
千里眼 キネシクス・アイ 下
松岡圭祐
角川文庫
人の可能性
「千里眼」新シリーズ第10弾・下です。 日本人女性初のF15Jイーグルドライバーにして現在、臨床心理士。鍛え抜かれた動体視力と心理学に裏打ちされた観察眼をもち、瞬時に相手の心理を読み取る。各種格闘技にも長け、ピアノやバイオリンも弾きこなす。博学多才で凛田莉子のようなロジカル・シンキングと浅倉絢奈のようなラテラル・シンキングを持ち合わせ、優れた洞察力と推理力、判断力で日本のみならず世界の危機を幾度となく救ってきた、才色兼備の無敵のヒロイン 岬 美由紀 人呼んで「千里眼」 唯一、人を愛することの 人に愛されることの 強さに気づかない女 そして、多くの人に愛されていることに気づけない女・・・ 自己犠牲という優しさをもって 他人のために命を懸ける 自分はどうなっても構わない 大切な人を巻き込みたくない 独りで生きる道を選ぶ そんな独りよがりの強い思いでも 岬 美由紀を愛する人たちは 協力を惜しまない 命の危険を顧みず 勇気を奮って 岬 美由紀のために力を尽くす 読む者の胸をも熱くする たとえ不可能と分かっていても 死ぬとわかっていても 最後の最後までけっして諦めない 意志の力 人の感情が 人の可能性が 心の力が 圧倒的な機械の力に立ち向かう 新シリーズ全10巻。2009年のこの巻以降、 続編は執筆されていないようです。 もっとも、2010年からはQシリーズが始まるわけですが・・・ まだ いくつかの謎が残されている千里眼シリーズ いつの日か、岬 美由紀に再会できることを願っています
1投稿日: 2015.01.04
千里眼 キネシクス・アイ 上
松岡圭祐
角川文庫
すべての始まり
「千里眼」新シリーズ第10弾・上です。 岬 美由紀 小学校6年生のエピソードが語られます。 今まであまり詳しく語られることのなかった、岬家の様子が描かれ、なんだかホッとします。小6からすでにメフィスト並みの心理戦、駆け引きを経験して、というよりは才能でしょうか。大胆な行動力と正義感は、すでに持ち合わせていたのですね。国語のテストの文章に感動して問題を解く時間が無くなるなんて、凛田莉子を彷彿とさせます。 千里眼としての岬 美由紀の人生が始まった日ともいえる、 あの日、あの事件が描かれます・・・ 岬 美由紀の思考や感情さえも 瞬時に読み取ってしまう機械「キネシクス・アイ」 人と機械の戦いにどう決着をつけるのか、 運や偶然に頼るしか対抗する術は無いようですが・・・ っていうか、もし運や偶然で解決したら、 Readerを2階の窓からほん投げます!ってくらいの 熱い気持ちで、これから最終巻?を読みます!
2投稿日: 2015.01.03
千里眼 優しい悪魔 下
松岡圭祐
角川文庫
最終回のような 一抹の寂しさ
「千里眼」新シリーズ第9弾・下です。 岬 美由紀とジェニファー ダビデとジェニファー そしてダビデと岬 美由紀・・・ 今回はいろんなことに決着がつきましたね。 別れ 旅立ち・・・ぐっときました。 ラストのダビデの優しさにウルッときちゃって、 男の自分でも、ほ、惚れてしまいましたよ! クラシックシリーズの天才マジシャンと 水晶体のあの女までもが登場し、 ある意味、最終話で大団円って感じでしたが・・・ 一ノ瀬恵理香、李 秀卿にも登場してほしかったなあ~ クラシックシリーズが友里佐知子、鬼芭阿諛子との決着 新シリーズがメフィストとの決着 と いったところでしょうか。 さて、新シリーズも残すは1作「キネシクス・アイ」 岬 美由紀 最後の闘い?に刮目しようと思います。
2投稿日: 2014.12.30
千里眼 優しい悪魔 上
松岡圭祐
角川文庫
メフィスト VS ノン=クオリア
