
千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮
松岡圭祐
角川文庫
松岡圭祐が描く 女性同士の友情とは
「千里眼」新シリーズ第4弾です。 私「ねぇ、女同士の友情って存在するの?」 妻「うん、あると思うよ。」 私「お金が絡んでも?」 妻「・・・親しき仲にも礼儀ありだからね。」 私「だよな~」 男同士でもお金が絡めば「だよな~」となるわけですが、親友のために全財産をつぎ込む岬 美由紀。感情を見抜く技能の根底を成していた動体視力も封じられ、「クラシックシリーズ9 トランス・オブ・ウォー 完全版」に匹敵するくらい絶体絶命の危機に陥ります。裏切りと絶望の中、反撃の狼煙は上がるのか、真の友情は? 偽りの友情と孤独感に苛まれる岬 美由紀の心の葛藤が描かれます。序盤からクライマックス張りの事件発生、ラストのミッドタウンを舞台とした壮絶なバトルと相まって、読み応え十分なエンタメ小説でした。 1番ドキッとなったのは、岬 美由紀の次のセリフ。 「それって、心理学的にみればセルフ・ハンディキャッピングってやつじゃない? 宿題の前にゲームにハマっちゃったりする学生の心理っていうか・・・。自分にハンディをつけて、不利な条件だと納得感を得るために、自然にそうなっちゃうっていう・・・」 そ、そうです。それは私です。学生の頃、ゲームにハマって勉強は後回しでした。社会人になった今でも、読書をしていて明日までの書類を後回しにしちゃってます。岬 美由紀か嵯峨敏也のカウセリングを受けたいです・・・
3投稿日: 2014.11.09千里眼の水晶体
松岡圭祐
角川文庫
親友を救うための行動力が凄すぎ!
「千里眼」新シリーズ第3弾です。 ウイルスに感染し発症した親友を救うため、行動を起こす岬 美由紀。その行動力が半端ない。日本中を、そしてハワイまで駆け巡ります。移動手段もアレが出てきてニンマリ。予想はできましたが、新シリーズでも見られて(読めて)うれしく思いました。 表情や言動から相手の心を、愛の感情さえも読み取る能力。「千里眼」と呼ばれる由来もそれ故にですが、それが本物の愛なのかどうか、その真贋が試されます。より人間的に描かれている新シリーズですが、今後の変化と成長が楽しみでもあります。 自衛隊と臨床心理士の職場の違いを「ドラえもんとケロロ軍曹ぐらい異なるわね」と表現した岬 美由紀。小学館から角川へと移った松岡圭祐氏の当時の心境の代弁? どちらも楽しい職場のような気がしますが・・・ ところで、ジェニファー・レインは? 今回のストーリーに彼女は無関係かと思っていたところでまさかの登場。伏線の張り方、その収束、次巻への伏線と、読者を飽きさせないストーリー展開は見事ですね。
6投稿日: 2014.11.02千里眼 ファントム・クォーター
松岡圭祐
角川文庫
一人の女性を救うことが 日本まで救っちゃってます
「千里眼」新シリーズ第2弾です。 ファントム・クォーター(幻影の地区)に拉致された岬 美由紀。クラシックシリーズの10巻「千里眼とニュアージュ 完全版」で描かれた江戸村を思い出しました。あそこまで壮大ではなく、小規模な舞台設定でしたが、そこでの謎解きが、これまでの伏線回収へと一気につながっていく様は、さすが松岡圭祐氏です。 ラスト、それはあり得んだろう!って展開ですが、そこはエンタメ小説。手に汗を握りつつ? 一気読み。岬 美由紀の決めゼリフに思わずカッコイイ―――!って唸っちゃいました。 臨床心理士として一人の女性を救う行動が、元航空自衛隊の経験と知識を駆使して日本まで救っちゃってます。そして新たな敵、メフィスト・コンサルティング・グループのジェニファー・レインとの直接対決を予感させる終わり方。次巻も楽しみです。
3投稿日: 2014.11.01千里眼 The Start
松岡圭祐
角川文庫
臨床心理士 岬 美由紀 再び!
