
童話物語(下) 大きなお話の終わり
向山貴彦・著,宮山香里・絵
幻冬舎文庫
人生はいつも旅の途中
ネット上のレビューなどが高評価だったのでキャンペーン期間中に上下巻を同時購入したものの、上巻「大きなお話の始まり」は主人公ペチカの視点でお話が進むのですが、文章は子供っぽいし主人公に魅力はないし失敗だったかなと思ってしまいました。それでも次へ次へと読ませる不思議な力はあるようで結局上巻を読了。 下巻「大きなお話の終わり」ではもう一人のルージャンのお話とペチカのお話が交互に展開します。このルージャンのお話のほうが面白くて、またペチカのお話のほうにも花屋夫婦とか鉄道機関士の女性とか新しい登場人物が出てきて面白くなり一気に読んでしまいました。 ということで、上巻を読んだけど今一つかなという人でも上巻を読み切れたなら下巻は楽しく読めると思います。登場する町の位置関係などは上巻巻頭の地図を確認しながら読むとわかりやすいですが Reader ではこの地図が見にくいです。タブレットなどで地図を確認しながら Reader でお話を読み進めるのがいいかと。
3投稿日: 2016.09.27
生頼範義イラストレーション 〈幻魔世界〉
生頼範義
角川書店単行本
奇跡の画集、でも Reader では閲覧できません。
伝説のイラストレーター生頼範義氏による、平井和正氏の小説のカラーイラストやモノクロ挿絵を集めた電子画集です。小説の出版社は、早川書房、祥伝社、角川書店、徳間書店にまたがっていますから、もとになった画集が徳間書店から出版された当時もこれは感激ものでした。私は古本で買ったもとの画集も持っています。しかしこの電子画集はその画集を電子化したというだけでなく、すべてのイラストのデータを原画から取り直したもので、拡大すれば肉筆のタッチまで見えるようです。もとの画集では1ページに数枚をまとめて小さく掲載されているイラストもありましたが、この電子画集はすべてのイラストを詳細な大画面で見ることができます。さらにもとの画集刊行後に発表されたカラーイラストが追加されています。圧巻は徳間文庫版「真幻魔大戦」の表紙カバーイラストですね。徳間文庫版「真幻魔大戦」の時期の生頼氏のイラストって到達した極点みたいな圧倒的なものを感じるのですが、順次電子化されるであろう小説「真幻魔大戦」は徳間ノベルズ版に準じたものになると思われますので、文庫版のカラーイラストはたぶん収録されないでしょう。それだけでもこの電子画集を購入する価値があります。 唯一のマイナス点は Reader で閲覧できないなことかな。詳細なカラー表示が不可能な Reader でこの画集を閲覧する必要はないんだけど、それでも閲覧可能にしてほしかったと思うのです。そもそも専用機で見れないのなら Reader Store で購入する利点もないのですが、Andloidタブレットでサンプルを見比べたときに Kindle よりこちらのほうがベージ送りのレスポンスがよかったことと、Reader への応援をこめてこちらで購入しました。 まったくの蛇足ですが、私が持っている徳間ノベルズ「真幻魔大戦」11巻の書籍は真ん中で割れています。それは73ページ時空の関門でのベガと小角が描かれた挿絵が好きすぎて、当時コピーを取ろうとして本を広げたら割れてしまったのです(泣)。この画集にはそのイラストももちろん収録されています。なんて幸せなんだろう。
2投稿日: 2016.08.20
夜明けを知らずに ―天誅組余話―
仲町六絵
メディアワークス文庫
子分は夜雀
幕末に尊攘志士が起こした「天誅組の変」、時代を先駆けた天誅組でしたが朝廷の後ろ盾を得ることができず逆賊となってしまい、わずか5年後の明治維新を知ることなく南大和で散りました。私は天誅組という名は聞いたことがありましたが内容はよく知りませんでした。そのドラマを十津川郷士の少年の目から余話(こぼれ話)として描いた物語です。ファンタジー色のあるお話しですし史実とは異なるところもあるでしょうが、すらすら読めてイメージは掴みやすかったです。 主人公の雅楽(うた)は野崎主計の弟、ヒロインは梅田雲浜の娘と設定されています。野崎主計とその師である梅田雲浜は歴史上の実在人物ですが、主人公の少年少女は作者の創作でしょう。少年の目から見る天誅組の吉村虎太郎はとてもいい人に、中山忠光はいやな人に描かれています。ケガをした少年を治療した女医の榎本住も実在の人物ですね。榎本医院は御所市に今もあります。読後、作中に出てきたもの(人物など)をネットでいろいろ検索してしまいましたが、夜雀って妖怪なんですね。そしてやっぱり玉置山には特別な神様がいるようでした。