「千里眼」新シリーズ第9弾・上です。 クラシックシリーズからの古キャラである ダビデとジェニファー 2人の過去が語られます。特にダビデは、なぜか憎めない敵キャラでしたが、おお!そんな過去があったのだね と一層感情移入してしまいました(脳内イメージは いかついジャン・レノ)。タイトルの「優しい悪魔」って、きっと彼のことなのでしょう。 ある精神疾患の患者さんたちに対するアプローチが、岬 美由紀とダビデとではまるで異なり、その対比が興味深かったです。ダビデのやり方は、小説ならではのダイナミックなスケール! それもちゃんとストーリーに絡んでいて、読む者を飽きさせないどころか、納得のいく展開。 第8弾で出現した謎の組織ノン=クオリア。というより、クラシックシリーズからすでに伏線が張られていたようですが、メフィストとノン=クオリアの表立った対立がここで初めて描かれます。 さて、どうなる?どうなるの~?と気になる下巻へと続きます。
3投稿日: 2014.12.29
千里眼 シンガポール・フライヤー 下
松岡圭祐
角川文庫
不安定な心で 活路を見いだす女
「千里眼」新シリーズ第8弾・下です。 上巻で張られた伏線が、(というか、伏線になるとは少しも思わずにいたところ)回収へと一気につながっていく終盤は、ハラハラドキドキしっぱなしでした。精神疾患でなくても、苦しい状況からは誰もが逃れたいと思うのに、ん~ここでそうくるか!と荒唐無稽ではありますが、岬 美由紀の強さを再認識した、読み応え十分のエンタメ小説でした。 表紙にF1が描かれているとおり、F1ドライバーとしての岬 美由紀が読めます。新たな敵「ノン=クオリア」という謎の組織も登場し、F1もストーリーも、そして岬 美由紀の心も疾走します。今後、メフィストとどう絡んでいくのか楽しみです。 「シンガポール・フライヤー」って、2008年に完成したアジア最大の大観覧車の名称だったんですね。上巻の表紙に描かれていました。この小説が発行されたのも2008年。新シリーズ第4弾のミッドタウンタワーもそうでしたが、新しいものや時事問題をタイムリーに小説に組み込むのが 松岡圭祐氏の作品の特徴ですね。
2投稿日: 2014.12.13
千里眼 シンガポール・フライヤー 上
松岡圭祐
角川文庫
不安定な心に 活路は見いだせるのか
「千里眼」新シリーズ第8弾・上です。 前作で明かされた衝撃の過去とその記憶。完全に引き摺っていて、ある精神疾患の症状に苦しみます。岬 美由紀の不安定な心理描写に読んでいる私も辛くなりました。完全復活はあるのでしょうか。 新種の鳥インフルエンザのパンデミックと謎のステルス戦闘機の関係は? 今回の事件にメフィストは絡んでいないような、いるような・・・ ところで、「シンガポール・フライヤー」って何? シンガポールの空を飛ぶ人? シンガポールのチラシ? きっと下巻を読めばわかるのでしょう。いざ下巻へGO!
5投稿日: 2014.12.06
千里眼 美由紀の正体 下
松岡圭祐
角川文庫
「正体」の真の意味
「千里眼」新シリーズ第7弾・下です。 ついに明かされた岬 美由紀の過去とその記憶 ん~・・・かなり衝撃的でした。読む人によっては嫌悪感を抱く内容です。物が豊かで 戦争状態でもない日本では理解が得難いかもしれませんが、目を背けてはいけないテーマでもあると思いました。 タイトルの「正体」ですが、その言葉には普通マイナスイメージがつきまといます。が、恐ろしく辛い過去と記憶があったとしても、人としての本質は、心の根底は不変であり、ゆるぎない意志として それが行動に表れるのではないだろうか。最後の最後にとった行動が、岬 美由紀の真の正体なのでしょう。 ラストのセリフ。今までネガティブに捉えていたのが、これほどポジティブに言い切ったのは初めてではないでしょうか? 真っ暗な闇の中に一筋の光明が照らし出され、新たなステージに歩みだせる喜びと興奮。そんな読後感が得られました。 それにしても表紙のデザイン、まったくもって遺憾ですな。 まるであらぬ想像を喚起し、いらぬ先入観をもって読んでしまいました。上巻が俯いた岬 美由紀だったのだから、下巻は仰向いた岬 美由紀にしてほしかったな~
4投稿日: 2014.11.30
千里眼 美由紀の正体 上
松岡圭祐
角川文庫
ノンストップ アクション ノベル!