「千里眼」クラシックシリーズを読み終えて1年・・・。待ち望んでいた続編である新シリーズをソニー・リーダーで読める幸せを噛み締めています。一時迷ったこともありましたが、他社に乗り換えなくてよかった! さて、「千里眼 The Start」 小説の半分近くが岬 美由紀の臨床心理士を目指すことになった経緯や心理学生の頃のストーリーが語られ、あれ? 続編ではなくてクラシックシリーズのリライト?って、ちょっと不安になりましたが、そこは大丈夫。クラシックシリーズ最終巻「背徳のシンデレラ」後のストーリーです。でも、クラシックシリーズの全てが臨床心理士になって たった1年間の出来事だったの? とか、まだ28歳って歳をとってないじゃん!と、突っ込みどころ満載ですが、そこは敢えて黙認しましょう。スーパーヒロインは歳をとらない!のです。(笑) 映画的だったクラシックシリーズですが、新シリーズでは、最新の心理学の理論と動向を基に、より現実的に、より人間的に岬 美由紀が描かれていると思いました。次巻につながる伏線もしっかりと張られていて、新シリーズの展開がとても楽しみになりました。
3投稿日: 2014.10.26後催眠 完全版
松岡圭祐
角川文庫
臨床心理士 嵯峨敏也の原点
「催眠 完全版」第3弾ですが、 時系列的に「催眠」の数年前の物語です。 カウンセラーとして駆け出しの若き日の嵯峨敏也 ほとんど脇役としての登場ですが、 心理学の知識と技能を駆使して他者を救おうとする 臨床心理士 嵯峨敏也の原点がありました。 内容的には、サスペンスというよりロマンス 切ないラブストーリーに感じました。 これはありえない展開だろうと否定する自分 でも、そうあってほしいと切望する自分 陳腐な言い方ですが、 恋をすること 愛すること 愛し続けること それらの意味を考えた小説でした。
5投稿日: 2014.10.18大延長
堂場瞬一
実業之日本社文庫
夏の甲子園、もうすぐですね!(再レビュー)
7月下旬にレビューを投稿したのですが、10月に新装版になり、「該当コンテンツは、現在取り扱っておりません。」と表示されるようになってしまったため、再投稿です。改訂版や出版社変更ならともかく、表紙が変わっただけで今までのレビューも削除されてしまうのはちょっと・・・ Reader Storeさんには改善を望みます。 夏の甲子園 決勝戦 再試合が舞台です。単なる試合の勝負話ではなく、両校の監督、選手はもちろん、他に解説者、後援会、学校関係者といった多くの人たちの視点から試合が描かれ、それぞれの思いが交錯する、読み応え十分な人間ドラマとなっています。野球に限らず、学生の時にスポーツの世界で勝負に真剣切った人なら、この小説に熱く共感できるのではないかと思います。 2007年に初版発行ということは、2006年の決勝引き分け再試合の駒大苫小牧 対 早稲田実業がモデルでしょうか? あのマーくんとハンカチ王子の投手戦です。 新潟県人の私としては、2009年の日本文理 対 中京大中京の決勝戦が思い出されます。6点差で迎えた9回裏二死走者なしから、打者一巡の猛攻で1点差まで詰め寄ったあの試合です。 小説以上に多くの感動と奇跡のプレーを生んでいる甲子園。もうすぐ夏の甲子園が始まります。今年はどんなドラマが見られるのか、この小説を読んで さらに期待が高まりました。
9投稿日: 2014.10.13カウンセラー 完全版
松岡圭祐
角川文庫
心は救うことができる・・・のか
臨床心理士 嵯峨敏也の「催眠 完全版」第2弾です。 万能鑑定士Qシリーズから、この本にたどり着いた人は注意が必要です。かなり残忍で陰惨な殺人シーンがあります。「千里眼」シリーズにも惨たらしい殺人は多々ありましたが、それでも映画のような、どこか架空の世界の出来事として処理できました。しかし、この小説は違います。私はしばらく続きを読めずにいました。 少年犯罪に対する法の難しさ、無責任な匿名投稿が許されるネット社会の問題に考えさせられつつも、1番心にグサッときたのは親子関係の在り方かな。愛情をもって子育てをしているつもりでも、無自覚の虐待?もあり得るのだと気づかされました。改めて父親としての自分を省みてみましたが・・・ちょっと自信ないかも。 探偵や警察が犯人を追いつめていく展開の小説と違って、主人公は臨床心理士の嵯峨敏也。カウンセラーとしての矜持と責任を示しつつ、従来のサイコミステリーにはあまり見られない、優しく温かく、そして救いの感じられる結末へと導いてくれました。 「中国から帰ってきてから・・・」というくだりから、「千里眼 運命の暗示 完全版 クラシックシリーズ3」の後日譚としての位置づけでしょうか? 間違っていたらスミマセン。「岬 美由紀」の名が堂々と出てきて、ファンとしてうれしく思いました。
