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hazu-haya-yuさんのレビュー
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  • 瑠璃の雫

    瑠璃の雫

    伊岡瞬

    角川文庫

    棘のように刺さる

     父は家族を捨て家を出ていき、後に残された母と子。 母はアルコール中毒、発達障害があるかと思はれる弟と主人公の美緒。 第1部での心を閉ざしていく美緒の変化を見ていると(読むというよりは見ているような不思議な感覚)以前に読んだ「わたしは、フジコ」を思い出した。 筋立ては全く違うけれど心に溜めて渦巻く感情の塊、負のエネルギーに背筋がぞくっとさせられる。  3部立てになっており登場人物それぞれに事件と傷がある。 人には語れない過去や心の傷と罪を一生心に秘めて生きる個々の葛藤とあえぎが、点から線へと次第に大きく口を開けていく様は静かな圧巻。 「罪を赦す」が3部の大きなエネルギー、救われる思いのするラストです。

    8
    投稿日: 2014.12.22
  • ジヴェルニーの食卓[電子特別版]

    ジヴェルニーの食卓[電子特別版]

    原田マハ

    集英社文芸単行本

    さながら「美の巨人たち」書籍版

     ひたりました。楽しかったです。 まるでタイムスリップしたような、不思議な感じ。 モネの「睡蓮」を初めて見たのは〇〇年前、西洋美術館。釘づけになったのを覚えてます。 どの話も画家や取り巻く人々がイキイキとしていて、文章が心の中で「美の巨人たち」のナレーションのようにしみてきます。 その中でも「タンギー爺さん」のセザンヌに寄せる愛情あふれる言葉「いつか必ず、世間が彼に追いつく日が来る」は印象的でした。おいつけない一人だったので猶の事。  これから美術展に出かけても、鑑賞の仕方が変わりそうです。 美術館に行きたくなる!…そんな貴重な作品でした。

    6
    投稿日: 2014.12.16
  • 7大企業を動かす宗教哲学 名経営者、戦略の源

    7大企業を動かす宗教哲学 名経営者、戦略の源

    島田裕巳

    角川oneテーマ21

    興味深い

     宗教社会学って何だろう、ちょっと胡散臭い学問に聞こえるな…という斜に構えた思いは、 「はじめに」を読んで直ぐにその興味深さに胸を掴まれ、グイグイ引き込まれてしまった。 名だたる経営者の生い立ちから生まれた場所、生活や社会環境をひも解きながら、 経営者・企業に宗教が多分に影響を与えていると論じる点がとても興味深かった。 また「カリスマ」を教祖と創業者に当てはめ、企業組織を宗教組織と比較分析し、経営理念や哲学を 明らかにしていこうとする試みは新鮮に感じた。 著者が宗教学者として中立公平に論を展開される文章は親しみやすかった。

    4
    投稿日: 2014.12.05
  • 茶室殺人伝説

    茶室殺人伝説

    今野敏

    講談社文庫

    利休が絡んだ面白さ

     今野敏さんの作品はオーパーツ系の「神々の遺品」で知り今回が4作品目。 茶道を題材にした話なので当然利休が多少なりとも出てくるわけですが、 それだけで話に奥行きが出るので不思議です。 宗家の伝統と歴史と継承に秘匿の伝説がプラスされ、重くなり過ぎず読みやすかった。 家元の人柄と長男と次男の性格付けに魅力があったし、過去の因縁怨念を今生きる人に 蘇らせ、果たさせようとする着眼点が面白い。 清張の作品にもあったような…と思い出した。

    5
    投稿日: 2014.11.30
  • 箸墓幻想

    箸墓幻想

    内田康夫

    角川文庫

    読みやすい

     内田康夫を最後に読んだのはいつだったろう。 立て続けに読んでピタッと止まってしまった時間。 久しぶりに粗筋だけみて購入、内容が古墳発掘に絡むものでとても読みやすかった。 只このシリーズはテレビで俳優が変わりながら何度も放映されているので、その当時の主人公の顔が チラチラ浮かび、それがいいのか悪いのか…微妙。 頭の中でテレビの映像がオーバーラップする、文章ではなく話し言葉が浮かんでしまう。 読みやすいのだけれど、それが邪魔になる。

    5
    投稿日: 2014.11.24
  • 「報連相」は手書きにしなさい!