「千里眼」新シリーズ第7弾・上です。 記憶喪失の女性救済に端を発し、次から次へと事件が連鎖していきますが、これもまた岬 美由紀が次から次へと解決していきます。息つかせぬストーリー展開とは、まさにこのことでしょう。が、今回は明らかに岬 美由紀の暴走であることは否めません。なぜ暴走したのか、なぜぶちぎれるのか、その理由、原因の探求が始まります。 クラシックシリーズで岬 美由紀と共に活躍した、捜査一課の蒲生 誠、臨床心理士の嵯峨敏也、空自一尉の伊吹直哉、外務省の成瀬史郎らが登場し、いやが上にも一人で勝手に盛り上がっています。 明日の仕事の準備をしなくてはいけないのですが、そこはセルフ・ハンディキャッピングってあることを自覚しつつ、これから下巻を読みたいと思います。 フリーマーケットの「フリー」はFreeではない 昔、1ドル360円と相場が決まっていた理由 「はないちもんめ」の歌詞の意味 等、今作もおなじみのトリビア満載でした。
5投稿日: 2014.11.24
千里眼 堕天使のメモリー
松岡圭祐
角川文庫
これぞ 千里眼 The World !
「千里眼」新シリーズ第6弾です。 第3弾の「水晶体」の女がここで登場。第4,5弾と休止していた伏線がここで一気につながります。ジェニファー・レインも再登場。やはりメフィストが絡んだ方がわくわくドキドキしますね。 そういえばこのジェニファー・レイン。新シリーズの新キャラではなく、「クラシックシリーズ9 トランス・オブ・ウォー 完全版」が初出でした。そして、岬 美由紀のフラッシュバックする赤い積み木の記憶。「クラシックシリーズ2 ミドリの猿 完全版」に同じ描写があったことを思い出しました。クラシックシリーズからの伏線が、この新シリーズにも脈々と引き継がれ、まさに千里眼ワールドを実感したストーリーでした。岬 美由紀の失われた記憶、隠された過去が第7弾で明かされるのでしょうか? 非常に楽しみです。 巻末に松岡圭祐氏本人のあとがきがあり、「千里眼」シリーズのリーダビリティについて触れています。だから読み易かったんですね、と納得。読書から離れていた私が何十年ぶりかに読書を始めたのは、Qシリーズや「千里眼」シリーズを読んだのがきっかけでしたが、読書というのは、自立訓練法という自己暗示法と同じコツ、つまり「受動的注意集中」というものが必要であり、難しい技術なのだとか。私は知らず知らずのうちに脳のリハビリ?を受けていたのですね。能動的に読まなくてはいけない専門書のような類の本の読書も、それほど苦痛に感じなくなっているような気がします。
5投稿日: 2014.11.23
千里眼の教室
松岡圭祐
角川文庫
千里眼シリーズ初の学園もの
「千里眼」新シリーズ第5弾です。 高校生1000人が校舎に籠城し日本政府に独立宣言!って、常識で考えれば絶対にあり得ませんよね。でもその常識がはたして本当に常識なのかどうか、疑問に思わせるところが、松岡圭祐氏の小説のすごいところでしょうか? この小説が発行されたのは2007年。そういえば高校の世界史とかの未履修問題やいじめによる自殺問題が取り沙汰されていた記憶があります。いじめ問題は今現在も続いていますが・・・時事問題を扱うことに長けている松岡圭祐氏ですが、教育問題に関しては、個人的に嵯峨敏也に挑んでほしかったなぁ~ 新シリーズでは、いたるところに ちょっとしたトリビアがちりばめられています。例えば『源氏物語』 名詞が使用されている頻度の平均値と標準偏差値から、『宇治十帖』の途中からは紫式部ではなく他人が書いたのではないか、という数学的な仮説が紹介されています。後発のQシリーズやαシリーズにつながっていく感じがして、それがこのシリーズの面白さの1つの要因になっていると思います。
3投稿日: 2014.11.15