6投稿日: 2014.10.13催眠 完全版
松岡圭祐
角川文庫
誰かのために努力する喜び
主人公である臨床心理士の嵯峨敏也。自分の患者でも依頼者でもないのに、最新の心理学の知識と技能をもって、心に悩みをもつ人を助けようと奔走します。ラストの 小説ならではのどんでん返しにはジ~ンときました。 松岡圭祐氏の小説には、凛田莉子や岬 美由紀など、他者のために後先考えずに突っ走る、熱きハートをもった主人公が多いですね。私は好きです。 心理学って、他者よりも有利な状況を作りだすためとか、他者を出し抜き、優位な立場に立つためとか、何かこう、自分のために学ぶってことが前提にあるような気がします。私も大学で発達臨床心理学を専攻しましたが、「誰かのために」って少しは思っていたかもしれませんが、優先順位は、はるかに「自分のため」だったような気がします。読後、もう一度心理学を学びなおしたくなりました。 「千里眼」シリーズにも同様の名前の臨床心理士が登場するが、性格や年齢の違いから、別設定の物語とされる。・・・『催眠 完全版』(角川文庫)の一作品のみが、かろうじてQシリーズと接点があるとみなせる。(『万能鑑定士Qの攻略本』より抜粋) ―――と、公式ファンブックには記載されていますが、「東京晴海医科大付属病院の友里佐知子」「緑色の猿」などのキーワードや、岬 美由紀の存在をほのめかす文章があることから、Qシリーズと「千里眼」シリーズの嵯峨敏也は、同一人物だって自分は思い込みたいです。
7投稿日: 2014.10.04サウンド・オブ・サイレンス
五十嵐貴久
文藝春秋
音楽を感じる ダンスが見える 熱い想いがみなぎってくる
他人にどう見られているのか、どう思われているのか。自分を偽って他人に合わせる。一人ぼっちは嫌。誰かとつながっていたい。そして、自分を理解してほしい・・・。人間関係に苦労するのは、何も思春期に入った中高生だけではない。大人になっても、社会人になっても、それは変わらないだろう。 でも一人じゃないって思えた時から、何かができるって勇気がわく。その感覚は自分にもある。高校生の時、仲間とともにバスケに打ち込んだ時。結婚して家族ができた時・・・。久しぶりにその想いを思い出せました。 耳が聴こえない女性3人が、仲間とともにダンスコンテストに挑む物語。正面から向き合うことでしか、問題は解決できない。できるか、できないかではなく、やるのか、やらないのかだ。文字だけだけど、音楽を感じる。ダンスが見える。そして、自分も熱い想いがみなぎってくる―――そんな小説でした。 『リカ』『リターン』の作者さんの作品とは! まさか、同姓同名の作者さんではないですよね?
8投稿日: 2014.09.23ボクら星屑のダンス
佐倉淳一
角川文庫
ファンタジーな誘拐事件です
タイトルと表紙の美しさに惹かれて購入しました。 横溝正史ミステリ大賞テレビ東京賞受賞作ということで 以前 ドラマ化されているようですが 未視聴です。 そもそも新潟は放送されたんでしょうか? 自殺しようとしていた40代のおっさんと 同じく自殺しようとしていた10歳の子どもが出会い・・・ それは誘拐事件へと体をなしていくのですが おっさんと子どもの組み合わせ しかも子どもは天才 ファンタジーです。 2人の逃避行、警察との駆け引き、身代金の受け渡し と 後半は盛り上がりました。何せ100億円の身代金! 1万円札で100万枚 重さ1トン! なるほど、そうくるのかと 40代のおっさんである私も ハラハラドキドキ ちょっと現実感に欠けますが、 ファンタジーな誘拐事件として楽しく読めました。
7投稿日: 2014.09.21