み完成人さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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生き屏風
田辺青蛙 / 角川ホラー文庫
しずしずと たんたんと・・・
7
インパクトのある冒頭の一文から、どんだけ恐ろしい話が始まるのかと期待して読み始めましたが、全くそんなことはなく、ホラーというよりは、和風ファンタジーといったところ
むかし、むかし、まだ妖(あやかし)と…人とが共存していたころのお話。詳しい時代背景や設定などは全く説明されませんが、そんなことは気にならず、すんなり物語の世界に惹き込まれました。
屏風に取り憑いた女の霊と小鬼である皐月の会話を通して、この物語の世界観や皐月の過去が徐々に明かされていくという手法が、心地よい読書のリズムをつくりだしています。
食事やお酒を飲むシーンがけっこうあり、夜、日本酒を飲みながら読書をすることの多い私にとっては、その場に自分も一緒になって皐月の話を聞いているような錯覚に陥ってしまいました。
第15回日本ホラー小説大賞 短編賞受賞作
表題作の他、「猫雪」「狐妖の宴」の3編が収録されています。 続きを読む投稿日:2015.03.01
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カンニング少女
黒田研二 / 文春文庫
カンニングは ダメよ~ ダメ ダメ
7
うちの子は中学3年生。もうすぐ高校受験です。
志望校合格はかなり難しいらしい。(妻談)
ということで、父親として何かできることはないか
おぉ! ここにいいタイトルの小説が!
何かヒントになるものが・・…・ぐえふぇふぇふぇ・・・
―――というのは冗談ですが、
ダークサイドな考えが ちょっとはあったかも?
姉の死の真相を知るために、カンニングという手法で最難関私大を受験する少女の物語。カンニングという行為に嫌悪を感じるのは確かだけど、爽快感の方が上回るのは、3人の友達のサポートと、努力してきちんと実力を上げ、自力で解くことを放棄しない姿が描かれているからかな。最終試験の少女の回答にはちょっとホロリ。嫌悪感と爽快感が混在する不思議な感覚の青春小説でした。
ところで、新潟の公立高校入試の制度が今年から大きく変わります。昨年までは5教科を1日だったのが、今年から2日間に。1日目は今まで通りの5教科。2日目に各高校で独自の試験科目や作文、面接を実施するらしい。(何もうちの子の年度から実施しなくても・・・)
暗記力を軽視するわけではないけど、暗記力や単なる知識量だけにしばられない内容の試験が増えてくるといいな~と思います。全国的にそういう傾向なのでしょうか?
小6と中3で実施する全国学力テストでも、知識を問うA問題と、活用力を問うB問題とに分けて実施されている。(うちの子の全国でのおおよその位置がわかって愕然・・・)
自分が高校や大学を受験したころの昔を懐かしく思い出し、「がんばれ!うちの子」と静かに見守ってやるのが父親としての役目かな、というところに落ち着きました。 続きを読む投稿日:2015.02.21
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ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録
古野まほろ, 九条キヨ / 角川文庫
可憐な女子高校生たちの驚愕推理
7
単行本での取り扱いが終了となり、文庫本での発売となっていたので再投稿です。(単行本の表紙のデザイン方が良かったな~と思うのは前作と同様です。)
「セーラー服と黙示録」シリーズ第2弾です。
ページ数が…前作の約2倍!でちょっとビビりましたが、鬱墓(うつはか)村という空間的時間的に閉じられた世界とその設定の作り込みの緻密さ、そこで起きる殺人事件の謎に惹かれて、寝食を忘れるほどに読みふけってしまいました。
フーダニットの島津今日子、ハウダニットの古野みづき、ホワイダニットの葉月茉莉衣の3人の女子高校生による三位一体の推理は 前作同様、圧巻!の一言。残忍な殺人事件のなかにも、もの悲しさ、抒情性を感じる物語でした。
冷静に考えれば、かなり深刻で陰惨な状況であるにもかかわらず、時折出てくるアニメやゲームネタに思わず苦笑、微笑、爆笑。困ってしまいましたよ。私が拾えたのは、ファーストガンダム、ガンダムSEED、エウレカセブン、ドラクエ、マクロス、スタートレック、エヴァンゲリオン、宇宙戦艦ヤマト・・・ もっとコアな人には もっと拾えたかもしれませんが、少々自己嫌悪を覚えました・・・(知らなくても、推理の過程に何の支障もありません。)
