
去年の冬、きみと別れ
中村文則
幻冬舎文庫
タイトルと表紙と中身のギャップ
想像していたストーリーと全く違っていて、裏切られ方が面白かった。 読み始めてすぐに、歪んだ精神性の様なものを感じて、どこかで騙されそうと感じつつ 状況を反復しながら読み終えた。 残念なことに、芥川龍之介の「地獄変」もカポーティ―の「冷血」のどちらも読んだことがなく そこは想像するしかなかった。 登場する人それぞれの心の歪みと迷いがこれ以上深く表現されていたら、読み終えるのは きつかったかも。そういう意味では「僕には無理」という語りのラストは落としどころかな と思いました。 もう一度読み直してみたい1冊です。
11投稿日: 2014.10.13
心にしみる31の物語 仕事の作法・生き方の仕法
小倉広
ゴマブックス
ロールプレイング
「知る」と「できる」の間には気の遠くなるような距離があり、「できる」と「やる」の間、 「やる」と「やり続ける」の間にも同じく気の遠くなるような距離がある。…… …確かに。 幾つかはマスコミに取り上げられて目にした内容が文章になっていたりして、あぁそういう内容だった…と思い出す話もあり、今回読んで感銘を受けたことを心に刻んでおこうと思いました。 幾つになっても変わろうとする努力は必要で、教えられることばかりでした。
18投稿日: 2014.10.12
君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい
浅田次郎
文春文庫
筆に酔いしれる-云いえて妙
久しぶりに浅田次郎に戻って、泣かされたくないのでサラッと始められるものをと思い 読んでみました。 チョコチョコ読んだ小説が頭に浮かびます。 それがまた楽しく、一方で知るはずのない競馬場の臨場感が伝わって来るようです。 エッセイですが氏のショートストーリーを読んでいるような錯覚にも陥ります。 本当に心地よく、言葉が、語り口が気持ちをほぐしてくれます。 筆に酔いしれる…とは云いえて妙!
3投稿日: 2014.09.30
模倣の殺意
中町信
創元推理文庫
タイトルの誇張に欺かれた感じ
読み終えてみれば、凝っている構成だとは思いました。 ただ如何せん、これはすごい!などと帯がついているので、どうしても斜に構えて何かあるなという体制で挑んでしまい、あ~なるほど…で終わってしまいました。 登場人物の感情に奥行きがない感じで、読者に挑戦を仕掛けている感が否めず、のめりこむ感じではなかったです。
2投稿日: 2014.09.16
球体の蛇
道尾秀介
角川文庫
モノクローム写真みたいな
両親の離婚、幼馴染の家での共同生活、時間が前後しての、大切な人達の死。 日常と過去と青年期に差し掛かる少年の変化が、ある意味淡々と時に切なく語られていく。 多分形は変わるけれど、誰もがのどに刺さった骨を持っている事を思い出させるような作品。 日常の一部を切り取ったように見せる表現力に、モノクローム写真を見たような気がする。 「人生のどっかで、生きるために生まれ直さなきゃいけない」…の中ほどの文章が、最後の「傘を買った」と結ばれた気がした。
3投稿日: 2014.09.14
暗鬼
乃南アサ
文春文庫
禁忌に踏み込んだ作品
あらすじは書籍説明にあるので割愛。もう只々ビックリ!血の絆と家族愛のテーマがこうもショッキングな内容になるとは。優しく明るい裕福な大家族に嫁いだ法子。嫁にここまで優しい家族に違和感を覚えつつ読み進める…その先は…想像を遙かに裏切られて、読後感は正直重たいものでした。 けれどお嫁さんの心象変化に目が離せず、お婆さんの存在も家族一人一人の描写にも説得力がある。 引き込まれて★5
8投稿日: 2014.09.11
泥ぞつもりて
宮木あや子
文春文庫
新たな平安恋物語
久しぶりに平安時代をテーマにした歴史小説を読みました。 今まで読んだ女流作家さんとはひと味違った表現。 政局渦巻く中での天皇、家臣、後宮に入る女たち、入れぬ女たち其々の思いと思惑。 男(天皇)も女たちも何だかいじらしく感じました。 雅な語り口が、わかりやすく、情感豊かに色香もあって新進気鋭と謳われた評判通りとおもいました。
1投稿日: 2014.08.09
白蓮れんれん
林真理子
集英社文庫
朝ドラから興味をもって
朝ドラの白蓮さんがとても存在感があって、どんな生き様だったのか興味をそそられて手にしました。 TVとオーバーラップして更にドラマチックでした。 林真理子さんの小説初めて読みました。只々食わず嫌いできてしまい、構成と筆運びが素晴らしいので驚きました。 そう長い話ではないのですが参考資料の数にも驚かされました。 時代と人間模様、100年位前の日本人、今に生きる私たち。対比すると更に面白い。
8投稿日: 2014.07.22
月に名前を残した男 江戸の天文学者 麻田剛立
鹿毛敏夫
角川ソフィア文庫
大人の伝記もの
読み始めチョット違和感がありました。何故なら小説と思って読んでいたから。 途中で気が付きました。ドキュメンタリー小説だと。この子作りすぎじゃないか…とムズムズした感覚も納得しました。 文章も違います。なぞるように丁寧に話が進みます。タイトルの通り、子供の時からの夢を叶えて、天文学者になるまでが描かれています。背景は江戸時代なのに殆ど天文に係ることしか出てきません。 人間の欲望や羨望、嫉みなども表現されていません。 それがかえって、史実に基づき忠実に描きたいという著者の強い思いを感じました。 優しい文章です。子供に返った気分で、へ~…!と思いながら読めます。
1投稿日: 2014.07.15
イトウの恋
中島京子
講談社文庫
古くて新しい
小さいお家もそうでしたが、時代描写と心的描写に引き込まれます。 年上の女性に恋する若者の回顧。真ん中に置かれたものは今の時代でもある事。 過去と現在に登場人物を置くことで、明治と平成の日本、外国と日本と対比しあいながら なにげない言葉や心の動きが、ゆるりゆるりと沁みこんできます。 続きは自分の胸のなか…的な終わり方が余韻なのか、ちょっと微妙でした。
0投稿日: 2014.05.22
