
真幻魔大戦1 超意識との邂逅
平井和正,生賴範義
e文庫
祈、早期全15巻刊行!
なかなか電子化されず近年は入手不可能だった「真幻魔大戦」、Kindleより1ヶ月遅れましたがついに刊行です。著者あとがきなど紙媒体のトクマ・ノベルズ版と同内容のものに「SFアドベンチャー」誌連載時の生頼範義氏の挿絵まで追加された完全版といえる内容です。 全15巻早期刊行を祈るのみ。そのあとは引き続き「ハルマゲドンの少女」も出してくれたらもう言うことはありません。よろしくお願いします。
8投稿日: 2016.03.09
エヴェレスト 神々の山嶺 電子特別合本版
夢枕獏
角川文庫
Reader でもストレスなし、期待して読みます。
購入しました。本編のあとに著者による「ヒマラヤ漂流 『神々の山嶺』へ」という約150ページのエッセイ写真集があり、さらに未収録写真40枚も収録とのことで結構ファイルサイズが大きいです。 私にとっては、専用機Reader (PRS-T3S) でストレスなく読めるかが実は一番不安だったのですが、本編を読むことに関してはページ送りなどで特別待たされるということもなく問題は無さそうです。安心して楽しみます。
12投稿日: 2016.03.09
カムイの剣 1巻+2巻 合本版
矢野徹
角川文庫
サンタ・カタリナ島の「おゆき」の碑
スティーブンソンの「宝島」やポーの「黄金虫」をはじめ、伝説の大海賊キャプテン・キッドの財宝をめぐる物語って古今東西たくさんあるんだろうけど、日本人ならこのお話「カムイの剣」は読んでおきたい。私はアニメ映画化で話題になっていた当時にこの小説を夢中で読みました。映画化と同時期に3巻以降の明治維新後の次郎(ジローム・カムイ)を描いた続編も発表され当時はそれも読みましたが、手元に本は残っておらずこの物語をまた読みたいとずっと思っていました。そしてついに電子書籍で2巻合本版が刊行。やっぱり一気に読みました。 元々は2巻まで上下巻のお話でしたしエンターテイメントとしてはこの合本版が最高ですね。時は幕末、蝦夷地でキッドの財宝の鍵となる日月螺細飾の短刀「カムイの剣」を手に入れた忍者太郎左、その太郎左とアイヌの娘オヤルルとの間に生まれた次郎は赤子の時に両親から引き離され、自身も忍者となり数奇な運命をたどります。主人公次郎も、宿敵天海も、超人的な忍者で凄すぎます。舞台は知床から国後島へ、船でカムチャッカ半島へ、極寒のベーリング海峡を歩いて渡りアメリカ大陸へ…。そしてその次郎の後を追う黒人の親友サムと追手のくノ一お雪、お雪になついた狼ペトロ。 「余の財宝を継ぐべき者に求むる資格は、秀れた頭脳の持ち主にして、大胆かつ冒険心に富み、七つの海をわが庭のごとく駆けまわる若者であることのみ。子孫であることも、イギリス人であることも要しない。」キッドはこう書き残していたとされています。それは人の死の悲しみを誰よりも知る若者、次郎のことだったのでしょうか。そして次郎は自らの役割をどう果たしていくのでしょうか。 この電子書籍は1巻+2巻合本版となっていますが、厳密には分冊される前の全1巻の書籍が底本と思われます。アニメ映画のほうは機会がなくて私は未だに見ていないんですが、こちらも傑作といわれています。
2投稿日: 2016.03.03
陋巷に在り1―儒の巻―(新潮文庫)
酒見賢一
新潮文庫
うれしい、また読める
