながら増え続けており、地球のキャパがいつまで持つかは不明です。地球規模では人口増加の方がよほど問題です。映画「LION/ライオン ~25年目のただいま~」は、親とはぐれてしまったインド人の子供がオーストラリア人夫妻の養子となって25年後に本当の両親と再開する話でありましたが、このオーストラリア人夫妻は、あえて自分達の子供を持たず、孤児達を引き取って育てるという活動をしているとのことでした。  温暖化については地球規模で憂慮するにもかかわらず、人口については自国のみのことを考えている?  そして、資本主義に基づいて自由に経済活動をしていけば、格差はどんどん広がっていくでしょう。一泊何百万円の宿に泊まるようなスーパーリッチがいる一方で、今日の食事にも困っている人がいるのが現実です。  生産性を求め、効率化を求め、その代わりに、いかに我々は多くのモノを失ってきたことか。  ではどうするか?これが本当の問題なんですね。

    0
    投稿日: 2026.07.02
  • エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層

    エマニュエル・トッドで読み解く世界史の深層

    鹿島茂

    ベスト新書

    話題のエマニュエル・トッド、入門書として最適でしょう

    少々書かれた時期が古いのが残念ではありますが、トッドが称える4つの家族類型は本来的なモノなので、、全てがなるほどと思えるものばかりでありました。鹿島茂氏の説明はとてもわかりやすく、この人の博覧強記にはいつも驚かされます。  なぜ人口が減っていく国がある一方、人口が増えていく国があるのか?人口が減っていく国にとっては、国としては確かに問題ではありますが、地球規模で考えれば、人口が増えていく国がある方が大問題であることは、皆わかっています。しかし、この本を読むと、増えていく人口を止めることは残念ながら出来ないのかなと思います。ぜめて私の生きている間、地球が保ってくれれば良いのですがね。  また、この本の後半部分では、日本についてトッドの理論で解説を試みています。これがまた至極納得のいくものでした。  昨今は地政学によって世界情勢を解説するものも多いですが、それとこの家族類型を組み合わせれば、もっと詳細な分析になるでしょう。とは言え、それをもってしても、この混乱極まる世界情勢を平和な状態にする方法が果たしてあるのか?それは正に「風の中」なのかな。

    0
    投稿日: 2026.05.30
  • 五葉のまつり

    五葉のまつり

    今村翔吾

    新潮社

    豊臣政権における五奉行のイベントプロデュース奮闘記

    歴史の教科書では、大茶会であるとか、醍醐の花見とか、刀狩りや太閤検地も、ただ一言、出来事としか紹介されないけれど、考えてみれば確かにその実施にはとんでもない苦労があったのでしょう。実際、部下達は大変だったでしょうねぇ。  正直言って検地の説明における数学?を駆使した解説は文章だけでは良くわかりませんでした。でも、伊達政宗との対決は面白かったです。  秀吉の無理難題の提案に対して、三成を中心とした五奉行、そのバックグラウンドも性格も全く異なる5人が奮闘する様は、勿論フィクションなのでしょうが、とても興味深いものでありました。私自身は技術系の公務員でありましたが、愛知万博の前に、とあるイベントを企画運営をしたことがありました。イベント会社に外注する予算などあるはずもなく、市と相談しながら全くの自前で企画しました。開催するまで何も言わなかった上司から「大成功じゃないか」と言われたことを思い出します。自分でもこんなことが出来るとは思ってもいませんでしたけどね。  五奉行の場合は、失敗が命に関わってきますから、それは大変だったでしょう。読みごたえがありました。  一方、くすっと笑える部分もありましたよ。それは、三成が千利休の容貌を称して、「重たい一重瞼に、顔の半分を占めるのではないかという大きい鼻、親指を二つ並べたような厚い唇と、その顔貌は奇相の部類に入るであろう。」ま、あの肖像画を見れば、なるほどと思うわけですが、そう記述した後、「だが微笑を浮かべると、顔全体から灰汁が抜け、何処か涼やかにさえ見え、嫌っている己でも、妖しい魅力を感じる。」う~ん、そうだったのかもしれませんね。  それから三成の「三献の茶」言われる有名な話。江戸時代に作られた逸話と聞いていましたが、この物語で書かれているのが真相だったのでしょうかね?私自身は、突然やって来た秀吉に対して、急いで沸かしたお湯で早く早くと急かすから、熱くないお茶を出し、もう一杯、もう一杯というので、なんてズーズーしヤツだと段々小さい茶碗で出したと思ったりしていましたよ(笑)  そして物語上では、当然、時折、大谷刑部が登場します。歴史にイフは禁物でありますけど、もし彼が病気になっていなかったら歴史は変っていたかもしれませんね。  それにしても、まつりは「祭」であり「政」なんですな。