2投稿日: 2016.08.04
霧こそ闇の
仲町六絵
メディアワークス文庫
「お前さま?」
舞台は戦国時代の大和国筒井の里、時の城主は筒井順興。その筒井家の典医を務める義伯(ぎはく)とその妻狭霧(さぎり)の物語です。病人にまとわる物の怪が見える狭霧、あることから狭霧は自身の出生の秘密を知ることになります。春日山の神の御使いの母狐が、死の間際に最後の力で子狐を人間の赤子の姿に変えたことを。 電撃大賞メディアワークス文庫賞を受賞した「典医の女房」は第1章にあたり、独立した短編小説だったそうです。3か月後に書籍化することになり続きを書き加えたとのことですが、その書き加えたという続編がさらにすごい展開になります。 戦国の世で運命に翻弄されながらも愛する夫と我が子の幸せだけを願って行動する狭霧。そして狭霧の秘密に気付き会えなくなっても狭霧を想い続ける義伯。話はやるせない思いを漂わせながら進みますが終章は感慨深く、本当にいい話を読ませてもらえたと思えました。 一人でも多くの人に読んでもらいたい伝奇小説です。まだ未読のあなたもぜひ。
1投稿日: 2016.07.11
人狼天使(3)
平井和正,生頼範義
NON NOVEL
犬神明は永遠に
アダルト・ウルフガイ・シリーズとして書かれた最後の作品です。アダルト外伝の「若き狼の肖像」は本作「魔王の使者」の数か月前に出版されましたので、あとがきにあるとおり本作が第1期ウルフガイの最後の1冊になります。この後は長大な幻魔大戦シリーズを挟んで少年のほうのウルフガイは完結篇まで書かれましたが、アダルト・ウルフガイはもう読めません。遺作となった「幻魔大戦deep トルテック」に犬神明は少しだけ登場するんだけど、もう主役じゃないしこのお話の続きにはなりません。だから犬神明は永遠の30代? 私の生涯においても別格の輝きを持つ特別なキャラクター、もうとっくに年齢抜かしちゃったなあ。
4投稿日: 2016.06.24
ボヘミアンガラス・ストリート 第2部 やさしい嘘つき
平井和正,高橋有紀
e文庫
現代の神話
ちょっと読んでみただけでは馴染めないなと思う人がいるかもしれない。この物語の主人公は大上円(おおかみ・えん)、ヒロインは百合川螢(ゆりかわ・けい)、二人は出会った瞬間から相思相愛。円君の心には常にホタルへの深い愛がある。にもかかわらず円君は次々と現れる素敵な女性たちに愛情を感じ、愛の告白を繰り返し振り回され続けている。性描写は具体的だし、円君も三つ子の妹たちも高校生なのにお酒を飲んで大騒ぎしたりする。子供の読者もいるだろうにこんなの読んで大丈夫だろうか、などと思ってしまう。 でもこれはとんでもなくすごい小説なのだ。「ボヘミアンガラス・ストリート」は現代を舞台にした神話なのだ。神様の物語の世界はなんでもありなのだ。常識的な感覚にとらわれている人は一度読んだくらいでは理解できない。でも安心だ。小説は読みたくなったら何度でも読みかえすことができる。電子書籍なら全9巻の作品もいつでも手元においておける。1巻のレビューで初読当時の私はよくわからなかったことを白状した。この電子書籍が発売されて1か月が経った。私はなぜか4巻途中から読み始め最後まで没頭し胸がいっぱいになって、また最初から読んでいる。おかげで毎日が楽しい。まだしばらくはこの世界を楽しむつもりだ。 文章の端々にいろんなことが示唆されている、読み返すたびに気付くことがある。驚きがあり思わず微笑んでしまう。そして私はまた、素敵な物語を残してくれた平井和正に心から感謝するのだ。
1投稿日: 2016.04.21
ボヘミアンガラス・ストリート 第4部 ランデヴー
平井和正,高橋有紀
e文庫
新装版の表紙イラスト
この新装版「ボヘミアンガラス・ストリート」の新しい表紙イラストで一番のお気に入りはこの4巻だ。どう見たってコスギだよなあ。なんかかわいいぞ。ていうか小杉杏子って4巻でもう登場してたっけ。うろ覚え。 さっそく第4巻から読み始める私。おお出てる。ということで5巻、6巻、7巻・・・と、茶髪コスギが登場している場面ばかりをチョイスして先に読んでしまった。
1投稿日: 2016.04.06
となりの怪物くん(13)
ろびこ
デザート
これで本当におしまいです。