私が酒見賢一という作家を知ったのは1996年のこと。平井和正さんが「月光魔術團」という小説のあとがきでその年に亡くなられた大藪春彦さんの思い出を書いていた。かつて平井和正は自作小説のあとがきで大藪春彦の小説がいかにすごいかを書き綴ったことがあるのだが、自作のあとがきで他の作家を大賞賛するような作家は空前絶後だろうと思っていたら編集者に酒見賢一さんという作家の存在を教えられたという。すごく変な気持ち、うれしいんだけどどうしたらいいのかわからない、大藪さんもこんな気持ちだったのかなあ。というようなことを書いている。もちろんそれがこの「陋巷に在り」文庫版第1巻のあとがきのことだ。 興味はあったのだけどその時はそのままで、でも書店で見かけた「陋巷に在り」第1巻の文庫本は思わず購入し、それから15年も経った2011年頃におもむろに読み始めた。で今どきの出版事情ではその頃にはすでに続巻が手に入らなくなっており、図書館で見つけて読破し運よくハードカバー全巻セットの古本も入手できた。この後興味が出て「論語」も読んだ。「陋巷に在り」のおかげで私の心の中には孔子も子路も顔回も生き生きと存在しているので「論語」がとても面白く読めた。2014年にようやく電子書籍になりこの名作を持ち歩けるようになった。すでに読破済の作品であり全巻一気にはなかなか購入できずコツコツと買い揃えている。一生の間にはまた何度も読み返せるだろう。
1投稿日: 2016.02.26
後宮小説(新潮文庫)
酒見賢一
新潮文庫
壮大なるホラ話
第一回日本ファンタジーノベル大賞にして酒見賢一氏のデビュー作となった小説ですが、受賞が1989年ですからもう四半世紀が経つのですね。いつかは読もうと思っていましたがようやく読みました。 氏の大作「陋巷に在り」などは史実が元になっていますが、この「後宮小説」は全てが作り話。正史「素乾書」にはこう記されているとか、歴史家が著した「素乾通鑑」という文献ではこう書かれているとか、もっともらしい作者の蘊蓄が入りながら歴史絵巻風に物語られますが、それらの文献も含め何もかもが作者の創作です。「素乾国」という国が「幻影達の乱(渾沌の役)」という内乱で滅亡するのですが、その最後の皇帝の正妃となる地方の庶民出身の娘の一代記という体裁で一国の存亡が語られます。小説が終わった後に作者が語る後日譚まで味があって面白いです。 新皇帝が皇太后に命を狙われているなど陰謀が渦巻いていますが、主人公「銀河」の性格からかなんとも爽やかな物語になっており、魅力的なキャラクターがたくさん登場するのでとても楽しく読めました。私の好きな登場人物ベスト3は、 1. 渾沌 - 反乱軍の参謀、冗談のような反乱が国を滅ぼすことになりましたが。 2. 角先生 - 女大学の講師、性を哲学として極めています。銀河の恩師ですね。 3. 江葉 - 銀河の同僚、後宮が解散した後は二人で市井を席巻したんだろうか。 ですかね。正妃さんをランキングに入れるのは恐れ多いのでこうしておきます。(^^)
0投稿日: 2016.01.28
トム・ソーヤーの冒険
トウェイン,土屋京子
光文社古典新訳文庫
大人も子供も読みたくなる完訳
マーク・トウェインという名が「水深2尋 (約3.6m)」という意味で、著者が若い頃にミシシッピ河で水先案内人をしていて、この深さなら蒸気船がギリギリ航行できるという合図に使う言葉なのだというのは、たぶん子供の頃に読んだ「トム・ソーヤーの冒険」の解説で知ったと思うが、この本の巻末解説ではこのペンネームが、ここまでなら小説に書けるギリギリのところを書いていくのだという決意だったのではと解釈されています。小学生の頃にワクワクしながら読んだトム・ソーヤーとハックルベリーの大冒険ですが、改めて大人になった今の自分の視点で読んでみたいと思いました。 そして大人が読むのにはこの新訳版はとてもいいです。この光文社古典新訳文庫シリーズの意図に従うなら軽く読みやすくほぐして訳すべきようなところも「マーク・トウェインの文章はゴシック建築の大聖堂のように重厚だ」という訳者土屋京子氏のこだわりで、作者の持って回ったような比喩的な表現などもそのままに原文の魅力を味わせてくれます。また、アメリカで初版のために描かれトウェイン自身が感心したという挿絵が使われているのも嬉しいですね。 もちろん児童文学ですから、難しい漢字にはルビが振られ小学生でも読めるように配慮されています。トムのいたずらに胸をときめかせたかつての少年たちも、初めてトムやハックに出逢う新しい読者の子供たちも、訳者が真剣勝負で挑んだという完訳で「トム・ソーヤーの冒険」を味わってみませんか? 私はこのまま同じ古典新訳文庫の「ハックルベリー・フィンの冒険」に進もうかな。