    0
    投稿日: 2026.04.30
  • 優しい音楽 <新装版>

    優しい音楽 <新装版>

    瀬尾まいこ

    双葉文庫

    こんなことがホントに?って事がさりげなく語られる短篇集

    「優しい音楽」というのは、短編の内の一つです。この一作目の物語は当初から、そんなことじゃぁないかなぁと思いながら読み進めました。奏でられた音楽は、ティアーズ・イン・ヘヴンでありました。出会いは普通じゃない?かもしれませんが、優しい触れ合いが描かれます。  次の一作は「タイムラグ」。不倫相手の子供と愛人との心の交流?これはそんなことを画策する男には感情移入が出来ないなぁ。  「がらくた効果」は、何でも拾ってくる女性が、なんとおじさんを拾ってきてしまうという、まさにこんなことするかなぁ。と思うような内容でありました。  優しい言葉で書かれているので、すぐ読めますが、何とも不思議な感覚に陥ります。これが瀬尾まいこ効果なのでしょう。

    0
    投稿日: 2026.03.29
  • 叫び

    叫び

    畠山丑雄

    新潮社

    銅鐸、聖、過去そして今の日本。様々なものが交錯するパロディ?

    もう一つの芥川賞である「時の家」よりは、はるかに読みやすい小説ではありました。  聖は、今でいう生活保護者だというのも、面白い指摘です。ただ、生活保護者は医療費は無料でも、入院に際する食事代等の費用である入院費は自己負担だから、安易に入院はできないと思うけどなぁ。また、このような生活をしている人に、公が講師を頼むかな?それだけ銅鐸づくりの技術が優れていたということでしょうか。  それから、昔の万博のチケットを万博協会に送ったら交換できるということは全く知りませんでした。物語では、1970年の大阪万博ではなく、日中戦争で幻となった紀元2600年記念のチケットとの交換でした。調べてみると、実際に交換した人が前の大阪万博や愛知万博でいらっしゃったそうな。粋なことをやりますね。  過去の日本の暗黒?歴史からの思い、一方、現在に生きている人の思い、それが叫びとなるのかな?それがタイトルの由来かなと考えていました。  読み終えてから、芥川賞の選評を読むと、これをパロディと称していたのは平野啓一郎氏、川上未映子氏等。そっか~、これはパロディだったんだ。一方、島田雅彦氏は面白いことを言っておられて、西日本出身者の選考委員には受け、東日本出身者にはイマイチという傾向があったとのこと。う~ん、私は愛知県出身で在住です。微妙な線ですな。

    0
    投稿日: 2026.03.07
  • 時の家

    時の家

    鳥山まこと

    講談社

    これは住居不法侵入罪じゃない?そもそもこの青年は何者?

    私の家は、今は亡きオヤジとオフクロが一生懸命貯金して、もう50年以上前に建てた家です。その後、少々の増築とリフォームはしておりますけどね。引っ越ししたのは、ちょうど私が中学生になる時で、まだ妹は小学生でした。間取り等については、土木技術者でもあったオヤジがかなり詳細な図面を大工さんに示したようです。今の木造建築は、プレカット工法が主流でしょうが、その頃はそうではありませんでした。だから今はどうだかわかりませんけれど、この小説の冒頭部分に書かれてあるような家の出す音については、ハッキリと記憶しています。いつのまにやらそんな音はしなくなりましたが、当初、夜よりも昼間、ビシッという音はよくしました。それは木材が乾燥する音だというのはわかりますけど、不思議だったのは、2階から1階にかけて、まるで壁の中をピンポン球が転がるように、コロコロコロコロという音がよくしたことです。その音がするとなぜか可笑しくて、家族で笑いあったものでした。そんなわけで、小説の冒頭部分を読んだときに、ふと懐かしく思い出しました。  さて、小説の方ですが、芥川賞の選評には、最初はとっつきにくいとか、読むのが苦痛だった、と指摘されている方がおられました。私にとっても、とても読みづらいものでした。それはおそらく、過去と現在との時空をまたがって書かれており、いま記述されている内容が、果たして誰の心情を物語っているのかが、よく把握できなかったことにあると思います。勿論、私の読解力の問題なのでしょうが。ただ、詳細にわたる描写はさすがだなぁとも感じました。  家というのは、そこに棲まう人の生き様が染み入っているというのは、よ~くわかりますし、自ら設計し、思い入れたっぷりに制作した家だった藪さんにとっては、なおことでしょう。その思いが詰まった家に次に住む人にも、やはり何かしら感じるものがあるというのも想像できます。  でも、そんな家もいずれ解体されてしまうんですね。寂しいけれど、これも人生なんでしょう。

