ことくさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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7年目のツレがうつになりまして。
細川貂々 / 幻冬舎単行本
幸せになって良かったな~
8
このシリーズは、これまで紙で読んでいました。読んでいた場所は心療内科の待合室。私も、仕事のストレスからうつ病と診断されていました。
それまで、「うつなんて自分には全く無縁だよね~」と思っており、仕事…は忙しくこなしながらも、そんな日常に満足していました。そのうちリストラや業務改革などで仕事量はひとりで処理できる量を上回り、何があってもどこでも眠れる自分が不眠になり、これまで出来ていたことがどんどん出来なくなっていきました。
ツレうつは、全くその時の自分と同じで、何回も何回も読みました。全部同じじゃないけれど、共感できるところはたくさんあり、少し気が楽になりました。
今では大好きな読書も出来て、レビューも書けるようになり、音楽も少しずつ聴けるようになりました。
(バラエティーなどのうるさいTVはまだ苦手です)
うつのおかげで無くしたものもたくさんありますが、その代わり得たものもたくさんあります。
プラマイでいくとマイナスかもですが、それでもいいのだ、と思います。
本作のツレさんは既に寛解されており、作者であり妻の貂々さんは、明るくユーモラスに当時のこと、現在のことを描いておられます。うつってどんなかな?という興味がある方は気軽にお手に取って頂きたいと思います。 続きを読む投稿日:2016.09.22
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フラジャイル(8)
恵三朗, 草水敏 / アフタヌーン
岸先生、もちっと優しくして。
8
いや、泣きはしませんが、良いお話でした。前巻から引き続き指揮者の父娘のストーリー、読ませますね。父親っ子にはグッときます。
音楽っていいなぁ…。その曲を思い出すだけで、キラキラした時間に戻れますものね…。
世の中のパパさんたちは、娘さんにこれぞという曲を贈ると素敵だと思います。
岸先生、悪人面ですが善き人ですね。上司だと恐いけど。病理の世界でも患者と強く繋がっていると感じたストーリーでした。
ちなみに私が父から貰った曲はザ・プラターズのアルバムでした。当時はLPレコードでしたが、CDで買い直しました。煙が目に染みます。 続きを読む投稿日:2017.03.25
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「裏窓」殺人事件 警視庁捜査一課・貴島柊志
今邑彩 / 中公文庫
良い!良いです!!
8
正月休みに溜まった本を読むぞ~と決めていたのに、読めたのはこの一作だけ…。自分の不甲斐なさに舌打ちしつつも、「よくぞこの本を選んだ‼」と思わずにはいられない良作ミステリーでした。
貴島シリーズ第2作…目。一作目も素晴らしく面白かったので、期待しつつ、でも過度な期待は失敗した時ショックが大きいと自分を戒めながら読み始めましたが、途中そんな考え自体が吹っ飛びました。
いや~、想像の斜め上行くトリックと思いも寄らない真犯人。貴島が真相に近づくにつれ、胸の高鳴りを押さえきれませんでした。
これまでに読んだことのない仕掛けでしたし、余分な事が極限まで削ぎ落とされている読みやすい文章に脱帽です。文句なしの★5で♪ 続きを読む投稿日:2017.01.04
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翼ある蛇
今邑彩 / 角川ホラー文庫
前作より良いものの…。
8
後半の疾走感、半端なく良かったです。逆に早すぎて、「え?え?えー??」となりました。
ただ、いかんせん…。前半の女神信仰のくだり…。一応体裁は沢地逸子という英文学翻訳家の論文的なものになるのでしょう…が、長い!長すぎ!
世界中の蛇信仰から竹取物語まで、まー長い。天照大御神もギリシャ神話もお腹いっぱいです。マジ泣きそうになりました。
でもこれを差し引いても続きが気になる。これ、まだあと2巻あるのです。
どうか、もう神話の話はありませんように。次出てきたら白目になります。 続きを読む投稿日:2017.05.05
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多恵子ガール
氷室冴子 / 集英社コバルト文庫
思えば遠くへ来たもんだ
8
タイトル…武田鉄矢ではありません。古くてゴメンね。
『なぎさボーイ』と対になるこの作品。前作はなぎさの視点で、本作は多恵子の視点で語られています。
30年以上前は多恵子の気持ちに共感出来るところが…たくさんあって、「わかるわ~」と思いながら読んでいた記憶があるのですが、10年一昔を3回ほど繰り返した今、「うわ~、全く共感できない~」ということがわかったのは、驚きであり、新しい発見でした。
中高生なんて、恋愛至上主義というか、恋に恋してばかりの未熟な生き物。小さな世界が全てで恋の歌を聴いてはもだもだしていたものです。
本作のテーマは「己の嫉妬の気持ちとどう折り合いをつけるか」これにつきます。ヤキモチを他人に気取られるほど格好悪いことはないわけで、しかも相手にそれを知られるなんて憤死ものです。
でも…もう嫉妬の気持ち、忘れてしまったな~。嫉妬出来るくらい好きになれるっていいな~と思わず遠い目をしてしまいました。
今の子どもたちは早熟だから、この本を読んでも響かないかもしれないけど、当時はこの本に乙女たちは一喜一憂してたのですよ。同じように感じてくれる子たちがいたら、涙出るほど嬉しいな。
こちらも私の独断と偏見、問答無用の★5で! 続きを読む投稿日:2016.09.04
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「子供を殺してください」という親たち
押川剛 / 新潮文庫
衝撃的なタイトルそのままの…。
8
2時間ほどで読み終えました。
実は、私の知人に同じような経験をいま、まさにされている方がおり、その話を聞いては暗澹たる気持ちになっていたから、この本を読んでみようと思いました。
知人(男性)の子供…は、多分高校中退か卒業した男の子です。
彼は、多くを語りません。「精神科に入院させた」、「腫れ物に触るように接している」、「しばらく距離を置くため一人暮しをさせた」などぽつぽつとこちらが水を向けた時に話すのみです。「あなたは?奥さんは暴力振るわれてない?」といった問いかけには無言でした。無言の肯定だと思います。
男の子が小学生から青年になる過程を私は知りません。まさか、そんな深刻な事態になっているなんて、思いもよりませんでした。でもこの本を読んで、私が考えている以上に、彼(私の知人)を取り巻く状況は厳しいのだと痛感しました。
でも知人にはこの本を読んで、なんて気軽に薦めることはできません。この本から幾つか得たヒントを忘れないようにして、知人夫婦の声にならない声を聞き逃さないようにしたいです。
続きを読む投稿日:2017.05.06