hazu-haya-yuさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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南朝迷路
高橋克彦 / 文春文庫
複数のひも解き方
11
後醍醐天皇の流刑と隠し財宝に絡ませた歴史、偽装、過疎化というテーマが登場人物たちのキャラクターにより、読み応えのある展開になっていたと思います。
過疎について語る若者の言葉は今の時代でも言えてます。…言葉が地方再生に代わっただけかもしれませんね。
後醍醐天皇には権力闘争に敗れて島流しになった、くらいの知識しかなかったので逆に興味をそそられました。
捉え方で同じ事実が180度変わる…という一文が作中にありましたが、本当にそうだなあと感じています。何でもそうでしょうけど一面だけで捉えてはだめですね。
今までの歴史ミステリーとはひと味違った面白さでした。
続きを読む投稿日:2015.06.17
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父とガムと彼女
角田光代 / 文春文庫
いいな…と
11
買って2年も経っていました。やっと読みました。
リーダーにする前、紙本で数冊読みましたがこれが一番しっくりしました。
子供の頃のおぼろげな記憶ってきっと誰でも一つはありますよね。
遠くなりすぎて曖昧…になってしまったこと。
主人公が初子さんについて素直に回想されていくので読んでいて安心できました。父の死から記憶を手繰り寄せながら思い出し、母親と対峙する主人公、ラストは味のある終わり方でした。
著者の作品はどちらかというと、ぎすぎすしない人間関係の話が多かったなという薄い印象でしたが、これは好きでした。 続きを読む投稿日:2015.06.14
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去年の冬、きみと別れ
中村文則 / 幻冬舎文庫
タイトルと表紙と中身のギャップ
11
想像していたストーリーと全く違っていて、裏切られ方が面白かった。
読み始めてすぐに、歪んだ精神性の様なものを感じて、どこかで騙されそうと感じつつ
状況を反復しながら読み終えた。
残念なことに、芥川龍…之介の「地獄変」もカポーティ―の「冷血」のどちらも読んだことがなく
そこは想像するしかなかった。
登場する人それぞれの心の歪みと迷いがこれ以上深く表現されていたら、読み終えるのは
きつかったかも。そういう意味では「僕には無理」という語りのラストは落としどころかな
と思いました。
もう一度読み直してみたい1冊です。 続きを読む投稿日:2014.10.13
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うさぎ幻化行
北森鴻 / 東京創元社
残念!
11
今までの北森作品とは少し趣の違うもの。
こんな男の人いるかね?と男性像に疑問。
思いを寄せる義理の妹ともう一人のウサギさん。
こうした男に惚れるかな、こんな事まで企んじゃうかな。。。
とすべて消化不良…な感じです。
構成が昇華しきれてないような印象を受けました。 続きを読む投稿日:2017.02.08
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沈黙のひと
小池真理子 / 文春文庫
逝く者と残される者
10
30代小池作品を何作か読みましたが、濃密な恋愛話と世間離れしたようなバブリーな雰囲気
(振り返るとそんな印象)に、途中で飽きてしまい長い長い時間が経ちました。
この作品、衝撃を受けました。
私が年をと…ったせいでしょうか。
完治しにくい病にかかった家族を持ったせいでしょうか。
両親が高齢で病に侵されやすくなったからでしょうか。
若い頃、老いることに微塵もなかった不安が今は嘘のように、残りの生き方を考えるようになりました。
男の生きざま・人生と、図らずも営んだ二つの家庭。
家族のそれぞれの思いと病に侵され動くことも話すことも出来なくなる男・・・。
主人公衿子を通して語られる父、母、後妻の家族、介護、老人の性。
作者のお父様をモデルにしたとのことですがここまで内容を昇華させるに、どれほどの葛藤を乗り越えられたのでしょう。
人生の始末の付け方。望むようにはいかないのが人生。超高齢時代をどう生き抜くのか。
課題を与えられたように思います。
続きを読む投稿日:2017.01.19
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利休にたずねよ
山本兼一 / PHP文芸文庫
利休が肖像画から飛び出してきた
10
タイトルがいい。
古い肖像画の平坦なイメージしかなかった利休が、人間臭く掘り下げて描かれていてとても読みごたえがありました。時間を遡らせ、登場人物を絞ることで、美を追求する利休と戦国時代を生き抜く利休…のポジションに深みが増している様に感じました。
電子書籍だからこそ出会えた一冊だと思っています。
続きを読む投稿日:2013.11.02