ひたすら愚直な二人のひたすら愚直な恋愛物語「となりの怪物くん」もこれで完結。各話の後にある4コマ漫画、その他おまけも含めとても楽しく読みました。この第13巻は番外編で、本編の主役である水谷雫と吉田春以外のキャラクターの目を通して語られるサイドストーリー4篇が収められています。登場人物たちにはまたそれぞれの物語があり、作品が終わっても余韻を楽しみたい読者へのプレゼントといえるでしょう。ちなみに各話の主役は第1話がササヤン、第2話が伊代ちゃん、第3話が優山さん、第4話が隆也くんです。 最後のお話では雫の5歳年下の弟隆也が高校生になっており、春と雫の結婚式まで描かれています。まさか名古屋(ニワトリ)の出番がここまであるとは思いもしませんでした(12巻では表紙にまで出てるし)。披露宴の5次会で酒を飲んでグダグダの夏目さんがヤマケンに絡んでいる巻末おまけ漫画まで、最後まで楽しい全13巻でした。
1投稿日: 2016.04.04
となりの怪物くん(6)
ろびこ
デザート
人生が素敵に変わる出会い
恋愛物の少女漫画です。中年のおっさんの私がこの作品を読むなんて普通はないよなあ。電子書籍でなけりゃ気恥ずかしくて購入することなんかありえないし、そもそも講談社がよくやってる3巻まで無料でダウンロードできるようなキャンペーンでもなけりゃ目に触れることもなかっただろう。そんな偶然が重なってたまたま読んでみたらあまりに面白くて…。ということです。素晴らしい漫画に出会えたことに感謝。 この作品は全13巻ですが本編は12巻までだそうで、ちょうど中間点のこの第6巻まで読んだとこでちょっとレビューを書いてみました。でも何がどう面白いのか書こうと思ってもなかなかうまく説明できません。うーん、主人公のシズクを好きになるかにもよるのかなあ。私はこの娘が好きだ。とにかくコマの隅々にまで作者ろびこさんのキャラクターたちへの愛情が、特にシズクへの愛情がすごく伝わってきて読んでいてとても楽しいです。友達のいなかった二人が出会ったら周りに素敵な友達たちが集まってきましたね。 で、この第6巻は高校1年生の2月14日、ハルと出会って初のバレンタインデーでありシズクの16歳の誕生日でもあるその日のお話です。シズクは本命チョコとかにもそんなにこだわりないみたいだったのに、ハルのくれたあたたかさに思いがあふれちゃったんだね。結果良ければすべて良し。ハルに自分の気持ちをちゃんと伝えることができて本当によかったね。
1投稿日: 2016.03.22
ボヘミアンガラス・ストリート 第1部 発熱少年
平井和正,高橋有紀
e文庫
電子書籍の歴史はここから
ストア入荷直後に衝動買いしちゃった。かつて酒見賢一氏が「陋巷に在り」文庫版のあとがきで絶賛していた伝説のオンライン出版小説がこの作品です。パソコン通信でこの小説が書下ろし配信されたのは1994年11月だという。TXTを圧縮したファイルをダウンロードするシステムで当時の資料(単行本第1巻巻末の広告)によれば料金はネット会社により時間課金30円/分、または1冊700円となっている。私はまだパソコン持っていなくて3か月後にアスペクトから紙の本が出版されたのを買いました。 私がパソコンを入手し初めて Nifty Serve を利用したのはその年1995年の秋頃。書籍に使われていた高橋有紀さんのイラストのBMPファイルが Nifty でもダウンロードできて、そのファイルは巡り巡って今使っているパソコンの中にも入っている。縦480pxだから小さなイラストなんだけどね。実はそのイラストのうちモノクロの数枚を縦960pxに拡大して Reader のスリープモードのスタンバイ画面としてずっと使っている。だから実はほぼ毎日ブックカバーを開く瞬間とかに高橋有紀さんによるホタルや小雪ちゃんたちの顔を見ている。 で、この電子書籍だけど、イラスト高橋有紀とあるのでつい期待してしまったが、アスペクトの書籍に収録されている高橋有紀さんのカラー口絵やモノクロ挿絵は付いていません。新しく書き下ろされた表紙イラストのみでした。ちょっと残念だったなあ。e文庫の公式ツイッターがその情報を流したのはこの電子書籍が販売された1時間後だった。私はその前に買っちゃったぞ。まあ新しいイラストでホタル、小雪、伊福部、コスギ、…、と順にみんなに会えるのも楽しみだけどね。 いろいろ書いたけど私、発売当時は途中経過はとても楽しくこの小説を読んだのですが、実はエンディングがよくわからなかったのです。当時最終巻に感動したというみんなの感想をよく見たように思うが、私はキョトンとしていた。今ならわかるかな? Reader での再読が楽しみだ。
3投稿日: 2016.03.17
