
レッドスワンの飛翔 赤羽高校サッカー部
綾崎隼,ワカマツカオリ
メディアワークス文庫
この続きを読めるのはいつ
レッドスワンサーガ第4弾「飛翔」からが2年目のシーズン、主人公たちは高校3年生です。セカンドシーズンの物語が何冊か揃ったらまとめて読もうと思っていましたが、なかなか次巻が刊行される様子がない。待ちきれなくなって読み始めたがやっぱりあっという間に読了。期待通りの面白さでした。続巻刊行を切に願います。 今作はインターハイ出場をかけた新潟県総体決勝戦まで。1点ビハインドの後半アディショナルタイム残り1分に "ガラスのファンタジスタ" と揶揄されつづけた主人公高槻優雅がついにフィールドに立つ。偕成学園の加賀屋はいいやつですね。清々しいです。 (世怜奈監督うわずってない? 優雅と交代でベンチに下げた紫苑に指示出してる。)
0投稿日: 2020.02.11
レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部
綾崎隼,ワカマツカオリ
メディアワークス文庫
作り話とわかっていても夢中になる試合描写と個性的な選手たち
高校サッカーの小説。 キャンペーン最終日に何気なくこの「レッドスワンの絶命」を手に取ったのが運の尽き。その日の夜、寝る時間も削ってのめりこんでしまった。そしてその後の展開が気になって仕方がない。キャンペーンが終わって定価販売に戻っていた第2部「星冠」、第3部「奏鳴」も立て続けに購入し毎晩寝不足。第1期は3冊みたいなのでとりあえず一息。いやあ面白過ぎました。 物語の舞台となるのは新潟県の古豪ながら近年は低迷する私立赤羽高校サッカー部。物語の最初からいきなり、1年生ながらチームのエースである主人公は無理がたたって選手生命を絶たれるような大ケガ、監督は病に倒れ、最上級生の不祥事による制裁で翌年度出場を許される公式戦は夏の総体と冬の選手権の県予選のみという状況。新年度のチームの監督にはお嬢様の美女が就任し、あきれた3年生たちはほとんどが退部。さらに学校内では夏の県総体で決勝戦に進出できなければ即廃部という条件まで付けられてしまう。サッカー部はまさに絶命の危機。しかし、この女性監督が実はサッカー指導者として物凄い才能を持っていた。 主人公の高校2年生期を描いた第1期は全3巻ですが、この後チームの主力が3年生となったセカンドシーズンを描く第4部以降が続々と刊行されるようですし、おそらくは全国の舞台でレッドスワンと対戦することになるであろう青森県の市条高校サッカー部を描いた「青の誓約」という短編集もあるようで、楽しみはまだまだ続きそうです。
0投稿日: 2019.12.04
室町繚乱 義満と世阿弥と吉野の姫君
阿部暁子
集英社文庫
楠木正儀の生き様
「義満と世阿弥と吉野の姫君」このサブタイトルは要らないんじゃない。というか作中でそれ以上に活躍するのが楠木正儀と観阿弥 (特に後半) 、本作ではこの二人が実は従兄弟という説を採用しています。 主人公の内親王「椿宮透子」様は創作かな。南朝の亡き後村上天皇の末子で今上帝の妹にあたる数え13歳の姫君という設定です。表紙は長い黒髪をバッサリ切って男装し吉野の行宮を抜け出すところ。黒髪と衣装が高く売れて旅の資金にしようとしたもののいきなり置引きに金品を奪われ、なんとか京都にたどり着いて道を尋ねたら女子供を攫って売買する人売りで、という漫画のような始まりですが、しっかりとした考察のうえに成立する物語の絶妙な展開がすばらしく、また登場人物たち (鬼夜叉、義満、正儀、宗良親王ら) のセリフ一言一句が心に響きます。 (これうまく実写映画化したら大作になるんじゃないかなと思います。) 南北朝の無益な対立を和睦で終結しようとしながらも志かなわず病に倒れた後村上天皇。後村上天皇亡きあと南北朝統一の実現のため自身は汚名をかぶって生きる楠木正儀。「ありがとう、正儀」報われぬ楠木正儀をねぎらうために一遍の小説が誕生したのかもしれません。 (Wikipediaの楠木正儀の解説もすごいなあ。)
0投稿日: 2019.09.06
生者の行進 1
みつちよ丸
少年ジャンプ+
全3巻一気読み
以前なぜか他所のサイトで試し読みして気になってました。思い立って全3巻を購入し一気読み。読むのを途中でやめられない面白さはあります。3巻で終わっちゃうのであっけない感じはしますけど、ぐだぐだ引き延ばされるよりずっといい。 読むか決めるのは「試し読み」を見てからにしてください。続きを読みたいと思った人にはお薦めです。 デビュー作だけあって作者の愛情が注ぎ込まれた作品のように思えました。電子書籍なのにカバーの折り返しやらカバーを取った本体の表紙までちゃんと収録されてますよ。 しかし、出産・子育てと同時に漫画家デビューって大変だっただろうなあ。
0投稿日: 2019.08.24
あやかしとおばんざい ~ふたごの京都妖怪ごはん日記~
仲町六絵
メディアワークス文庫
全2巻、もう少し読みたいと思えるくらいがちょうどいいのかも。