    「報連相」は手書きにしなさい!

    北山節子

    東洋経済新報社

    改めて

    今更ですが、必要に迫られて読んでみました。 「言った」「言わない」から「聞いてない」「やりたくない」 ホント!職場には色んな空気が流れます。 ジェネレーションギャップを埋めるため、何か知恵は無いものかと手に取り、老齢に鞭打ち格闘中。 「報連相」ずっと昔から聞かされてきたけれど、やはりアナログは廃れない、侮れない。

    5
    投稿日: 2014.11.19
  • わがふるさとは黄泉の国

    わがふるさとは黄泉の国

    半村良

    角川文庫

    アラカルトで不思議な満足度

    黄泉の国とかなり時代ががかったタイトルが気になって購入してみたら、全く個性の違う 6話のショートストーリ。 黄泉の国、出稼ぎ人の大立ち回り、民話、詩、漂流船と飛行機事故をミックスした話、 異空間・・・とバリエーション豊富。 それでいて全て独立している。 詩は子供向けであるようなのに、チクチク残酷さもあり面白い。 グリム童話は本当は残虐で怖い内容…というのを思い出した。 書かれた昭和50年代、伝奇SFは新しいジャンルだったんですね。 幼い頃に聞いた昔話が底流にある感じで懐かしく、面白かった。 こうした小説昔は興味なかったのに、リーダーになってから読む幅が広がったなぁと 自分に感心しています。

    6
    投稿日: 2014.11.12
  • お金は銀行に預けるな~金融リテラシーの基本と実践~

    お金は銀行に預けるな~金融リテラシーの基本と実践~

    勝間和代

    光文社新書

    わかりやすい!

     マスコミに登場している著者は、口角泡を飛ばす的な印象が強かったのですが、本書を読んでみてイメージが変わりました。 分かりやすく、系統立てて、解きほぐすような細やかさが文章から感じられ、なおかつ面白かった。 至れり尽くせりの組立です。 経済環境は書かれた当時と変化はあるけれど大変参考になります。 「~で儲かる、」「~が分かる」やっぱり有るわけない、そうだよね~。 「チャート分析」あぶない!重きを置いてた…と頷きながら読みました。 基礎に立ち返れる本。 若い時に知りたかった。

    4
    投稿日: 2014.10.30
  • 一条の光・天井から降る哀しい音

    一条の光・天井から降る哀しい音

    耕治人

    講談社文芸文庫

    老いる

    初めてこの作家を知りました。 どっぷり私小説で、多分私小説だろう…と検索しながら読みました。 どれも短編ですが、はっと目を留める表現が沢山あります。 高みを俯瞰させるような独特の表現で、読んでいるこちら側が「あぁ、そういう事あるかも」 と思わされました。 「そうかもしれない」は随分前に話題になったフレーズである事を思い出しました。 男性の目線で老いの生活が描かれているので、猶の事心に沁みるのかもしれません。 元気で生きていかなければならない、自然死は難しい、老いる事を考えさせられました。 読後感は悪くなかったです。

    6
    投稿日: 2014.10.23
  • 今夜もベルが鳴る

    今夜もベルが鳴る

    乃南アサ

    祥伝社黄金文庫

    懐かしハラハラ感

     サイコパスが題材の小説と気づいたのは、中程を過ぎたころ。 前半は懐かしい会話だなぁと思うくらいほのぼのとした内容で、チョット「あれ?」 っていう感じでしたが山場は中々テンポよく、一気に読めました。 携帯ではなく、固定電話という設定だからこそ味わえるハラハラドキドキ感ですね。 それもナンバーディスプレーではないからこそ。  暗鬼にも共通する匂いがある。個性的。  

    4
    投稿日: 2014.10.14