神去なあなあ日常
三浦しをん
読楽
爽やかな読後感
高校を卒業していきなり送り込まれた神去村から始まる青春ストーリー。 読み始めはこの設定あり得るかな~と感じつつも、山村の暮らしの楽しさに引き込まれていました。 山のヒル、ダニ、山から眺める風景に、私が子供のころ行った田舎も、似たような所だったなと思い出しました。大人たちがパワフルで、主人公が逞しく成長していくのを一緒に見守ったような、爽やかな読後感でした。
7投稿日: 2014.05.18舟を編む
三浦しをん
光文社文庫
言葉は生き物
辞書はこんな風に、途方もなく長い時間をかけ、地道でひたむきな仕事に取り組む人の手によって編み出されてきたのですね。 読み終えると言葉が愛おしく思え、美しい日本語を大切にしなくてはと感じました。 辞書によって個性があるというのも驚きでした。 飾っておくだけではもったいない!たまにはひも解いてみよう。
36投稿日: 2014.04.30プリズンの満月
吉村昭
新潮社
静かな
敗戦直後の巣鴨プリズンに勤務した刑務官の回想と現在を織り交ぜながら話が展開されています。 主人公の個性と刑務官という職業の洞察力が相まって、戦後の占領下という動乱期の話であるのにとても 静かに語られていくので、しんみりと心に沁みこんできます。 その静けさが満月と重なります。 学校では習わない歴史の一面ですね。いい年まで生きてるのに、知ろうとしなかった事、知らない事が沢山あるなぁと感じています。
2投稿日: 2014.04.03火の粉
雫井脩介
幻冬舎
ぞわぞわ
クライムサスペンスなのかサイコサスペンスか・・・ 刑事が事件を追いかける推理小説とはひと味違い、裁判を起点に元裁判官とその家族が蜘蛛の糸に絡められるように巻き込まれていく様子に、ぞわぞわと背筋が寒くなりました。犯人の性格は緻密に練り上げられていると感じました。気味が悪いくらいに。個々の精神描写もリアリティーがあり、家族の絆を考えさせる面もあったように思います。グイグイ引き込まれました。
6投稿日: 2014.03.02聖なる黒夜(上)
柴田よしき
KADOKAWA
作者が女性だと初めて知り、2度、ど肝を抜かれた
筆舌に尽くしがたいストーリーで度肝を抜かれた感じです。 あらすじは書籍説明にあるとおりですが、奥が知れないほど深いストーリー構成です。時系列で話が前後しながら進むので、妖の世界に入り込んでしまった感があります。 下巻にいっても渦巻くスピードは落ちません。ただの刑事ものではありません。正義、殺人、愛欲、憎悪など、これでもかという程叩きつけてきます。それでいて情感も残ります。 難しい題材を見事に昇華されてるなあと思い、今まで読んだ柴田さんの本を見ていたら、女性だったことをここにきて知り、自分自身に呆れつつ2度どぎもを抜かれた感じです。 著者近影にも興味を持つようにしようと別の感想も持ちました
0投稿日: 2014.02.23銀の匙
中勘助
岩波文庫
静寂で儚い調べ
ガラクタと共に引き出しに入っていた銀製のスプーンにまつわる幼い頃の思い出を、青年になった主人公が語り進めるお話。 大人の言葉でよくぞここまでと思うほど、子供の情感が表現されていると感じました。 時代背景は明治、話し言葉も何もかも今とは違いますが覚えのある遊びや歌に懐かしさも覚えます。 文節が長く濁点なども少なく、流れになれるまで戸惑いましたが、読みすすめるにつれ何だかゆったりとした調べに包まれたようでした。 言葉は生き物といいますが、今は使われなくなった言葉が光って感じました。
1投稿日: 2014.02.06伝わる・揺さぶる! 文章を書く
山田ズーニー
PHP新書
もっと昔に
もっと昔にこうした本に出合いたかった! 幼いころ作文や感想文が苦手だったのを思い出しました。これはあまりにも時間が遡り過ぎかも知れませんが、文意が七つの視点に分けて理論立てて書かれているので、頷いてしまう箇所が多々ありました。 自分の頭で考え他者とかかわる事の痛みと歓びを問いかけるとは、背筋がピンとなる言葉ですね。 自分の言葉や文章を見直そうと思いました。今からでも遅くないと思わせてくれる一冊。
3投稿日: 2014.02.05科学するブッダ 犀の角たち
佐々木閑
角川ソフィア文庫
好奇心
物理や数学嫌いじゃないけど、とっても苦手でした。小さい頃から。 なのに買ってしまった。全くの好奇心です。 知識に乏しいのが悔やまれましたが、進化論から物理、数学の成り立ち、プロセスと思考という点では非常に興味をそそられました。 南に広まった仏教と、中国を通って日本に広まった仏教の変遷は興味深く、反対に西洋では昔はいまにもましてキリスト教が、世間・世界の中心にあったのだなあと外枠に感心しました。
1投稿日: 2014.02.03再婚生活 私のうつ闘病日記
山本文緒
角川文庫
無題
大変参考になりました。 一番は、治るまでには時間が係るということを、改めて認識出来ました。 言葉や感情、態度など表現は人様々でしょうが、トンネルを抜け出るまでは本当に大変なんですね。 身近に心療内科に通っている知り合いがいるので、タイトルがすごく気になって読みました。 自分の日常で同じような思いを抱いた事があるなあ・・・という部分もあり、紙一重のことなのかもと思いました。
3投稿日: 2014.01.15竜の柩(2)ノアの方舟編
高橋克彦
祥伝社文庫
壮大な推理と想像力に脱帽
日本を飛び出しインドを皮切りにパキスタン、トルコとワールドワイドに話が展開していきます。 文中に「どこからそんな発想が」みたいなセリフがありますが、当にその通り!と頷いている自分がいました。 日本の神話が古代文明や宗教とをつなげるなど、本当にそうした道筋なのでは…と思い込みそうになります。 龍というモチーフは不思議と人を惹きつけるものがあります。 ラストがチョット・・・ン?となりましたが十分に楽しみました
0投稿日: 2014.01.08