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N.Yokoyamaさんのレビュー
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  • 隠れていた宇宙(下)

    隠れていた宇宙(下)

    ブライアン・グリーン,竹内薫,大田直子

    ハヤカワ文庫NF

    後半は少し期待はずれか

    (上)からの続きだが、読んでいて全体的にあまり興味がわかなかった。 ひも理論から予想される多宇宙や、量子力学の情報理論については、確かに興味深い内容だとは思うが、シミュレーションの話でも、いまひとつのめり込めなかった。 最初に読んだ著者の「エレガントな宇宙」は非常に面白くて印象に残っているが、あの時の様な興奮や感動がなかったというのが、読後の正直な感想である。 あとがきで竹内さんが書いていたが、現代物理学はSFと区別がつかなくなっているらしい。応用数学が物理学としての研究分野に入り込んでいるからなのだろうか。自分が学生の頃には、まさにSFだと思ったことが、21世紀になって観測や実験などで明らかになってきた。ひも理論は確かに現段階では奇想天外な結果を生み出すものかもしれないが、これも後になってみれば、「あの頃はSFだったが...」となるのだろうなと思う。

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    投稿日: 2020.11.29
  • 隠れていた宇宙(上)

    隠れていた宇宙(上)

    ブライアン・グリーン,竹内薫,大田直子

    ハヤカワ文庫NF

    多宇宙やいかに

    前半読了。 以前、同じ著者の「エレガントな宇宙」を読んで非常に興味深く、読みやすく書かれた内容だったので、続編を読む様な感覚で読んでみた。 ひも理論を中心に最先端の理論物理が紹介され、それらを用いた宇宙論が展開されている。一般向けに書かれているため、数式等はなるべく使わず、かなり詳しいところまで、工夫されて書いているという印象を受けた。 著者は、理論物理の専門家であるが、一般向けに広く執筆活動をされており、話の内容も分かりやすく述べられていると思った。読んでいて、興味をそそられる書き方であり、結構楽しく読めた。 後半は多宇宙などの内容が述べられる様で、どんなことが書かれているのか楽しみである。

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    投稿日: 2020.11.29
  • ここまでわかった! 日本書紀と古代天皇の謎

    ここまでわかった! 日本書紀と古代天皇の謎

    『歴史読本』編集部

    新人物文庫

    日本書紀をじっくり読みたくなる

    非常に興味深かった。 古事記や日本書紀の神話の部分は、確かに神話ということで作り話だと軽んじてしまうことがあるかもしれない。しかし、その神話を読み解くことで、当時の政治思想や風俗などが浮かび上がってくることがわかった。 古代の日本の天皇については、興味を持っていたし、古事記と日本書紀で記述の異なるものがあり、その理由も知りたかった。なんとなくわかった部分もあり、もう少し関連する文献を読んでみたいと思う。 意外と通説だと思われている話も、実はよく読んでみるとそうではないのでは...と思う様な内容もあり、面白かった。 もう少し、じっくりと日本書紀を読んでみたくなった。

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    投稿日: 2020.11.29
  • 私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

    私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?

    森博嗣

    講談社タイガ

    サイバー空間というのが面白い。

    森博嗣Wシリーズ第5作 今回は、特に激しいドンパチはなかったが、3人ともテルグに集まったときは、ちょっとやばいのではないかとドキドキした。毎度のことながら、最初からだれかが死ぬ(あ、助かったのだったか)様な物騒なことが起きるわけだが、電脳空間ともいうべき特殊な場でのやりとりが多く、激しい戦闘シーンはないものの、物語は面白かった。 デボラとハギリ博士の友情の様な絆の様な奇妙な関係は、今後も面白い展開を見せてくれるだろうと期待できる。ウグイとアネバネのテルグでの、いつもと違った描写はなかなか興味深い。

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    投稿日: 2020.11.29
  • 偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか

    偉大なる失敗 天才科学者たちはどう間違えたか

    マリオリヴィオ,千葉敏生

    早川書房

    天才の失敗は偉大だ。

    非常に興味深い内容だった。 どんな天才でも、必ず失敗はあるということがわかったが、天才は「転んでもタダでは起きない」を地で行くのかもしれないと感じた。本書で紹介される有名な科学者の失敗は、単なる間違いに留まらず、周りに強い影響を与えるものだと紹介されている。 本書で紹介される科学者はいずれも馴染みがある名前だが、ダーウィン、ポーリングは分野にあまり詳しくないので、読んでいて新鮮だった。また、ケルヴィン卿といえば、物理学者だと思っていたが、地質学者でもあったのだなと知らないことがわかって良かった。 ホイルとアインシュタインの話は、割とその方面の書籍などを読んでいたので、復習の感じで読んでいたが、本書が「進化」をキーワードとして3つのテーマでまとめられていて、前とのつながりを意識しながら読むと、また違った面がみられた様な気がする。 天才たちの失敗は、「偉大なる」失敗なのだと実感した。

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    投稿日: 2020.10.07
  • 「無限」に魅入られた天才数学者たち

