み完成人さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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雷の季節の終わりに
恒川光太郎 / 角川ホラー文庫
長篇も いいですよ~♪
9
神隠しの異世界・穏(おん)の物語と
現世の物語の
クロスオーバー・ホラー・ファンタジー
2つの物語が交差するとき・・・
ミステリー的な展開もよかったです。
「夜市」「風の古道」に通じる
幻想的で抒情的…な異世界の情景と
そこに存在する謎めいた人々の営みの描写
不条理で残酷な物語・・・
それでいて、雰囲気が静かに沁みこんでくる美しい文体に
妖しく、せつなく、哀しい読後感
もっとこの世界観に浸っていたかった
―――そう思わせる長篇小説でした。 続きを読む投稿日:2015.01.27
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六番目の小夜子(新潮文庫)
恩田陸 / 新潮文庫
小夜子 という名の「青春」
8
16年程前にNHKで放送されていたドラマの原作です。(栗山千明さんが演じていて、なんてきれいな娘だろうって思いましたが)当時はまだ読書に目覚めていなく、恩田 陸さんの小説が原作だとか、これが作家デビュ…ー作だとかを初めて知りました。
思春期の頃って、個を確立する時期っていうか、確立したいけれど学校という同一集団の中で同じ制服を着て日々決められた、与えられた時間を過ごさなければならないジレンマがある一方で、皆と同じであることの安心感もあるわけで・・・
そんな、あやふやでも心地よくて、でも時には気味悪かったり、攻撃的に反抗したりして、そんな子どもでも大人でもない、不器用ながらも懸命に自分の生き方を確立しようとする、模索している10代後半の若者たちの物語です。
謎は謎のままですっきりしないところもあるのですが、そのすっきりしない読後感が、過ぎ去りし青春の時を呼び覚まし、しばし気持ちだけは10代後半に戻れたと、40代後半のおっさんが思える―――そんな小説でした。 続きを読む投稿日:2016.06.25
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魂追い
田辺青蛙 / 角川ホラー文庫
妖と人の旅の物語
8
『生き屏風』の続編、妖鬼・皐月の物語です。
皐月が、魂を狩ることを生業とする少年・縁(えにし)と出会い、とある理由で共に“火の山”を目指す旅に出ます。指輪は捨てませんが。(笑)
前作は、1つの里を舞…台とした3つの短編集でしたが、今作は皐月が旅に出る長編で、物語の世界観が広がっています。
妖(あやかし)と人とが共存し、日本のいつの時代でどこの場所なのかよくわからない独特の世界の中で、旅の道中で出会う様々な種族の妖と不思議な能力をもつ人たちとが、生と死を巡る起伏にとんだストーリーを創りだしています。
多少ホラー要素が強くなった気がしますが、怖さを感じないのは、前作と同様、淡々とした語り調子だからでしょうか。
ラストが気になる終わり方でちょっともやもや。
3作目の『皐月鬼』を読めばスッキリするのでしょうか?
そういう意味では怖さを感じますが・・・ 続きを読む投稿日:2015.03.07
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青の炎
貴志祐介 / 角川文庫
高校生が挑む完全犯罪…なんだが…
8
完全犯罪の立案、準備、実行…と、
次はどうなるのかと、ぐいぐい読ませる内容は
さすが、貴志祐介氏の作品である。
けれども、主人公には共感できなかった。
アル中?の高校生
10年ぶりの再会なのに、10日…で犯行計画?
自分は相手を殴ることもできないのに、同級生には
家庭内暴力をけしかけたり、柔道技をかけたりする。
ラストにしても、
相手にも家族や大切な人がいるだろうに…
と、憤りを感じてしまう。
若さ故の過ちなのか、他人を見下す賢い高校生が、
自己中心的な考え方で破滅への道を突き進む。
10代、20代のまだ若い自分が読んでいたのなら、
感情移入できたのかもしれない。
歳を取り過ぎたのかな?
でもこの作品、作者が40歳の時に書かれている。
犯罪の正当性を感じさせて読者に同情させるのか、
疑問視させるのか、作者の意図に混乱してしまった。 続きを読む投稿日:2014.05.25
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サウンド・オブ・サイレンス
五十嵐貴久 / 文藝春秋
音楽を感じる ダンスが見える 熱い想いがみなぎってくる
8
他人にどう見られているのか、どう思われているのか。自分を偽って他人に合わせる。一人ぼっちは嫌。誰かとつながっていたい。そして、自分を理解してほしい・・・。人間関係に苦労するのは、何も思春期に入った中高…生だけではない。大人になっても、社会人になっても、それは変わらないだろう。
でも一人じゃないって思えた時から、何かができるって勇気がわく。その感覚は自分にもある。高校生の時、仲間とともにバスケに打ち込んだ時。結婚して家族ができた時・・・。久しぶりにその想いを思い出せました。
耳が聴こえない女性3人が、仲間とともにダンスコンテストに挑む物語。正面から向き合うことでしか、問題は解決できない。できるか、できないかではなく、やるのか、やらないのかだ。文字だけだけど、音楽を感じる。ダンスが見える。そして、自分も熱い想いがみなぎってくる―――そんな小説でした。
『リカ』『リターン』の作者さんの作品とは!
まさか、同姓同名の作者さんではないですよね? 続きを読む投稿日:2014.09.23
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夜市
恒川光太郎 / 角川ホラー文庫
幻想的で抒情的な物語
8
『千と千尋の・・・』のような世界観。「神隠し」の異世界です。
妖しく、せつなく、哀しい余韻の読後感。
少年時代の懐かしさを感じる作品でした。投稿日:2014.03.15