0投稿日: 2016.01.05
千年鬼
西條奈加
徳間文庫
希望があればどんな苦労も
不条理な人の世で、心に鬼の芽を持つ人に手をさしのべ、人が人鬼に成らぬよう鬼の芽を摘み取っていく小鬼のお話。前半はオムニバスで色々な物語が語られていきますが、第五章にしてそもそもの事の起こりが明らかになります。そして最終章はその起こりから千年後の最後のお話に。 壮大なスケールに圧倒されながらも一気に読める、上質な大人のファンタジーでした。
5投稿日: 2015.12.14
不死身ラヴァーズ(2)
高木ユーナ
別冊少年マガジン
いろんな長谷部りのが出てきます。
全3巻、読み終えました。とにかく凄い漫画です。 第1巻は中学生の甲野が出逢う甲野にとっては通算2人目の「長谷部りの」と、大学生になって最初に出逢う通算6人目の「長谷部りの」とのエピソードにページのほとんどを使い、長谷部の可愛さと甲野の真摯さが満載でした。私は何度も読み返しちゃいましたよ。 第2巻はそのぶっ飛んだ設定のもと、大学一年生の甲野に対し、下は小学三年生から上は年上既婚者とバラエティーにとんだ4人の「長谷部りの」とのエピソードです。 この後の第3巻は完結に向けてそもそもなぜこんな目に遭うのかという真相究明的な流れ(謎が謎を呼んでるだけだけど)になりますので、純粋にお話を楽しんで読めるのはこの第2巻ですね。おすすめです。
0投稿日: 2015.11.10
不死身ラヴァーズ(1)
高木ユーナ
別冊少年マガジン
最強の恋愛漫画
恋愛物は成就するまでが楽しいもの。大好きな女性にアタックして恋が実ってハッピーエンドとなるのなら、一話ごとにそれを繰り返すこの作品こそは、最強の恋愛マンガといえるだろう。 小学生で恋に落ち告白して両想いになった瞬間から「甲野じゅん」の恋愛はまた新しく出逢うところからスタートする。彼の運命の人である「長谷部りの」はその容姿こそ同じだがそれ以外は年齢なども違う全く別人として彼の前に登場する。それでも彼は彼女を必ず一目で見分ける。そしてその時点では彼女は彼のことを全く知らない。甲野は恋愛が成就するたびに、他のすべてが同じなのに運命の人「長谷部りの」の設定のみが異なるパラレルワールドを移動しているのだろうか。 「好きだから」甲野の純真さがこの作品を輝かせる。講談社のサイトで第一話が読めます。気に入ったら続きを読んでやってください。多くの人に読んでもらうことが主人公甲野の救いになると思うから。
0投稿日: 2015.11.04
スローカーブを、もう一球
山際淳司
角川文庫
スポーツは人生ってやつを教えてくれるんだ
1995年に急逝したスポーツ・ノンフィクションライター山際淳司氏の最初の単行本、1981年に出版されたものでスポーツをテーマにした8編が収録されています。モスクワオリンピックの開催が1980年で日本はボイコットし目標を失った多くの選手が涙しましたが、その頃に書かれたのがこの作品集です。 高校野球史に残る箕島×星稜戦延長18回の激闘、プロ野球日本シリーズ近鉄×広島戦「江夏の21球」、共に1979年の出来事なんですね。当時中学生だった私はどちらもリアルタイムでテレビ観戦していました。刻々と変化する局面、一球ごとの間合い、山際氏の文章を読んでいると野球というスポーツが日本に根付いている理由がわかるような気がします。 丁寧な取材で当事者達の心境を私たちに伝えてくれた山際氏、当時のスポーツ観戦の思い出と共に山際氏の文章も私の青春の一コマです。
0投稿日: 2015.10.09
