Hachiroさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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千年鬼
西條奈加 / 徳間文庫
希望があればどんな苦労も
5
不条理な人の世で、心に鬼の芽を持つ人に手をさしのべ、人が人鬼に成らぬよう鬼の芽を摘み取っていく小鬼のお話。前半はオムニバスで色々な物語が語られていきますが、第五章にしてそもそもの事の起こりが明らかにな…ります。そして最終章はその起こりから千年後の最後のお話に。
壮大なスケールに圧倒されながらも一気に読める、上質な大人のファンタジーでした。 続きを読む投稿日:2015.12.14
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狼の紋章
平井和正, 生頼範義 / NON NOVEL
小説家平井和正、伝説の一冊
5
当時の平井和正は大ヒットしたTVアニメ「エイトマン」などで漫画原作者、脚本家としては認知されていたと思えますが、小説家としては不遇の時代を過ごしていました。そんな時代に出版された「狼の紋章」。
この…一冊が時代を変えた。まあ日本の文芸界では全く無視されたでしょうが、それはエンターテイメントの世界に新たな風が巻き起こった瞬間だったと思います。この小説を読んだ人が、その後のSF、漫画、映画など様々な分野で新たな時代を創っていきます。そんな伝説の一冊。アウトローな絶望的な、しかし読者はその暗闇の中に光り輝く星を見つけるでしょう。たぶん。
この作品は全19巻(祥伝社から出版されたのは4冊)の長大な大河小説の第一作にあたりますが、これ一冊だけで小説として成立していますしエンディングもきれいに終わっています。平井和正を知らない人もこれだけを読んでみるというのもいいですよ。(この後の作品に付き合いだしたら泥沼にはまっちゃいかねないし(^^; …。)
参考までに、
本作は私の大好きな「アダルト・ウルフガイ・シリーズ」とは別のものです。お間違いのないように。
この小説は現時点では平井氏の小説で唯一、英訳されたものが海外で電子書籍になっています。これからも世界で新たな読者に衝撃を与えてゆくのでしょう。
https://www.amazon.com/dp/B014QBPG02/
また今回の本作の電子書籍化とほぼ同時期に、同じシリーズの「月光魔術團」も電子書籍が刊行開始されました。こちらは全37巻ありライトノベルに分類されています。本作の延長上の世界軸にある少し未来のお話です。私も付き合いきれてませんが興味のある方はどうぞ。 続きを読む投稿日:2017.07.23
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からくさ図書館来客簿 第二集 ~冥官・小野篁と陽春の道なしたち~
仲町六絵 / メディアワークス文庫
春の京都
4
第2集の季節は春、3月下旬から5月の葵祭までを描いた4つのお話です。シリーズ6冊で1年を巡るのですね。京都の四季を感じながらゆっくり読んでいこうかな。
この巻最後のお話を読んでいる途中で、普段は車で…通り過ぎていた奈良県御所市の某神社を初めて参拝しました。(^^) 続きを読む投稿日:2017.04.19
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失われた超大陸パンゲア文明「アスカ」の謎
飛鳥昭雄, 三神たける / 学研
おふざけに付き合うにはちと値段が高かった
4
「古代文明フェア」というので思わず購入してしまった。日本人の心の故郷ともいうべき「飛鳥」の地名のルーツがシルクロードの向こう側にあった、というのは興味深い。私こういう話は好きなんだけどね。如何せん話を…盛り過ぎ、読みながら「それはない」と思わずツッコミ入れてしまう…。そのせいで作者に対する信憑性が欠落してしまい、言ってることにリアリティが持てず途中で読む気が失せてしまった。今時はこんなのでも売れるの?
ネタは面白そうなのにね。古代文明とか興味あるんだけどこれはお粗末。本文中でも触れられていますが元ネタは五島勉氏の「幻の超古代帝国アスカ」という本だそうです。 続きを読む投稿日:2017.02.06
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人狼天使(3)
平井和正, 生頼範義 / NON NOVEL
犬神明は永遠に
4
アダルト・ウルフガイ・シリーズとして書かれた最後の作品です。アダルト外伝の「若き狼の肖像」は本作「魔王の使者」の数か月前に出版されましたので、あとがきにあるとおり本作が第1期ウルフガイの最後の1冊にな…ります。この後は長大な幻魔大戦シリーズを挟んで少年のほうのウルフガイは完結篇まで書かれましたが、アダルト・ウルフガイはもう読めません。遺作となった「幻魔大戦deep トルテック」に犬神明は少しだけ登場するんだけど、もう主役じゃないしこのお話の続きにはなりません。だから犬神明は永遠の30代? 私の生涯においても別格の輝きを持つ特別なキャラクター、もうとっくに年齢抜かしちゃったなあ。 続きを読む
投稿日:2016.06.24
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からくさ図書館来客簿 ~冥官・小野篁と優しい道なしたち~
仲町六絵 / メディアワークス文庫
いい本に会えました
4
私が普段の生活で小説を読むようになったのは Reader を入手してからなのでここ3年くらい。本屋さんの文芸コーナーなどは実はもう何年と覘いたことがありません。ですから好きな作家を挙げても片手で余るの…ですが、仲町六絵さんはその貴重な一人です。しかしながら、シリーズ化され仲町さんの代表作といえる本作なのに、少女趣味な表紙イラストを敬遠して手に取ろうとしませんでした。このたび Reader Store のポイント還元キャンペーンのおかげでよい出会いが訪れました。電子書籍は本当にすばらしい。
主人公の篁(たかむら)は平安時代初期に実在した人物ですが、その人が現代の京都でおしゃれなカフェ図書館を開いています。不思議な伝承を残している人のようですが、私はこの本を読むまで全く知りませんでした。ヒロインの少女も同時代に実在した方です。連作でこの本には4つのエピソードが収録されていますが、読み進めると少しずついろんなことがわかってきます。各話に登場するのは基本的にいい人ばかり、篁は自分の職務を事務的にこなすだけでなく、かかわった人が少し幸せになるのが素敵ですね。それで後で始末書を書いたりしてるのが微笑ましいです。 続きを読む投稿日:2017.02.14