    「無限」に魅入られた天才数学者たち

    アミール D アクゼル,青木 薫

    ハヤカワ文庫NF

    集合論を勉強したい。

    非常に面白かった。 無限については、僕も学生時代に可算無限と連続体に興味を持っていたこともあり、久しぶりに知的好奇心をそそられ、読むのに夢中になった。連続体仮説も興味があったが、結局学生時代を終えると、興味もいつの間にかなくなり考えることもなくなった。 この本を読んでみて、そういえば連続体仮説というのはどう決着がついたのか、という疑問を思い出したが、結局現状の数学体系では真偽をはっきりさせることはできないということがわかった。カントールは答えのない問題に苦しんでいたというところで、なんともいえない気持ちになった。 クロネッカーとカントールの確執の様なものは、昔からどんな分野でもあったが、やはり今後はこういう権威による排斥などはなくなってほしいものだ。 カントールとゲーデルの例から、「無限」にのめり込んで行く学者はどうも精神を病んでしまうらしいが、あまりにも頭が良過ぎて考え過ぎてしまうのか、「無限」という存在がそうさせる魔力を持っているのか、興味深く感じた。 また、集合論について最初から勉強したいと思った。

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    投稿日: 2020.10.07
  • 神は数学者か?──数学の不可思議な歴史

    神は数学者か?──数学の不可思議な歴史

    マリオ リヴィオ,千葉 敏生

    ハヤカワ文庫NF

    世界は数学でできている?

    この世界の出来事は、数学を用いて非常にうまく記述できる。これは単なる偶然なのか、数学の力というのが伝わってきて、非常に興味深かった。 自分も学生時代は、物理学を勉強していた身であり、物理現象を記述するにあたって、数学が非常に強力なツールであったことを感じていた。まさに、数学は自然を記述する言語であった。しかし、どうしてそうなのかは考えたこともあったが、特に追求することもなかった。 本書を読んで、そんな学生時代の疑問が思い出された。この宇宙を記述する言語として、数学がこれほど強力なのは神が数学者だからかというような思いも湧いてくる。しかも自然科学だけでなく、人間社会の現象も数学で記述されるのは非常に興味深い。 古代の幾何学から始まって最新の数学まで、自然や社会との関わりをたくさんの例をあげて解説されている。普段疑問に思っていても、深く考えたことのない内容なので、また何度も読み返して考えたいと思った。

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    投稿日: 2020.10.07
  • ウォール街の物理学者

    ウォール街の物理学者

    ジェイムズ・オーウェン・ウェザーオール,高橋璃子

    単行本

    物理学の手法も経済に利用できるのか

    面白かった。 金融関係のことは良くわからないが、物理学で研究されている手法を経済に利用するというのが興味深かった。 そういえば、大学の素粒子論の研究室の先輩が、学位を取ってから金融関係の会社に就職した話を聞いたが、数学や理論物理の人が金融関係に進むのも、結構前からあったのだろう。本書は19世紀のパリから話が始まるが、物語的に語られていて読みやすかったと思う。ちょっと金融関係の数学にも興味が湧いた。ただ、ゲージ理論などの説明はあれでわかるのかなという疑問は残った。 著名な物理学者の名前も出てきて、改めて物理や数学と金融の関係に興味を持った。

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    投稿日: 2020.10.07
  • デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?

    デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?

    森博嗣

    講談社タイガ

    サイバー戦争?

    森博嗣Wシリーズ第4作 連休で前作から一気に読んでしまったようだ。 今回はサリノという非常に印象的なキャラクターが登場した。確かにウォーカロンではあるけれど、なんとなく小さい子供を利用して酷使しているような妙な悲壮感というか、何とも言えない残酷さが感じられた。 今回はサイバー空間でのドンパチなんだろうか。デボラもなかなか謎めいた存在だし、カンマパの名前と同じところは何かを想像させる。これも著者の作戦なのか。 今回もハギリ博士の思いつきというか、アイデアがピンチを救った感じがする。まあ、サリノが活躍したからだからだが、それにしても運が良いのか才能があるからなのか、ハギリ先生只者ではない。 今回はナクチュ地区と同じような場所が出てきて、こんなサイバードンパチみたいになったのだが、やはりナクチュはルナティック・シティなのだろうか。イル・サン・ジャックなんかも関係してくるのだろうか。 今後の展開が楽しみである。

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    投稿日: 2020.07.31
  • 風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake?

    風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake?

    森博嗣

    講談社タイガ

    タナカさんの子供の名前!!

    森博嗣Wシリーズ第3作 ナクチュ地区の謎に迫りつつ、ハギリ博士を中心に何やらきな臭い陰謀にさらされているような感じだ。今回は敵かもしれないウォーカロン・メーカーとのやりとりもあって、なかなか緊張する場面もあった。全体的には平和な感じで話が進んで行ってるなと思ったところに、やはりドンパチはつきものなのだな...。まあ、今回は小規模だったが。 だんだん100年シリーズの続きのような感覚になってきて、興味をそそられる。ハギリ博士の相棒2人はだんだん親しみが湧いてきて面白いし、ヴォッシュ博士とペィシェンスもほとんどレギュラーで楽しい人間関係になってきた。 マナミやタナカも今後の活躍が待っているのだろうか。期待したい。 今回も面白かったが、衝撃的だったのはカンマパはもしかして女王様なのかということ、それから最後にタナカさんの子供が名乗った瞬間だったかな。

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    投稿日: 2020.07.31