    0
    投稿日: 2026.03.07
  • 木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

    木挽町のあだ討ち(新潮文庫)

    永井紗耶子

    新潮文庫

    仇でなく「あだ」。やさしくも愛しき木挽町の人々。読後感が最高

    これはプロならずとも、映像化したくなる作品ですよね。私は巻末に掲載されていた中島かずき氏の特別エッセイで知ったことですが、これを原作とした歌舞伎もあるのだそうな。さもありなんと思います。また仇ではなく、「あだ」というのも中島氏の指摘で気がつきました。なるほどね。  まず、仇討ち自体は、冒頭で前書きのようにすぐに紹介されます。そして、そこからが本編がスタート。第1章と言わずに第1幕というところも粋です。物語はこの仇討ちから2年後、なぜかその仇討ちの様子を木挽町に棲まう人々に聞き取り調査をして回る男が登場します。いったいこの男は何者なのか?なせ今更聞き回っているのか?また、そもそも仇討ちの原因となった事件とは、いったい何?  どこかミステリーか推理小説の様に物語は展開していきますが、その内読んでいる我々には、いやいやこれはひょっとすると。。。と思えてきます。そのストーリー展開というか、物語の構成がとても見事でありました。  一方、第1幕における仇討ちの描写は、クリエーターならずとも思わず映像化したくなりますよ。それは雪の降る晩。あたりは真っ白です。芝居小屋から聞こえる三味線の音。そこに立つ鮮やかな振り袖姿の女性?その振り袖を脱ぎ捨てると白装束の前髪の美しき若衆。相手は強面の博徒。朗々と仇討ちの口上を叫び斬り合いが始まります。そして吹き上がる血しぶき。ね!もうこれだけで映像が見えるようではありませんか。  で問題は、なぜ2年後にその様子を男は聞き回っているのかです。読み始めは、あたかも謎解きのような感じで読んでいましたが、徐々に聞き取り対象である木挽町の関係者が、実に様々な人生を歩んできたことの方に興味が移ってきました。そこかしこに伏線があり、謎解きの方は読み進んでいるうちに、はは~んと想像するとおりの結末ではありました。  でもひょっとすると、作者の意図は仇討ちという行為そのものよりも、ラスト近く述べられていることだったのかもしれません。  現代においても自分の思い通りに人生を歩んでいる人はそうはいないでしょう。道理のない事、ままにならないことも沢山あります。でも、それをしなやかに受け止めて生きる人々がいる。心ならずも悪所に身を置くことになった人が、ある一人の武士を、いやそれだけでなく、藩そのものを救った。これだったのでしょう。それは夢物語?たしかにそうかもしれません。でも、苦労を重ねた人、失恋した人が、他人に優しくなれるということもあるでしょう。  ま、それはともかく、ここ何作か読んだ本の中で、読後感は最高の一冊でした。映画公開が待ち遠しいです。

    0
    投稿日: 2026.02.01
  • 騙し絵の檻

    騙し絵の檻

    ジル・マゴーン,中村有希

    創元推理文庫

    読むのに少々骨が折れました。でもラストは、ふ~ンそっか~

    過去と現在が行ったり来たりしますし、なんせ登場人物が多い。私は何度も登場人物の紹介ページを見直しました。  物語はえん罪で投獄されてしまった男の真犯人探しのものなのですが、かなり込み入っていて、なかなか前に進まないので、少々もどかしくも感じなから読み進めていきました。よくもまぁ、こんなストーリーを考え出したと思います。推理小説の分野なので多くは語れませんが、ラストは、な~るほど、そういうことか。とスッキリしますよ。ただ、ジャンという女性新聞記者が、どうしてあそこまで献身的に主人公を助けたのかの説明は不足かなぁ。

    0
    投稿日: 2026.01.27
  • 悪霊列伝

    悪霊列伝

    永井路子

    ゴマブックス

    心にやましいことがあると、ヒトは神?を恐れるのですね

    私の日本史の知識は教科書レベルであります。紹介される人の名で怨霊?になったと知っていたのは、菅原道真ぐらいでありましたが、教科書では教えてくれない、隠れた歴史の裏話を垣間見るようで、とても興味深く読ませて頂きました。  塩焼王という、美味しそうな名前の人は全く知りませんでしたよ。また「女はひたすら敵を憎む」なんていう記述も面白いですね。女性の作者が言うのだから間違いないのでしょう。  著者の言うとおり、まさに「悪霊は、恐れる人の魂の中に棲む」わけで、この手の話がお好きな人にはオススメです。短篇集のようなものですから読みやすいですよ。続編もあるようなので、そちらも読みたいと思ってます。

    0
    投稿日: 2025.12.29
くっちゃね村のねむり姫さんのレビュー一覧 | ソニーの電子書籍ストア -Reader Store