前作が冬に対して今作は春。時間軸が戻っていますが、聖アリスガワ女学校という架空の世界観と登場人物を把握しておいた方がすんなり入れると思うので、前作を先に読むことをお勧めします。
キリスト教と三河弁に詳しい方、横溝正史氏の「八つ墓村」を既読されている方、そして何よりも有栖川有栖氏の小説を愛している方には、もっともっと楽しく読める小説であること間違いなしです。 続きを読む投稿日:2017.04.30
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催眠 完全版
松岡圭祐 / 角川文庫
誰かのために努力する喜び
7
主人公である臨床心理士の嵯峨敏也。自分の患者でも依頼者でもないのに、最新の心理学の知識と技能をもって、心に悩みをもつ人を助けようと奔走します。ラストの 小説ならではのどんでん返しにはジ~ンときました。…
松岡圭祐氏の小説には、凛田莉子や岬 美由紀など、他者のために後先考えずに突っ走る、熱きハートをもった主人公が多いですね。私は好きです。
心理学って、他者よりも有利な状況を作りだすためとか、他者を出し抜き、優位な立場に立つためとか、何かこう、自分のために学ぶってことが前提にあるような気がします。私も大学で発達臨床心理学を専攻しましたが、「誰かのために」って少しは思っていたかもしれませんが、優先順位は、はるかに「自分のため」だったような気がします。読後、もう一度心理学を学びなおしたくなりました。
「千里眼」シリーズにも同様の名前の臨床心理士が登場するが、性格や年齢の違いから、別設定の物語とされる。・・・『催眠 完全版』(角川文庫)の一作品のみが、かろうじてQシリーズと接点があるとみなせる。(『万能鑑定士Qの攻略本』より抜粋)
―――と、公式ファンブックには記載されていますが、「東京晴海医科大付属病院の友里佐知子」「緑色の猿」などのキーワードや、岬 美由紀の存在をほのめかす文章があることから、Qシリーズと「千里眼」シリーズの嵯峨敏也は、同一人物だって自分は思い込みたいです。 続きを読む投稿日:2014.10.04
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ボクら星屑のダンス
佐倉淳一 / 角川文庫
ファンタジーな誘拐事件です
7
タイトルと表紙の美しさに惹かれて購入しました。
横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作ということで
以前 ドラマ化されているようですが 未視聴です。
そもそも新潟は放送されたんでしょうか?
自殺しよ…うとしていた40代のおっさんと
同じく自殺しようとしていた10歳の子どもが出会い・・・
それは誘拐事件へと体をなしていくのですが
おっさんと子どもの組み合わせ しかも子どもは天才
ファンタジーです。
2人の逃避行、警察との駆け引き、身代金の受け渡し と
後半は盛り上がりました。何せ100億円の身代金!
1万円札で100万枚 重さ1トン!
なるほど、そうくるのかと
40代のおっさんである私も ハラハラドキドキ
ちょっと現実感に欠けますが、
ファンタジーな誘拐事件として楽しく読めました。 続きを読む投稿日:2014.09.21
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カウンセラー 完全版
松岡圭祐 / 角川文庫
心は救うことができる・・・のか
6
臨床心理士 嵯峨敏也の「催眠 完全版」第2弾です。
万能鑑定士Qシリーズから、この本にたどり着いた人は注意が必要です。かなり残忍で陰惨な殺人シーンがあります。「千里眼」シリーズにも惨たらしい殺人は多々…ありましたが、それでも映画のような、どこか架空の世界の出来事として処理できました。しかし、この小説は違います。私はしばらく続きを読めずにいました。
少年犯罪に対する法の難しさ、無責任な匿名投稿が許されるネット社会の問題に考えさせられつつも、1番心にグサッときたのは親子関係の在り方かな。愛情をもって子育てをしているつもりでも、無自覚の虐待?もあり得るのだと気づかされました。改めて父親としての自分を省みてみましたが・・・ちょっと自信ないかも。
探偵や警察が犯人を追いつめていく展開の小説と違って、主人公は臨床心理士の嵯峨敏也。カウンセラーとしての矜持と責任を示しつつ、従来のサイコミステリーにはあまり見られない、優しく温かく、そして救いの感じられる結末へと導いてくれました。
「中国から帰ってきてから・・・」というくだりから、「千里眼 運命の暗示 完全版 クラシックシリーズ3」の後日譚としての位置づけでしょうか? 間違っていたらスミマセン。「岬 美由紀」の名が堂々と出てきて、ファンとしてうれしく思いました。 続きを読む投稿日:2014.10.13