み完成人さんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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セカンドステージ
五十嵐貴久 / 幻冬舎文庫
妻に「ありがとう」って ちゃんと言葉で伝えなきゃ
10
結婚、出産で退職したママが、子育てに一区切りついた?のを機に、パパに内緒で起業するお話。従業員は7人のお年寄り+若い男1名。様々な問題をお年寄りたちと共に、いや、お年寄りたちが解決していきます。有川 …浩の「三匹のおっさん」ならぬ「七匹のじーさん ばーさん」といったところ。
第一話、第二話と、なんて強引な展開なんだろう、こうすんなり話が進むわけないじゃんと思いながらも、しだいにストーリーに惹き込まれ・・・
最終話では、強引さを通り越して、なんて豪快な展開なんだろうとちょっと感動。何かの映画で似たようなシーンがあったような、なかったような・・・
男として、夫の立場からして、ちょっと耳の痛い小説
夫としての自分は反省させられることしきり・・・
でも、思いをちゃんと言葉にして伝えることの大切さと難しさに、改めて考えさせられたかな。
ん~、でもこの小説を読んだこと
やっぱり妻には内緒にしておきます。 続きを読む投稿日:2015.02.18
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皐月鬼
田辺青蛙 / 角川ホラー文庫
妖と人の邂逅の物語
10
『生き屏風』、『魂追い』に続くシリーズ第3弾であり最終章です。特に『魂追い』の続編と言ってもよく、“火の山”から帰郷した妖鬼・皐月のその後の物語が、6つの連作短編集として語られています。
『魂追い』…のラストで感じたもやもやが、この3作目でスッキリします。でも、「あ~やっぱり読まなければよかった」という気持ちと「読んでよかったな」という気持ちが入り交ざり、少々複雑な気分に・・・
悠久の時を生きる妖と、限られた短い時を生きる人との邂逅が、せつなく、儚く、哀しい物語を紡ぎだしています。
巷では、妖怪〇ォッチがブームらしく、騒がしい妖怪が子どもたちに大人気のようですが、この静々と淡々と描かれる妖の物語は、自分がもっていた妖怪のイメージを大きく変えてくれました。
恒川光太郎氏の『夜市』や、漆原友紀さんの『蟲師』と似通った雰囲気を感じる小説かな? 続きを読む投稿日:2015.03.14
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ロートケプシェン、こっちにおいで
相沢沙呼 / 創元推理文庫
ニュートリノは思春期の女心も通過する
10
「午前零時のサンドリヨン」の続編、第2弾です。
前作は、高校生活の日常の謎解きの要素が強かったのですが、今作は思春期のゆれうごく心情の描写に重きが置かれています。特に女子の「いじめ」の描写が生々しく感…じられ、本当に男性の作家さんが書いたものなの???って疑ってしまうほどでした。
トモという女の子のパートと、須川くんのパートが交互に入れ替わり、話しが進んでいきます。一見、つながりのないこの2つのパートがいつつながるのか、ちょっと悶々とした気分で読み進めることに・・・
ん~・・・やっぱり叙述トリックは自分は苦手かな? 続きを読む投稿日:2015.09.06
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挙動不審者
佐竹一彦 / 角川文庫
パソコンが使えない ≠ 仕事ができない
10
「挙動不審者」って、立ち振る舞いに落ち着きがなく、怪しい行動をする奴って、多くの人が思うに違いない。だがこの小説の容疑者は、まさかの誤認逮捕?と思わせるくらい異質な存在として登場する。
そんな容疑者を…、50代半ばの巡査部長が別な形で調査に当たることになる。この巡査、パソコンも携帯もろくに扱えない、いわゆる「使えない奴」なのだが、地味かつ丹念な捜査で徐々に真相に迫っていく過程は、なかなかに読み応えがあった。
しかしラスト、えぇ!?となる まさかの結末に消化不良に・・・
「パソコンが使えない」=「できない奴」ってレッテルを貼られるのは、多くの職業や職種でパソコンが必要不可欠な道具だからであろう。もしかしたら、パソコンの画面上で仕事が完結すると錯覚していた自分がいたかもしれない。企画や計画が完璧でも、実際に動くのは人。人との関わり、結びつきを大切に仕事をしていこうと再認識できました。 続きを読む投稿日:2015.09.21
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雷の季節の終わりに
恒川光太郎 / 角川ホラー文庫
長篇も いいですよ~♪
9
神隠しの異世界・穏(おん)の物語と
現世の物語の
クロスオーバー・ホラー・ファンタジー
2つの物語が交差するとき・・・
ミステリー的な展開もよかったです。
「夜市」「風の古道」に通じる
幻想的で抒情的…な異世界の情景と
そこに存在する謎めいた人々の営みの描写
不条理で残酷な物語・・・
それでいて、雰囲気が静かに沁みこんでくる美しい文体に
妖しく、せつなく、哀しい読後感
もっとこの世界観に浸っていたかった
―――そう思わせる長篇小説でした。 続きを読む投稿日:2015.01.27
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罪の余白
芦沢央 / 角川文庫
木場 咲 という名の 「悪」
9
わが子の死―――
事故死なのか自殺なのか、子をもつ親であれば、誰もがその真相を知ろうとするだろう。その原因が、学校での「いじめ」であったと知った時、自分はどんな行動をとるだろうか。私も高校生の子をもつ…父親として、安藤の復讐への思いに共感しつつも自問自答しながら読み進めました。
「スクール・カースト」って誰が言い出した言葉なのだろうか。人間関係の序列なんて大人の社会にもある。子どもだけの世界ではないと思うのだが・・・
自分が中・高校生だった頃も、女子はグループをつくっていた。男子以上に行動を共にすることにこだわっていたように思いますが、スマホというコミュニケーションツールが、昔とは異質な人間関係を産み出しているのかもしれない。
そんな息苦しい人間関係に、木場 咲という「悪」が入り込み、いくつかの条件が重なり合えば、実際に悲劇へと繋がっていくんだろうなあ。
自我同一性を確立する大切な青年期に、わが子には一人でも多くのよき友人、よきライバル、よき大人と出会い、ポジティブであたたかい人間関係を育んでいってほしいなあーと切に願いました。 続きを読む投稿日:2015.09.26