直史の友人として何気に大塚信介君が登場します。からくさ図書館の常連客の高校生は本作の主人公と同じ大学に進学したようです。 でもこのお話は2巻で終わりなんですね。もう少し読みたいなって思いましたけど、将来の職業とか考えていなかった直史も2巻最終話では進路を決めたみたいですし、仲町さんは「からくさ図書館来客簿」とリンクした京都のお話をこれからも書いていくようですので、またほかのお話で直史たちと会えるのかもしれませんね。
0投稿日: 2019.07.22
午前0時のラジオ局
村山仁志
PHP文芸文庫
偶然知った作者さん、どんなお話を書いてるのかなと
真面目な主人公の優くんも、かわいいアシスタントの佳澄ちゃんも、もう幽霊が当たり前になってしまって、普通の人間と同じように接してる。二人の成長は微笑ましく今後の展開もそりゃあ気になるけど、ディレクターの陽一さんには今作のエンディングで成仏してほしかったなあ。 たくさんの本が出版されている中で、偶然に出会った縁に不思議を感じます。とても楽しく読みました。
0投稿日: 2019.06.14
どこよりも遠い場所にいる君へ
阿部暁子,syo5
集英社オレンジ文庫
まさかの地母神様
主要キャラクターたちがそれぞれ事情を抱かえているようなのですが、序盤はその事情がわからないので感情移入できず、なかなか作品に入り込めませんでした。 中盤でキャラクターたちの過去がわかってくると、その後の展開が気になり、またそれらを包み込むおおらかな世界が心地よく一気に読んでしまいました。 読みおわって改めてタイトルを見てその壮大さに感激。このタイトルは作品世界を造りあげた地母神様のメッセージなのかも。物語は少年視点なのにね。
0投稿日: 2019.05.20
でんでら国 上
平谷美樹
小学館
百姓が自由に生きれる夢の国
主人公の善兵衛、60歳になって姨捨てされる身。が、でんでら野に向かう心は浮かれてる。何がそんなに楽しいのか? 江戸時代、生きている限り身分制度に縛られ、百姓は年貢を納めなければならない。でも60歳になって姨捨された年寄りたちはもうこの世の住人ではないわけで、表向きは死人扱い。山の奥の「でんでら国」でこの世の制度に縛られずに生きている。もう年貢を納める必要もない。自分たちで作った米は全部自分たちの自由に使える。 作中では年貢を増やすため隠田を暴こうとする侍たちとの駆け引きがあるわけだが、でんでら国の住人は侍にそんざいな口をきいたってかまわない。亡者はもう身分制度の外にいる。領主の前に出たって堂々としていていいのだ。 でもね、あの世の祖先たちにとって現世の住人は、いざという時は助けてやりたいかわいい子孫たちなんですよね。
0投稿日: 2018.05.06
天盆
王城夕紀
中公文庫
すべての駒に意味がある
C★NOVELS大賞で作品傾向が違うからと特別賞になった作者のデビュー作だそうです。作者は「書きたいことを書いて、はたして受けいれてくれるところがあるのか」と賞の行方を不憫に眺めていたそうですが、面白い本を待っている読者はいっぱいいます。出版社は作品をちゃんと広めてほしいですよね。 物語はかつてどこかにあった蓋という小国が舞台のファンタジー。タイトルの「天盆」とは縦横12マスの盤上で繰り広げられる盤戯のことで、取った手駒が使えるなど日本将棋に似たゲームです。この天盆というゲームの設定もマニアックで面白い。そしてこの国では天盆が国を治める人物を見極め登用する手段にもなっているのです。 一家が住むのは隣国との国境近い東塞の南街、家族は百楽門食堂を営む少勇と静の夫妻に13人の子供たち、上から一龍、二秀、三鈴、四鈴、五鈴、六麗、七角、八角、九玲、十偉、士花、王雪、凡天。ちなみに士、王はその字形から天盆の11マス目12マス目のこと。一応の主人公はとにかく天盆が大好きで天賦の才能を開花させる10歳になる末っ子の凡天ですが、家族はじめ彼を取り巻く周りの人々みんなが主人公かも。 盆塾に入れてもらえない凡天と二秀の師となる翁は無峰。東塞の代表を決める東盆陣のライバルは李空、帳君、懐円、紅英、永涯ら。その覇者は東西南北の代表が集う都の天盆陣に登陣します。しかし凡天の躍進を抑えこまんと百楽門食堂が狙われる。混乱の中を六麗が、十偉が、九玲が駆けぬけ、少勇が微笑む。そして繰り広げられる天盆陣。テンポよく進む物語はまるで痛快な劇場映画を観ているよう。さあ夢物語をみんなで読みましょう。 (文庫化前のレビューをこちらに移植。元の投稿日:2016.12.13)
1投稿日: 2018.04.26
雨の日も神様と相撲を
城平京
講談社タイガ
二本足で相撲を取るカエルの新技なんて、普通は考えつきません。
最終第5章の怒涛の展開にびっくり。中学生の思考とはとても思えない主人公の文季、こいつ何者。神話的ファンタジーの世界だと思っていたら、何事も理詰めで解釈する彼にかかるとサイエンス・フィクション (SF) だった。私にとってのSFは「少し不思議」のほうだったんだけど、これは本当のサイエンス・フィクション。ミステリーのほうは、無くても作品は成立していたし私には蛇足感がありました。 結局何が言いたいのかというと、びっくりするほど面白かった。
0投稿日: 2018.04.24
